理想の果てに   作:災厄被害者担当 ティールウルフ

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冬休み明けへ向けて連投。

AGIの記載&<UBM>の討伐報酬を修正しました~


第7話

 □王都アルテア 【槍士】グレン

 

 

 

 

 ログインするとそこはデスペナルティになった<サウダ山道>とは違う場所、初めてログインした王都の噴水前だった。

 俺が唯一登録してあるセーブポイントだから当たり前ではあるのだが。

 左手の甲に張り付いた鎧を着た女神の紋章を軽くノックする。

 すると紋章から光の粒が集まり、人の形を象っていく。

 

 

 「なんだよマスター。そんなに私に会いたかったのか?」

 

 「……いや、別にずっと出てこなくてもいいぞ? むしろノックで出てきたお前にびっくりしてるよ」

 

 

 出てきたアナは初めて会った時のような姿ではない。

 金髪を後ろで一つに纏め、身軽そうなファンキー風の服装をした普段着、俺がこの前買ってやった服だ。

 見るのは一日ぶりのはずだが、変に久しぶりに感じる。

 こうして見ると意外と似合っている気がしないでもない。

 

 

 「もしかして私に見惚れてるのか!?」

 

 「……残念ながらお子様は恋愛対象外だ」

 

 「はぁ? ぶっ飛ばすぞ、マスター」

 

 「……何でそこでキレんだよ。意味が分からん」

 

 

 やっぱりアナの考えてる事はよくわからん。

 だが少し以外でもある。

 孵化して一日目にしていきなりのデスペナルティだ。その上、鎧も所々派手に破損させてしまった。

 ログインと同時に文句を言われるか、もしくはぐずぐず泣き出す重い女になるかと思ったが。

 

 

 「……結構元気だな。意外とメンタル強いのか?」

 

 「はぁ……何いってんだよマスター。私たちはやり遂げて死んだんだ、悔いはあっても落ち込みはしねぇーよ。

  それに終わったことをずるずる引きずるのは私には似合わねぇぜ」

 

 

 ああ、その通りだ。アナの言う通りである。

 悔いはある、力足らずを身をもって体験した。

 だが後悔はしていない、何と言っても後悔しない道を選んだのだから。

 考えるべきは次だ。

 それをわかってるアナは俺よりはるかに強いのかもしれない。その事に思わず笑みを浮かべる。

 

 

 「……よし、約束通り飯に行くか」

 

 「カレー! 私は激辛カレーがいいぞ!」

 

 「……時間的には朝食だが、まぁいいか」

 

 

 俺の言葉にご機嫌なアナは鼻歌を歌いながら何処ともなく歩き出す。

 きっとその鼻で臭いでも《探査》しているのだろう、足取りに一切の迷いもない。

 俺はその後に続くように歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 「それで、これから……ンぐ、どうするんだ?」

 

 「……ほんとにお前はいきなりだよな。あと食いながら喋るな」

 

 

 必死にカレーを頬張りながら喋りかけてくるアナ。

 口の周りにべっとりついたカレーにため息を吐きながら、紙ナプキンを投げ渡す。

 ……なんだかデジャヴだ。

 昨日もこうして食事をしていた気がする。

 この流れだとまた<UBM>と遭遇したように面倒ごとに直面する、というのは気のせいだろう。

 けっしてフリではないはずだ。

 

 

 「ンぐ……ッぷはぁ! それでどうするんだ?」

 

 

 食べ終わったアナが再度尋ねる。

 

 

 「……まずは『槍士ギルド』で昨日報告できなかったクエストの報告かな。

  後は【群狼王 ロボータ】の討伐報酬を貰ってその金で新しい武器とアイテムを買う。

  あー、あと【槍士】もカンストしてるからな。二つ目のジョブも決めなきゃなんねぇか」

 

 「はぁ? 昨日の呪われた十字槍はどうしたんだよ?」

 

 「……ログインして確かめたけど手持ちに無かった」

 

 

 昨日の……この世界で三日前の【群狼王 ロボータ】との戦闘で活躍した十字槍。

 一時的に使ったものの、やはり正式に譲り受けたわけでは無いので元の持ち主の元に帰ったのだろう。

 この場合だと俺にクエストを依頼したギルバード商行団の男のものだ。《強奪》か《窃盗》スキルでもあれば違ったかもしれないが。

 正直、未練もあるが無いものねだりはしょうがない。

 

 因みに【槍士】のジョブもログインして確認するとカンストしていた。

 おかげでAGIは1250を超えていたが、まだ取り切れていないスキルもきっとあるのでしばらくはジョブクエストを受けなければならないだろう。

 

 

