射命丸文は伝えない   作:夢見 双月

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死ぬ気で1日投稿。
結構急ぎめなので、誤字などあれば報告してくれると助かります。
(早急に修正しますので!)

ノンストップで頑張りますよ!


『炭』を溶かす

 …………。

 

 

 

 

 

 ……い。

 

 

 

 ……い!!

 

 

 

 

 

 

 ……おい!!

 

 

 

 

 

 ……目を開けろ!!

 

「おい!!」

 

「……っ!?」

「うわっ!?と……俺がわかるか!?権兵衛!?」

 

 

 

 

「…………橋立……さん?」

 

 

「……ふぅう、良かった。心配させやがって。この野郎」

 

 飛び起きて驚かれたが、気が抜けたように安堵したようで、橋立はわざとらしく大きなため息を吐いた。

 

「……何が起きたか覚えてるか?」

「確か……大量の蜂に追われて……?」

「ひと昔前のアニメのようだが、それは事実だ。俺のところに住んでる居候の気まぐれさえなければ、お前は間違いなく死んでいたぞ」

 

「橋立さんが俺を……?それに居候って……?」

 

「ゆっくり話そう。お前には時間がたくさんあるだろうしな」

 

「時間?どういう……?」

 

「ここは病院だ。お前はしばらくここで入院。……ここまで、わかったか?」

 

 

「病院……?」

 

 

 

 

「……ああ。助かったのか、俺は」

 

 

 

 白い病室にはアクセントをつけるように、鮮やかな果物が置かれている。

 目覚めた後、橋立が買ってきたものである。

 

 ついでに、俺と同い年ぐらいの少女も連れて。

 

「……」

「……」

「……?あー……?」

 

「橋立さん……」

「一応聞こう。なんだ?」

「……?」

 

 

 

「事案ですか?橋立さん」

「違う!!」

 

「?」

 

 

「改めて紹介だ。コイツが俺が養ってる居候で、名前は恋。聞いての通り、意思疎通は出来るが喋る事が出来ない。……まぁ、その、色々あって家に置いてる」

 

「要するにロリコンか。橋立さん」

 

「違う!!」

 

「?」

 

 

 橋立は器用にウサギのりんごを作りながら、これまでの経緯を話し出した。

『恋』と呼ばれた女の子は、皮を剥いてもらった柑橘系の果物を酸っぱそうに食べている。

 

「恋は事情が分からんが、社会自体に疎い。箱入り娘よりもモノを知らないレベルだ。だから、最近はよく一緒に散歩をして知識を深めて貰っているんだが……あの神社に来たのはたまたまで、恋が興味を示しただけに過ぎない。だから、裏手からお前が飛び出てくるなんて思いもしなかったし、蜂の大群に狙われてる事すら知らなかった」

「橋立さんは蜂をなんとか出来たということか?」

「違う。追い払ったのは恋だ。そういうのには滅法強いんだコイツは」

「どうやって……?」

 

「……あー、あれだ。あそこ石階段あるだろう?俺、そこでくたびれちまって……。どうやって追い払ったのか……見てないんだ」

「……運動する事を勧める」

「うるせぇ。こちとらネット教師になってからまともに家に出てなかったんだぞ」

「うあぁ……!!うぅ……!」

「恋……さん、でいいか?酸っぱいなら我慢しなくてもいいんだぞ?」

「えっ?って、おい!そんな顔してまで食わなくてもいいって!大丈夫か!?」

「……ウン」

 

 

「とにかく、そっから急遽、救急車を呼んでお前を治療。入院まで至った。先生によるとかなりやばい状況だったようで、今も腫れがほとんど引いてないから辛いだろう。それでさっき、やっとお前が気付いてくれたという事だ」

「そうか……迷惑をかけて申し訳ない」

 

 話がひと段落ついて、ウサギのりんごを一つもらおうとして……一つもない事に気付いた。見れば青白い髪の無口な少女が幸せそうに頬張っている。

 彼が少し微笑むと同時に、橋立は小さなため息を吐いて果物ナイフと別の果物を手に取った。

 

「さて、今度はそっちが事情を話す番だ。ただ事ではなさそうだが……話せるな?」

「ああ……」

 

 

 

 

「彼女……記憶が途切れた原因であろう少女の行方を知るための捜索として、あの神社に向かっていた。記憶がなくなって最初に居た場所があそこだったからだ。そこで、裏手にある小道を見つけた」

「小道?」

「獣道というより、木と木の隙間に過ぎない場所だったのかもしれない。だが、何か胡散臭いものを感じてな。その先へ進むことにした」

 

