転生オリ主チートハーレムでGO(仮)~アイテムアビリティこれだけあれば大丈夫~   作:バンダースナッチ

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CHAPTER.1 異端たる者
プロローグ


白い世界に立っている。今自分の体に何が起こったかは理解できない……そしてこの状態になった心当たりも無い。

 

 自分は直前まで机に座って読書をしていただけだ、間違っても変なフラグを立てた記憶はない……はず。

 

「こんにちわ」

 

 後ろから声をかけられた、どこまでも続く白い世界に他に人などいないと思っていた矢先に。振り返るとローブをまとった男性が立っている。

 

「えーっと……こんにちわ?」

 

 時間から言えば夜だったような気もするが、この状況じゃ大した意味を持たないか。

 

「突然ですまないね、偶然ではあるが君は選ばれた」

 

 男の歳は50代位だろうか? ローブに隠れて完全に顔を見ることは出来ないが、僅かに除く範囲からシワがある事からその程度かと推測できる。物腰は柔らかく、態度は紳士然りとしている、口調からもそれが分かる。

 

「選ばれたって……これはあれですかね、所謂テンプレ乙?」

 

 二次小説などに代表されるソレかとも思ったが、その言葉の意味を理解出来ていないのか、男は少し困ったような仕草をしていた。

 

「ふむ、文化が違えば思想も変わる……か? いや、しかしこの状況に少しでも落ち着いていられるならこちらとしては有難い話だ」

 

 こちらとしては少し前まで盛大に慌てていたのだが……まぁこうして誰か自分以外の人間がいるのであれば多少は落ち着けるというものだ。相手がこちらに接触してきて、かつ先ほどの発言を考えればこの状況を作ったのは目の前の男性であるということでもある。

 しかし……もしかすると本当にテンプレ乙、つまり神様のミス→死亡→転生 この流れである、テンプレというよりは手抜き……とも最近は言われるようになってるらしいが。

 

「それで、これは一体どんな状況なんですかね?」

 

「ああ、すまないね……まず君は死亡した」

 

 男の発言に驚くと同時にテンプレでの流れが一つあたっていた事に軽く絶望した。

 これで相手のミスであり、目の前の男性が神だったら完璧だな……。

 

「ふむ、自分が死亡したと聞いて随分と落ち着いていられるね」

 

「そう言われましてもね、実感ないですしその証拠もない……まぁこんな変な空間に放り込まれたら信じざるを得ませんが。

まさかとは思いますが、あなたのせいで……ということはないですよね?」

 

 一応の確認である、別に大した意味は無いが。

 

「いや、それは君の寿命だったのだろう。詳しい原因は私にも分からない。

しかし君が実感が無いという事は、ほぼ苦しまずに突然……といった状況ではないかな」

 

 そういう事を言いたいわけではなかったのだが。しかし人間死に方など様々であるし、これが夢であれ、現実であれ今は話しをすすめる方が建設的か。

 

「それで、その死んだ俺に何か御用で?」

 

「ああ、君にはこれからある世界の一つの歴史に参入してもらいたい。

その為に死亡した人間でかつその世界についての知識を持っている者が必要だった」

 

「それがその時に該当したのが俺……だったという事ですかね?」

 

 なんとも気の遠い確率の話である、人間はその瞬間に沢山死んで同時に沢山生まれている、その中で選ばれるってどんな状況だよ とも思ってしまう。

 

「その通りだ、参入してもらいたい世界はイヴァリースと呼ばれる国家、歴史時期は50年戦争と呼ばれる戦乱の中期からだ」

 

 非常にダメな単語が幾つかある……というかファイナルファンタジータクティクスか 随分と懐かしものを、とそこまで考えた所でやっと理解できた。

 つまりFFTの世界を知る人間が条件に含まれるならばその絶対数は随分と落ちることになる、それは確率が跳ね上がるという訳で……。

 

「しかし俺がその作品をプレイしたのは随分と昔だし、今更思い出せることなんて少ないですよ? あなたの目的が何か分かりませんが期待に添えるかどうかで言えば随分と怪しい」

 

 FFT自体をプレイしたのは中学の頃にまで遡る、つまりは十数年だ。自分の記憶に相当の自信が無ければ無理であろうものだし、何より自分はそこまであのゲームをやりこんでいない。

 

「それについては問題ない、ただそういう世界であると知っているだけでいい。

そして君にやってもらいたい事は言ってしまえば特にないんだ」

 

「……は?」

 

 一瞬意味が理解できなかった、そのこちらの反応に若干の満足を得られたのか、口元が少し笑っているように見える。

 

「そうだな、目的で言えば君をあの世界に召喚する事だ。それが私の目的である

故に君が彼の世界でどうするかは君自身で決めればいい」

 

