また懲りずに新しいものを書いてしまいました!!
構想、及び執筆に5ヶ月。
さっさと蒼白コントラスト書けってんだよって思ってる方マジすんません。
今から何億・・・神代の遥か前、火の時代と呼ばれる時代があった。
最初の火が見出され、熱さと冷たさ、光と闇、生と死がそこで生まれた。
そして闇から生まれたモノたちは、生命の源たるソウルより王のソウルを見出した。
そして王のソウルを得た彼らは、支配者たる古龍を根絶し火の時代を繁栄させた。
だが全ての根幹を担う最初の火が消えかかり、人々に不死の呪いの証『ダークリング』が現れ始め、不死人となった。
王は世界に再度光を戻すため自らを薪とし、その火を延命させた。
そして再度、その火が衰えた頃最初の火を継ぐモノを見出す
そうして火を継いだ王達を殺して回り、王の薪を携えて、最初の火を継いだのです。
何度も。
鐘が鳴る度に火の無き灰は棺から蘇り、火継ぎの旅に出る。
そうして火を継げば、また棺から始まる。
無限に繰り返される火継ぎの旅、それに終止符を打ったのは今までとは違う、たった一つの選択だった。
火継ぎが終わり、最初の火が消え使命も終わり。
火防女もその役目から解き放たれたとき、火の無き灰の役割もそこで終わる。
役割から解放され、薄れゆく意識の中に、火の無き灰は確かに火の時代の終わりを見た。
そして、目覚める事などないと思っていた火の無き灰は、その重い目を開け・・・
「え・・・」
唖然とする一人の女性と目が合った。
「え、なんで。貴方の様な方がここに・・・」
驚愕に目を見開き、疑問を浮かべる女性。
だがそれは火の無き灰も同じだった。
永劫に続く火継ぎの使命を、無理矢理に終わらせ、世界を闇に落としてみれば、我前に広がるのは真っ白の明るい空間。自らの視界が闇に閉ざされ、傍らに寄り添っていた火防女の感覚も消え失せたのを感じ取れたのだ。
この空間自体、火の無き灰にとっては驚愕だった。
そしてそれは、目の前の女性・・・女神エリスにとっても驚愕するに値する、否それ以上の出来事だった。
エリスにとって彼は、目の前にいる存在は神々が生まれるずっと前の世界を維持し続けて居た神をも超える存在。
火が継がれている限り、彼の魂は永劫の時を火の時代に囚われ続けている筈なのだから。
そんな目の前の彼は、右手を開いたり閉じたりして調子を確認していた。
「ふむ、
「ここは神々が死者を導く天界です、火の英雄様。」
そう言いながら跪く女神エリス。
神代の神々より最古の、神すら上回っていた薪の王を殺して回り、何度も最初の火を維持し続けた最古の英雄。
女神だろうが、エリスとの力関係は明白だった。
だが、
「良い、
「で、では何故ここに?本来であれば来れる場所では無いはずなのですが。」
「さあな。火継ぎの使命も無理矢理終わらせ、世界を闇へと導いたんだ。死んだ扱いにでもなったんではないか?」
状況が分からない為何とも言えないのだが、とりあえずはエリスもそれで納得したらしい。
業務通り、この空間へと来たものに対しての対応をする。
「本来であれば、貴方様のような方は死者足りえないのですが。まあそれはこの空間に来た段階で省略されます。そして転生して記憶も何もかもまっさらとなって赤子となるか、天国のような場所で平凡で何にもない、使命も何もないところに送られるかの二つの選択肢があるはずなのですが・・・」
「それが選べないのは
「はい・・・」
そうエリスは頷く。
火の無き灰のような不死人達が体のどこかにあるダークリング、これこそが呪いの証である。
これが現れたモノは死んでも感情や記憶、理性や人間性を犠牲にして蘇る。
死ぬたびに精神が摩耗し、いつの日か亡者と成り果てる呪いだ。
解呪することは不可能な為、永遠に不死人のままだ。
そしてこのダークリングこそが、転生などをすることが出来ない理由だ。
ダークリングは肉体と魂の結びつきを強め、死してなおもその肉体から魂が離れることはない。
そして魂が滅びることがなく、それに従い肉体も滅びることがなくなるのだ。
摩耗する魂と精神は別として。
