いやぁ、全く難産でしたね。
仕事が忙しくて書いてる暇も無くて、時折書いてはいたのですけどねw
まあ最近ファークライ5やダークソウルリマスター、とか楽しんでたのでそれも遅れる原因でしたかね。
まあ、今回も楽しんでください。
現在アッシュは、2時間後にギルドに戻ってくるつもりでいた筈なのにギルドに居た。
謎の4人パーティーに勧誘を受け、有無を言わさず腕を取られて連れてこられた場所がギルドだったのだ。
故に2時間・・・むしろ1時間すら経っていないのに、ギルドに戻ってきて席に座っていた。
一応の礼儀としてフェイスヘルメットを外し、テーブルの上へと置いてあった為素顔を晒していた。
中性的な顔立ちの男性であった為に、素顔を見た謎の4人は驚いていた。
「で、何の話だったか?」
「貴方に私達のパーティに参加してもらいたくて。」
金色の髪をした女騎士が、改めて本題をアッシュに伝える。
だがふと思い出したかのように口を開いた。
「そう言えば自己紹介をしてなかったな。私はーーー」
「自己紹介ならまずは私から!!
我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とする紅魔族であり、至高の攻撃魔法『爆裂魔法』を操る紅魔族随一の魔法の使い手!」
めぐみんの自己紹介に、一気に空気が静まり返る。
そんな空気を払拭するように女騎士が口を開いた。
後ろで(おい、私の名前に何か言いたいことがあるのなら聞こうじゃないか。)と言っていたが誰も取り合わなかった。
「あー、私はダクネス。職業はクルセイダーだ、攻撃はさっぱりだが防御には自信がある!むしろ盾役は望むところだ、モンスターの群れに放置されても構わない、いやむしろしてくれ!」
ダクネスの自己紹介に、別の意味で空気が凍った。
アッシュにはその方向性が全く分からなかったが、変な奴だということは確かに伝わっていた。
「次は私ね!」
シュワシュワを片手に青い髪の女性が勢いよく立ち上がった。
既に酔いが回っているのか、顔が若干紅く染まっていた。
「私はアクア、アクシズ教徒が崇めるアクシズ教の御神体!水の女神アクアよ!」
「を、自称している可哀想な子なんです。自分が女神だと、そう思い込んでるみたいなんで気にしないでください。
あ、俺はカズマ、佐藤和真です。こんなナリですが、魔王を討伐する為頑張っている冒険者で、このパーティーのリーダーやってます。」
「ちょっとカズマ!誰が自称女神よ!正真正銘の女神よ私は!」
女神と言う単語に反応したアッシュは、力の波動を注視する。
だが読み取れたのは、僅かにブレたエリスと同じ女神の波動。
かなり弱体化が掛けられ、エリスの10分の1以下の力しか感じない為に波動に敏感かつ感知力に優れた者でさえ感知するのが困難な程の弱々しい神の力だった。だが魔力は相当なもので、なるほど流石は女神だと感心する程潤沢であった。
「ふむ、では俺も改めて名乗ろう。名はアッシュ、今朝方この街に来た。まあ先ほどまで狩りに出ていたから滞在時間は冒険者登録中の1時間程度の駆け出し冒険者だ。」
「「(いやいや、駆け出し冒険者が200匹以上もジャイアントトードーを狩ってくるとか可笑しいから。)」」
ギルド内に居たカズマ達のパーティー以外の冒険者たちやギルドの受付嬢は、口には出さずにそう思った。
「さて、パーティー加入の件だったか?入ることについてはやぶさかではないが・・・」
「ほ、本当ですか!!是非!是非に加入してください、お願いします!」
その言葉を聞いた途端、カズマは涙を若干浮かべながらアッシュに懇願するように床に膝を着いて手を組み合わせた。
カズマはこの瞬間、走馬灯のように今までの記憶が蘇ってくる。
問題児アクア、ドM騎士ダクネス、一発しか撃てない爆裂娘めぐみん。
常識人が誰も居ない中、3人に振り回され続けて居たカズマは割と結構限界だったようだ。
元々ただのニートゲーム廃人だったカズマには、少々荷が重かった故にアッシュのパーティー加入を切に願っていた。
「良いのか?昨日入ってきたばかりの新人冒険者だぞ?」
