ロクでなし魔術士と赤い目を持つ義弟   作:ポポポンのポン

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10話

そびえ立つ白亜の塔。学院の転送方陣はここにある。その塔の周りには壊れて粉々になったゴーレムで埋め尽くされていた。

 

その内部の螺旋階段を登った先、最上階の大広間にルミアとある青年がいた。今回の事件の黒幕。学院の裏切り者ー ヒューイ・ルイセンである

 

転送方陣の上で魔術によって拘束されていたルミアが叫んだ。

 

「ヒューイ先生!あなたはこんなことする人じゃなかった…!私を転送してこの自分の命と引き換えにこの学院を爆破するなんて!」

 

ヒューイは静かにルミアの叫びを聞いていた。やがてヒューイは口を開いた。

 

「僕は元より、王族 もしくは政府にとっての重要人がこの学院に入学した時にーーー」

 

「そいつを殺すために元より仕掛けられていた人間爆弾ってところかよ。ヒューイ・ルイセン」

 

ヒューイに割りいって声を発した人物がいた。その人物に2人は驚きを隠せない

 

「あなたは…」

「そんな…カインくん」

 

しかしその人物は2人の知っている顔と違った。目が紅く勾玉文様が浮かんでいる

 

「その赤い目に勾玉の文様…そうですか、あなたがあの『死神』でしたか…」

 

「そういうことだ。ヒューイ先生。あんたじゃ俺には勝てねぇよ」

 

「えぇ、私じゃあなたには傷1つつけられないでしょう。ただ……転送方陣の書き換えは終わっていなくても、この魔術は起動済みです」

 

そう言うとヒューイとルミアの周りに巨大な魔法陣が出現した

 

「白魔儀《サクリファイス》か…厄介だな」

 

「えぇ、貴方にこれを解除できますか?あぁ、もちろん僕を殺すのは無しですよ。すぐに魔法が発動してしまうので」

 

ヒューイは余裕そうにつぶやく。今から死のうとしているのに…

 

「くそっ!」

 

そうして俺は急いで解呪に取り掛かった

 

「あぁ、知っているかと思いますが 解呪に失敗してもこの魔法は発動しますので」

 

その言葉を聞いてルミアは青ざめる…

 

「そんな!カインくん 逃げて!私のことはいいから!」

 

「うるさいよ」

 

カインがそう呟くと方陣の1つ目が解呪された。

 

「早い、そして正確ですね。しかしまだ一層目。貴方だけならこの塔の地下に投げ込めば助かる見込みはありますが….その気は無いようですね…」

 

カインはその言葉を無視して解呪に取り掛かっている。その手際は素晴らしい

 

ヒューイはカインの手際の良さに驚いていた。これならばあるいはーーーそう考えたヒューイは自分自身に驚いた。

 

(僕はこの《サクリファイス》が解呪されることを望んでいるのか?そうか…僕は心のどこかで生徒の無事を祈っていたのか…)

 

ヒューイがそう考えているうちにカインは第2層を解呪した

 

「逃げたって誰もカインくんのことを責めないよ…だから逃げて…貴方だけでも…お願い…」

 

ルミアは消え入りそうな声で訴える

 

「いいわけないでしょ、ティンジェルさんが死んだら悲しむ人が沢山いる。自分を犠牲にしようなんて考えたらダメだ」

 

そして第3層を突破

 

「俺は昔は壊れていた…親を殺したのと同じような外道魔術師を殺すために独学で力をつけた。その時の俺は何も感情がなかった。だけどセリカ母さんやグレン兄に出会って変われた。自分のことを大切に思ってくれてる人はティンジェルさんにもいるだろ!その人達のことも考えろ!」

 

そしてカインはついに4層を突破した。

 

マナが少なくなってきて目眩がしてきやがった….くそっ!でもまだだ!