「貴方様に許された選択肢はただ一つ、その肉体のまま転移していただく他ありません。当然呪いもそのままです。」
「まあだろうな、それでこそ不死人だろうさ。」
苦笑いを浮かべ、肩を竦める火の無き灰。
その様にエリスは申し訳なさを浮かべるも、気を取り直して口を開く。
「最後に、転生するにあたって1つだけ。向こうの世界へと持っていける特典を授ける事になっているのですが、何に致しますか?望むなら一撃で倒せる剣から、身体能力が上がるスキルまで。いろいろありますが。」
「篝火だ、自由にどこでも設置したり撤去できる篝火さえあれば良い。」
エリスの問いに、間髪入れずに即答した火の無き灰。
篝火とは不死人の故郷とも言えるものだ。
それに触れれば全ての傷は癒え、篝火どうしの転移すらも可能とするのだ。
「承りました、では・・・」
「まて。」
エリスの言葉を手で制しながら、一歩前に進み火の無き灰は口を開く。
「大事なことを聞いていなかった。」
「はい、何でしょう。」
「今まで
火の無き灰は、自身にとって最も大事なことを聞いた。
そう肉体強化、簡単にいえばレベルアップだ。
転移先の世界では経験値とやらを入手すれば自動的に上がるらしいのだが、生憎と不死人はそうはいかない。
レベルが上がるのは人間だからだ、呪われた不死である火の無き灰にそのようなことは出来ない。
故に外部からあげる必要があるのだが・・・
「それについては心配要りません、火防女の代わりは私…女神エリスが努めます。」
「お前がか?」
「正確には、これを用いてですけどね。」
そう言って取り出したのは、白く澱んだモノ。
だがそれは、エリスが持っているはずがないもの。
火の無き灰ですら、誰のものか分かっても手にしたことはないのだから。
その穢れ無き澱みは、かつて火の無き灰を支え続けた火守女のもの。
それは・・・
「穢れ無き火守女の魂・・・これでなんとかなるでしょう。」
「これは、アイツの・・・そうか、それなら安心だ。」
そう口に笑みを浮かべ、火の無き灰は頷き跪いた。
それを見たエリスは、そのまま右手を火の無き灰にかざす。
「火の英雄様・・・貴方に祝福があらん事を。」
そう言ってかざした手から溢れ出る光に包まれ、火の無き灰は姿を消した。
ーーーー△ーーーー
光が完全に消え、火の無き灰はその眼を開いた。
するとそこは先程まで居た真っ白の空間ではなく、澄み切った青空の下に広がる赤レンガの町並みが広がっており、それはどこかしらあの世界を彷彿とさせるが確かに自分が異なる世界へと来たことを実感させる。
火の無き灰は人通りが全くない裏路地から、大通りを見つめつつ自分の体を確認する。
自身の体は、なんの違和感もなく最初の火を消した当時そのままであることが分かる。
着ている防具にも違和感は何もなく、常に身につけていたファランの大剣もその背にあった。
「ふむ、問題なしか。」
自身のソウル内にしまっていた武具も取り出せることを確認した火の無き灰は不意に、自身の胸に小さな紙切れが挟まっているのに気付きそれを開く。
『まずは冒険者ギルドへ』
そう書かれた紙が、一枚の金貨と共にあった。
「粋な計らいだな、大抵は無一文で放り出すのだがな。」
火の無き灰が
十分良心的と言えよう。
「さて、行くか。」
そう言って影に紛れていた火の無き灰は、その姿を大通りへと曝け出し歩き出した。
ーーーー△ーーーー
冒険者の街アクセル
それがこの街の名であり、冒険者になって日が浅い初心者が集う通称駆け出し冒険者の街とも呼ばれている。
円形の城壁が囲むこの街で、街の中心にあるギルドからクエストを受けて街の外へ出向き、モンスターを狩るなどして報酬を得ているのが冒険者だ。指定モンスターの討伐の他、採集や捕獲、緊急クエストなどがあり、日々世界を脅かしていたりするモンスターに対処している。その最たるが魔王であり、冒険者が倒すべき明確な敵である。
そして冒険者とは、冒険者ギルドに所属し冒険者として活動するもののことを指す。そしてその冒険者になるには冒険者ギルドに所属する必要がある。
「ここか・・・活気があるな。」
