結城友奈は恋人である   作:愚民グミ

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あの子が生まれた時、俺達家族に神樹様の加護があったことを、俺は心の底から喜んだ。

疲れ果てて憔悴しているが、嬉しそうに、誇らしげに、愛しそうに生まれてきた子供を抱く妻。
俺を見て、「これからもよろしくね、『お父さん』?」と悪戯っぽく笑っていたのを今でも覚えている。

我が子を抱いてみると、小さいながらも、腕に伝わるしっかりとした重みと体温が、この子がこの世界に存在する証のように感じた。
思わず頬擦りして、「生まれてきてくれてありがとう。愛してる」と呟いた…………。

あの子に、勇者適正があると知ったのは、それから暫くしてからだった。


#1「ベゴニア(愛の告白)」

【1】

 

俺の名前は西村 大地。

 

讃州中学二年の普通の男子中学生だ。

先にこれだけは伝えなければならないので、単刀直入に言おう。

 

俺はクラスメイトの結城友奈さんに「恋」をしているらしい。

 

……らしいと言うのも確証がないからだ。はっきり言って、自分が恋をしている状態なのか自信がない。

一説では脳内麻薬が産み出した現象に過ぎない恋を、俺が今している、というのも友人に相談したところ爆笑されながら答えられたからそうなのだろうと思っただけだ。

 

きっかけは、彼女が所属する『勇者部』の活動をしていた姿を見た時だったと思う。

日曜日だったその日、日課になってるランニングをしていた時に、俺の前を猫が慌てた様子で飛び出してきた。ぶつかると思ったから、俺も猫も驚いて急ブレーキをかけて止まったところに

 

「つっかまえたー!」

「フギャー!?」

「おっとと、大丈夫だよ~」

 

猫の後ろから赤い髪の女の子が現れて猫を捕まえた。

猫は突然持ち上げられたのに驚いたのかバタバタと空気を引っ掻いて抵抗する。女の子、結城さんが落ち着かせるように撫で続けるが、尻尾を膨らませ威嚇してきている。

 

「あっ、ごめんなさい、驚かせて!」

「いや、俺は大丈夫だけど、何をしてるんだ結城さん?」

「え?えーっと……確か同じクラスの……」

「西村だ。……その猫、どうしたんだ?」

「あ、この子ね、最近家に帰ってなかったみたいだったの。それで飼い主さんが心配して、私達が探してたんだ。でも見つけた途端に逃げたしちゃって」

「ほう。……ん?この猫、なんだか乳房が張ってないか?」

 

よく見ると、猫の乳房が膨らんでいる。近所の家で飼っていた猫も出産直後はこんな感じだった気がする。

 

「えっ?あっ、なんかおっぱいおっきいね!」

「ひょっとして外で子供を産んだんじゃないか?それで子育てのために帰ってこなかったとか?」

 

猫の出産は静かなところで行われると言う。もしかしたら飼い主に気を使ったか、ジロジロ見られるのが嫌で家を出たのかもしれない。

それから母猫は子供から離れないとも言うが、今は餌を取りに行ってたのかもしれない。そこを結城さんに発見され、追ってくるから逃げていた、というところか。

 

「てことは子猫も探さないとだね!えーっと……」

「まずはそいつを離してやれ。さっきから子供のことが気が気でしょうがないんだろう。多分すぐそばにいるはずだ」

「うん、それしかないよね。よーし!絶対に見つけるよ!」

 

そっと結城さんが猫を下ろすと、一目散に子供の元に向かって駆け出した。俺と結城さんは一緒に猫を追跡した。

流石に猫が通る道なので、狭く、所々迂回を余儀なくされたが、無事子猫達も発見した。すぐに飼い主に報告し、親子共々回収することが出来た。

 

「ありがとう、西村くん!おかげで助かっちゃった」

「いや、別に大したことはない。……しかしいつもこんなことをしてるのか?勇者部というのは?」

「うん!後は保育園でレクリエーションをしたり、部活の助っ人、海岸のゴミ拾いとか!」

「……なかなか大変なんだな」

 

人があまりしたがらないことを勇んでやる。

だから勇者部。

……というのは聞いていたが、思っていた以上にやることが多岐に渡っている。それをするのは大変だろうと思ったら……。

 

「ううん、そんな事ないよ」

「?」

「だって、私の力が誰かの役に立ってるなんて、凄いことだと思わない?だから私、勇者部が凄く好きなんだ!」

 

