射命丸文は伝えない   作:夢見 双月

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まず、これを読むにあたり、注意がございます。
この話から、 原作にはないオリキャラが一人ふわっと出て来ますが、バグではありません。

詳しくは『幻想郷でまったり過ごす話。』という私の作品にて、主人公をやっている青年が出てきますが。

バグではないんです。

それではどうぞ。


射命丸『文』

 いつか、俺は言った。

 

「ごめんな」

 

「ごめんなさい」

 

「……ごめんなさい」

 

 

 

「……ごめんなぁ。こんなお兄ちゃんで……ごめんなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 いつか、俺は耳にした。

 

「母親と同じように、お前が汚れる必要は無いんだよ……!!お前は!!」

 

 橋立さん。

 

 

「……ワシが出来る事と言えば。あのバカ息子と同じぐらいに、お前を愛してやることぐらいじゃ」

 

 爺さん。

 

 

「権兵衛ぇー!なぁにやってんの!……え、それ何!?美味しそう!!…………ちょっと、食べていい?」

 

 梢。

 

 

「『お前の名は「(あざな)」じゃ』。あやつが、お前のために付けてくれたお前だけの名じゃぞ。二度と忘れてくれるなよ。小童」

 

 龍之介さん。

 

 

 

 

 

 

「–––––––––––––––。」

 

 文。

 

 

 そして。

 

 

 

 

「好きだ」

 

 

 

 

「未来永劫別れようとも、君を愛し続けよう」

 

 俺自身が、確かに言った言葉。

 

 

 誰に言った言葉だったか。

 

 

 

 ……いや、分かっている。

 

 彼女に対しての、俺がしたプロポーズだ。

 

 

 ……彼女の答えが朧げなままで。それが思い出せない。

 

 

 その答えを知るだけでいいのに。

 

 

 何故こうも。

 

 

 

 

 遠いのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 『射命丸文は伝えない』

 

 

 

 

 

 

 空を飛び立つ。

 

 いつもの空。いつもの自然。

 

 巡回中の白狼天狗を尻目に、今日も私。

 

 

 

 射命丸文は、まだ見ぬネタを探しに奔走するのだ。

 

 

 しかし、ネタがない。

 最近は正直、博麗の居候についての特集ばかり書いていた所為で飽きやすい内容になっているのは否めない。

 

 だって、あの博麗の巫女が家に置く男である。その人について回った方が面白くなるのは必然、人気になるのは当然。

 

 ……だったのだが。

 

 もうそろそろ2年ぐらい経つのかな。居候が来て。

 

 ……。

 

 …………。

 

 …………言いたい事はわかる。

 

 ちょっと、書きすぎました。分かるますよ。そりゃ。

 

 だって、凄い人気だったんですから!!妖怪、甘い汁ばっか吸いたいじゃないですか!!

 

 他の記事は見向きもされてなかったし!!

 分かってましたよ!そろそろなんとかしなきゃなぁ、って!!

 

 でも、面白いネタがないから仕方ないんです!!

 

 

「でも最近、そのせいで取材の仕方忘れちゃってるんですよねぇ。霊魔さん、ホイホイ答えてくれるから……」

 

「デカイ独り言言ってるトコ悪いが、ちょっといいか文?」

 

「えっ?……へぇあ!?霊魔さん!?ぬぁぜここに!?」

 

 

「すまん、話をするが急いでる!並走して来てくれ!」

 

「えっ!?……あっ、はい!」

 

 

 

 

「植物の暴走!?なんですか、その面白そうな事態は!?」

 

「あのババ……風見幽香と色々あってな!!とにかく今、暴れてるヤツを止めに行かなきゃならん!!が、どこにいるかが分からない!手を貸してくれ!!」

 

「分かりました!!ネタの為なら何処へでも!!それで、どうします?」

 

「白玉楼にはもう向かった!後、地霊殿に向かってみる!文は神社や人里を頼む!紅魔館で落ち合おう!」

 

「任せてください!それじゃあ!」

 

 

 それを最後に、博麗の居候こと霊魔と別れる。

 

 文は全速力で飛翔した。

 

