ガラスの天才   作:野獣君

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最終話です。今までありがとうございました!


決意

約束の日。深月は事前にジェームス・カイルから指定された場所へやって来た。そこは全国でも屈指のコンサートホールで、有名劇団やミュージカル集団など数多くの著名人がこの舞台に立ち、パフォーマンスを披露してきた聖地のような場所だ。

 

「やぁ、1週間ぶりだね。ミスターモモヤマ」

 

「…どうも」

 

約束の時間ちょうどに深月を呼び出した張本人ジェームス・カイルが現れた。欧州人らしい白い肌に紺のスーツをお洒落に着こなし、柔和な表情をしていた。

 

「そんなに硬くならないでくれたまえ。もっとリラックスしていこうじゃないか」

 

「前置きはいいです。単刀直入に聞いてくださいよ」

 

「ははは…手厳しいね。じゃあ、早速返事を聞こうか、と言いたいところだが、まずは中に入ろうか」

 

ジェームスに促され、俺はコンサートホールの中に

へ足を踏み入れた。

 

「君は知っているかね?昨年この大ホールで私が主催しているアカデミーの1期生がここでコンサートを開いたのだよ」

 

「ええ、存じています。確か…ドイツかルクセンブルクの人でしたよね」

 

「ああ、ルクセンブルク人のマヌエル・アゲラ。1期生の中ではずば抜けた才能を持っていた。彼も君と同じように早く両親を無くし、孤児院で暮らしながらピアノを弾いていた」

 

「……」

 

「何気なく見に行った地方のコンサートでマヌエルはまだ小さかったが一番壮大なメロディーをホール内に響かせてた。初めてだった、あんな衝撃を受けたのは。それからすぐに私は彼のもとへ行き、スカウトした。彼は戸惑いながらも、二つ返事で受け入れてくれた。それももう、10年前の話だ」

 

「何が言いたいんですか?」

 

「マヌエル・アゲラはもう過去の話ということだよ」

 

「それって、つまり…」

 

「ああ、彼は今年の春に心不全で亡くなった」

 

「……!!」

 

「年を重ねるごとに心臓が弱くなっていったんだ。私は休むよう止めたのだが、彼は聞かなかった。アカデミーの頃から悪い癖だったんだ。彼は自分の大きな才能に気づいてしまったんだ」

 

「そんな事が…」

 

「さて、過去の話はもうおしまいだ。答えを聞こうか、ミスターモモヤマ。君はどうする?」

 

「………」

 

「勿論私はどんな答えになろうと何も言わない。決めるのは君自身なのだから」

 

「俺は……」

 

「あなたと共にオーストリアに飛ぶ」という言葉が喉から出かけたとき、不意につぐみ達の顔が浮かんだ。

 

「………」

 

言葉が出てこない。答えはもう出てるはずなのに。肝心のその一言が出ない。いや、出てくることはないだろう。そんな俺の心情を読み取ったのか、答えを待っていたジェームスはゆっくりと口を開いた。

 

「ミスターモモヤマ、君はおそらくオーストリアに行くことを望んではいないね?」

 

「なぜ、そう思うのですか?」

 

「簡単さ、君の顔を見ればわかる。まだ行くべきではない。こっちでやり残したことがある。君の顔にはそう書いてあると私は思うが、違うかね?」

 

「いえ、間違いではありませんが…」

 

「ふっ…それなら君はこちらに残った方がいい。私としては非常に残念だが、本人の意思を無視するわけにはいかないからね」

 

「すいません、折角お誘い頂いたのに…」

 

「なに、そう謝る必要はないさ。それにまた数年後こちらに伺おうと思ってるからね、そのときに君の成長した姿を見てから改めてスカウトさせてもらうとするよ」

 

「そうですか…。ご期待に答えられるように頑張ります」

 

「さて、私はもう行くとするよ。飛行機の時間も迫ってるし、君の答えも聞けたからね」

 

「ありがとうございました」

 

「それじゃあ、また数年後に会おう」

 

ジェームスは少しだけ軽い足取りでその場を去っていった。残った深月はホールの中心をしばらく見つめた後、去っていった。

 

 

 

~後日~

 

 

「海外行く話あったんだって?」

 

「何で美咲が知ってるんだ?」

 

「つぐみから聞いたんだ。で、どうするの?」

 

「断った。まだやり残したことがあるしな」

 

「そっか。いいなー、深月はやりたいことがあってさ」

 

「美咲だってあるだろ、ハロハピのこととか」

 

「そうだけどさ、ハロハピだって永遠に続く訳じゃないし区切りをつけるってなったときにどうしようかなって」

 

「そのときに見つければいいんじゃないか」

 

「なにそれ」

 

すると、後からつぐみの声が聞こえてきた。

 

「じゃあ、あたしはそろそろ行くね。つぐみとの時間大切にしなよ?」

 

「言われなくてもわかってるさ」

 

 

 

「みーくん、海外行かないってほんと?」

 

「ああ、本当だ」

 

「どうして?あんなに行くって言ってたのに…」

 

「こっちでやり残したことがあるし、それに折角つぐと付き合うことが出来たのにいきなり海外に行ったら寂しいだろ?だから残ることにした」

 

「みーくん…」

 

「だからこれからはさ、二人でたくさんの思い出作っていこうな」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これにてこの小説は終幕となります。色々文章とかおかしかったり、間が空いてしまい読者にはご迷惑をおかけしましたが、無事に終わることが出来て良かったです!また何か別のお話を書いていこうと思いますがそのときにはまたお付き合い頂けるとありがたいです笑
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