大通りを真っ直ぐ進んだところに、他の建物よりも目立つ外見の建物があった。
ギルドの紋章が看板に焼き付けてあったため、簡単にわかる。
何よりもその建物の前に装備を固めている人間が多々居た為、この建物だという確信が簡単に持てた。
「いらっしゃいませ!お仕事の案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いているお席へお座りくださ・・・い。」
すぐ近くを通ってきた赤毛の女性が、火の無き灰の姿を見るなり途端に固まる。
冒険者でも、冒険者登録に来たものでも。火の無き灰のような隙間のない全身鎧姿で来るものなど、普通は居ないのだ。
現に酒場に座っている冒険者も鎧や防具等は付けていても、そのほとんどがプレートアーマーやドレスアーマー、レザーアーマーなのだから。
だが
そんな喧騒を横目に、火の無き灰は確かな足取りで受付へと進む。
「こんにちは、今日はご依頼ですか?」
「いや、冒険者というものになりたいのだが。」
「冒険者志望の方でしたか、では冒険者登録料として1000エリスを頂きますが・・・よろしいですか?」
それを聞いて火の無き灰は少し固まった。
何しろエリスなんて単位を聞いたことがなかったからだ。
だが、女神エリスが知らぬ間に鎧に挟んでいた金貨の存在を思い出し、カウンターへと置いた。
「1000エリスとはこれでいいのか?」
「あ、はい。1000エリスちょうどですね。少々お待ちください。」
そう言うと受付の女性は奥へと歩いていき、しばらくして数枚の書類とカードを持って戻ってきた。
「それではまず、この冒険者カードについて説明しますね。」
火の無き灰に一見ボロボロに見えるカードと、数枚の書類を手に持ちながら口を開く。
「これは冒険者が冒険者足り得る為のカードで、身分を証明する役割も持っていて、このカードがなければ
「なかなかに便利なものだな。」
そう言いながら女性が手に持っているカードを眺める。
ただの紙切れにしか見えないが、とてつもない性能を秘めていた。
「そしてレベルについてですが、全ての生物には
そう言って差し出した書類を受け取り、眺めた火の無き灰はまたしても固まった。
その書類に書くべきものは自分の名前、身長、体重、年齢、身体的特徴・・・
自分の名前は摩耗して分からない、身長と体重はまあ自分の体が故に分かる。
年齢は・・・そもそも生まれてから何度も死に、何度も蘇っているのだ。正確な年齢など把握しているはずがない。
身体的特徴は、不死などと言えるわけがない。
そこで火の無き灰は、取り敢えず怪しまれなない範囲で適当に書くことにした。
「はい、アッシュ様ですね。では次にこちらの水晶に手をかざしていただけますか?」
書類を受け取った受付嬢は、カウンターに置かれた水晶に冒険者カードを差込んだ。
うっすらと水色に輝くそれには、アッシュには皆目検討もつかない何かが取り付けられている。
アッシュは特に何も言わずに水晶に手をかざすと、水晶はひとりでに輝きだし、カードにレーザーで文字を記していく。
そしてステータス欄に移ったところで・・・
「あら、これはすごいですね。」
受付嬢が少しだけテンションを上げて生成途中の冒険者カードを見ていた。
アッシュも気になり、未だ生成されている途中のカードを見るために乗り出す。
「すごいですね、全ステータスが平均を大幅に超えてます。これなら割とどんな職業にもなれますよ。上位職であるソードマスター、アークプリースト、アークウィザード、クルセイダーはもちろん、希少職である
少々小声ながらも、その興奮を隠しきれないように捲し立てる受付嬢。
小声なのは周りに居る冒険者に情報が流れないようにという配慮だろう。
冒険者というものはステータスによって自分がなれる職業が決まる。
そしてその選択肢から自分に合った職業を選ぶのだ。
アッシュは何か一つを極めると言うことは向いていない為、魔法や剣を極める上位職は除かれる。
そうなれば必然的に、多方面へと手を出せる・・・
「では、
狩人に決まったのだった。