 「そう言えば<UBM>を倒すと特典武具って言うのが貰えるんだろ? どんなのか確認はしたのか、マスター?」

 

 「……忘れてたな」

 

 

 アナに促されるようにアイテムボックスから目当てのものを探す。

 確か、【黒狼肩甲 ロボータ】とかいうアイテムだったはずだが……。

 

 

 「……あった、これだ」

 

 

 取り出すと同時に装備する。

 それは名前通りの方から二の腕にかけての肩当だった。

 肩当自体はロボータの毛と同じで黒一色、左肩だけには狼の頭を形どった装飾が付いていて赤い目が輝いている。

 うん、正直カッコイイ。

 それにアナを装備しているときと同じく柔らかい、金属というよりは毛皮に近いのだろう。

 アイテムとしての効果も以下の通り。

 

 

 

 【黒狼肩甲 ロボータ】

 <逸話級武具(エピローグアームズ)

 群れを率いし憤怒の巨黒狼を具現化した逸品。

 装着者の膂力を増強すると共に、武具を支配する権力そのものを刻み込む。

 ※譲渡・売却不可アイテム

 ※装備レベル制限なし

 

 ・装備補正

 STR+20%

AGI+30%

 防御力+100

 

 ・装備スキル

 《従属強化》

 《武装一身》

 

 

 

 「……これは。二日目にしてアナはいらない子かぁ」

 

 「おい! ふざけるな、目の前で浮気しようなんてそうはいかないぞ!」

 

 「……おい、発言に気をつけろ。それじゃあまるで俺が悪い奴みたいに周りに聞こえてしまうだろ」

 

 

 店内でアナが叫んだので視線が痛い。

 いくつかは俺ではなく、俺の装備している特典武具の方に向いているようだが……。

 【黒狼肩甲 ロボータ】をアイテムボックスにしまい込み、席を立つ。

 アナはマジ切れしているが無視だ。

 素早く会計へと足を進める。

 

 

 「お会計は9650リルとなります~」

 

 「……おっふ」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 あれから俺たちは『槍士ギルド』でクエスト報告と【群狼王 ロボータ】の討伐報告を済ませ、王都の中心にあるセーブポイント近くのカフェでくつろいでいた。

 ジョブクエストは10000リル近く稼ぐことが出来ていた上、ジョブクエストでしかとる事の出来ないスキルも多少取ることが出来た。

 加えて【群狼王 ロボータ】の討伐報酬が80万リル。

 

 

 「……しばらくは遊んで暮らせるなぁ」

 

 「そうだなー、これなら<天上三ツ星亭>にも行けちゃうぜぇー」

 

 

 ……は? 行かないぞ?

 何を言っているんだこいつは。

 しかし実際80万リルは大金である。

 これなら新しい槍もかなりいいものを買うことが出来る……と意気込んでいたのだが、それも必要なくなってしまった。

 

 クエストの報告に行った際、イベントクエストの達成報酬ももらえるらしくギルバード商行団を尋ねたらいくつかのアイテムを貰えてしまったのだ。

 具体的に行ってしまえば、あの呪われた十字槍【鮮血無槍】である。正直、無理やり押し付けられた感は否めないが断る理由も無い。呪いは解呪はしていなかったがありがたくもらい受けた。

 加えて、俺に依頼をしたのが【大商人】であるギルバードさん本人だったらしく【適性診断カタログ】という結構高値のアイテムも付けてくれた。

 赤ん坊一人しか救えなかったこちらとしては逆に申し訳なく感じてしまった……が、ありがたくもらい受けた。

 お金はあるには越したことはないのである。

 

 

 「……まぁ、予備の武器と高性能なアイテムポーチ、後は【鮮血無槍】の呪いの解呪で粗方使い切ってしまうか」

 

 「マスターは意外と金遣い粗いよな」

 

 「……必要経費と言え、必要経費と」

 

 

 金の使いみちは決まった、今後の方針も凡用スキルの取得&レベル上げで問題ない。

 問題は、

 

 

 「……次のジョブをどうするかだな」

 

 

 これこそが問題だ。

 ジョブの決定は将来性を決める事でもある、とネットに書いてあったぐらいだ。<エンブリオ>もジョブの影響を受ける事があるらしいので馬鹿にはできない。

 実際、始めたばかりでも下級職ならば就ける職は100以上存在する。

 【槍士】に就いたのは間違ってはいなかったと思うが、これからはよく考えて何に就くか決めなくてはならない。

 

 

 「……アナはどれが良いと思う?」

 

 「そんなの上級職に決まってるだろ。私はこの【鎧巨人(フルアーマー・ジャイアント)】ってのがいいと思うぜ、何だか私に合ってる気がする!」

 