「アッシュさんが入ってくれたらありがたいです!この3人、上位職の癖にあまり役に立たないんで。」
「「(役に立たないとは失礼な!)」」
「ああ、良い・・・」
三者三様の反応を示したアクア、めぐみん、ダクネスの3人。
それを尻目にアッシュは、カズマの差し出した手を握った。
「まあ、よろしく頼む。ついでにこの街について教えて貰えると助かる。」
「はい、よろしくお願いします!」
こうして、アッシュのパーティー入りが決まったのだった。
ーーーー△ーーーー
「そう言えば気になったんですけど、アッシュさんのレベルってどれくらいなんですか?」
ふと気になったカズマがアッシュに訪ねて来た。
カズマはパーティーリーダーを勤めている為メンバーであるアクア、めぐみん、ダクネスのステータスやレベルは一応把握している。戦闘中に指示を出すためには必要不可欠な為必死に覚えたのだ。
故にこれから同じパーティーに入るアッシュのレベルやステータスも知りたいと思い、聞いたのだ。
それを聞いてアッシュはおもむろに冒険者カードを取り出して、レベルの欄に書かれていた数字を口に出した。
「今は77だな。」
「「「えっ!?」」」
その言葉に、ギルド内の空気が一瞬で凍りついた。
現在最高レベルの冒険者は確認されている1人の42レベルが最高である。
それですらこの駆け出しの冒険者の街アクセルでも最高のレベルなのだ、それすらも上回るレベルはもう既に駆け出しとは呼べない程の高レベルであるのだ。
それにカズマのパーティーでは、最高レベルはアークプリーストのアクアでレベル20なのだ。
アッシュの強さがどれだけ物凄いかが、レベルだけですぐに分かる程だ。
「ほ、本当ですか!?アッシュさん!」
「ああ、良かったら見てみるか?」
そう言ってアッシュは自らの冒険者カードをカズマに差し出した。
そのカードを、カズマ達は全員で覗き込んだ。
そこには運のステータス以外の全ての数値が高く表示されていた。
1点特化型ではないアッシュは、全てのステータスの効率を考えながら振っている。
そのため何かに特化しているわけでは無い、万能型である。
だが今のカズマ達に比べれば明らかに高レベルステータスであるのは確かである。
「アッシュさん、精査が終わりましたのでご確認をお願いします。」
「ああ、今行く。」
カズマ達と話していたアッシュは受付嬢に呼ばれて席を立つ。
「すまないカズマ、少し席を外す。」
「あ、はい。分かりました。あ、そうだアッシュさん。それが終わったらクエストに行きましょう。」
「ああ、分かった。」
そう言って去っていくアッシュを尻目に、アクアは腕を振り上げて手に持っていたクエスト用紙を振り回していた。
「いざリベンジマッチよ!!」
ーーーー△ーーーー
日が傾き出し、周囲がオレンジ色に染まりだした頃。
報酬を貰い財布が潤ったアッシュがカズマ達と向かったのは、つい2時間程前までカエルを乱獲していた草原。
クエスト目標もアッシュが今朝受けた物と同じもの。
流石の受付嬢も、アッシュに対して苦笑いをしていた。
200体以上もアッシュに狩られたジャイアントトードーであるが、その繁殖力は異常の一言に尽きる。
過去も湧かなくなるまで狩り尽くされたにも関わらず、30分も経てばまた湧き出すからだ。
故にジャイアントトードー討伐クエストは常に張り出されているのだ。
だが今回はアッシュではなくカズマ達の戦闘力を測るのが主な目的である。
故にエストの灰瓶が尽きているアッシュは危なくなるまで基本的に手を出す気はないのだ。
だが・・・
ジャイアントトードーを視認したアクアが脇目も振らずに突撃して右手を振りかぶり始めた。
「私は女神!こんなカエル如きに遅れを取る存在じゃないのよ!喰らいなさい女神の力!」
『ゴッドブロォォオオオオオッ!!』
アクアは右手を光らせると、突進した勢いそのままにジャイアントトードーの腹へと一撃を叩き込んだ。
『ゴッドブロー』とは神の力を宿した、神々にしか扱うことのできない、神の怒りと悲しみを拳に乗せた一撃必殺(アクア談)のワンパンチ。相手は死ぬとされている。
だがアッシュから見て、込められた力はそんなに無かった。
