とりあえず通行許可はいただいたのでありがたく通させてもらおう。これで今後スピアーに襲われることもなくなるし、安全に道を歩けることがこんなに嬉しいこととは。ただ、今は無理した体の回復が優先だな。
☆
さて、そういえば考えていなかったことが一つ。オーキド研究所に行こうと思い立った訳だが、肝心のマサラタウンの場所が分からない。
以前も説明した通りポケモンは初代はやっていない。やったことがあるのは小学生の頃にプラチナとブラック2で一旦引退。その後、というか結構最近か、友達に誘われウルトラサンをやったといったところで、実はポケモンは全然やっていない。知識も動画で見たことがある程度で詳細は覚えていない。実質にわかである。ただバトル方面についてはガチ勢だったと自負しているが。
さて、そんな俺が地図も情報も無しに、どうやってオーキド研究所に行こうというのか。
考え無しにあの街から反対方向に向かって森を抜けたが、そこにはただの草原しか広がっていなかった。木に上ってみても残念ながらそこまで遠くは見渡せず、今はその草原で寝転がっている。
その拍子に見上げた空には太陽とオニドリル数匹が見えた。朝は過ぎているが、昼と呼ぶには少し早い時間帯な気がする。
「ピカ~(どうしたもんかなぁ)」
友達との対戦でも読みが浅いとかよく言われたな。俺単純思考だからなぁ、こういうことに気がつくの大体後なんだよな。対戦するときは注意事項を書いたメモを片手に勝利をもぎ取っていたが、今はそんな冷静にしてくれるものも無い。
途方にくれてしまった。救いの手はないのか。
「ほら、マサラタウンに帰るわよ」
「えー、もっと街で遊びたかったぁ」
「そんなこと、トレーナーになればいくらでもさせてあげるから」
と、親子がそんな会話をしているのを耳にした。
……これまで散々だったよな。こっちに来てから電気玉による暴走でスピアーに追っかけ回され、街で餓死しかけ、巣を求めたら変なゲンガーに攻撃されて、スピアーのボスに威圧され。
ここでようやく初めての幸運が舞い降りたらしい。いや、ミュウに会えたのも幸運と言えば幸運だが。
ともかくこれは都合が良い。しばらくあの親子を付け回せばいずれマサラタウンに着くだろう。そうすればオーキド研究所も必然的に見つかるはずだ。
「ミュウ~?」
「ピカピカ(静かにな。あの親子をつけるぞ)」
ひそひそとミュウに話しかける。別にバレても野生のポケモンだから問題ないと思うが、ゲットされては堪らないし、危険だからと攻撃してくる可能性だってある。バレなければその心配はしなくていい。それに尾行って何だか刑事みたいでカッコいいし。
そのまま俺たちは二人を追いかけていった。
☆
二日かかった。ミュウが意外と大飯食らいで木の実が枯渇しかけたが、漸くマサラタウンに到着である。ていうかどんだけ食ったんだあいつ。俺二つも食えば満腹になるぞ。同じくらいの大きさなのに一体どこに木の実は消えたのか…。
おお、アニメで見たまんま田舎だな。お、サートシ君の家もあるじゃないか! これはアニメ世界の可能性も出てきたな。あれ、そういえばグリーンの家ってあったっけ? オーキド研究所がそうだったっけ? まあ、今は別にいいか。
それより漸くオーキド研究所に行ける。これで手がかりも何も無かったらとりあえず八つ当たりに博士を焦げ焦げにしてやろう。大丈夫、彼もきっとスーパーマサラ人だ。レベルが分からないから具体的な事も分からないが、高々四倍程度で死にはしまい。
田舎では目立つ一際大きな建物がある。それが今目の前にあるこれがオーキド研究所だ。
当然俺のような電気鼠専用の入り口は無いため柵を飛び越えて不法侵入する。『アイアンテール』で扉を壊すのも考えたが、明らかに敵視されてしまうので止めておいた。……こんな発想が出てくる時点でサイコパスだな、俺。
無防備にも空いていた窓から潜入成功。ピカチュウになってから初めての屋内でちょっとドキドキする。
因みにミュウには透明になってもらっている。どういう原理なのかよく判らないが、ラティ兄妹も映画で透明になってたし、ポケモンが出来ることならミュウにも出来るのだろう。もしかしなくてもこいつヤバいだろ。
さてさて、電気玉はあるかね。もしくは情報。研究所なんだからそれくらいあってくれよ…。
☆
「ピッカ…(嘘だろ)」
今、俺は非常にヤバいことに気がついた。
それは今目の前にいる研究員の一人のことだ。
「ふむ…どこかで見たことがある物を持っているのぉ」
めっちゃ若いオーキド博士がいる。冗談抜きで。
茶髪で顔も割と美形だ。というかおじさんに見えない。でもオーキド博士と呼ばれてたから絶対本人だ。
待て待て待て。今のチャンピオンってグリーンだろ? オーキドのお孫さんとか言ってたよな、あのビードル。どう見たってそのお祖父さんが二十代…逆に盛っても三十代にしか見えないぞ。可笑しいだろ。
本来のオーキドってあれだろ、最低でも五十過ぎだろ。アニメの見た目的にも、孫がいることを考えても。
じゃあ誰だよこいつ。色んな意味で矛盾してるぞ、存在が。
「おお、思い出した。確かイッシュ地方で生産されてたものじゃ。効果は…何だったかの? 確かメモさせた紙があっちに…」
しゃべり方だけはじいさんっぽいけどそれ以外はどう見たって青年だ。
というか何気にめっちゃ重要なこと言ってたな。電気玉がイッシュで作られてるとか……イッシュにピカチュウいないのに何で生産してんだ? まだ電気玉の効果でピカチュウが強くなること知られてないとか?
いずれにせよイッシュに手がかりがありそうだ。そうと決まればこんなところさっさとおさらばしてしまおう。もう用済みである。
「ええっと、『電気玉は非常に強力な電気エネルギーを凝縮した物体であり、誤って割ってしまうとそのエネルギーが放出され大変危険な物であることが判明。電気玉の製造は禁止された』……このメモ書いたの誰じゃったか。しかしあのピカチュウ、同じものを持っとるのぅ。危ないから取り除きたいんじゃが……」
おい待て、電気玉ってそんな危険なもんじゃねぇだろ。精々がポケモンに投げつけて麻痺させる程度だろうが。そのメモ間違ってるぞ。
というかそーっと近づこうとすんな。渡さねぇからな?
そそくさとオーキドから距離を取りながら来た道を戻っていく。
「あ、こら待たんか!」
そう言って研究所内でずっと追いかけてくるオーキドはただの変態にしか見えない。口調的には老人のはずなのによくそんな体力持つよな。見た目青年だけど。というか研究者ならもやしレベルで運動出来ないんじゃ…あ、でもベトベトンにのしかかられてもピンピンしてたし、この世界の人間ならスーパーマサラ人ってことで納得出来るな。
「むぅ、あのピカチュウは危険物を持ち歩いている自覚がないか……バトルしようにも誤って割れると危険だし……エサで釣ろうかの? ほぅら、ここに美味しいポケモンフーズがあるぞ~」
そう言って懐から電気タイプ用のポケモンフーズが取り出された。いや、何故入ってたし。
というかまる聞こえでそんなのに引っ掛かる訳ないだろうに。やっぱりバカなんだろ。
ともかく情報は得られたんだ。こんなとこはさっさとおさらばである。