ピカチュウ、ポケモンやめるってよ   作:おりゅ?www

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戦闘描写回避とも言います(タイトル)


バトル回避

この膠着(こうちゃく)状態が続いてどれくらい経っただろうか。動いた方が負ける、というか動かなくとも俺は負けると思う。あれは文字通りレベルが違う存在だ。

先ほど避けれたのも半分以上まぐれで、次同じことをされれば確実にダメージを喰らう。あんな大きな針を刺されたらどうなるのか、想像がつかなかった。

ポケモンである限り貫かれて死ぬ、なんてことは起きないと思うが、最悪を想定しておこう。

 

しかしあいつは何故攻めてこないのか。奴からすれば俺など一捻りだろう、何故動かないのか。

もしかしたら先ほど回避を成功させたことで勘違いさせたとか? 必殺の技を避けられて同格かそれ以上と判断したとか?

あり得なくもない。が、結局それは遅かれ早かれ勘違いだと気づくはずだ。ずっと動かない訳にもいかないだろうし、攻撃を仕掛ければ一瞬で気づく。

 

さて、安全にこいつから逃れる方法はないものか。『電光石火』を使っても奴の素のスピードに負けているため無意味であるし、攻撃しようにもその素早さから回避されてしまう。

一番可能性がありそうなのはミュウに何とかしてもらうことだが、残念ながら遥か上空で木の実を浮かして遊んでいたのが見えた。本当に何がしたいのかあいつは。助けてくれよ。

 

 

スピアーが動いた。高速で迫る様はまさに蜂そのものだ。そしてその鋭い針を突き出してくる。

技的には『地獄突き』か『乱れ突き』か、突き系統の技だと思われる。

そして攻撃に対応出来なかった俺に針が突き刺さる―――寸前、スピアーは動きを止めた。ブワッと風圧が襲ってきた。そして針はギリギリ触れていない。

…なかなか察しがいいらしい。俺より格上だから当然と言えば当然だが。

先ほどの膠着の間に罠を仕掛けたのだ。俺が放つ電気技は全て体の表面から出される。つまり触れた瞬間に電撃を放出すればスピアーを道連れに出来たのだ。死なばもろとも、とは違うかも知れないが、ともかく功を成したようだ。警戒して接触技を使ってこない。

因みにこの状態の維持は結構辛い。放出ついでに纏うことは出来るんだが放出せずに纏うだけとなるとこれがなかなか……。これを発展させれば『ボルテッカー』いけそうなんだがな。

 

「スピィ…(誰だ、お前は)」

「ピ?(え?)」

「スピスピ(誰だと訊いている)」

 

いつでも針を突き刺せる距離で、しかし若干の距離を取って、訝しむようにそんなことを尋ねてきた。

ガクッ、と一瞬気が抜けてよろけてしまった。戦闘中の今訊くことかそれは。

しかし唐突に話しかけてきたかと思えば誰か、だと? 質問の意図が全く分からない。というか何でその質問が出てきた。

まあそんなことはどうでもいい。ただそれ以上に()()()()()()()()()()のが気になったのだ。考えてみれば、自分がピカチュウであること、人間の頃の記憶があることしか自分について知らない。

元はどんな存在だったのか、ピカチュウとしてどのように生きてきたのかが分からない。

いやまあそんな奇妙なことに気付かせるために訊いたんじゃなくて、普通に名前でも聞こうとしてたんだろうけど、これは感謝である。思わぬ発見があった。

 

それにしても名前か…普通にピカチュウじゃダメなのだろうか? ポケモン一匹一匹に名前があるとはおもえないのだが、まあきっとあるのだろう。

よく考えてみよう。例えばピカチュウの群れに一匹ずつ名前がなければ「おい、ピカチュウ」と呼ぶことになる。それだと誰のことか分からないよな。

それに『ピカチュウ』とは人間が考えた種族名であって個体名は一切ない。つまり柴犬に『柴犬』という名前をつけて呼んでいるのと同義である。

うん、こう考えると名前がいかに重要か分かってくるな。

 

しかし名前か…考えてなかったな。今まで必要なかったし、これからも必要ないと思っていった。

……そんなすぐに思い付く訳でもなし、人間の頃の名前を使うか。

…………あれ、名前何だったっけ? 全く思い出せない。どころか、元の家族の名前も、友人の名前も、教師の名前も全部思い出せない。

唯一思い出せるのは好きだった人の名前か。桜という在り来たりな名前だったのを覚えていた。結構可愛かったんだけどな。

いやいや、そんなものを思い出しても無意味である。尻尾の形から見ても俺はオス、女っぽい名前は嫌だし、自分が桜と呼ばれたくない。

よし、儚き頃の中二センスを持ってくるとしよう。黒歴史こそ作らなかったが、妄想はたくさんしていたのだ。ムムム…

 

「……ピカチュウ(ゲツジだ)」

 

鼠と言えば齧歯類(げっしるい)ということでそうした。残念ながらいい名前が思い付かず、早く答えねばと思ってこうなってしまった。

……そこまで中二のセンスも光らず、我ながらダサい名前になってしまったな。いつか遠くに行くときは改名でもしようかな。

 

「スピスピ(知らん名だな、どこから来た)」

「ピカピ…ピカー(こっちが訊きたいわ…どうしてこんなところにいるんだか)」

 

主に人間的な意味で。この森に来たのは、というか通ろうとしたのは俺の意思だが、ポケモンの世界に来たのは俺の意思ではない。

 

「スピ、スピスピ(そうか、ならここを通るだけなら俺たちはお前に危害をくわえない)」

「ピ、ピカ?(え、マジで?)」

 

何が「そうか」なのか全く分からんが、ともかくこちらにとっては好都合だ。無意味に争う理由も無いし、こいつとはまだ戦えない。

 

「スピスピ、スピ(ああ、だがその代わりにこちらにも危害をくわえるな)」

「ピッカ、ピカチュウ(当たり前だ。あんたとは戦いたくないし、争う理由も無い)」

「スピ、スピスピ、スピ(こちらもその方が助かる。そこで伸びている奴らには言って聞かせておこう。では行け)」

 

そう言ってそのスピアーは先ほど倒したスピアーたちを叩き(つつき?)起こして去っていった。

 

………結局あいつは何だったんだ? スピアーたちのボスか何かか?




先日祖父が亡くなりまして、葬式で忙しく書けませんでした。遅くなって申し訳ありません。
悲しみもありまして、しばらく書けないかもしれませんがご了承ください。
念のため入れておいた不定期更新がこのようなところで役に立つとは思いませんでした。
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