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「これで冒険者登録の全ての過程が終了しました。今この時をもって、貴方は当ギルド所属の冒険者です。職員一同貴方様のお力になれるよう全力でご協力致します。アッシュ様。」
「なら早速だが依頼を受けさせてくれ、さっきの手数料が全財産だったんでな。できれば討伐系が望ましい。」
「かしこまりました、ではこちらはいかがですか?」
そう言いながらカウンターの隣にある掲示板に張り出されている1枚の紙を引き剥がすと、アッシュへと提示する。
登録したてで討伐系の依頼は数件しか無いため、早々に見つかったようだ。
そして同時にモンスターリストと書かれた本を開き、モンスターの挿絵が入ったページを開いてカウンターへと置く。
「3日間でジャイアントトードー3匹の討伐です。3日以内であれば何匹倒そうが報告した段階で討伐数による報酬上乗せにより達成できます。1日目や2日目に報告することもできます。生息地もこの街から結構近いですし、初心者にはよくおすすめするクエストですね。」
ジャイアントトードー
モンスターリストによれば四足歩行の巨大な怪物で、普段は刺激しなければ温厚だが、繁殖期になると長い舌で家畜や人を丸呑みにするため繁殖期前に狩る有害生物として書かれている。
だが・・・
「トードー・・・そうかカエルか。」
トードーと聞き、顔を顰めるアッシュ。
彼の頭の中では、自身の体ほどのカエルが浴び続けると即死する煙を出してくるシーンが再生されていた。
「このジャイアントトードーとやらは、何か特殊な行動はするのか?」
「・・・?いえ、長い舌で捕食行動をする以外には、打撃攻撃が効き辛い点しか報告はされていませんね。」
「そうか、ならいい。それで頼む。」
受付嬢の言葉に安堵したアッシュは、この依頼を受けることにした。
彼の言葉を聞いた受付嬢は、一応
「では、何人で参加されますか?」
「1人だが、何か問題でもあるのか?」
「アハハ・・・やはりそうですか。」
その返答に、わかっていたかのように乾いた笑いを浮かべる受付嬢。
周りに誰も連れずにやって来ている時点で察していたのだが、本人が言うことで確信してしまった。
「オイオイあんちゃん、流石にソロはやめとけって。いくら素質が高かろうと、初めての討伐クエストでそれは自殺行為だぞ?」
「そうよ、なんなら私達のパーティーと一緒に行かない?狩りについて優しく教えてあげるわよ?」
ソロで行こうとするアッシュを、周りの冒険者達は口を揃えて止めてくる。
初討伐クエストでソロというのは大変危険で、ましてや冒険者登録を済ませたばかりの新人が選ぶ事ではないのだ。
何が起きるか分からないからこそパーティーを組み、1人で対処出来ないことのフォローをするのが定例だ。
素質が高いと言われて舞い上がり、ソロで討伐クエストに行って初日に死んだ新人冒険者が何人も居るのだ。
故に彼らも二の舞にはなって欲しくないと善意で止めるのだが・・・
「気持ちは嬉しいが、ソロで大丈夫だ。この街ではないが、こういった獲物を狩るのは初めてではないのでな。」
そう言って、アッシュは口々にパーティーを勧めてくる冒険者達に断りを入れて受付嬢に向き直った。
「ではアッシュ様お1人での受注ですね。決して死なないいようにお願いします。では冒険者カードをお出しください、発注致します。」
受付嬢はアッシュから受け取ったカードを、先ほどとは別の水晶へとかざすと、何やら操作してからカードを返却した。
「準備が出来ました。ジャイアントトードーの生息地があるのは正門を出た西の草原地帯です、このギルドから真っ直ぐ進んだ先ですね。ではご武運を、アッシュ様。」
にっこりと微笑んだ受付嬢に軽く頷いたアッシュは、そのままギルドを出て行った。
『あの騎士かっけー・・・』
『カズマ・・・何やってんの?』
ギルドを出るときにアッシュを熱の篭った視線で見つめてくる少年と、それを冷ややかな目で見ている少女と入れ違いになったがそれはまた別の話。
ーーーー△ーーーー