ポス・・・
アクアの渾身の一撃は、ジャイアントトードーの腹部に衝撃を全て吸収されてアクアの右手を少しめり込ませていた。
ジャイアントトードーの腹は物理攻撃の大半を吸収する。
斬撃の特性を含まない打撃系の武器は特に吸収されやすく、連発して攻撃するかキャパオーバーのダメージで一撃を与えるかしなければ腹部のダメージ吸収を超えられない。
そして全力に近しい一撃を放ったアクアは、カエルを見上げる。
そこにはもう既に開いた口が目の前に迫っていた。
「ッチ、役に立たないとはこういう事か。」
パーティー加入時にカズマが言っていた、上級職なのに役に立たないと言う言葉を思い出しながらアッシュはとある武器を構えながらアクアを押しのけカエルの目の前に立ち、その腹に一撃を叩き込んだ。
「あ・・・」
バチバチとイカヅチがカエルの体を駆け巡り、同時に腹を切り裂かれて絶命する。
『竜狩りの大斧』
竜狩りの鎧が持っていた、強い雷を纏った大斧。
斧であるが故の斬撃の特性と雷属性を持ったその武器は、アッシュが永遠とも言える火継ぎの旅で手に入れた数ある武器の中の1つ。当然の如くフル強化されている為、ダメージ吸収のキャパシティを容易に超え、オーバーキルのダメージを与えた。
「やべぇ、アッシュさんマジかっけー。」
それを見ていたカズマも、めぐみんも、ダクネスも、その強さに魅了されていた。
だがアッシュはアクアを左手で掴むと、残りのジャイアントトードーをガン無視してカズマ達の元へ戻ってきた。
「カズマ。このダメ神は俺が見ていよう、残りは3人で片付けてくれ。」
「ではまず私が行きましょう。」
そう言ってめぐみんが一歩出て、颯爽と杖を構えた。
「あ、おいまてめぐ「我が魔力にて、敵を滅する爆炎を。我が呼び声に答え、具現せよ業火!」
カズマの静止を振り切り、杖を掲げながら詠唱する。
そして魔力が最高潮に高まっためぐみんは、視界に捉えたジャイアントトードーに向かって高らかに唱えた。
『エクスプロージョン!!!』
その刹那、ジャイアントトードのいる場が光り周囲を眩く照らしつんざく音を立てて爆発し、範囲内のジャイアントトードーは灼熱の業火に呑まれた。
これこそがめぐみんが持ち得る最強にして唯一の攻撃魔法、『
範囲内のジャイアントトードーは、その強烈な威力に文字通り塵へと帰った。
しばらくしてから爆煙が収まると、範囲内のジャイアントトードーは文字通り殲滅されていた。
そう{範囲内}は、である。
多少集まっていた場所のジャイアントトードーは消滅したが、撃ち漏らしはかなり居る。
だが件のめぐみんは、再度爆裂魔法を撃つようなことはせず。
そのまま地に倒れふしたのだ。
そう、爆裂魔法はものすごく燃費が悪い。
威力だけを見ればどんな魔法も追従できないほど抜きん出ているが、その消費魔力は他のどんな魔法をも群を抜く程に恐ろしく高い。魔法の扱いに長け、魔力量もかなりの量がある紅魔族のめぐみんでさえ1発撃てば空になるほどの消費量。
冒険者達からは単なるネタ魔法と呼ばれるモノが、爆裂魔法と呼ばれる魔法だ。
これにアッシュは完全に呆れ返った。
MP管理、無くなった後の保険、奥の手、切り札。
何も用意しておらず、ただただ最強の一撃のみなのだから。
この時点でパーティーに入ったことを若干後悔していたが、アッシュはカズマに期待していた。
こんな問題児を抱えていながらも、カズマは決して弱い訳では無い。
カズマの女性に対する対応等を除けば、このパーティーで唯一の常識人であり、戦闘に関する観察眼や小手先の技術を応用した戦術を即興で編み出す柔軟性等を、アッシュは評価していた。
現在アッシュの目の前では、ダクネスが頬を紅く染めながら体をくねらせながらジャイアントトードーの攻撃を回避しながら囮を努め、それを目当てにやってきたジャイアントトードーをカズマが脳天に攻撃を加える事で確実に倒していた。
自ら食われようとするダクネスを時折聞こえてくるカズマの罵倒によって更に頬を染め体をくねらせる事で回避させると言う、なにげに高等テクニックを用いていた。