「はぁ、まぁよくわかりませんが……どうせ死んだ身ならなんだって構いませんけどね。仮にコレが夢ならそれで良し、現実なら……なるようになりますか」

 

 結局の所自分に選択肢があまり無い事に思い至りそう返す。死んでいる事が事実にせよ虚偽にせよそれを確かめる術もなく、生き返る、もしくはこの白い世界から脱出する術もない。

 しかし、それとは別に一つ思う事もある……ここまでの流れで自身がそこまで特別な存在でも無い事は解ってもらえていると思う、つまりFFTの世界に行くに当たって今の自分では自殺行為だという事だ。

 

「それで、あちらの世界に参入するに当たって俺に何か恩恵は与えられるんですか? 自慢にもならないが俺は戦う術なんて一切ありませんよ」

 

「ないなら身につければいい……しかし、こういった状況で私からお願いする立場ではある事も事実だ。

どうだろうか、私に出来る範囲になるが一つ望みを叶えるというのはどうかな?」

 

 やはり世の中言ってみるものだ、望める範囲の上限が気になるが。

 

「じゃあ、俺に平和に暮らせるようにして下さいよ」

 

「それは不可能だな、勿論平和に暮らそうと思えば出来るかもしれないが……

私の力で恒久的に君に平和を与えることは出来ない。

出来ればもっと分かりやすい形にしてくれると嬉しいのだが」

 

 再び目の前の男性は困ったような仕草をとった、というか神様……とは自称していないか、こうした力があるなら少しくらい頑張ってくれと言いたい。

 何よりないなら身につけろとかどこのマリーさんですかと言いたい。

 

「分かりやすい……ですか」

 

 これから幾つかの提案をしてみた、超絶チートボディ下さいとか、魔力無限!とか、まぁ幾つかのチート的なものをだ。

 しかしそのどれも不可能と言われてしまった、人の形を成さなくていいならどうとでもなる……と言われたので流石にそれは丁重にお断りした。

 

「君も色々と思いつくものだね」

 

「関心されても、こちらとしても戦争の中に放り込まれるのだからそれくらいは求めますとも」

 

 平和な世界であればこちらとしても気にはしないのだが。そう考えて居ると目の前の男性は少し慌てだした、まるで時間を気にするような。

 

「ふむ、いかんな……もうすぐで時間がきてしまうな」

 

「……え? いやいや、ちょっと流石にそれは」

 

 まだこちらの願い一つが叶えられてないのに、というか時間制限があるなら早めに言ってもらいたかった気もする、今更だが。

 そうしているうちに自分の足元に黒い円陣が浮かびだした。中には幾何学的な文様が書かれており、淡い光を放っている。

 

「ちょっと! これって本当にもうすぐって事ですかね!?」

 

「うむ、私自身も少し時間を見誤っていたようだ」

 

 男性のほうはもう既に落ち着きを取り戻しているようで、右手を顎につけながらこちらを観察している。

 

「君がどういった生き方をするかは興味がある、しかし君と会うことは最早ないかも知れない……ああ、私の名前を言い忘れていたな」

 

「ちょっと! そんな事よりこれをどうにかして遅らせてもらえませんかね!?」

 

 既に体の半分が埋まっていっている、別に不快な感じはしないが徐々に自分の体が沈んでいくというのは精神衛生上宜しくない。

 

「私の名前はアズラエル・E・デュライ、私は君の生き様を見届けよう」

 

「ちょっと! そんなことより首まで……ああ!?」

 

 すでに顎まで埋もれてきている、このままでは何も持たないまま世界を渡ることになってしまう、そう焦ってきた時に一つの単語が思い浮かんだ。

 かつてあのゲームをプレイした時に使った一つのデータディスク、その中に入っていた内容を

 

「良き人生を」

 

「あ……アイテム・アビリティこれだけあれば大丈夫!」

 

 そう言葉を発し、体が全て円陣の中に飲み込まれた。

 

―――――

 

 白い空間は壊れ、古びた屋敷へとその景色は変わった。

 

 部屋に佇んでいるのは先ほどフードを被った男性のみ

 男は消えていった円陣を見つめながら呟いた。

 

「ふむ、最後の内容なら出来ないことは無いか……いや、赤子から始める事になるのならアビリティは制限がついてしまうか……」

 

 男は机の上に置いてある魔道書を閉じ、一つの本を手にとった。

 

『デュライ白書』

 

 その本は古く、既に形をなしているのがやっとという古書である

 男―アズラエルは何かを考え、それを打ち切った。既に賽は投げられたのだから。

 その手には一つの輝く石があった。




12/4一部改訂
デュライ白書・400年目の真実→デュライ白書

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