ピカチュウ、ポケモンやめるってよ   作:おりゅ?www

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街に着いて

ピカチュウに憑依して既に三日が経過した。初日に色々ありすぎたのか、その後は特に何かあるわけでもなかった。

強いて言うならば、未だに森を抜けられていないことだろうか。ゲームだと数分であろうこの森は、現実だと相当複雑な場所になっていた。しかも推定トキワの森ということで、初代をやったことがない俺にとってはまさに迷路である。迷宮と言い換えてもいい。

 

「ピッカァ…(人通らないかなぁ)」

 

人がいればそいつに着いていき、そのまま森は抜けられる。が、そんな都合よく人が通ることは無かった。仕方なく地道に歩き続けているのだが、一向に森を抜けられる気がしない。あれ、もしかして俺って、方向音痴?

 

 

時折現れるオニスズメを撃退しながら、さらに数日が経過した。時間は陽がかなり昇っているから多分昼頃。

今まではその辺に成っている木の実で生活しているのだが、この辺は同じ木の実しか実っていない。いい加減飽きてきた。

というところで、ようやく森からの脱出に成功した。やはりひたすら真っ直ぐ進めばいずれ出られるもんだな。

 

そこにはビルの建ち並んだ立派な街が存在した。トキワシティだろうか。未プレイに2Dだったため判断のしようがない。暫定トキワシティとしよう。

街の入り口では人が多く出入りしていた。短パン小僧もきれいなお姉さんも釣り人も、ともかく多種多様な人たちが行き来していた。

それらに紛れて街に入り込む。電気玉の収集、手っ取り早いのは製造所をあたることだ。そのための情報収集をせねばなるまい。街というのはその点情報が集まるためちょうどいいのである。

 

綺麗に整備された街並みを道なりに歩いていく。ピカチュウ一匹で歩いているのだが、意外と注目されていない。

まあ街にも鳥ポケモンとか野生ポケモンはたくさんいるし、気にするものでもないのだろう。

そういえば、ピカチュウの生態は群れで行動するものだったな。何で俺が起きた時は一匹だったのだろうか。はぐれたのか、首飾りから察するに誰かのポケモンだったのか。

まあでも今はしがない一匹の野良ピカチュウである。そんな過去のことを考える必要はあるまい。過去は振り返らず、未来を目指して今を生きるのである。

 

 

公園のような場所にやって来た。見渡すと端の方にバトルフィールドらしき場所も設けてある。子どもがコラッタとポッポでバトルしている様子が伺えた。

さて、ここは街の野生ポケモンが集まりやすい場所である。人工物で溢れた場所よりも、自然が少しでもある公園にポケモンが集まるのは至極当然のことと言えた。

 

「ピ、ピカチュウ。ピー(ちょいちょいそこのビードルさん。尋ねたいことがあるんだけど)」

 

木の一本によじ登っているビードルに声をかけてみた。

 

「ビー(ん、どうした若いの。ここらじゃ見かけねぇな)」

 

どういう基準で若いと判断したのだろうか。レベル的な話なら進化とか考慮しても圧倒的にこっちが上だと思うが、普通に生まれた年のことだろうか。どうやってそれ見分けるんだ。ポッポの群れを見ても全部同じにしか見えないが。

 

「ピカピカ、ピカチュウ(電気玉ってのを探してるんだ。何かそれについて知らないかな? こんなのなんだけど)」

 

言って、首飾りを指す。呑み込めば常時パワーアップするが、それではこういう風に訊くことが出来なくなるだろう。

それに常時というのが問題だ。加減一つ間違えると相手を酷く傷つけてしまう。俺には無意味に相手を傷つける趣味はない。

あと、こんなものはピカチュウにとって普通に呑めるものでもないのだ。喉に詰まりそうになった経験もあるし、生半可な覚悟じゃそんなことは出来ん。

 

「ビー、ビードー(んだそりゃ。そんなの情報通の俺でも見たことも聞いたこともねぇぞ)」

「…ピ、ピカ?(え、マジ?)」

「ビー(当たり前だろ。嘘つく理由がねぇしな)」

 

マジか。自称情報通でも知らない代物なのか、電気玉って。

人間に聞けば分かるかもしれないが、意志疎通の手段がないんだよなぁ。

……そういえば、時代設定はどうなっているんだろうか。サトシ君とかいるなら会ってみたいし、ゲーム主人公にも会ってみたい。

 

「ピー、ピッカ(えーっと、ウインディは知ってる?)」

「ビードー(おう、それは知ってるぞ。人間からは伝説ポケモンとか呼ばれてる珍しいポケモンだな)」

「ピカチュウ(そいつに進化するポケモンは?)」

「ビード(知らん)」

 

なんと言うことか。ウインディへの進化方法すらまだわかってないのか。そんぐらいすぐ判明するだろうに。ガーディに石触らせるだけだろ。

…いや、よく考えれば炎の石が高価という可能性もあれば、そもそもポケモンに石を触らせるとか意味不明な行動起こす奴いねぇよな。この世界の進化について学びたいわ。レベル進化以外がどれくらい解明が進んでるのか。

 

「ピカチュウ?(今のチャンピオンは知ってる? カントーの)」

「ビードル、ビー(そりゃ誰でも知ってるだろ。今はグリーンがチャンピオンだぞ。オーキド博士のお孫さんの)」

 

グリーンね。シゲルじゃないならアニメの世界という可能性は低くなったな。それにチャンピオンに就いてることが広く認知されているともなれば、レッドはまだ挑戦してないということになる。一体いつ原点にして頂点が現れるのか、気になるところだ。

 

「ピカチュウ(そっか、ありがとう。助かったよ)」

「ビー(おう。気ィつけてな、世間知らずの若いの)」

 

世間知らず…間違いではないか。実際世間どころかこの世界について殆ど何も知らないのだから。

さて、困ったな。目的の物を探そうにもどこにあるかも分からない。製造場所も不明。一体どうすれば良いのやら。

 

公園を後にして、近くのベンチに横になった。ピカチュウだからこそ出来る贅沢である。普通の人がやったら迷惑この上ない。

青い空を見上げながら、今後について考えていた。早速挫折しかけているのだが、果たしてこれからどうすべきか。

 

……ダメだ。何も浮かばない。こうなれば暇潰しに技の修行でもしてようか。未だに使える技が『電気ショック』『十万ボルト』『雷』しかないのは地面タイプのポケモンと出会った時に困る。特にこの周辺ならディグダとか。

せめて使えるようになりたいのが『電光石火』と『草結び』だ。『草結び』は最悪いらないが、『電光石火』は『ボルテッカー』に派生出来そうだし絶対いる。ゲームと違って素早く行動する『電光石火』は避けるのにも使えるし、『高速移動』と互換性があまりない気がする。まあ、『高速移動』がゲームと同じならそのバトル中常時素早さ二倍というのはデカイが。

あとは『電磁浮遊』か。電気タイプなら大体覚えられるそれで実質電気単タイプなら弱点がなくなるし、弱点技を回避できるのは素晴らしいことだ。覚えたかどうか知らんが、頑張れば多分いけるだろ。

 

こう考えると、今の俺は弱点まみれだな。最強とは程遠い。

トレーナーなら強いポケモン使うだけで最強にすぐ近付けるのにな。ズルいよな人間。元人間の俺が言える立場じゃないが。

よし、そうと決まれば早速行動開始だ!

 

ぐぅ~~

 

……どっかにポケモンフードくれる人いないかな? ここに木の実ないし。

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