ピカチュウ、ポケモンやめるってよ   作:おりゅ?www

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対策

拝啓お父さんお母さん。お元気ですか? 僕は元気じゃないです。腹が減って死にそうです。あれ、この場合の父さんと母さんってピカチュウのなのか? 俺のなのか?

まあともかく、飢え死にそうです。人間なら三日食わずでも生きられるらしいので余裕でしたが、ポケモンはそんな甘くないらしいです。

丸一日食い物を探したのだが、残念ながら親切で食い物をくれる人も落ちてる物も無かったよちくしょう。

盗めばいいかも知れないが、後々面倒になりそうだから嫌なんだよなぁ。ピカチュウのイメージ悪くなるし、俺のせいで俺以外のピカチュウが被害受けるのはいけないと思う。

……いや、そんなこと言ってる場合じゃないな。死んでは死体処理とかでもっと面倒そうだ。どっか店でいただくとしよう。

 

 

残念、店を見つける前に倒れた。既に立つ力もないし、目の前が霞んで見える。

短い人生だったなぁ。いやポケ生か? ともかくもうおしまいである。

しっかし、こんな路地裏でぶっ倒れるとは、死に場所くらい選ばせてほしかったよ。

 

「なんじゃお前。こんなとこで倒れてると踏まれるぞ?」

 

と、前方からすごいホームレス感のあるぼろぼろのお爺さんがやって来た。

ああなんだお爺さん。別に踏まれてもいいさ、もう後がないんだから。

 

「…ふむ、もしかして腹減ってるのか?」

 

少し間をあけて、何かを察したようにそう訊いてきた。

ぐったりしたまま俺はゆっくり頷いた。

 

「どれ…マトマの実しかないが、食うか?」

 

お爺さんはごそごそと懐を漁ると、赤く刺々しい実一つを取り出した。

瞬時に俺はそれを奪って一気に食い尽くした。それはもう、恥も外聞も気にせず獣のように食らった。ポケモンだから獣だけど。

マトマの実と言えば(から)さで有名だが、それが何のその、辛いものへっちゃらな俺に問題はなかった。

腹が少し膨れた。これで森に戻れば飢えは(しの)げるだろう。あそこは種類こそ少ないが結構自然に実ってる。というか、戻るという考えがあることに今気づいた。バカだろ俺。

 

「ピカチュウ(ありがとお爺さん。お礼に撫でてもいいぞ)」

「はっはっは、随分なお礼だな。そんなもんいらんからとっとと行きな」

「ピッカ(本当にありがとな。いつか何か返すよ)」

 

そう言ってその場を後にした。

 

 

 

あれ、あのお爺さん、何で俺と会話出来たんだ?

 

 

若干薄暗い森に戻ってきた。とりあえず優先すべきは食糧の確保である。その次に巣は…遠くないうちに旅立つから別にいいかな?

……いや、いるな。縄張りを敷くことで事故は防げるし、自分専用の修行場になる。安全な寝床も確保出来るし、絶対いる。

ともかくこの二つが最優先事項だ。もうあんな事故は起こさないぞ。

 

この森に大量に実っているのはオボンの実とクラボの実だけである。他は殆ど実っていないし、数も少ない。生態系大丈夫かここ。いや、そういえば林檎は見かけたな。

肥えた舌を持った元人間の俺にとっては二種類だけでローテーションというのは辛いものがあるが、まあ背に腹は代えられないだろう。我慢するとしよう。

それにオボンの実があるというのは実は凄く助かる。応急措置にも使えるし、大量にあれば完全回復も容易である。つまり量さえ用意出来れば某野菜人のようなハードな修行が出来るのだ。絶対しないけど。

それにこの世界、瀕死であっても死んではいないのだから木の実くらい食える。ゲーム的に言えばHPがゼロの状態でも木の実を食って回復出来るということだ。これが非常に助かる。瀕死になったら元気の欠片とか復活草とか必要なのだが、木の実でも代用出来るのだ。これがどれだけ嬉しいことか。

因みに回復効果はほぼ即時発動である。スピアーから受けたダメージが、木の実食い終わった瞬間逆再生のように傷が癒えていった、という経験からこれはそう言える。

 

適当に木の実を落としながら、巣にする場所を考えていた。やはり定番はデカイ木の幹に穴を作る感じだが、啄木鳥(きつつき)じゃあるまいし、そんな簡単なこととは言えない。

ただ、根っこ付近に穴を作ることは割と簡単だ。ピカチュウだって『穴を掘る』は覚えたはずだし。

ただ問題があるとすればどの木が空いているかだ。スピアーの時のように、勝手に誰かの物をどうにかするのはNGである。そこだけは気を付けねばなるまい。

 

よし。木の実は持てる限界まで落とせた。あとは巣を決めるだけである。

 

「ピッカァ…(どっかいい場所ねぇかなぁ)」

「それならいい場所知ってるぜ。知ってるぜ」

「ピ?(ん?)」

 

不意に上から声が聞こえてきた。何故か最後の言葉を繰り返すという独特なしゃべり方、まさかと思って見てみると―――

案の定、ぺラップがそこにいた。俺の真上をくるくる回りながら飛んでいる。

バサバサと羽をばたつかせながら人間の声真似で話しかけてくる。

 

「あっちに誰も近づかない領域があるぜ。あるぜ」

 

と、片方の翼で器用にホバリングしながらもう片方の翼で方向を指した。

あっちは確かに行ったことがない。

 

「ピーカー?(何で誰も近づかないんだ?)」

「危険らしいからだぜ。からだぜ」

「……ピッカ(行ってみるか)」

「気をつけてな。てな」

 

何故ここにぺラップがいるのか疑問ではあったが、よくよく考えればポケモンを逃がす人など大勢いるのだ。こいつもきっと逃がされた内の一匹だろう。

というか、ぺラップって普通に鳴かないのか。声帯が広いんだかよく知らんが、あのニャース以外で普通に喋れるポケモンはこいつだけな気がする。伝説とか幻はもう普通にテレパシー使ってくるけど。ゾロア? ルカリオ? 映画限定だろあいつら。

 

ともかく、俺はぺラップに示されたままに森の奥深くに足を運んだ。

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