カズマはなにげにしっかりと、舵取りをしながら確実に戦っていた。
他の2人の奇行とダクネスの変態性、これらに目を瞑れば割とバランスの取れたパーティーなのだ。
遊撃と囮、回復と一撃必殺。
何とか一箇所に敵を集めれば一撃で葬り去る事だって可能なのだ。
まあ、カズマの指示をまともに聞けばの話だが。
そして数分後には、残っていた数体のジャイアントトードーは死体となって地に伏していた。
「アッシュさん、どうでしたか?」
「妥協点と言ったところか。めぐみんやアクアに比べ、カズマとダクネスの連携には目を見張るものがあるな。鍛えたら化けそうだ。」
率直な感想を述べるアッシュだが、その答えに不満を見せる若干2名。
めぐみんとアクアである。
「ちょっと待ってくださいアッシュ!私のどこがダメなんですか、いい爆裂だったじゃないですか!」
「そうよそうよ、私の何が悪いのよ!私は全力を出したわ!あんなカエル如きに女神であるこの私が負ける訳が無いのよ!」
2人の言い分に、大きくため息を吐くアッシュ。
自らの行動の反省点を理解することなく、正当性を主張する2人には、そばで見ていたカズマも頭を抱えていた。
「はぁ・・・・・・めぐみん、爆裂魔法を1発撃った後は知らぬ存ぜぬ等、そんなものパーティー行動には毛ほども役に立たん。単なる足手纏いに他ならん。
そもそも先手で切り札を切って動けなくなってどうする。避けられたら?殲滅し損ねたら?カズマの助けが無かったら?ダクネスの助けが間に合わなかったら?アクアの助けが間に合わなかったら?その時お前はどうする?」
「んぐッ・・・・」
完全に論破されてしまっためぐみんは、悔しげな表情で口を噤む。
アクアはへっぽこで真っ先に突撃し、カズマはダクネスの囮スキル『デコイ』で集まってきたモンスターを狩っていた。
そしてめぐみんは爆裂魔法で動けなくなっていた。
この状況でめぐみんがカズマ達と分断されて、単身でモンスターと遭遇してしまえば、身の安全を保証してくれるものは何も無いのだ。
「で、アクア。お前は何故打撃系の物理攻撃が効かない腹部へと殴りに行く?」
「女神の私の攻撃が、あんな低位の、カエルなんかに効かないなんて可笑しいわ!私の一撃は必ず効く筈なのよ!」
女神の力が込められた一撃をも吸収出来るなんて可笑しいと主張するアクアだが、アッシュが見た感じだとそれほど力が込められているようには見えてなかった。
恐らくはアクアに掛かった弱体化のせいだろうと推測するが、本人には自覚症状が全くなく、弱体化も何らかの呪いによって強制的になっている状況でも無い為判断しかねていた。
「何故そこで攻撃場所を変えると言う発想が出ないのか、甚だ疑問なのだがな。」
それはアッシュが今までの経験から導き出した答えだった。
生物だろうがゴーレムだろうが、万物には必ず弱点と成りうる綻びが存在する。
だがそれ以外の場所では、攻撃が効き辛かったり全く効かなかったりする部位もある。
効き辛ければ別の場所へと攻撃を繰り返し、弱点を突けば容易に倒す事が出来る。
それをアッシュは死んで覚えてきたが、冒険者は死んだらそこで終わりである。
時間を掛けるほどMPや回復アイテムの残量等が心もとなくなり、長期戦が続くほど不利になる。
だからこそ、どこの部位を攻撃するとダメージが通りやすいか等は知っておく必要がある。
だがアクアには、何度言っても女神だから効くはずと言って聞かなかった為、流石のアッシュでも諦めてしまった。
これにはカズマも苦笑いを隠せなかった。
「まあアッシュさん、一先ず帰りましょう。」
そう言って一行は帰路に着いた。
ーーーー△ーーーー
「ジャイアントトードー計13体の討伐、お疲れ様です。報酬の77500エリスになります。」
今回のクエスト報酬を受け取り、今までで一番稼いだ日となったカズマは拳を挙げて思わず叫んでしまう程だった。
受け取る事を辞退したアッシュの分を4人で分けても、1人19000エリスだ。
「やった!やりましたよアッシュさん!初めてこんなに稼げました!」
「今回俺は何もしていない、これは全てお前たちが手にした成果だ。」
