やれと言うならやる可能性はありますが、一応聞くけどポケモンでバレンタインとか書けると思う?
声の聞こえた方向へ行ってみると、より木々の密度が濃くなって暗く、さらに霧すらでてきた。一体どこの迷いの森だここは。
ひたすら真っ直ぐ進むと、やがて霧が晴れていった。そして視界に写ったものは―――霧が出始めてきた場所だった。
いよいよ本格的に迷いの森になってきた。これは奥にとんでもないものがあるに違いない。ポケモンがいるのは確実だが。
さて、どうやって攻略したものか。無鉄砲に数回挑んでみたものの、全て失敗に終わって未だ進展がない。
ただ、だからといってあの鳴き声を無視出来るほど無情でもない。あんな苦しそうな声は初めてだった。遠い音が聞こえるピカチュウの耳に感謝である。
いっそのこと木を全部薙ぎ倒すか? いや、迷わしてくるのは霧だから『霧払い』が必要か? うーむ、分からん。一旦帰って作戦を練ろう。
戻って少し作戦を練ってきた。地道に目印を置いて少しずつ進むことにした。
トキワシティで拾っていた少しボロいが大きい布に木の実を大量に詰め込んで、木の実を少しずつ置いていき、どこまでなら行けるかを調べていくことにする。
それ以外にも案はあったが、先ほど挙げたように物騒なものか、現状不可能なものしかなかったためこれになったわけである。
……めっちゃ時間かかるな、これ。
☆
………お、霧が晴れてきた。意外とすぐ抜けれたな。数時間かかったけど。
結構無心で同じ作業するのはかなり疲れた。木の実も重いしでもう二度とやらない。
具体的なルートは省くが、とりあえず四十八回は方向転換した。同じ道を何度通らされたことか。
霧が晴れた場所は凄く神秘的な場所だった。秘境と言い換えてもいい。
日の光がいっぱい降り注いでいる。そして小さな泉と、朽ちている推定百年以上生きていたと思われる太い樹があった。巣にするならここが良かったと今さら後悔。まあでも、俺じゃここに合わないな。伝説か幻のポケモンじゃないと。
「ミュ……ウ……」
さて、そんな場所に想像通り、幻と呼ばれるポケモンがいた。
日の光が一番強い場所にいるので一層その存在が強調されている。鳴き声からも分かるだろう、ピンクの体を持ち、あらゆる技を使いこなすポケモン。名をミュウと言う。
そんな幻のポケモンが傷だらけで横たわり、弱々しい鳴き声をあげていた。呼吸も危ういレベルだ。
「……ピッカ…(こりゃひでぇな)」
心底放置しなくて良かったと思う。放っておけば、確実に死んでいただろう。
ポケモンの世界での『死』は俺にはよく分からない。人が亡くなった、というのはアニメでもたまに出てきたが、ポケモンが死ぬ描写は今まで見たことがない。
ムーランドが寿命で逝ったような描写はあったが、実はどこかで生きているという可能性も本当に僅かだが残っているほどポケモンの死は描かれたことがない。
しかもバトルでは
そんな不死身性を持ったポケモンだというのに、俺みたいな素人でも放っておけば死ぬと分かるほどの傷だ。一体何されたんだか。
「ピカ…(食えねぇよな)」
とても咀嚼する余裕があるようには見えなかった。
近くの木から葉っぱを一枚拝借し、その上でオボンの実を
潰した木の実をミュウの口元に持っていき、ゆっくりと飲ませてやる。しかし本当に少ししか飲んでくれなかった。七割はまだ残っている。
…良かった、傷は少し癒えている。既に瀕死を越えて亡くなる寸前の状態だから、効果があるか分からなかったが、死んでいなければとりあえず効果を発揮するようだ。
しばらく様子を見たが、少しは楽になったようだ。苦痛に歪んだ顔が少し緩んでいる。
しかし、一体何がミュウをこうしたのだろうか。バトルでここまでする必要はないし、十中八九人間の仕業なのが分かる。
だが、どんなことをしてこうなったかが全く不明である。確実にこれは必要以上に傷つけている。そこまでしてすることとは何なのか。
……ロケット団、ミュウツー、想像するのは簡単だ。事実かはさておき、アニメ以上に危険な存在らしい。気をつけておこう。
そのまま俺はミュウを見守り続けた。時折磨った木の実と水を与えながら。
☆
ミュウを看病しながら数日が経った。未だミュウは目を覚ましていない。
ただ、ずっと看病していた訳でもない。当然ながら技の修行はしていた。『電光石火』はもうほとんど完成形にある。ただ加速した体を上手く操れないのだけなのだが。
因みに平行して『アイアンテール』の練習も始めた。こっちはアニメのお陰でイメージしやすく、意外ともう成功しかけている。『電光石火』はちょっと難し過ぎたらしい。一体どんな基準だよ、普通逆だろ。
あと気づいたことがある。オボンの実、ゲームよりも回復量は少ないようだ。既に六つほど消費したが、傷はまだ残っている。ゲーム通りなら四つで傷はほとんど消えているはずだ。
「…ピカピー(もう十分回復してるはずなんだがなぁ)」
ミュウを軽く撫でながら、そんな一人言をぼやく。
そう、ミュウは既に回復している。呼吸は安定しているし、傷が残っていると言っても、ゲーム基準なら体力が半分くらいといった様子だ。目を覚ますには十分過ぎる体力である。表情も軽いもので普通に寝てるだけに見えるし。
しかしミュウは目を覚ましたことは一度もない。いや、もしかしたら俺が見ていない間に覚ましていたのかも知れないが、ともかく意識は取り戻していないと思われる。
そもそもが可笑しな話だ。ミュウは文字通り
そこのところを結構聞きたくて夜しか眠れない。早く目覚めてくれないかな。