季節は5月終わり頃。気圧配置も梅雨型へと切り替わり、晴れより雨の日が多くなった。そして、今日も朝から雨が降っていた。
「うげー、傘持ってかなきゃじゃん」
先週は晴れてたのになと愚痴をこぼしながら寝間着から学校の制服へと着替える。簡単に朝飯を済ませてから家の戸締まりをして幼馴染を迎えに行った。
「おはよう、深月君。つぐを呼んでくるから少し待っててな?」
インターホンを押すと出て来たのはつぐのお父さん(通称つぐパパ)だった。つぐパパは羽沢珈琲店の主人で商店街でも随一の人気者である。やがて、つぐパパの呼び掛けに対し「待って~、今行くから!」というつぐ本人の返答が帰ってきた。
「ごめんな、もう少しで来るからな」
「はい」
いつもは立場が逆でつぐが俺を迎えに来るのだが、今日は珍しく寝坊したらしい。そしてその2分後、準備を終えた本人が慌ただしい様子で玄関から出て来た。
「ごめんみーくん!待ったよね?」
「気にするなって。ほら、行こう。あ、傘持ったか?今日結構降るらしいよ」
「うん!バッチリだ…あ、忘れたかも…」
「…はぁ、仕方ないな。ほら、入れよ」
「あ、ありがとう…」
そこから学校まではつぐと相合い傘をしていきました。因みに傘を忘れた本人はすっごい赤面してました。素直に可愛かったです。
「じゃあ、つぐ。またな」
「うん、放課後ねー」
そう言ってつぐは校舎の中へ消えていった。
俺の学校はここからすぐのところにある。なんでこんなに近いかと言うと、俺の通う羽丘清陵学園とつぐ達アフグロのメンバーが通う羽丘女子学園が系列校だからである。なんなら共学にすれば良いという意見が大多数だが双方の理事長がそれを許さないらしい。
「近いっつってもこの坂があるからキツいんだよな」
ただでさえ転びやすい坂なのに加えて、今日は生憎の雨のため更に転びやすくなっている。いつも立ちこぎで坂を登ってる自転車通学組も今日はおとなしく転がしていた。
俺は学校に着くと早速生徒会室へと足を運んだ。
「おはようございます。大翔さん」
「ああ、深月か。おはよう、朝から仕事か?」
「ええ、朝礼始まる前にこの書類を整理しなければいけないので。大翔さんも仕事ですか?」
「まぁ、そんなところかな」
この人はこの学校の生徒副会長の花崎大翔。俺の中学からの先輩でサッカー部のエースである。イケメンで頭脳明晰でめちゃくちゃモテる所謂すごい人だ。
「ところで深月、お願いがあるんだが」
「なんですか?サッカー部なら入りませんよ」
「それもあるが、今は違うんだ。実はな…今月末にに向こうの女子学園と定期会議を行うんだが、深月も参加してくれるか?」
「構いませんがどうしてですか?」
「定期会議の雰囲気に早く慣れて欲しいんだ。来月から本格的に会議が始まるし」
「具体的にどんなことを話すのですか?」
「そうだな…行事とか学校生活をよりよくするための意見交換とかかな。でも、雰囲気は結構和やかだから安心していいよ」
「わかりました」
「そんじゃ、俺は教室に戻るわ。戸締まりよろしくな」
「はーい」
そう言って先輩は出て行った。残っていた書類は意外にも
量が多く、朝礼ギリギリになってやっと終わった。
昼休み
鞄から弁当箱を取ろうと中を覗いたら何故か俺のともうひとつ弁当箱が入っていた。誰のだろうと疑問に思っているとつぐから電話がかかってきた。
「もしもし、どした?」
「ねぇ、みーくん。みーくんの鞄にさ一つ余分に弁当箱入ってないかな?」
「ああ、あるけどもしかしてつぐの?」
「うん、そうなの!良かったー、家に忘れたかと思ったよー」
「じゃあ、今からそっちに持ってくからさ、校門付近で待ってて」
「あ、いいよ。私がそっちに行くよ」
「いいから、俺が持ってくよ。つぐにあの坂を登らせるわけにはいかないし」
「それじゃあ、待ってるね」
羽丘女子学園校門前
「つぐ!」
「あ、みーくん!ごめんね、私の不注意で…」
「いいって、ほら」
「ありがとう。あ、みーくん今日は先に帰ってて。私やることあるから」
「わかった」
やっぱりあの坂を2往復したのか、戻ったあとの昼飯はいつもより、美味しく感じた。