両手を挙げて喜ぶ4人を見て、アッシュも自然と顔を綻ばせる。
それはアッシュが火継ぎの旅の中で久しく忘れていた、『感情』というものであった。
失くしたと思っていた感情が出てきたと言う事自体、アッシュにとって更に顔を綻ばせる事となった。
「やった!これで馬小屋生活から脱却だわ!」
ピシッ
アクアが放ったその言葉に、アッシュの綻んでいた顔が一瞬で凍りついた。
カズマ達4人、今まで満足な報酬を得ることができず、得たとしてもアクアの浪費癖で消えていた為、今の今まで宿も借りれず馬小屋で寝起きを共にしていたのだ。
カズマならともかく、アクアやめぐみん、ダグネスは傍から見て十二分に可愛い美少女である。
カズマからしてハーレム状態だが中身が残念と言わしめているが、冒険者の中には女に飢えている男連中だって居るのだから。馬小屋なんてものはプライバシーは愚か、セキュリティの面でも皆無である。
寝ている少女を蹂躙することなど簡単なのだから。
「カズマ・・・」
「いや、待ってくださいアッシュさん!俺は悪くないんです!悪いのは毎回稼ぎのほとんどを酒に突っ込むコイツが悪いんです!」
そう言ってアクアを指差すカズマの言い訳に、
アッシュは同意していた。
カズマが初期装備すら揃えられず宿屋にも止まれない程金欠だと聞いていたし、アクアの金遣いの粗さも聞いた。
ダグネスやめぐみんが足枷となって、今まで稼げなかったと言う現状も聞いた。
だが少女3人を馬小屋で生活させていたのは流石に見ていられなかった。
「ならカズマ、明日俺は少し別行動させてもらう。少々用事が出来たからな。」
「あ、はい。分かりました。」
アッシュの感情の温度差に呆然としながらも返事をしたカズマ達は、満足げに頷いたアッシュの後に続いてギルドを後にした。
因みにだが、アッシュも馬小屋で一夜を明かした模様。
最も火の無き灰であるアッシュに睡眠も食事も、生理現象すらも必要がない為カズマ達が眠っている横で夜が明けるのを待っていただけだが。
ーーーー△ーーーー
翌日、アッシュはカズマたちと別れ、1人不動産屋へと来ていた。
元々篝火を設置する為の拠点をどこかに構える予定であった為、それが少し早まっただけとなった。
当初はどこかのホテルの1室を拠点として借りることを考えていた。
アッシュの強さならアクセルの街の付近に生息するモンスター等容易に狩ることが出来るため、2~3クエスト受ければ宿代等直ぐに稼げてしまう。
それに加え鎧を多数所持している為に服も買う必要がなく、食べることも必要ない。
そして武器も、限界まで強化された神器すらも凌駕する数多の武器をソウルとして収納している為新規に買う必要が無い。
そうなってくると出費は宿代のみで、金は腐るほどに溜まっていく。
ならばせっかくパーティーを組んだカズマ達の為に使ってしまうというのも悪くはないのだ。
「今すぐ入居出来る家は何処かにないか?合計で5人なのだが。」
入店して案内された別室で、アッシュは早々に持ちかけた。
「5人で今すぐ・・・となると、この5件が空いていますよ。」
アッシュの前に渡された資料を1つ1つ読んでいく。
意外にもアッシュは見比べながらも即決して答えを出さない。
こう見えても完璧主義者であるらしい。
自身の所持する武器が全て限界強化されている所からも、その完璧ぶりが窺える。
「候補としてはこの2件だな。内装などは見せてもらえるのか?」
「はい。今すぐにでもご覧になられますか?」
その言葉に少し考え込むアッシュ。
カズマに1日別行動すると言ってあるとはいえ、現在はもう昼前。
朝からここにいることを考えれば相当悩んでいた事が伺える。
そのため、これ以上となると昼を過ぎて夕方になってしまうだろう。
そうなると家を決める前に夜になってしまう可能性もある。
「ああ、頼む。」
「ではこちらの物件から行きましょう。」
その言葉の後に案内を始めようとした受付嬢だったが、突如なったサイレンによりその足を止めた。
『緊急クエスト発令!緊急クエスト発令!街の中に居る冒険者各員は、直ちに冒険者ギルドに集合してください!繰り返します!緊急クエスト発令!冒険者各員は、直ちにギルドに集合してください!』