 

「でも…私は異能者…私がいる限りまた大きな組織に狙われる。そうしたらみんながーー」

 

「そんなことは関係ない!ルミア!お前はどうしたいんだ?生きたいのか!そうじゃないのか! それに前にも言ったはずだ…何があっても俺はお前の味方になってやるって!」

 

その言葉を聞いてルミアの目には涙が浮かんだ

 

「やっぱりあの時の人はカインくんだったんだ…うん、そーだよね….カインくん。ひとつお願いしていい?」

 

「なんだ?」

 

「やっぱり私は生きたい。だから…助けて」

 

その言葉を聞いて俺は笑みを浮かべる

 

「りょーかい『終えよ天鎖・静寂の基底・理の頸木は此処に解放すべし!』」

 

そして静寂に包まれ、方陣が消えた

 

「カインくん!」

 

そう言ってルミアは飛び込んでくる

 

「ちょっ!ティンジェルさん?」

 

「ルミア……ルミアって呼んで」

 

「いや…でも…「ん?」は、はい わかったよルミア」

 

ルミアの笑顔には勝てなかった…

 

そんな2人の様子を見てヒューイはつぶやく

 

「僕の負けですか…でも、よかった…」

 

そうして魔術学院自爆未遂テロ事件は幕を閉じた

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

魔術学院のテロ事件の数日後、学院のテラスに俺はグレン兄とセリカ母さんといた

 

「まさかルミアが3年前に病死したエルミアナ王女だったとはな」

 

「いや〜びっくりしたね〜」

 

「あぁ、異能者に対する迫害は根強い。それが王族なら国がひっくり返る。この学院でも知っていたのは学院長と私ぐらいだ」

 

「まぁどーでもいいけど」

 

グレン兄は頬づえをつきながら答える

 

「そーいえばどうして学院の講師を続けることにしたんだ?」

 

「あ?」

 

セリカ母さんがグレン兄に問う。するとちょうど

 

「あ、いた!グレン先生〜 カインくん〜」

「先生!さっきの授業で言いたいことがあるのですが」

 

ルミアが手を振って呼んでいて、フィーベルさんが怒っている。絶対さっきの錬金術で金もどきを作って、売って小遣い稼ぎしていたことだよな…

 

「見て見たくなったんだよ。あいつらがこれからどんな成長を見せてくれるかを…まぁ暇つぶしにはちょうどいいだろ」

 

「え?フィーベルさんがセラ姉さんに似てて欲情したんじゃないの?」

 

ごん!と音がするほどの威力で俺はグレン兄の軟骨を食らった

 

「そんなわけあるか!」

 

そう言ってグレン兄は階段に向かって歩いていった

 

「グレン兄が立ち直ったみたいでよかったね 母さん」

 

「あぁ、あいつは今いい目をしているよ。さて…カイン。お前はどうなんだ、何か変わったか?」

 

「どーだろ…」

 

「お前は優しい。確かに 今までは自分みたいに外道魔術師に苦しむ人達を無くすために手を汚しできた…だけどもう自分を苦しめる必要はないんだぞ…」

 

セリカ母さんは優しく伝えてくる

 

「まだ外道魔術師を許すことはできてないよ。でも、今はそれよりもルミアを守りたいと思った。沢山の人を殺してきた俺なのにね…でもこの汚れた手で人を守るなんて…」

 

俺の言葉を聞いてセリカ母さんは優しく微笑んだ

 

「カイン、確かにお前は沢山の人を殺してきたかもしれない。だけどそれ以上に沢山の人を救ってるんだ。いいじゃないか。たった1人を守るために行動しても。お前のやりたいようにすれば良い」

 

その言葉を聞いて俺は気持ちが軽くなったような気がした

 

「うん、わかった。ありがとう母さん」

 

「あぁ」

 

そうして俺はテラスから飛び降り、ちょうど歩いてきたグレン兄と並んだ。そしてその後にルミアとフィーベルさんがついてくる。

 

「もう、あんなとこから飛び降りたら危ないよ カインくん」

「あれぐらいの高さなら平気だよ」

「ダメ、怪我でもしたらどうするの?」

「はいはい、わかったよ」

「ならよろしい」

「あ、そうだカイン!あなたよくも騙してくれたわね!」

「何が?」

「何がって…そのひざ・・・ひざま・・・のことで…」

「あぁ.あの膝枕のことか」

「はっきり言うな!このバカ!」

「嬉しかったろ?」

「うるさい!」

 

校庭にはそんな楽しそうな声が響く

 

 

 

 

「カイン。楽しくやれよ」

その光景を見て、セリカは微笑んだ

 

 

 

 

 

 

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