転生オリ主チートハーレムでGO(仮)~アイテムアビリティこれだけあれば大丈夫~   作:バンダースナッチ

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第15話

 轟音と同時に来た衝撃により、前線を築いていた部隊は吹き飛ばされた。

 その衝撃の正体は召喚魔法、魔力と契約をもって幻獣と呼ばれる強大な存在を現世に解き放つものである。

 

 そしてその被害は最前線で戦っていたダレンにも、当然のように降りかかっていた。

 巨大な火炎を咄嗟に盾を構えて受け止めようと試みたが、その圧倒的とも言える力によって周囲と同じく吹き飛ばされる結果となった。

 しかし、吹き飛ばされ意識が途切れたが、戦場に慣れたその体はいち早くその役目を回復させようとした。

 

「……ぐっ!」

 

 気を抜けば倒れてしまいそうになる体にムチを打ち、強引に立ち上がろうとする。しかし、それをさせまいと距離を詰めて斬りかかってくる敵兵が視界に入った。

 

「止めだ!」

 

「ちっ! ……ぐぬっ!」

 

 体勢を立て直そうと、斬りかかる兵の剣を盾で受け流そうとした……しかし、その構える動作に全く手応えを感じることができず、そのまま切りつけられてしまった。

 敵兵を蹴り飛ばし、自身の体の異常を確かめようと僅かにその視界を下げた……そして……。

 

「左腕を持って行かれたか……それに左足も骨が逝ったか」

 

 あるべきはずの腕は無く、常に自分を守り続けてきた盾も無かった。足も多少動く分には問題無いが、走ることは叶わないだろう。

 

「くそ……この死にぞこないが!」

 

「確かになぁ……だが、簡単にくれてやる訳にはいかんなっ!」

 

 左手が無くとも右手がある、盾は無くとも武器はある。ならば十分だ、そう自分に言い聞かせ、そして実行していく。

 迫る敵の胸部にフレイルの一撃を与え、その命を奪う。さらに次の兵の集団が向かってきているのを確認し、周囲に倒れている者達を見渡す。

 息があるものも居るが、その大半が既に事切れている。悔しさと怒りがこみ上げてくるが、今はそれを考えている場合ではないと感情を抑える。全身の痛みを押さえ付け、敵集団へと構えたところで後ろから誰かがやってきた。

 

「隊長! ご無事でしたか!?」

 

「ウェイン、それにロミルダか……お前たちの方は無事だったようだな」

 

「ダレン隊長は……その腕は……」

 

「なに、焼けたおかげで止血は済んでおる」

 

 こちらへと近づき、両サイドで武器を構える二人の騎士。中央歩兵隊の副隊長である二人の若い騎士である。ウェインはフルプレートに兜、自分の身長にわずかに欠けるほどの大きさの盾を装備し、ロミルダはウェインとは逆にハーフプレートに両手剣という攻撃的な装備である。

 また彼らの隊も到着し、再び隊列を組み直そうとしていた。

 

「ウェイン、お前は私の代わりに指揮を取れ。

ロミルダはまだ息のあるものを回収して後退しろ」

 

 だがしかしと、ダレンは二人へ指示を出す。この状況ではこの場で無理に戦線を立て直しても被害が大きくなる。ならばここは一度後退するべきだろう。

 そして自身が後退したところでどこまでこの体がもつかは分からない。ならば、この若い二人の騎士に指揮権を渡し、任せるべきだと。

 

「何を……隊長はどうするつもりですか?」

 

「私はここで後退を援護する、さあ急げ! ウェイン、全体の指揮はお前が取れ。恐らく後方からブランシュ様の隊が援護に回る。合流して押し返すのだ」

 

「馬鹿な……ダレン隊長を見捨てろと?!」

 

 語気荒くロミルダが返す。しかし、既に体からは力が失われ始めているダレンには、その問答すらもったいなく感じていた。

 

「時間がない……急げ!」

 

「くっ……了解しました……」

 

 まだ納得しきれないロミルダも少しの間俯いていたが、ウェインに続き行動を開始していた。幾人かの兵士と共に後退の援護えと回る。だが、ダレンはこれでもいいとどこかで思った。あの二人は優秀だ、そして十分以上に成長してきている。だが、それも自分がいてはその能力を発揮し、アピールする場も限られてしまう。ならばと……。

 フレイルを持つ手に力を入れ、最後になるかもしれない戦いへと身を投じる。無念や後悔のたぐいが残るとすれば、一人の少年を……彼の行く末を見守れぬ事だろうか。

 