……そう言った彼女の屈託のない笑顔を見た時、心臓を鷲掴みにされたかのような感覚に陥った。

 

それ以来、暇さえあれば彼女の姿を探している自分がいた。

東郷三森さんと談笑する彼女をボゥっと見てたら昼休みが終わっていたことがあった。(後で友人達から「気持ち悪いくらいジーっと見てたから声をかけ辛かった」と言われた)

廊下ですれ違った時に鼓動が早くなるのを感じた。(不整脈かと思って病院に行ったら医者から変な顔をされた。何故だ)

体育の時に体操服姿の彼女を見てたら側頭部に硬球が当たったことがある。(幸いたんこぶですんだ)

 

このように、彼女を意識するとこのような症状が現れる。しかし、これが果たして「恋」というものなのかはまだよく分からない。

 

それに恋をするにも何も、俺は結城さんのことを1クラスメイトくらいの情報しか知らない。彼女の人となりもクラス内での部分でしか知らない。

 

そこで俺は彼女を知り、そして少しでも近付くために、サッカー部を辞めて勇者部に転部しようと部長の犬吠埼風先輩の元を訪れた。…が、

 

 

「……うーん、残念だけど、君を勇者部に入れるわけにはいかないのよね」

「何故ですか?定員がある部活なんですか?」

「……はっきり言うわ。貴方にはあるものが足りないのよ」

「足りない物……一体何が足りないんですか?」

「それは……」

「それは?」

 

 

「女 子 力 よ !」

 

 

どうやら勇者部には「女子力」という能力が必要らしい。

流石は勇者の名前を冠する部活。並大抵じゃないな。

そもそも女子ではないので女子力なるものは発現しない……。仕方ないので俺は入部を諦めた。

 

 

 

 

【2】

 

「はっはっはっはっ!お前、完全に犬吠埼にからかわれたな!」

「そうなんですか?」

「当たり前だろ?まあ、女所帯の部活に男が突然入っていくのはどうかと思うのは確かだがな」

 

昼休みに弁当を食べながら、皆から『イワ先生』と呼ばれ親しまれている副担任に相談したら爆笑されてしまった。

 

奥さんと高校生の頃に大恋愛の末にゴールインしたというこの先生に頼ろうとした数分前の自分を呪った。

 

こちらは日常生活に支障をきたすほどの深刻な問題なのだ。笑い事ではない。

最近では寝る前にあの笑顔が瞼の裏でチラついて、興奮してよく眠れない。

今日も3時を過ぎた頃にようやく寝れた。そして夢の中であの日のあの笑顔と台詞がリピートされて飛び起きる、というサイクルを繰り返している。

はっきり言って今も眠い。

 

「そこまで行ったら完全に恋だよ。お前は無駄に真面目だから考えすぎるんだよ。ここはガツンと告白すれば良いじゃあないか」

「しかし確証がないのに告白しても迷惑なだけでは?」

「いいか?人生は短い。その中でも思春期は更に短く、中学生なんて本当に一瞬の出来事だ。悶々としてるうちに卒業して、会えなくなって、言いそびれて後悔するくらいならさっさとケリをつければ良いじゃないか」

 

……最もらしいことを言っているが、単に面倒臭くなって適当な回答を投げただけのようにも感じられた。

しかし、一理ある。

これが一時の気の迷いなのか分からないが、それでもさっさと決着をつけておくべきだろう。その内、結城さんに迷惑をかけることになったら忍びない。

 

「先生、ありがとうございました。早速告白してきます!」

「え、嘘だろ?おいおいおいおい!?」

 

後ろから先生が何か言ってるのは聞こえたが、思い立ったが吉日、善は急げ。俺は結城さんに告白するため、彼女を探しに廊下に出た。

 

……………………

…………………

……………

…………

………

……

 

「友奈?友奈なら多分東郷と一緒じゃない?あの子達いつもワンセットだし……だから入部は許可できないって」

 

「え?友奈さんと東郷さん?え、えとえと、分から、ないです……あの、ごめんなさーい!」

 

「友奈ちゃん?それならさっきトイレに行きましたよ。……ところで、友奈ちゃんに、一体、どのようなご用件ですか?聞いてもいいですか?」

 

……結果的に言えば結城さんとは会えなかった。目が全く笑ってない笑顔の東郷さんに質問責めにされ(逃げようとすると車椅子を巧みに操り退路を潰してくる)、余鈴がなるまで解放されなかったからだ。

東郷三森……恐ろしい人物だ……。

 