 

 自信満々に言い放つアナ。

 確かに【鎧巨人】は数少ない転職条件を満たしている上位職ではあるが。

 

 (可哀そうに……)

 

 残念ながら名前とは裏腹にアナには合わないジョブである。

 【鎧巨人】はたしか、鎧自体の防御力を元に防御力を上げるジョブ。アナの様に<エンブリオ>のスキルとステータス補正で防御力を上げているタイプでは……。

 

 

 「……」

 

 「な、なんだよ! 文句あるのか!」

 

 「……まぁ、よく考えてからにしよう」

 

 

 暖かな視線を送りつつ、【適性診断カタログ】へと目を移す。

 しかしできれば今の俺達の弱点を防ぐことのできるジョブに就きたい。

 では、俺たちに足りないものとは何か?

 

 

 「足りないもの……防御力だな!」

 

 

 ナチュラルに心を読んできたアナだが、実際的をえている。

 アナの<エンブリオ>としてのENDのステータス補正は高めなものの、【槍士】だったので大して上がっていない。

 前回の様に自身より弱いモンスターの攻撃をちまちま受けて、防御力を上げる手段も一対一では使えない。

 敵の攻撃を耐えることが出来ればある程度の勝ち目が見えてくるというものだ。

 

 

 「……防御力っていうなら【騎士(ナイト)】、もしくはその上級職である【聖騎士(パラディン)】、【大騎士(グレイト・ナイト)】辺りが有力だけど……やっぱり無理だな」

 

 

 【聖騎士】には《聖騎士の加護》というダメージ軽減のパッシブスキルがあり、アルター王国でしか就けないジョブなので人気がある。

 だがアナのスキルはジョブによるダメージ軽減も上乗せできるわけではない。この場合は上乗せのダメージも減ってしまうだろう。

 【大騎士】はダメージ軽減スキルがない代わりに、STRも多少伸びがいい。だけど転職条件に【騎士】のカンストが含まれていたので却下だ。

 

 

 「じゃあ【槍士】系統は? 防御力はいっそ捨ててしまえばいいんじゃないか?」

 

 「……それ、お前自身の存在価値を否定してないか?」

 

 

 今更気が付いたのか焦った顔をする。

 本当に頭の弱い子である。

 しかし就きたいジョブはあらかた決まった。

 

 

 「……よし、闘士(グラディエーター)系統のジョブにするか」

 

 「え? 何でだ?」

 

 「……闘士系統のジョブは装備枠を増やすことができるんだよ。せっかくの特典武具もこのままじゃ装備出来ないしな」

 

 「え? 装備なんて私だけで充分だろ?」

 

 「……え?」

 

 「「……」」

 

 

 何だこの気まずい雰囲気は。

 まさか本当に“防具は自分だけで充分だ”とか思っていたりしたのだろうか。

 所持スキル一つの上、防御力は紙同然。挙句の果てに装備枠を四つも埋める糞鎧なのに?

 涙目のアナに優しく笑いかけながら慰める。

 

 

 「……嘘だよ。アナは鎧っていうよりパワードスーツだからな、装備枠を増やした方が効率的っていう話だよ」

 

 「そっ、そうだよな! その通りだよな!

  ロボータを倒せたのも私のアシストあってのものだしな!」

 

 

 ……ちょろいなー、なんて言葉は決して口には出さない。

 しかしやはり、装備枠を増やすのは俺たちにとっては必須だ。闘士系統の下級職をカンストさせた後は、気長に他の国を回りながら独自のジョブを見付ける旅にでも出れば噛み合ったも見つかるだろう。

 

 

 「……よし、そうと決まれば早速行くか」

 

 「行くってどこにだよ」

 

 

 そんなの決まっている。

 闘士系統に就けるのは闘技場にあるジョブクリスタルからのみ。

 そしてアルター王国で闘技場といえば一つしかありはしない。

 

 

 「……“決闘都市”ギデオンだよ」

 

 

 まだまだ旅は始まったばかりなのであった。




【黒狼肩甲 ロボータ】
 <逸話級武具(エピローグアームズ)
 群れを率いし憤怒の巨黒狼を具現化した逸品。
 装着者の膂力を増強すると共に、武具を支配する権力そのものを刻み込む。
 ※譲渡・売却不可アイテム
 ※装備レベル制限なし

 ・装備補正
 STR+20%
AGI+30%
 防御力+100

 ・装備スキル
 《従属強化》
  装着者の従魔キャパシティ+500
  従魔の全ステータスを+30%
 
 《武装一身》
  装着者の装備した装備一つの能力を+30%引き上げる。
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