 

 

――――――

 

「……あれは、サラマンダー!」

 

 チョコボの手綱を握るレミアさんの声が聞こえてから、中央から爆音が響いた。赤い龍がこちらの兵たちを飲み込み、炎をもってそれを巻き込んでいった。

 同時に、その様子を見た私達の隊はその士気が落ち、平時のそれへと戻ってしまった。そして逆に敵軍に勢いを与える結果になってしまった。

 そうなればどうなるか? 元々自力では相手の方が優っているのだ。ならば最初に押し込んだ分をじりじりと返されるという結果になってしまう。

 

「マズイですね……徐々にですが押されてきています」

 

「だけど、こう弓で牽制されちゃ大魔法は難しいですね……サンダラ!」

 

 私自身が後退すればさらに押し込まれ、前線に居れば弓による牽制で長時間の詠唱を確保できない。ショートチャージがある為ラ系魔法で援護しては居るが、それでも一人では全体をカバーする事は難しい。

 レミアさんは器用にチョコボを操りながら、その杖で矢を落としたりしている。

 

「それに本隊のほうも後退を始めました……このままここに留まっては敵の本隊と二面から攻撃される恐れがあります」

 

 苦い表情を浮かべながらも、その手を休ませる事は無い。矢を落としつつ、ケアルなどの回復魔法を使い支援を続けている。

 

「なら僕たちの隊も後退するべきなんじゃ?」

 

 エーテルを一気に飲み干し、汗を拭う。それほどの戦闘をこなしている訳ではないはずだが、やはり戦場というものはその空気に当てられるだけで疲労を蓄積させられていく。

 

「ここまでの乱戦になっていると厳しいですね……兵数の差も縮まっているとは言え、相手もここで後退を許すほどの痛手は負っていないでしょうし」

 

「……なら、やっぱり強引にでも魔法を使うべきかな」

 

 状況を打破するにはきっかけが必要になる。ならばそれを作ればいいのだ……危険はあるものの、そこまで分の悪い賭けではないだろう。

 その私の声が耳に届いてるはずだが、レミアさんは戦場の遠くを見たまま何かを考えている。そして、その鋭い目を僅かに細めながら口を開いた。

 

「いえ……どうやら向こうからその機会を与えてくれそうです」

 

「どういう事です?」

 

「中央の魔道士隊の一部がこちらに移動してきています……ならば相手の方が魔法に合わせて一度下がるはずです」

 

 それはつまり相手から魔法が放たれるということで……それはむしろ不味い状況なのではないだろうか?

 釣られないように前線の深追いを抑えても、そのタイミングで攻撃されるのはキツイ。しかし、その状況こそが機会だとレミアさんは言っている。

 

「……もしかして、相手の魔法に合わせてこっちも魔法を使えと?」

 

「はい、それも相手の魔法ごと吹き飛ばせる威力の魔法を……そうですね、出来れば最初に使ったファイジャあたりが最適ですね」

 

 中々に無茶を言う人だ……しかし、成功すればきっかけどころか再びこちらに優位は傾くだろう、ならば考えるまでもないか。

 ならばとレミアさんに了承の意を伝え、その瞬間まで同じように……いや、相手がこちらを狙いやすい様に中央で派手に暴れておく。

 

 

 

「もう少しで相手の魔道士隊が到着します……後退しますので詠唱を開始してください」

 

「分かりました、フォアラント! 僕たちは一度下がる、なんとか持ちこたえてくれ!」

 

 私達よりも前線で戦っているフォアラントに声をかけておく、私と戦ったときとは別人の様に堅実な戦いをしているのが印象的であった。

 打ち合っていた敵を弾き、視線も向けずに大声て返してきた。

 

「何するか知らないが早めに頼むぞ! こっちはそう持たないぞ!」

 

「分かってる、とにかく深追いだけはしないように!」

 

 後退と同時に集中を開始していく、ロッドを握り締め、目を閉じ、魔力を練り上げる。

 

「リシューナ子爵の騎兵隊も動き出しました……ここで戦場の流れを変えることが出来れば勝利を手繰り寄せられます」

 

 同時に父の本隊も動き出したようだ。騎兵隊がどう動いているかは私からでは分からないが、父のほうは中央の援護とこちらに一部の兵を回している。

 ここで私達の行動が成功すれば、本隊からの援軍で左翼側はこちらの勝利になるだろう。なら、是が非にでも成功させなければならない。

 