街から少し離れた草原地帯にて、アッシュは息を殺すようにしゃがんで岩陰に隠れていた。
その岩から覗く視線の先には遠くから見ても分かる、どう見ても巨大な緑色カエルがそこには居た。
自身の身長の倍以上あるそのカエルは、見たことあるものよりもずっと巨大で、狩りごたえがありそうであった。
だがいくら陰に隠れてても、倒すことなど出来やしない。
故にアッシュは、1つ敵の強さを測る事をしながら一気に倒すことにした。
不死人が最も得意とする方法で。
故にアッシュは武器を構えて姿を見せた。
アッシュの姿を見つけたジャイアントトードーはアッシュへとゆっくりと確実に近づいてくる。
ジャイアントトードーはかなりの巨体のようで、跳ねるその移動で地面がかなり揺れる。
そしてジャイアントトードーはアッシュの目前で止まった。
まん丸の球体のような目でアッシュを見つめたまま動かないジャイアントトードーを、これまた動かないアッシュが見つめ返す。
そして突然に開いた口から、長い舌がアッシュに向かって伸びてきた。
カエルはその長い舌を瞬時に伸ばし、獲物を捕食する。
その速さは大きくなろうと、いや大きくなったからこそ小さいカエルとは比べ物にならないほどに速い。
その舌を鞭のようにしならせ、獲物に巻きつけて捕食する。
ジャイアントトードーにとってはいつもどおりの食事だったのだろう。
アッシュに向けてその長い舌が飛んで行く
そして彼に当たる直前に、彼が左手に持つ短刀で弾かれーーー
その刹那無防備に開いたその口目掛けて、彼が右手に持つ大剣が無慈悲にも口内に叩きつけられ・・・
衝撃と重さでズタズタになり大量の血を吹き出すその口にもう一度大剣が叩きつけられて、ジャイアントトードーは口が2つに割れて絶命した。
「ん、案外いけるな。これなら楽に狩れるか。」
ジャイアントトードーの返り血を多分に浴びながら、笑みを浮かべるアッシュ。
即死する呪われた霧を噴き出してくる
「・・・ほう、これは。」
その時、彼の周囲の地面がボコボコと次々に膨れ上がり、何匹ものジャイアントトードーが姿を現した。
そしてあっという間に囲まれてしまった。
不死人にとって1対多数は非常に不利、故にアッシュは瞬時に取り出した誘い頭蓋を1体のジャイアントトードーの足元へ投げて一気に距離を取った。
「ふむ、この距離なら行けるだろう。」
そう言ってアッシュは、宮廷魔術師の杖と呼ばれる魔法杖を取り出してとある魔術を唱えた。
『ソウルの奔流』
先端に青白い魔力の塊が浮かび、徐々にその大きさを増していく。
そして誘い頭蓋の効果範囲に群がっているジャイアントトードーへ向かって、その魔力の塊は極太のレーザーとなって襲いかかった。
それは重なっていたりと射線上に居る全てのジャイアントトードーの腹を食い破りながら突き進んでいく。
当然のように腹に大穴が開けば、いくらモンスターといえど即死である。
「これは楽だ。少しの間、俺の懐を暖める役に立ってくれよ?」
このあとアッシュが飽きるまで、誘い頭蓋で誘き出してはソウルの奔流を唱え続けた。
ーーーー△ーーーー
「はぁ・・・こんなものか。」
持っていたエストの灰瓶を全て使いきり、魔術が撃てなくなりそうな当たりで湧き出てきていたジャイアントトードーが打ち止めとなった。
最後の1体を作業同然にパリィスタブで片付け、ようやく武器を背負うことができた。
彼の周りには乱雑する壁のように横たわるジャイアントトードーの死体が山のように積み重なり、その足元をかなりの量の血が水溜りよろしく溜まってぬかるんでいる。
もう既に日は沈み始めているが、何匹狩ったかなど覚えていない。
だがかなりの数を狩ったことは確かで、結構な量のソウルがアッシュに流れ込んでいる。
「さて、何エリスになるか楽しみだ。」
ジャイアントトードーが湧いて出てこなくなるまで狩り尽くしたアッシュは、来た道を戻り帰って行った。
ーーーー△ーーーー
「いらっしゃいませ!お食事のかたはーーーってアッシュさん、お帰りなさい!」
ギルド職員の女性が入口付近でアッシュを出迎え、それを聞いた他の冒険者も続々とアッシュの周りに集まってくる。
