思ったよりも長くなって作者は戦慄してます。
ちゃちゃっと終わらせる気はなかったですけどコレほどとは……w
そんなこんなで変わらず、やりたいように書いていきますよぉ!!
「ここは幻想郷だ。忘れ去られた者たちの楽園。簡単に言っちまえば、妖怪なら妖精やら他にも外の世界で住みづらくなった奴らが集まって一緒に隠れたのが幻想郷の始まりさ」
「なるほど。俺の探してる人がいればいいが」
「いると思うよ。なんせあんた、忘れてたんだろ?」
「ふっ、そうだな。期待するとしよう」
「そうしてくれ。……じゃなくて、好戦的な奴もたまにいるから気をつけてな」
「気遣い、助かる。その助言は大いに役立ちそうだ」
「……礼儀正しい割には、敬語使わないんだな」
「……敬語は苦手なんだ。気に障ったか?」
「全然。むしろ気楽でいい。そうは思わないか慧音?」
「時や場所、場合によるな。字は苦手なのはわかるが、使い分けられるようにしておいた方が敵を作りにくいぞ」
「分かっ……分かりました」
「ふふっ、今はいいさ。君の性格は大体ではあるが分かってきている。素直ないい子だな」
「いい子……なのか……?」
「慧音は教師だからな。そういう見方になるんだよ」
「教師……か。俺の知り合いにも教師がいた。今も不器用ながら優しく、教える事が得意で慕われてるはずだ」
「そうか。是非会ってみたいな。教える側同士の意見交換はいつでも有意義だからな」
「機会があればいいのだが」
「あったらダメだろ。その教師が幻想郷に来る事になるじゃないか」
早速、支度をした字、慧音、妹紅の三人は永遠亭に向かう。
字が全身打撲によって所々痛めている為に慧音が支える形で同行し、妹紅が先導する形である。
出掛ける当初は、字が痛みを顔に出す事がなかった為に気付くのが遅れてはいたが。
「おっと。ここからは気をつけて行こうか」
「……?何か危険でも?」
「いや、危険はない。だけど、悪戯好きのうさぎがこの辺りから罠を仕掛けてるんだ」
「罠?」
「本人曰く、遊びのつもりだから簡単な落とし穴程度だろうが、今のお前は怪我してるからな。念のために下をよく見るように––––––」
そう言って、妹紅は下に落ちていった。
「「……」」
下をゆっくり覗けば、結構深い穴の底で倒れている妹紅の姿が。
上手く言えないが、この時の字が感じた事。
一言で言えば、『
「「もこたんんんんんん!」」
「大丈夫か、もこたん」
「大丈夫だ。後、その呼び方やめろ」
「もこたん。もう片方の肩なら貸せるぞ?」
「慧音、お前だけなんか凄い呼び慣れてる気がするんだけど。私に隠れていつもそう呼んでたりしないか?」
「そんな訳がないだろう」
「そ、そうか」
「もこたんの目の前でもよく言うぞ」
「マジで!?いつ!?」
「んんっ。まぁ、とにかくさっきの通りだ。気を付けて歩こう––––––」
「「もこたんんんんんん!」」
「「もこたんんんんんん!」」
「「もこたんんんんんん!」」
「「もこたんんんんんん!」」
「「もこたんんんんんん!」」
「「もこたんんんんんん!」」
「あんっのクソうさぎがぁーーーー!!!」
「妹紅、キレるのは良くない。周りが見えなくなるぞ」
「そうだぞもこたん」
「うるさい!!なんで今日に限ってこんなに仕掛けてあるんだ!?ケンカならいつでも買ってやんぞオラァ!!」
「……まぁ、冗談は置いといてだ」
「慧音?今、私の全身全霊の怒りを冗談で済ました?」
「見えたぞ字。あれが永遠亭だ」
竹林の奥に存在する純和風の造りの建物。それを慧音は永遠亭と呼んだ。
ゆっくり入り口に向かう間に、字は永遠亭をしばらく眺めていた。
芸術というものが分からなくても、日本文化の美しさというものがなんとなくでも分かる建物だと感じた。
少なくとも、同じ和風であった字の自宅とは設計の方向性が違う為に、新鮮に映っていた。
字の自宅は大きくはあるものの、やはり田舎の家であり、農民が生活を営むようなイメージを持っている。それに比べるとこの永遠亭は。
(まるで、貴族の屋敷のようだ……)
字はチャイムによって中の住人が出て来るまで、ただただ永遠亭に目を輝かせていた。
「はーい、誰でしょうか」
「よう。うどんげ」
「すまない、鈴仙。連絡もなしに悪いが」
