もし室! ~もしワンピースのナミが室伏もどき著『ゾーンの入り方』を読んだら~   作:世界の鉄人

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ナミちゃん、川に行って裸ではしゃぐ

 試してみて分かったのだけど、本では逆式呼吸で生まれる力の流れを利用してパンチを弾くと書いてあるけど、この弾く力って意図的に押す力にも利用できるわね。

 逆腹式呼吸で体をゆらして、そのゆれの勢いで指を伸ばす。また足を蹴る。そうするとすごく大きい力が出せるわ。

 

「ふんっ。ふんっ。ふんっ」

 

 何せ今の私、指を使った腕立て伏せで、5cmくらいジャンプできているもの。

 村の皆が知ったらおったまげるわ。私自身も、すごく驚いてる。こんなに力が増すとは思わなかった。いえ、筋力がついたというよりは、女の非力な体でも、上手く使えば屈強な男の人みたいなことができるのね。

 

「うっ。痛いわね」

 

 しかも、まだ指が痛い。つまり力の流れが途中で途切れている。完璧じゃない。

 これが完璧になったら、今の筋力のままでも20cmくらいジャンプできると思うわ。でもたぶん、完璧になるには数ヶ月かかるから、その頃には筋力も増えて、もっと飛べるようになってる。楽しみねえ。

 

 もう1つ。今日は乱流の中を走るトレーニングをするつもり。そのために着替えを持って川にやってきたわ。早朝にね。

 今日の幅は10mくらい。深さは一番深い所で3mくらい。流れの速さは、見た感じまあまあって所かしら。油断したら大人でも溺れるかもしれないわね。昔の私なら危なかったと思う。でも今の私は、シツジョー流トレーニングで身体操作が上手くなってるから大丈夫よ。まあ今日は泳ぐんじゃなくて走るんだけど。

 さて、とりあえず層流に逆らうように走ってみましょう。あんまり深いと走れないから30cmくらいで。

 

 冷たっ。海と違って川は冷えてるわね。でもまあ、動けば熱くなるでしょ。

 

「ふんっ。はっ。ふんっ。はっ。とっ、ととっ。す、すごい! すごいすごい!」

 

 思わず叫んじゃったわ。これは本当にすごい。トレーニングとしてすごく効率がいい。水の抵抗が体にガッと来て、強い力を出す練習になるし、意外だったのが足場。丸っこい石が色んな高さや角度で落ちてるから、その時々で接地のタイミングや角度が不規則にやってくる。だから集中してないと上手く蹴れない。難しい。

 でもね、それがすっごくいいことなの。

 

 ハンマロビクスの基本。

1.単純な反復運動をさせない。

2.不規則な動きを取り入れる。

3.体を慣れさせない。

4.感覚が常に内在する運動。

5.即興的に対応する運動。

 

 接地が不規則だから、反復運動じゃないし、不規則な動きだし、体が慣れないし、感覚を内在させないと上手く動けないし、即興的な対応が必要。完全にハンマロビクスを満たしてるわ。

 その上で、水の抵抗による筋力アップもあるし、もう1つ。不規則な接地角度だから、蹴る度に体の軸がガタンと揺れるの。この揺れがいいわ。すごい加速度でガタンと揺れるからすごく筋力がつきそうなの。たぶん付くわ。まだやってないけどなんとなく分かるの。

 

 よーし。今日は一日中走り回るぞー。

 

「ふんっ。はっ。ふんっ。はっ。ふんっ。はっ」

 

 集中集中。足場の変化を感じ取る。層流の微妙な揺れも感じ取る。そして、逆複式呼吸による力の流れも感じ取る。それを、地面にぶつける。

 

「ふんっ。はっ。ふんっ。はっ。ふんっ。はっ」

 

 大きめの石、その下の小さな石、泥の動きを感じ取る。流れの先を感じ取る。筋肉の揺れ、その先の揺れを感じ取る。

 

「ふんっ。はっ。ふんっ。はっ。ふんっ。はっ」

 

 もっと繊細に感じ取る。もっと早く感じ取る。もっと強く蹴る。もっと綺麗に蹴る。

 

「ふんっ。はっ。ふんっ。はっ。ふんっ。はっ」

 

 集中集中。この空間と私の意志を一体化させる。

 水の音、泡の音、風の音、呼吸の音。

 水の冷たさ、石の硬さ、波の動き、体の動き、筋肉の動き。

 自然と一体化していく。溶け合って行く。自然体の私。その中で走る意識。理想の動き。

 

 靴や服は邪魔ね。

 

 指を全力で伸ばしたの時の応用。つま先、かかと、足首、膝、骨盤、背中、お腹、胸、頭、手先足先。引っかかりのない走り動作。

 航海の応用。大気の変化を感じ取っている時の、あの感覚。肌に当たる水の流れ、それを生み出すその先の水の流れ、高さの変化。

 自然に溶け合い、動く。

 

 感じるままに動く。大気、水、足場。綺麗にゆらめく。

 もっと早く、もっと強く、もっと綺麗に。

 

「はあ、はあ、はあ、はあ」

 

 楽しい。すごく楽しい。時間を忘れて走っちゃうわ。

 指を伸ばす時より疲れるのは早いけど、楽しさはこっちの方が上。だからずっと続けたくなる。初めてプールで遊んだ時の感覚を、さらに上回ってきてるわ。

 

「ふっふふーん。らんららーん」

 

 ふふっ。単純に走るだけじゃなくて、強弱をつけてみたわ。踊るように。時おりぴょーんっと飛んだりして。こうするともっと楽しい。もっと上手く動ける。

 

「ふん、ふふんふん。らららんらん。らんららん」

 

 いえーい。のってきたのってきた。

 たぶん、これってふつうに走るより効率がいいわ。

 本で読んだわけじゃないけど、分かるの。ずっと力を入れっぱなしだと疲れるし、自然な動きにならないの。ハンマロビクスで言う所の慣れるっていう状態に近いかしら。

 強弱があると体は自然な状態を保てるわ。

 

 ふふっ。私ってすごい。自分でこういうことに気付いちゃうなんて。

 

 

 結局この日も、気付けば外が真っ暗だった。それに私は裸になっていた。

 すっごく疲れたけど、楽しかった。充実していた。

 層流は腰まで浸かる高さでも上手く走れるようになった。逆複式呼吸の力の使い方もすごく上達した。何より意識がすっごく広がる感覚があって、楽しめた。

 

 あまりにも楽しかったからこの日を後悔するつもりはない。ないんだけど、さすがに裸ではしゃいだのは問題かもしれないわね。私も年頃の乙女だし。おっさんとか海賊に見られたら嫌。いや、羞恥心はない方だと思ってるけど、タダで見られたかもしれないとなると腹立つわね。

 一応人気のない場所を選んだつもりだけど、ジャングルってわけではないし、民家にそこそこ近いから、たぶん何人かは近くを通ってた。うーん。

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