歌と欲望のシンフォギア   作:葉っぱの妖怪

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ライブと欲望と三枚のメダル

俺が目にするそこは、地獄と言っても過言ではなかった。

 

鮮やかな夕日をバックに最高の歌姫たちが歌い、観客のテンションが跳ね上がるそれは素晴らしいコンサートステージになっている。

 

――――はずだった。

 

それがステージは崩れ、床は砕け、観客席は崩壊し、人間だった“モノ”が風にさらわれ宙を舞う、人ひとりいない地獄と化していた。

 

いや、俺を含めて4人がギリギリながらも生きていた。

 

俺と一緒に来ていた幼馴染の立花響、そして今回のコンサートの主役であるアイドルユニットツヴァイウイングの天羽奏、風鳴翼の二人である。だがその彼女たちはその姿を歌っていた時の衣装から変わっていた。それぞれのトレードカラーを主体にしたインナーを身に纏い、その上に装甲を装着し槍と刀という得物を手にしていた。だが、崩落した瓦礫の下敷きになって身動きが取れずにいた俺や観客席の崩落に巻き込まれ転落した幼馴染を庇いながら戦い、ボロボロとなっていた。

 

特に天羽奏はノイズから響を庇い各種装甲が砕け、肩で息をしているほどの消耗である。響も砕けた槍の一部が胸を貫き出血と衝撃で意識がもうろうとしていた。

 

それを見た奏さんは砕けた槍を掲げ、歌う。儚くも美しい、絶唱と呼ばれる命の歌を・・・

 

歌い終わると会場全体をエネルギー波が包み、ノイズを一掃する。

 

原作通りなら、絶唱のバックファイヤを受け奏さんが倒れ、翼さんの腕に抱えられて響と翼の目の前で炭化し息絶える。はずであったが

 

「なんだ・・・あのノイズは・・・?」

 

一体だけ、銀色に輝くイレギュラーなノイズが生き残っていた。

 

奏さんは絶唱使用直後で戦闘不能、響は自力で動ける状況ではない。唯一動ける翼さんだが、戦闘の疲労と絶唱を受けてもなお無傷であったそのノイズに唖然とし明らかに動きが鈍い。

 

その隙をついてかなのかは知らないがノイズが倒れた奏さんへと突進する。一歩遅れて翼が助けに駆け出すが明らかに間に合わない。

 

それを見ていた俺は明らかな原作乖離に呆然としていた。今日のツヴァイウイングコンサートでノイズの大量発生は前世での知識で知っていたし、それによる響の重傷も、奏さんの・・・・死も。俺はそれは仕方がないと思っていた。だがいざその状況を目の当たりにした俺は咄嗟に手を伸ばした。無意識のうちに伸ばしたその手は無論届くはずなどない。

 

それでも・・・!

 

転生した時に俺は神様なんかにあったりしていない。女神さまとかにもあったことなんてない。無論よくあるチート能力なんか持ちえていない。体にムチ打って身を投げ打って庇ったとしてもアレと道ずれに出来るとは限らない。

 

だとしてもこの手を伸ばしたい。無駄だと分かっていても、不可能だと知っていても奏さんを、響を助けたいというこの欲望は!この手を伸ばし続ける願いだと知ってるから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そして俺は、赤く輝く光を握りしめて叫んだ

 

 

 

 

 

 

「変身ッッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・んあ?」

 

眼前に広がる白い物体、そして甘い匂い。眠りから目を覚ました俺がそれが会長がよく作るケーキの食いかけだと認識するのにそんなに時間はかからなかった。

 

「よく眠れましたか?」

 

両腕を枕にして寝ていた俺の頭上から会長秘書の里中さんから声がかけられる。

まだちょっとぼーっとする頭を無理やり動かし時計を見る。時刻はもうすぐ6時を過ぎようとしていた。

寝てたのかと両腕を伸ばし意識を完全に覚醒させる。里中さんをよく見るとバックを肩にかけ帰る準備を終えていた。

 

「定時になりましたので一応起こしておこうかと」

「う~ん、俺はサボってたからその分の仕事してからあがるわ。ありがとね」

「はい、お疲れ様でーす」

 

部屋から出て行った里中さんを見送ったあと俺は立ち上がり、先ほどまで見ていたあの時の夢を思い出す。なんでまたあの時の夢を・・・と考えてるとテーブルに置いてある仕事道具のノートパソコンのとあるソフトが呼び出しコールを鳴らす。

それを聞いてノートパソコンにつないであるヘッドホンを耳に当てマウスを動かしクリックする。

すると画面にこの街のマップが表示されとあるポイントにいくつかのマーカーが重ねられる。白が2、赤が複数・・・白は民間人、赤はノイズの反応を示している。

白二つは赤いマーカーに追われるように動いたのち立ち止まり赤に囲まれる。たしかその場所は工業地帯で高台に位置しており常人では逃げ場がない場所である。つまりは・・・追い詰められたということになる。

 

「間に合うか・・・ん?」

 

と白の片方が青に変色していく。青はアウフヴァッヘン波形の反応を示している。

 

「ということは・・・」

 

俺はついに原作通りに事が動き出したこと、そして響がガングニールに目覚めたことを認識した。

 

「あれは予知夢類とでも言うのかね・・・」

 

ふっと笑いながら俺はノートパソコンをシャットダウンし、残りのケーキを素早く冷蔵庫にしまうと机の上に置かれた赤、黄色、緑の三枚のメダルを手に部屋を出ていく。

 

2年前のコンサートと同じように、守るために

 

立花響の幼馴染にして転生者、陽野 映司として

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