「てゐはどこだ」
「怪我人だ」
「えっ?なんて……?」
「「だから」」
「てゐを出せや!」
「治療を頼む!」
「同時に言わないでください!?というか妹紅さん!?殺気がやばいんですけど!?」
「二人とも、気持ちは分かるがはやりすぎだ。俺が言う」
そう言って、字はよろけながらも前に出た。
「はじめましてになるな。俺は字という。『文字』の『字』一つでアザナだ。よろしく頼む」
「は、はい。私は鈴仙・優曇華院・イナバと言います」
「なら、すまないが鈴仙、と。鈴仙、俺は外来人なのだが、ここへ来る時に下手を打ってな。だから此処なら医者がいると聞いて、治してもらいに来た」
「確かに酷そうですね。とにかく中へ。師匠が診察しますので御二方もご一緒に」
そう言って上げられる三人。しかし、妹紅だけは永遠亭の中を勝手に進んでいった。
呼びかけようとする鈴仙に、字は言葉を続けた。
「それで、妹紅なんだが、散々悪戯うさぎとやらの罠に引っかかり過ぎて激怒している。そちらが良ければだが……早めに下手人を差し出すことを勧める」
「……あー。……検討しておきます」
納得した鈴仙の顔は、少し諦観の表情をしていた。
「ぎゃー!?!?」
そんな感じの悲鳴が聞こえてしばらく、顔に手を当ててため息をつきながらも鈴仙は診察室に案内してくれた。
鈴仙が中に入り、促されてから二人も中に入っていく。
「こんにちは、外の人。永琳といいます。今日はどうなされました?」
診察室にいた八意永琳はそう切り出した。
「字でいい。全身が痛い。治療を願うが、治せそうか?」
「簡潔過ぎるぞ字。永琳、彼は幻想入りした際の事故で全身を打っている。こんな顔をしているが、骨折箇所もあるはずだ。応急処置は焼け石に水だが包帯を巻いている」
「なるほど。一度全身脱いで、全体の様子を見ます。後の処置は状態によりますが、しばらくはここで安静になることを覚悟してください」
「……そうか」
「……後、字さん。さっき仰った『治せそうか』という質問ですけど」
「なんだ?」
「私は医者よ。と言えば答えになるかしら?」
「頼もしい限りだな。よろしく頼む」
「では、そちらに」
軽い触診が行われた後は、骨折箇所の固定。
後は一本注射をして、用意した部屋で安静にしろとの事だった。
なんの薬をいれたのか、字が聞くと。
「言ってもよく分からないでしょうからカンタンに言うと、治りやすくなる薬よ」と返された。慧音は「それはどの薬でも言えることだろう」と思ったが、当の本人がなぜか納得していたので喉から出かけた言葉を飲み込んだ。
慧音は仕事があるからと先に帰った。字がお礼を言うと微笑み、「やはりいい子だ」とまた言われた。
妹紅は妙にスッキリした顔で病室を訪れ、「治ったら、案内する為にまた来てやる」と言って去っていった。
(いい人たちに巡り会えた)
そう思った。
彼女は、こんな世界で生きているのだろうか。
今もこの世界のどこかで、変わらずに元気にやっているだろうか。
まだ記憶は全ては戻っていない。戻らないかも知れない。
それでもいい思っていたし、今でも思っている。
彼女に会えればいい。それは変わらない。
だが。
「変わらないな」と言えない事だけは、口惜しかった。
瞼が重くなる。
早く治そう。話はそれからだ。
胸の高鳴りが、妙に大きく聞こえた。
「あー……。目を背けちゃあダメですよねぇ……」
「流石にこの部屋はマズイ……。散らかり過ぎちゃってる」
「最近ゴタゴタしてたし、注目株もいたから熱中しすぎてたかぁ。あっちゃあ、かなり昔の記事のサンプルがあるじゃないですか!捨てよっと」
「この引き出しは……あー、あの時の……か……」
「思い出したら、また恥ずかしくなってきた。小さなコラムとして掲載するだけでも恥ずか死ぬヤツですよねぇコレ……」
「あの人は今頃、元気ですか?……なーんて、ね」
……やっぱりあなたがくれたペンダントだけじゃ、寂しいですよ。
……字さん。
『もし、今二人に千里眼があったら』
字「もういるぞ」
文「なんでいるんですか!?めっちゃ怪我してる!?」
字「すぐ行くから待ってろ」
文「あーもう!!私から行きます!」
字「いや、俺から……」
文「うるさい!黙って待ってて!」
字「えぇ……」