「無事に帰って来れたみたいだな、よかったぜあんちゃん。」
「その様子だと無事に狩れたみたいね、初めてで上手くいくのってなかなかないことなのよ?」
皆口を揃えて安堵の言葉や安心したといったように声を掛けてくる。
ソロで行ったアッシュのクエストの行く末が気になり、こうして帰ってくるまで律儀に待っていたのである。
「戦果は上々。パーティの誘いを断って悪かったな。」
「いいのよ別に、死ななかったのなら何も言わないわ。」
「そうか、礼を言う。」
声を掛けてくる冒険者達と会話をしながらも、アッシュはカウンターへと足を進める。
カウンターに居たのは、朝アッシュの登録を担当した受付嬢とは別にもう1人居た。
「クエストは達成した、報酬を頼む。」
「もうよろしいので?まだ期限は2日も残っていますが・・・」
「ああ。今日の分の宿代すら無いからな、早々に報酬を貰えると助かる。」
そう言うとアッシュは、冒険者カードを取り出し受付嬢へと手渡す。
冒険者カードには、討伐したモンスターの数が正確に表示される。
それはクエストと言う関係上、狩っていないにも関わらず狩って来たと虚偽の申請をして報酬を貰おうとする輩が過去に居た為こういった措置を取る形になった。
そしてアッシュの冒険者カードに記載されているジャイアントトードーの討伐数に、2人居た受付嬢の1人が信じられないものを見るかのように目を見開いて叫んだ。
「に、210匹ぃっ!!!!」
「「「はぁっ!!!???」」」
アッシュの冒険者カードに記載されていた討伐数は、いくら朝から夕方までの間狩り続けて居たとしても普通にはありえない数字だ。
余りにも現実離れした数字を聞いたギルド職員も、その場に居合わせた冒険者達も一様に声を荒らげて驚いた。
そして当然、カードに書かれているアッシュのレベルも討伐数に見合った経験値の分だけバク上げしていて、スキルポイントも相当な量となっている。
「嘘だろ・・・半日足らずで200匹超えだと。」
「インチキじゃ・・・」
「馬鹿、ギルドカードは偽造できねぇんだ。本当に狩って来たんだよ、半日足らずで200匹も。」
誰も彼もが予想できなかったアッシュの初クエストの結果に、ギルド内で騒いでいた冒険者達はざわつき始める。初登録のレベル1だというのにジャイアントトードーを200匹も狩ることは、普通は不可能な出来事なのだから。そんな中叫んだ受付嬢とは違うもう1人の受付嬢は、平然とした顔でその事実を受け入れ、受け入れた上で口を開いた。
「アッシュ様。流石に当方の想定外の討伐数ですので、今すぐに報酬を用意することは出来ません。報酬というものはギルドにてモンスターを買い取った金額も内訳に入っていますので、通常ならばギルドにて回収後に報酬をお渡しすると言うルールになっております。」
ジャイアントトードー1匹の討伐報酬が移送料やら諸々を差し引いても5000エリス。
3匹討伐クエストの為最大で15000エリスの基本報酬に加え、加算報酬が207匹分。
そしてそこに追加討伐ボーナスで1.25倍。
計1,293,750エリスの報酬が、アッシュの手元に入って来る。
いくら偽造の出来ないギルドカードに記載された討伐数だとしても、実際にその討伐した現物が無ければ報酬を渡すことは出来ない。ギルド側が冒険者から受け取るか、狩場となった現地へギルド職員が赴き現物を回収して初めてクエストを達成した冒険者に報酬が支払われるのだ。
故に現物がない今、アッシュに報酬が支払われるのはまだ先となる。
だが・・・
「ですので、2時間程お待ちいただければ当方は全ての精査を終わらせて報酬を用意致します。」
「な、何を言ってるんですか先輩!?」
たった2時間で210匹分のジャイアントトードーの精査をして報酬を用意する、言うのは簡単だが実際には不可能に近い。
だがアッシュの目の前の受付嬢は、それが出来ると豪語した。
そんな受付嬢をもう1人、恐らく新人であろう女の子が止めようとするが手で軽く制され、その勢いを失った。
「出来るのか?2時間で全て。」
