遂にこの日がやって来た。毎月末に行われる羽丘清陵学園生徒会と羽丘女子学園生徒会による定期会議。今回は三年生の会長が法事のため、欠席となった。よって、副会長の大翔さんが会長の代理を務める。会議は放課後からなので、授業を受けてから会議が行われる羽丘女子学園へと向かう。この事に関して同じクラスや他のクラスの奴等からの妬みが飛んできたが、ほぼ聞き流してたので気にならなかった。
(あ、つぐに連絡入れないと)
LI○Eに今日は一緒に帰れないという旨のメッセージを送る前につぐから連絡が来た。
「あら、つぐも用事か」
了解!というキャラクターのスタンプを送って、携帯を閉まった。
放課後
「遅いぞ、深月」
「すいません、HRが思ったより延びちゃって…」
「これで全員揃ったな。よし、行こうか!」
どうやら俺が最後だったようで他のメンバーは既に集まっていた。生徒会のメンバーは俺を含め5人。今日は会長がいないので、四人で臨むことになる。しかも、一年生は俺だけだ。
「桃山、緊張してるのか?」
「いえ、大丈夫ですよ」
「おい、幸二郎。あまり深月をいじめんなよ?」
「わかってるって。ちょっと気になっただけだよ」
この人は奥沢幸二郎さん。柔道部に所属していて、正にTHE体育系!という感じの人だ。どうやら従妹がバンドをしてるらしく、よく愚痴を聞かされる。
「深月君、何かわからない事があったら何でも聞いてね」
「ありがとうございます。東山さん」
この人は東山充さん。会長と同じ三年生で優しく穏やかな性格をしている。文芸部の部長を務めている。
早速集合場所の羽丘女子学園の会議室に向かうために門を潜ると、女子学園の生徒達からの視線が飛んでくる。それもそうだろう。こんな個性の強いメンバーが四人もいるのだから。
慣れない視線に困惑してるうちに集合場所の会議室に着いた。
「結構広いですね…」
「そうだね、うちにはこんな場所無いから桃山君にとっては新鮮に感じるかもね…」
「桃山ももうすぐわかるぞ。直にここに来るのが嫌になってくるのを…」
「幸二郎、あんま深月にプレッシャーかけんな。今日は会長がいないだけラッキーと思った方がいい。先方が来るまで俺らは座って待機してよう」
それから5分程で女子学園の生徒会と思われる人達が入ってきた。だが、その中に深月のよく知っている人物がいた。
(え、つぐ!?なんでここに!?)
(みーくん!?どうして!?)
反対につぐみも深月がいることに関して驚きを隠せなかった。それに気づいたのか、大翔が深月に話しかける。
「深月、どうかしたか?」
「いえ!なんでもありません!」
「そうか?なら、いいんだが…」
「そちらの方は大丈夫ですか?」
女子学園の生徒会長らしき人が尋ねてくる。それに対して大翔が答える。
「ええ、大丈夫ですよ。時間も押しているのでそろそろ始めませんか?」
「わかりました。えーこれより、羽丘清陵学園と羽丘女子学園の定期会議を始めます。まずは、新入生の自己紹介から行きましょうか。言い出しっぺなので私達からでも、構いませんか?」
「ええ、構いませんよ」
女子学園の新入生は3人。一人ずつ無難に終えていき、最後はつぐみの番だった。
「羽沢つぐみです!よろしくお願いします!」
声は元気だったが、視線はやはり深月の方に向いていた。
「では次はこちらの番ですね。深月」
「は、はい!桃山深月、一年です。よろしくお願いいたします」
自己紹介を終えると、何やら女子学園サイドが騒がしくやがて一人の女子生徒が俺に聞いてきた。
「あのー、もしかしてあの桃山深月さんですか?昔、国内外でピアノで活躍していた」
一瞬深月の顔が強張ったのをつぐみは見逃さなかった。その後笑いながら
「人違いですよ。自分にはそんな才能はありません」
と答えた。深月的には上手く誤魔化せたか不安だったが女子生徒の方は「あぁ、そうですか」とあっさり引き下がった。
その後は議題となっていた体育祭と文化祭の双方の協力については何の障害もなくすんなり話が纏まり、定期会議は無事終了した。
先輩達とは校門付近で別れ、帰ろうとしたところちょうどつぐみと出くわしてしまった。とりあえず一緒に帰っているが今日の一件があったせいで互いに何を話せばいいのかわからなくなっていたが、この気まずい空気が嫌だったので深月の方から話を振った。
「つぐも生徒会だったんだな。びっくりしたよ」
「私も…まさかみーくんがいるとは思わなかったな…」
「「………」」
再び二人とも黙り込んでしまった。いつもは話が絶えない二人なのに今日は一段と静かだった。しかし、つぐみがある事について謝罪した。
「ごめんね、みーくん。さっきの…あの…昔のこと…」
「ああ、大丈夫だよ。俺は全然気にしてないから」
「でも…」
「大丈夫だから。俺はもう大丈夫。つぐが気に病むことはないよ」
つぐみにはわかっていた。彼が嘘を吐いていることを。本当は大丈夫じゃないことを。でも言えなかった。だから、彼女は深月に聞こえないように彼の背中に小さく呟いた。
「嘘」と。