しかしこのまま引き下がるようなことはしない。何としてでも彼女に会わなければ。

だが、帰宅部になった俺とは違い、彼女は放課後に勇者部の活動がある。つまり放課後は彼女に会うことができない。

 

……仕方ない……、明日出直すか……。

 

そのまま恙無く学業を終え、放課後となり、それぞれが部活へと向かっていく。結城さんと東郷さんも例外ではない。俺もさっさと帰って今日勉強した範囲を復習をしなければ。

 

そう考えて鞄を担ごうとした時だった。

 

「ねぇ、西村くん」

「 ? なんだ?」

 

不意に隣の席の眼鏡をかけた女子が声を掛けてきた。彼女とは特に仲が良いわけでも悪いわけでもないが、あちらから声を掛けてくるのは珍しい。

 

「この後って暇?」

「そうだな。サッカー部も辞めたし、時間がない訳じゃない」

「良かった。ならさ、ちょっと4時半頃に体育館の裏に来てくれない?」

「 ??? 何故だ?」

「良いから良いから、待ってるからね!あ、動きやすい体操服で来てね!」

「分かった」

 

それだけ言うと彼女はさっさと鞄を担いで友達が待つ教室入り口へと行ってしまった。

……よく分からないが、俺は体操服に着替えるため、更衣室に向かった。

 

 

 

【3】

 

体育館裏は、誰も近付こうとしないような場所だ。

というのも、日当たりが悪くジメジメとして肌寒い上に、時々用務員さんが草刈りをしてくれるのだがそれでも雑草達が勢力を広げようと背を伸ばしている。時々ここで誰かがサボりに来るのか、空き缶や空の袋がそこらじゅうに落ちている。

……言われた通りに体操服で来たは良いが、俺を呼び出した彼女はまだ来てないらしい。

待っている間、時間が勿体ないので、俺は草むしりとゴミ拾いを始めることにした。

残念ながらゴミ袋は持ってきてないのでゴミを一ヶ所にまとめて後で袋に詰めることにした。

そもそも何故こんなにゴミが捨てられているのだろうか……。

この大地は神樹様の加護で成り立っていると聞いたことはあるので信心深い者はこの光景を見て罰当たりだなんだと言うだろう。

俺はそこまで信心深い訳ではないが、見ていて気持ちのよい光景ではないのは確かなので、ポイ捨てを見ると拾ってしまう。というか何故ゴミ箱に捨てない?酷いときはポイ置きもあるが、置くくらいなら捨てろと思う。

そんなことを悶々と考えながら、俺は雑草とゴミを片付けていった。

 

……………………

…………………

……………

…………

………

……

 

暫くの間、黙々と一人、なかなか頑固な雑草に悪戦苦闘していると近付いてくる足音が聞こえた。

 

やっと来たらしい。一体どんな用件でここに呼び出したんだ?

 

俺は手に付いた泥を落として足音の主に振り向いた……瞬間、俺の時が止まった……。

確かに来たのは女子だった。ただ、来たのは眼鏡の女子ではなく、俺が探していた、しかしここに来ると予想だにしなかった人物。

 

「遅くなってごめんなさーい!勇者部所属、結城友奈!ただいま参りました!……ってあれ?西村くんだったんだ」

 

ビシッと敬礼する結城さん。

彼女を見た瞬間、全身の血液が沸騰するのを感じ、心臓が突然早鐘のように鳴り響く。確かに喉は渇いていたが、ここに来て一気に舌が張り付きそうなくらい渇き始めた。

しかしこのまま固まったままという訳にはいかない。張り付く口をなんとか動かして言葉を紡ぎ出す。

 

「……なんで君が?」

「え?さっき勇者部に依頼が来てて、私にここの草むしりを手伝ってって。西村くんじゃなかったんだ」

 

成る程、勇者部の依頼で来てたのか。無論、俺が出した訳ではない。なんという偶然。

 

「って草むしりしてたの!?軍手もしてないし!」

 

そう言うと俺の手を取ってくる結城さん。

全身に鳥肌が立つ。毛穴が開いて変な汗が出てくる。心臓が更なるビートを刻む。

なんだこれは?俺の身体はどうなってるんだ?