「ええ、当然でございます。他の受付はどうかは存じ上げませんが、私は問題ありません。」
そう言いながら翳された彼女の手には、”何も無い”ところから現れた短剣が握られていた。
それどころか現れた短剣すらもいつの間にか消え失せ、1拍も置くことなく今度はその手に彼女の身の丈はありそうな大剣が出現した。
「・・・ッ!?」
流石のアッシュも、目の前で起こった事に驚愕を隠せなかった。
アッシュが用いる、物質をソウルに変換して体内に収納するソウルの御技と殆ど似ている現象だったからだ。
「生きてさえいなければ、私はどんな物でも収納することが出来ます。例えそれが生物だとしても、死んでいるのならそれは既に”生きている物”ではありませんから。」
そう言って、持っていた大剣がまた空虚へと消える。
「ご理解頂けましたでしょうか?」
「ああ、嫌という程にな。では2時間後にまた来よう。」
「お待ちしております、アッシュ様。」
そう言ってアッシュは、鎧をガシャガシャと鳴らしながら来た道を戻っていった。
「これはまた、とんでもないルーキーが入ってきたもんだ。」
「ああ。この調子なら、俺達を追い越す日も近いかもな。」
残った冒険者達は皆一様に、出て行ったアッシュを高評価しながらシュワシュワを片手に笑い合っていた。
そして去って行ったアッシュの背中を見つめる4人組の冒険者パーティーが、ギルド内に居たことをアッシュは知らなかった。
ーーーー△ーーーー
2時間という時間は、何もせずただ待つには少し長すぎる時間である。
報酬が入るまでは無一文なアッシュは、飲食店、宿屋、娯楽施設、その全てに対し支払う金が無い。
従って暇を潰そうにも、現状やることが無かった。
故にアッシュは、観光をすることにした。
彼が元いた世界には、観光をする暇など無く、ただひたすらに死ぬか狩るか前に進むかしか無かった。
それに加え常に戦いの中で生きてきたアッシュに観光なんて心的余裕など無かったのだ。
1歩進めば敵が待ち構えていたり、即死する罠があったりと、常に気を張っていないと簡単に死んでしまう。
故にアッシュは、周囲の風景等一度たりとも見たことがなかったのだ。
だがこの世界に来たことで心的余裕が幾分か生まれた。街の中であれば死の危険を孕んだモンスターは居ない為、気を抜いて武器を構えて進まなくても良い程の世界なのだ。
気楽に歩いて殺されないというのは、アッシュにとって素晴らしいことなのだ。
「ふむ、こうして見れば不思議な世界にやってきたもんだ。」
不死人が存在せず、最初の火すらも無い。
なのにソウルだけは存在していて、どうやって世界が維持されているのかが分からない不思議な世界。
アッシュの元居た世界では、最初の火が見出されてから生と死と言う概念が生まれた。
つまり最初の火が世界を維持しているのだ。故に消えかけた時には、最初の火の炉で新たな薪を燃やす必要がある。
だが最初の火の燃料になり得る薪の王は早々居ない為、
不死人となった者がそれに当てられ、亡者とならずに蘇った不死人に火継ぎの旅と言う使命を強制的に押し付けられる。
斯く言うアッシュもそのうちの1人であり、
かつて火を継いだ薪の王達とアッシュが違う点は、アッシュと言う薪が燃え尽きる度に、またアッシュと言う同じ薪が蘇り火継ぎを行う為だ。これがアッシュが無限機関と呼ばれる所以。何度火継ぎを行おうとも、火が陰り出す度に火継ぎを行う。始まりは有っても終わりは無い。始まりの終点は、また新たな始まりだったからだ。
「すまない、あなたが噂のアッシュで良いのか?」
そんな中ふと、アッシュの背後から女性の声が響いた。
街中で全身鎧の輩に話しかける酔狂な奴だと思いながらも振り向くと、そこには金髪の女騎士を先頭に青い髪の女と黒髪の男女の4人が居た。
「噂が何かは知らんが、俺がアッシュだ。だが・・・一体なんのようだ?物乞いなら他を当たって欲しいのだが、生憎と無一文でな。」
「物乞いではない。要件はただ1つ、あなたを私達のパーティーに勧誘しに来たのだ。」
「・・・は?」
アッシュは女騎士が言う言葉を、少しの間理解することが出来なかった。