「……敵軍が僅かに引いています……そろそろです」

 

 息を吸い込み、詠唱を開始する。敵が下がったおかげかこちらに対する牽制が甘くなったように感じられる。さらに私の側にいる兵たちは盾を構えて壁を作ってくれている。さらにこの瞬間のみ、弓隊の援護を私へと狙いを定めている敵に集中させる。

 

 そして、敵側から複数の魔力の高まりを感じたところでレミアさんからの指示が飛んできた。

 

「敵攻撃魔法来ます!」

 

「地に閉ざされし内臓にたぎる火よ 人の罪を問え!」

 

 目を開けば圧力は弱まるどころか増していた。しかし、それでも周囲の兵は私を守るために身を挺して盾を構えていた。

 その気持ちに……行動に報いるために、こちらに放たれたいくつもの魔法を睨みつけ、そして狙いを定める。

 

『ファイジャ!』

 

 私が放った巨大な魔法は正確に敵の魔法へと向かい、その複数の魔法を飲み込んでいった。さらにファイジャの勢いは止まらず、再び敵の先頭へと落着していった。

 巨大な爆発がおき、敵陣に混乱が起きているのがわかる。その機会を逃すまいとレミアさんは大声で指示をつづけていった。

 

「後退を開始! 本隊の援軍と連携して叩く、弓隊は援護射撃を開始!」

 

 もう指揮に関しては任せてしまおうと考え、私はさらに詠唱を続けていく。

 さっきの敵軍の召喚を見て全体の士気が動いたのだ、ならばそれはこちらにも同じことが言えるはずだ。そして、出来ることなら相手に大きな恐怖を与えられれば言うこと無しだろう。

 ふと、かつての記憶が蘇って来た。恐怖と言うよりは若干のトラウマではあるが……。

 

「大魔法を連発できるとは相手も思っていなかったでしょう……え?」

 

 レミアさんには珍しく、戸惑いの声が漏れたのが聞こえた。

 

「次いきますよ!」

 

「この感じは……召喚魔法?」

 

 隊を後退させてはいるが、敵も追撃をかけ始めている。さらに中央からもこちらに向かってくる敵兵が見える……が、この状況はむしろ望むところだ。

 連続した魔法で大分消耗してきているが、それでもまだ問題ない。再び魔力を練りこんでいき、召喚魔法を唱える。

 

「陽光閉ざす冷気に、大気は刃となり 骸に刻まん! 『クリュプス』!」

 

 『恐怖の最終章』

 それはかつてFFTという作品をプレイしていた時の話、このゲームにおける初見殺しとも、詰むポイントとも言われる場所の一つ。リオファネス城での戦いで敵が使う魔法の一つである。別にこの魔法が厄介という訳ではないが、どうにも印象に残っている召喚魔法である。

 そんな昔の思い出はさておき、戦場には巨大な一つ目の悪魔が降り立った。大地を踏み抜きながら歩き、その振動はまるで大地を直接叩きつけられるような衝撃を与えていた。

 敵側からいくつもの悲鳴が聞こえ、そして押しつぶされていく様が見える。その巨体は敵兵の心を抉いていき、さらにその陣形すら破壊していった。

 

「……非常識ですね」

 

「多少は自覚してます。本隊からの援軍が来たみたいですね」

 

 レミアさんの呆れたような声をスルーしつつ、援軍は敵の横へと突撃を仕掛けていった。大魔法、召喚魔法の二つも重なり混乱に拍車をかけている敵軍に対しては、かなりの戦果が見込めるだろう。

 そして、その隊から一人こちらを見つけると走こんできた。

 

「隊長のトリスタン様ですね? リシューナ将軍から伝令です、まだ余力があるようなら中央の援護へ向かえとの事!」

 

「こちらはこのまま押し切れるでしょう、一部の兵を連れて向かいますか?」

 

 立ち直ったレミアさんは、その報告を受けてそう進言して来た。自分の状態を冷静に見てもまだ戦える。それに先ほどの相手側の召喚魔法、あれの被害も気になる……。ならば向かうべきだろう。

 

「そうですね、直ぐに向かいましょう」

 

「中央の指揮はダレン殿がとっています……今だ崩れていないのは流石と言えますが、やはりこのままではキツいはずです。急ぎましょう」

 