 

「先に人里の方ですかね!」

 

 

 数分もかからずに人里へ到着したが、上空から降りる事はなかった。

 

「……えっ!?……何ですかあれは!?」

 

 文は愕然と化け物の存在を知る。

 

 ラフレシアの花弁を頭部に見立てた、植物の巨人。蔓に覆われた身体を見て、文はなるほど、と合点がいった。

 

 ラフレシアとは寄生植物であり、その寄生対象のブドウ科の植物からのみ栄養を摂取する。つまり、この巨人はブドウ科の植物である蔓を完全に支配下に置いた形。その蔓を操り、人型にまで昇華したのだ。

 

 しかし、問題は規模である。

 

 それこそ、先程の霊魔という青年の言葉によって疑問は解消される。

 

「風見幽香の仕業、か。確かにあの花妖怪ならこのぐらい出来そうですねぇ」

 

 花を操ることの出来る幽香なら。

 目的は定かではないが黒幕が分かった以上、私が出ない道理はない。

 

 つまり。

 

「大スクープ発見ですね!『犯人は風見幽香!彼女の隠された本性とは!?』という見出しで行きますか!早速、ぱしゃりと一枚」

 

 本当は一枚どころでは無く、連写しているのだが。

 自分からも多少近づかないように動き、より恐ろしいアングルを探していく。

 

 すると、下の方で火を用いて立ち向かっていく青年を発見する。

 

「ん?誰ですかあれ。……大切な何かでも壊されてしまったのでしょうか。気の毒ですねぇ」

 

 あの程度でどうにかなる相手でもない。さっさと逃げて、博麗の巫女やその居候に任せてしまえばいいのに。

 

「まぁ、好きにさせればいいでしょう。そろそろ紅魔館に行かないと。やる事はちゃんとやらないとですね」

 

 

 

「霊魔さぁーん!人里にいました!結構デカいですよアレ!」

 

 早速集合場所に向かい、紅魔館正面で合流。

 門番の「えっ?何かあったんですか?」という問いを完全に無視して、二人で飛んでいく。

 

 

 

「文!お前はどうする!」

 

「任せますよ!あんなのと戦って、カメラが壊れたら嫌じゃないですか!!」

 

「……だろうな!せめて避難誘導ぐらいはしとけよ!」

 

「片手間にやっときますね!じゃあ!!」

 

 霊魔が巨人に追突していったのをカメラに収め、地面に降り立つ。

 

「博麗の居候が来ましたので、邪魔にならないように離れてくださいよ!後、私の邪魔もしないでくださいね!」

 

「そうか!」

「助かった!」

「よろしく伝えといてくれ!」

 

「はいはい、分かりましたって。それじゃあ!」

 

 適当にあしらい、記事を逃さぬようにカメラに収める。

 

「普段の霊魔さんの戦闘は、だいたい一瞬で終わるから見所ないんですよねぇ。でも、さすがにこれは苦戦しそうですし。……いっそのこと、隠された力とか解放してくれませんかね?」

 

 少しして霊魔の得物である長すぎるお祓い棒が、霊魔の手まで飛んで来た。

 上手くいなしながら攻撃を加えていく様を、しばらく傍観していた。

 

 

 

 気付いたのは、ちょっとした心当たりからである。

 

 

 

(あれ?)

 

 

 

 

 些細な気付き。

 

 

 

 例えば、集合写真から一人だけいなかった事になっていた。そのぐらいの気付きだった。

 

 

 

「さっき見た、あの子はどこだろう?」

 

 

 

 羽ばたいて、避難していった方向へ向かう。

 

 あの子がいない。一人、あの巨人に対抗していた子だけが。

 

 顔こそ見れなかったが、全体的に真っ黒な服装だったからこの中の人々と見間違えることはない。

 

 

「うぅん……。気付いちゃったけど……、完全に戦ってる場所のどこかで倒れてますよね?……邪魔しないようにしないといけないけど、それだとあの子が死ぬかも知れないし……」

 

 別にどうでもいいと思ってしまえば、それで終わる話ではあった。

 