To be continued……
設定をば
・火の無き灰
自身の記憶に自らの名前等もうどこにも存在しない為、自らの使命から取って
薪の王達を殺し、玉座に引きずり戻して火を奪い、最初の火を継ぎ、また火が陰ると棺桶から蘇り薪の王達を殺す。
そんな火の世界の無限機関の一部。
幾度となく最初の火の薪となり、陰る度に火継ぎを行ってきた。
そうして自我も擦り切れ、記憶も飛んでしまって部品と成り果てた頃に火防女へと返した瞳によってその宿命から解き放たれた。
既に自分が何者であったかなど覚えておらず、自らに課せられていた使命とその間の記憶しかない。
古の竜狩りを殺して奪った防具を着用し、そのソウルから取り出した多彩な武具で敵を翻弄するスタイルを好む。
短剣、直剣、大剣、刀、大鎌、槍、盾、弓、クロスボウ、杖。
様々な武具を場面によってコロコロと変える。
ステータスはカンストではなく、上げても伸びが悪いステータスを切り捨てて上げていない物に振っている。
ステータスを割り振り、3以上伸びればそのままガン上げ、1しか上がらなければ次へ。
その結果全てのステータスが高い水準で纏まっている。
だがカンストではないし、高レベルになるたびに必要なソウルが増え、それに比例し何度も死んでいる為上げるのを諦めていると言っても良い。
レベル 390
生命力 55
集中力 50
持久力 55
体力 50
筋力 45
技量 60
理力 50
信仰 55
運 60
冒険者登録時の必須事項目
アッシュ
179cm
65kg
28歳
怪我の治りが早い。
転移後のレベルは騎士の初期ステータスである9。
女神エリス
幸運を司る女神であり、協会の最大派閥であるエリス教の御神体。
相手を敬い、決して見下した態度を取らない品のある女神であるが、悪魔などには欠片も容赦がない。
火の世界の英雄に強い憧れを持ち、仮称として神器となっている火の時代の遺物を回収しては自室へ並べると言う収集癖がある。
エスト瓶の欠片や楔石の欠片、帰還の骨片等の遺物などが特にお気に入りらしい。
時々下界に、冒険者クリスとしてクエストを受けると言う名目で神器回収に赴いており、その際に穢れ無き火防女の魂を見つけ出し大事に鍵付きの宝箱に入れていた。
因みに虚乳の疑いが掛かっている模様
篝火
不死人の故郷、安息地とも言える場所。
不死人の骨が
使用するとあらゆる傷、体力、状態異常、部位欠損が修復される。
アッシュが選んだ特典でもある。
火を灯し使用する際は必ず最初に大元の1つの篝火を灯さねばならない点を除けば、各地に篝火を設置することが可能となるため篝火間の転送も可能になる。
熟練狩人の職業、主に狩猟に役立つスキルや、隠密、索敵などのスキルが多く存在する。
獲物を狩る為の過程に特化したスキルで対象まで無音で気配遮断すらもできる隠密スキルや、距離が離れた場所に居る生物を感知する事ができるスキル。
弓や剣等物理攻撃に特化したスキル等がある。
穢れ無き火守女の魂
エリスが見つけた、火の無き灰を常に支え続けた火の番人の魂。
火の無き灰が集めたソウルを変換し、返還することで
現在その魂は火の無き灰と融合しており、火守女が居なくともレベルを上げることが可能になっている。
エリナ
元冒険者で、現在は冒険者ギルドの受付嬢。
世界に5人と居ないと言われているディメンションストレージと言うスキルの所持者。
ディメンションストレージ
この世界とは違う、何処かに存在すると言われる異次元空間へと接続できる能力。
能力自体はただの鍵の役割しか持たない為、接続時の消費魔力はごく僅かである。
レベルによって接続できる最大空間数が増加する為、高レベルになるほど使用できる空間が多くなる。
内部に物を仕舞うのも出すのも、所有者の任意で行うことが出来、サイズを問わず収納することが出来る。
唯一の欠点は”生きている”生物を収納することが出来ない事。
生きているかどうかはソウルがあるか否かで判断していると思われ、例え無機物でもソウルが宿って動いているならばそれは生きている生物と言える。