 

「手も傷だらけだし、軍手もしっかりしないと駄目だよ」

 

俺の手を労るように掴んで、軍手を握らせてくる結城さん。俺の方は馬鹿みたいに彼女の顔を見ていた。

 

一切の曇りのない透き通った赤い瞳、意外と長い睫毛、スッとした鼻筋と小さな鼻、俺の片手で包み込めそうなくらい小さな輪郭、薄い桜色の唇……全てが俺とは全く違う存在のような彼女の顔から目が離せない……これが見とれるという状態なのか……。

 

「 ?? どうしたの?」

「……なんでもない。それより、草むしり」

「あ、そうだね!よーし!頑張ろー!」

 

元気一杯にそう自分を鼓舞する彼女を見てると、心臓が糸で締められるような感覚に苛まれる。

 

また不整脈か…どうやら今日が俺の命日になるようだ……。

思わぬことで自分の死期を悟ってしまった。

 

その後は俺達は話ながら草むしりとゴミ拾いを始めた。

 

「そしたら樹ちゃんが魔王テーマ流し始めたんだよ!」

「そうか」

「そしたら風先輩がノリノリになってね!」

「そうなのか」

「でも、そこで東郷さんが機転を聞かせてくれてね!」

「凄いな」

 

基本的に彼女の口から飛び出すのは勇者部のことだ。特に東郷さんの辺りはかなり饒舌になる。

そんな彼女の話に耳を傾けながら、俺達は草むしりとゴミ拾いに性を出した。

 

まるで夢でも見ているような浮遊感を感じる。彼女の鈴を鳴らすような可愛らしい声には何か人を高揚させるでもあるのか、聞いているだけで心が浮き足立つ。

……俺は今、もしかしたら凄く楽しいのか……。

 

「……くん。西村くん。西村くん!」

「ん?」

 

ふと、結城さんが声をかけて来ていたのに気が付く。思ったより作業に集中していたらしい。校舎の隙間から西日が差しているのがみえた。普段の俺でもここまで集中してできない。彼女の声にはどうやら集中力を更にアップさせる効果があるらしい。

 

「はい、ジュース。さっき買ってきたんだ」

 

そういって彼女はオレンジジュースの缶を差し出してきた。

 

「いつの間に」

「西村くんがほとんどやってくれたから大分綺麗になったんだよ。それでさっき、休憩しようって声かけたんだけど、全然気付かなかったし、ささーっていって買ってきたんだ。……ごめんね、本当は私が頑張らなきゃなのに」

 

……集中し過ぎて気付かなかったが、周りを見渡すと雑草やゴミは既に山のように積み重ねたゴミ袋の中。最初俺が来た時に見た背の高い雑草の芝生はなく、乾燥を始めた地面が広範囲で見えていた。

個人的にはもう少しやっておきたいところだが、今回は俺一人ではなく結城さんもいる。

俺は彼女と休憩を取ることにした。

 

「…………」

「…………」

 

……並んで体育館の軒下に移動したが、何故かお互いに無言になってしまった……さっきまで彼女から話しかけてきたのに、何故だ。

 

「結城さん」

「え、何?」

「さっきの勇者部の話、どうなったんだ?結局、劇は成功したのか?」

「え!?聞いてたの!?」

「ああ」

「そっか~。てっきり私の話、面白くなかったかなーって思っちゃって。私ばっかり話しててつまらなかったかなって」

 

……なんということか。どうやら彼女に勘違いさせてしまったらしい。

 

「すまん。あまりに楽しそうに話すものだから、あまり口を挟みたくなかったんだ……聞いてて楽しかったんだが、誤解させてしまったな」

「ううん、私こそごめんね。早合点して」

 

そういって苦笑する彼女。……ふと、良い機会だからある疑問をぶつけてみた。

 

「結城さん、何故君は頑張れるんだ?」

「え?」

 

ここ数日の結城さんの行動を振り返ってみると、彼女は常に誰かの為に何かをしている姿ばかり見た気がする。

常に周りに気を使い、自分が出来ることをしようとする。その行動の原動力が気になった。

 

「それは簡単なことだよ」

「?」

「私、嫌なんだ。誰かが傷付いたり、辛い思いをするのを見るのが。だから、私が勇者である理由はそれで十分だよ!」

 

そう言って、また、あの日と同じ笑顔を見せた。

見たものを勇気づけ、誰よりも率先して困難に立ち向かおうとする、強くて優しい人間にしかできない笑顔。

そして彼女は、結城友奈はその笑顔の花を咲かせることができる人間なのだ。

そして、その笑顔を見た瞬間、

 

 

 

 

 

「好きだ」

「…………はえ?」

「好きだ、結城友奈」

 

 

 

 

 