「すみませんアッシュさん、とても案内出来る状況ではないですね。」
「そのようだな。」
アッシュは机に立てかけて有った大剣を手に立ち上がり、その足を店の外へと向ける。
「世話になった、続きはまた明日来るとしよう。」
「ええ、ご来店お待ちしております。」
その言葉を聞きながら、アッシュはギルドに向かって走って行った。
ーー△ーー
一方その頃、カズマ達はギルドのテーブルで食事を取っていた。
昨日アッシュと共に行ったクエストの報酬がいつもと比べて倍以上有った為に、今日の朝は豪勢にしようと4人でいつもとは違う少しお高めの料理を注文して舌鼓を打っていた。
「それにしても、アッシュさん強かったよなぁ・・・」
「そうだな。あれだけの技量や武器を持った騎士だ。仕えていた国はよほどの強国だったのだろうな」
ふと呟いたカズマの独り言に、ダクネスが同意する。
そう思うほどにアッシュの技量や武器などは卓越したものだったのだ。
火継ぎの旅を永久に繰り返していたアッシュは、薪の王を、光の王グウィンすらも超えていると言ってもいいだろう。
だが最初からそうであったわけでも、ましてやどこかの国の騎士だった訳でもないのだ。
ダークリングが現れた時から、火の無き灰としての使命を全うしていたと言う訳でもない。
彼は元々、名も知れぬ流浪の民の子だったのだから。
今はもうそんな出生は関係なく、記憶も存在しない。
だが当時は、親の顔も、ましてやどこで生まれたのかすら分からず、自分の名を持たず、ゴミを漁って生きていた。
そしてダークリングが現れ、馬車に轢かれても死ねず気味悪がれて棺桶に閉じ込められてどことも知れぬ土地に捨てられた。
捨てられた時の記憶等、もうアッシュは持っていない。
だが拾われた時の・・・
火守女に出会った時の記憶だけは、今でも鮮明に思い出せる。
それがダークリングを宿して以来、
「でもアッシュさんにおんぶにだっこって訳にも行かないよな、俺も強くならないと・・・」
「うむ、その息だカズマ。若干名・・・分かっているのか不明だが。」
そう言ってダクネスが顔を横に向けると、何やら料理の取り合いをしているめぐみんとアクアの姿が有った。
カズマとダクネスが2品程度しか頼まずに多少お金の余裕を作っておこうとしている間に、この2人は最も高いものを頼んだのだ。
1品ならまだ多少の贅沢で流せただろうが、2人が頼んだのは合計で10品である。
1人5品で、5000エリス程かかっている。
たいていの料理が500エリスから800エリス程度で食べられる事を考えれば、十分に使いすぎであった。
だが、4人で分けた報酬の自分の分で払って食べている為カズマやダクネスには何の影響もない為か何も言わないでいたのだ。
そんな中・・・
『緊急クエスト発令!緊急クエスト発令!街の中に居る冒険者各員は、直ちに冒険者ギルドに集合してください!繰り返します!緊急クエスト発令!冒険者各員は、直ちにギルドに集合してください!』
突如として街中に大音量で鐘の音と共にアナウンスが響き渡る。
「おい、緊急クエストってなんだ?モンスターでも攻めてくるのか?」
「なんだあんちゃん、知らねーのか。この時期は収穫祭だよ、キャベツのな。」
「は・・・キャベツ?キャベツって・・・モンスターの名前かなにかか?」
こんな異世界でキャベツなんて単語を聞くとは思っていなかったカズマは、自分が見たこともないキャベツと言うモンスターかと思って口に出した。
「キャベツとはまん丸の緑色のやつです、食べられるものです。」
「噛むとシャキシャキする、歯ごたえのある美味しい野菜の事です。」
と、ダクネスとめぐみんの言うことに、一瞬理解が追いつかなかったカズマだった。
「ッテ!そんなこと知っとるわ!じゃあ何か?緊急クエストだのと騒ぎ立てて、冒険者達に農家の手伝いをさせようてか?このギルド連中は。」
「あー・・・カズマは知らないんでしょうね?ええっとね、この世界のキャベツは・・・」
アクアが申し訳なさそうに言いかけるのだが、それを遮るようにギルドの受付嬢が建物内の冒険者に向けて説明を始めた。