「その先にあったのは、日本にいるはずのない上に通常かそれ以上に大きいラフレシアと、世界の切れ目のようなヒビ割れだった」

「ヒビ割れ?どこにあったんだ?」

「空中だ。何かモノの表面にあった訳でもない。何もない場所に亀裂が出来ていたんだ」

「亀裂……?非現実的だな。ゲームみたいだ」

「……そうだな」

「だが、実際に見たんだろ?オカルトじみてはいるが、信じるよ」

「橋立さん……」

 

「だが、お前の記憶がなくなった直後の場所に、そんなものがあるのは明らかにおかしい。少なくともお前が勘付いている通り、あの少女が関わっているはずだ」

「やはり……橋立さんもそう思うか」

「その亀裂はおそらく、異世界へ通じる道。それもこの世界より小さく、限りなく近い世界だ。その亀裂というのは『神隠し』を可視化させたようなものと言えばいいか?……その辺りの文献は読んだことがないから分からないが、この推測は当たっている」

「あのラフレシアは異世界から飛んできた存在。それなら、日本にラフレシアがいるのも納得できる。そして……!」

 

「「あの少女はその世界にいる可能性がある!」」

 

「!?」

「すまん、恋。驚かせたな。……だが、最悪なのはお前が求めている少女とその世界になんの関係もない事と、そもそもあのラフレシアがこの世界に影響を及ぼしてしまうことだ。前者の世界云々はともかく、ラフレシアに関しては早急に片をつけた方がいいかも知れんな」

「大丈夫だ。橋立さん」

「ん?何故だ?」

 

 

 

「俺がやる」

 

「……おい。お前、自分で何言ってんのか分かってんのか」

 

「ああ。俺が倒す」

 

 

 

 

「このッ、馬鹿野郎!!テメェのその怪我、何にやられたかもう忘れたのか!?ふざけてんじゃねぇぞ!!」

「……ッ」

「刑務所にぶち込んだテメェの母親とは訳が違う!!虫を操る花!?その程度でボロボロになりやがった奴にはなを倒す事なんざ出来るわけねぇだろうが!!」

 

 

「お前は弱い。……俺だって、弱いんだ。もし、お前がここを抜け出して一人で戦う事になったら……守れない」

 

 

 酷くうなだれた橋立に、恋が寄り添う。

 恋は何も言われずとも、橋立にすり寄った。

 それに気付く橋立は小声で「ありがとう」と返す。

 

「お前は犬死をするために戦いたいわけじゃねぇだろう……?頭冷やせよ」

 

「……」

 

「まだ、なんとか出来るかどうかすら分かっていないが、ただ無謀に行くのは早すぎる。……すまない、怒鳴って。出直すよ」

 

 そう言って、恋に合図を出して席を立つ橋立。

 ドアノブを開けるために手を掛けようとして。

 

「出直す必要はない」

 

 その直前に開け放たれたドアの前に、見知ったかおの老人が立っていた。

 

 

 

「……お、親父」

「……龍之介さん……」

 

 

 

「橋立、車を出せい。外出許可はワシが無理やり取った。……お前も来い」

 

「お前に伝えねばならんことがある」

 

 

 

 

 

 

「お、親父……」

「黙って運転しろ。橋立。そこの嬢ちゃんのように、礼儀正しくな。聞きたい事があるじゃろうが、それはお前に言える事ではない。権兵衛の方にのみ伝えるべきじゃ」

「……。分かったよ」

 

 橋立の車は五人乗りの軽自動車である。龍之介が助手席に座る以上、運転免許を持っている橋立が運転席に乗り、恋と橋立は必然的に後ろに乗る事になった。

 

 恋の青白い眼が彼を凝視する。

 

 とても珍しそうな顔をしながら覗く純粋な目を向けられ、彼は少し戸惑った。

 

「さっきは助かった」と、病院から出る時に手を貸してくれたことのお礼を言うと、真顔のまま顔を傾けた。

 

 まるで、何を言っているかわからないようだった。

 

 しかし、「ありがとう」と言い直せば恋の口角が僅かに上がり、微笑んだ。

 

 小さな変化ではあるが感情が分かりやすい娘だな、と思った。

 

 

 腫れた痛みがじわりと蝕むなか、彼が口を開く。

 

「龍之介さん。何処へ向かってるんですか?」

 

「ん?……おお、行き先を橋立に告げた時に、お主はお嬢ちゃんに手助けされて病院から出ておったから知らんのか」

 

 

「お前の家じゃよ。

 そしてお主に伝えなければならぬ事。それは……–––––

 

 

 

 ––––……あの少女の正体。そして、記憶のない間に何があったか、じゃ」

 




龍之介が語るのは、彼にとっての希望か。または。

境界の狭間に見えるは幻想の都。

せめて、彼の選択が鈍らぬよう……。

とぅー・びー・こんてぃにゅーど。
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