……俺の口からは自然と言葉が出てきた。

 

ああ、ようやく、ようやく理解した。

この感情、この胸の中で今正に嵐の如く渦巻くこの感情。

彼女を見ただけで世界は色めく。

彼女の声を聞くだけで心が舞い踊る。

彼女の笑顔を見るだけで、彼女が存在するこの世界が素晴らしいと感じる。

 

これか。この感情こそが「恋」……いや、もはや、

 

 

 

 

「『愛』だッ!!!!」

「あ、あい……?」

「そうだ、結城さん。俺は君のことを愛してしまった。好きになってしまった。恋をしてしまった。君のいるこの世界もろとも、君が愛しい。君の笑顔は最高だ。その笑顔を見ただけで、それを見ることができた自分が生まれてきたことを感謝してしまうほどに。君の細やかな心遣いは本当に痛み入る。さっきも俺の手を気にしてくれたり缶ジュースを買ってきてくれたり、君はまるで慈愛の化身だ。その曇りのない瞳も素敵だ。一切の迷いがない、ただ希望のある明日を信じて疑わない真っ直ぐな視線に俺の心は射抜かれたのかもしれない。茜色のようなその髪も良い。サラサラとしていて今すぐにでも触りたくなる。

とにもかくにも結城さん!」

「は、はいぃ!!??」

「俺は君が好きだ!君の全てが好きだ!君を構築する全ての要素を愛している!俺と、結婚を前提に付き合ってください!」

「…………………………………………………ッ!!!!????」

 

顔、というか全身を真っ赤にさせてプシュープシュー!と湯気が上がっているように見える結城さん。口をパクパクさせて目尻に涙を浮かべている。

俺はその涙が勿体ないと思ってしまって指で掬い上げると彼女はビクッ!と全身を震わせる。

実に小動物的で可愛らしい。更に好きになった。

 

「………………………ごっ!」

「ご?」

「ごーめーんーなーさーいーーーーーー!!!!!!」

 

結城さんは一瞬で俺に背を向け、一目散に駆け出していってしまった……あっという間に見えなくなるほどの俊足だった……。

 

……返事は貰えなかったが、仕方ない。また明日会えるだろう。

 

そう思った俺はすぐに切り替えて、ゴミ袋を担いでゴミ置き場に向かう。

 

その道中も、足は軽快なステップを踏み、眉尻や口角は無意識に上がっていた。

すれ違った同級生や先生方がまるで妖怪にでも出会ったかのような奇妙な表情をしたり小さく悲鳴をあげて足早に道を開けてくれたが、今はお礼をいう余裕がない。

 

自覚してからはもう彼女の顔が頭から離れなくなっていた。世界が数時間前とは違い、神聖な光を放っているようにすら感じている。

 

これが、恋。

 

そう言えば、前にスマホで読んだ西暦時代のマンガにこのような名言があったのを思い出した。

 

恋はいつでも、ハリケーン!

 




「結城友奈は恋人である」、読んでいただき有り難うございました。
この小説のテーマは「愛」。過酷な運命にある勇者達を取り巻く、友愛、家族愛、親愛、そして恋愛を書いていけたら良いな、と思っています。
以下、登場人物紹介になります。

・西村 大地(にしむら だいち)
身長・体重:170cm・68kg
好物:うどん(特に月見)
好きなタイプ:結城友奈(というか彼女以外でここまで好きになったことがない)

この物語の一応の主人公。
普段あまり表情が変わらない無表情な中学2年生。
結城友奈、東郷三森と同じクラス。元サッカー部(DF)
真面目で決断力に優れ、一度ハマると異常なレベルの集中力と執着心が特徴。
特に集中力は、ボール磨きを頼むと完璧に磨ききるまで、もしくは誰かに羽交い締めにされるまで延々と続けたり、空腹と寝不足で倒れるまで数時間勉強をしたりするなど、兎に角限界知らず。そんな異常な集中力を一人に向けられれば当然……。

・イワ先生
友奈達のクラスの副担任。面倒見がよく生徒の相談に良く乗ってあげている。愛妻家で、最近の悩みは反抗期の息子が素っ気ないこと

・眼鏡の女子
一期1話で友奈に部活の助っ人を頼んでいた眼鏡っ子。
勇者部に友奈に名指しで体育館裏の草むしりを依頼したのは彼女。隣の席の無表情男の片思いを後押ししてやろうと考えての行動で、実は告白シーンでもこっそり出歯亀してたが深く後悔することになる
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