「みなさん、突然のお呼び出し申し訳ありません。もう既にお気づきの方も居るとは思いますが、今年もキャベツの収穫時期がやってまいりました。今年のキャベツは例年より出来が良く、1玉の収穫につき1万エリスになります。既に街の住民の皆様には家に避難して頂いております。では皆様方、出来るだけ多くのキャベツを捕まえ、ここへと納めてください。くれぐれもキャベツに逆襲されないよう、キャベツといえどジャイアントトードーと同程度の難度があります故。なお、報酬は後日支払いとなりますのでお忘れなきよう。」
その瞬間、ギルドの内外が歓声で溢れかえった。
ダクネスやめぐみんに連れ出されて外に出たカズマも、その姿を目にする。
ギルドから真っ直ぐ伸びる街道、その先の門に迫るようにやってくる大量の緑色の物体。
唖然としているカズマの隣に、籠を持って現れたアクアが口を開いた。
「この世界のキャベツは飛ぶわ。味が濃縮されて収穫時期が近づくと、簡単に食われてたまるかと言わんばかりに街や草原を疾走するの。彼らは大陸や海を越え、最後は人知れず秘境の奥で誰にも食べられずその生を終えると言われているわ。それなら私達が彼らを捕まえて美味しく食べてあげようってことになったのよ。」
食べられまいとあっちへこっちへ飛び回るキャベツを、冒険者達は全力で狩りに行っている。
緊急クエストというレイドが発表されたときの緊張感は何処へやら、カズマは脱力してしまった。
「もう、帰っていいかな・・・」
何が悲しくて、キャベツを狩る為に転生しなければならないのかと。
カズマは頭を抱えていたのだった。
追加した設定について
カエル乱獲後のレベル。
素性:持たざる者
レベル:77
生命: 40
集中: 10
持久: 20
体力: 15
筋力: 20
技量: 20
理力: 15
信仰: 9
運: 7
このスバに適応したステータス
Strength(力) 150
Health(体力) 200
Magic pow(魔力) 480
Dexterity(器用) 400
Agility(敏捷) 300
Luck(運) 60
オリジナル設定として、装備の必要能力値に達していなくても奇跡や呪術、魔術を発動することは出来る。
だが威力にかなりの下方修正がかかる為、適正能力値以下での使用は推進出来ない。
因みに転移後のレベルアップ方式は少し変わっており、レベルアップ後に各ステータスにポイントを割り振っていく方式になっている。
アクアの弱体化
カズマが特典として選んでしまった為に課せられた、能力の下方修正。
地上で神の力を使う事は禁忌に触れる為、地上で使っても神の使いや巫女等と誤魔化せるよう神力を天界に居た時の10分の1程度に落とされる。
因みに女神エリスも、冒険者クリスとして地上で活動するうえで同様の弱体化を受けているが、アクアとは違い自らが解除することも可能である。
アクアの場合は特典として選ばれてしまった為、自分の意思では天界に帰れず地上に居るしか無い為に解除出来ず、エリスの場合は自由に行き来出来る為に天界に帰れば解除されると思われる。
アッシュのパーティーメンバーに対する評価。
カズマ
特筆するような才能も抜きん出た技術も無いが、その機転と発想力は物凄い。
運も高く技術の組み合わせも上手い為、鍛えたら化ける可能性が高い。
めぐみん
その潤沢な魔力を他の様々な魔法に使えば、魔法使いとして大成することは間違いないが…本人が爆裂魔法しか使う気が無い故に現在はほぼほぼ足手纏い。
隙を作って強大な1擊を入れるとき位しか、運用方法が思い付かん。
ダクネス
防御や回避に関しては俺を超えるかもしれんな。
だが攻撃には全く期待できん。
稽古で斬り合った時、相対している俺に一撃すら入れられなかったからな。
純粋に囮や盾役なら最良の存在だ。
アクア
回復や蘇生、浄化や状態異常回復位しか頼れないダ女神。
女神だというのに、一言で言って馬鹿である。
戦闘中だろうと日常だろうと、目を離すとろくな事をしない問題児。
カズマが苦労するのも頷ける。
因みに原作とは少しお金事情を変更しております。