 しかし、霊魔に避難誘導。つまりは人々の安全を任された手前、どうしても気になる。

 

 

 

 

 

「チャチャっと行って、見つけて逃げればいいでしょう!……こんなんじゃ、記者失格ですかねぇ」

 

 葛藤の末、文は救助の選択をした。

 

 

 

 巨人の方を警戒しながら、探索を進める。

 

 この時、思いの外早く探索が進んだ。

 

 というのも、あの巨人は脅威に対し、あらかじめ潰すという動きよりも迎撃という形を取っているからだ。

 

 先程、かなり近い距離まで近づいて霊魔が文に勧告を叫んだにもかかわらず、霊魔のみに対応していたためだ。

 

 お陰で、ある結論に早く達する事が出来た。

 

(道端に倒れてはいない。なら、吹き飛ばされていない限りは、倒壊した建物の中にいる……!)

 

 だとすると、答えは明確に出ていた。

 

(大半の倒壊した理由はおそらく、あの巨人の進行方向にあったから。実際、上から確認したら直線上になっていた事から、これは合ってる)

 

 そして、そう考えると明らかに不自然な一区画を目にやる。

 

(ならここの、直線上には近いだけのこの場所は?予想が正しければ、ここにあの子が倒れてるはず……!)

 

 その区画。半壊した家屋が一軒あるが、まるで上から何かが落ちて来たかのように穴が空いてる事もこの予想の根拠となっていた。

 

 

 上部分の穴から入る寸前。

 

 文にぞわりっ、とした感覚が背中を駆け巡った。

 

 

 

 

 

 床部分まで下降し、緩やかに着地。

 

 この家は殆どが瓦礫に埋もれてしまっていた。

 屋根の瓦は木片が散らばり、家具も倒れていた。

 

 しかし、文は見つけていた。

 

 

 瓦礫の山に埋もれながらも、外に出ていた右手を。

 

「ナイッスゥ!!文ちゃん天才!!これなら名探偵も楽勝ですね!……さてと、もう生きてるかは分かりませんが、ここまで来たら助けますからね!」

 

 

 そう言って、右手に自分の手を添えた。

 

 

 

 添えた。

 

 

 

「……えっ?」

 

 

 

 握った。

 

 

 

「あれ?」

 

 

 

 何故だろう。考えがまとまらない。

 

 

 

 手を握った……だけなのに。

 

 

 

「……えっ、ちょっと」

 

 

 

 瓦礫をどかす。

 幸い重い物はない。

 

 

 

「ちょっと待ってください」

 

 

 

 次々にどかす。

 腕が少し見えた。僅かながら服の袖も見える。

 

 

 

「ちょっと待って」

 

 

 

 一つ一つどかすのでは遅い。

 両手を使って掻き分けていく。

 

 

 

「えっ、そんな」

 

 

 

 カメラのレンズに砂塵がかかる。

 

 

 

「嘘っ……」

 

 

 

 うつ伏せになった背中。そして、男にしては長い髪が瓦礫から露わになる。

 

 

 

「そんな……まさか、ですよね」

 

 

 

「そんなわけない……!」

 

 

 

「そんなわけ……!」

 

 

 

 下半身に積まれている邪魔な物を力任せに取り払う。

 

 

 

「なんで……!?」

 

 

 

「いやぁ……!嘘っ……!!」

 

 

 

 自分の脚がしゃがんだまま動かなくなる。

 かつて見た青年の上半身を抱き上げる。

 

 

 

「ああっ……!あああ……!!」

 

 

 

 その青年の首にかかっているペンダントがきらりと光った。

 おもむろに文もシャツの内側に隠れている、全く同じペンダントを手繰り寄せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アザナっ……!さんっ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 返事は返って来なかった。

 

 

 

 

 

 

「うああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 文の叫びを聞いたのはただ一人だけだった。




再会。されど、それは夢見た事とは程遠く。


喜ぶがいい。少年。

幻想と嗤える願いを、世界は受け入れたのだ。

喜ぶがいい。少年。

結末の時は未だ来ず。

然るべき時に、訪れるだろう。


精々、踊り狂え。
人形。
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