 言いながらレミアさんは手綱を引き、駆け出した。フォアラントに隊の指揮を任せ、護衛の兵を連れて行く。すでに私達の隊はその役割を大きく果たしている、後は負傷兵の治療などに移行していくなら彼でも問題ないはずだ。……というか私よりも余程適任だろう。

 

 それに、あのダレンさんがそう簡単にやられるはずは無いと私は知っている。合流し、本隊の援軍と連携すれば押し返せるはずだ。

 

 そう考えていたし、そうなると思っていた。しかし、目的の場所に着いてもダレンさんの姿は見えなかった。

 

 

―――――――

 

 

 

「左翼より援軍に来た遊撃隊のトリスタン隊長と副隊長のレミアです。ダレン隊長は?」

 

「援軍感謝します! 現在ダレン隊長の代わりに指揮をとっているウェイン・リーバーです。

ダレン隊長は……」

 

 中央へと移動し、その指揮をとっているであろう場所には重装備に身を固めた騎士が指揮をとっていた。

 そして、その兜によってその表情を完全に見ることは出来ないが、僅かに見える表情と口調は悔しそうで、そして視線を伏せていた。

 

「何が……何があったんですか?」

 

「私達の後退を援護するために前線に……申し訳ありません、私の力不足で……」

 

 その言葉を聞き、私は全身に冷水をかけられた様な感じがした。あのダレンさんが? 殺しても死なないようなあの人が? にわかに信じられない言葉だ……しかし、目の前の騎士は小手から血が落ちる程に拳を握りしめている……。

 

「今は……今はこの状況を打破するのが先決です。トリスタン様、ここは……」

 

 レミアさんがその言葉を言い切る前に、一人の女性騎士とそれに続いて数名の兵が誰かを担ぎながらこちらへとやって来た。

 

「ロミルダか!」

 

「ウェイン! ダレン隊長を連れてきた! 誰でもいいから回復薬をあるだけ持って来い!」

 

「ダレンさん!」

 

 担ぎ込まれてきたのはダレンさん……しかし、その体にはいくつもの矢が刺さり、多くの傷ができ出血も酷い。そしてあるはずの左腕すら肘から下は無く、肩口から焼け焦げている。

 

「隊長! クソっ! 早くフェニックスの尾を持って来い! 急げ!」

 

「もう既に試した! だが出血が酷くて意味が無いんだ!」

 

 僅かでも……そう、HPという概念があるなら1でも残っていなければ回復が効かない状況である。しかし、ゲームとは違い現実にはそうすぐに蘇生出来るものではない……。

 二人の騎士と周囲の慌てる様子は私を絶望させるには十分であった。

 しかし、その様子を見てレミアさんは一歩前に出た。

 

「……レイズを使います。成功したら直ぐに回復薬を」

 

 言いながら横たえているダレンさんに近づき、詠唱を開始している。

 そうだ、何を絶望する理由があるのだ……そんな事をする位ならばできる事はいくらでもあるだろう。

 

「生命をもたらしたる精霊よ 今一度我等がもとに レイズ!」

 

 光りが幾重に重なり、ダレンさんの体へと入り込んでいく。しかし、それだけで変化は見られない。

 

「……もう一度」

 

「おい、頼むよ……ダレン隊長、帰ってきてくださいよ!」

 

 そう、私に出来ることをすればいいのだ。

 レミアさんの反対側に立ち、詠唱を開始する。失敗の可能性もあるのだ、とにかく急ぐに越した事は無い。

 

「まだだ……まだ沢山教えてもらいたい事があるんだ……だから……!

 

生命を司る精霊よ、失われゆく魂に、今一度命を与えたまえ! アレイズ!」

 

 レイズに重ね、アレイズを使っていく。大きな光が収束し、同じようにダレンさんの体へと入り込んでいく。これでダメなら次は拳技の蘇生だ。

 

 しかし、今度はうちから湧き出る光りが傷を癒していき、ゆっくりと瞼が開かれていった。

 

「……ここは」

 

「ダレン隊長!」「よかった……本当に」

 

「本当に……まだ教えてもらいたい事が沢山あるんだから……」

 

「トリスタン様……」

 

 怪我は塞がっても、今だ起き上がれるような様子ではない。それでも、確かにその体には暖かさが宿っている。

 

「そうですな……それに、私もまだ教えきれていなかったですしな」

 

「まったく……だよ」

 

 自然に涙が溢れてくる。そう、戦争なのだから親しい人間が死ぬこともある。ただ、ただやはり助かったくれて良かった。今はただその感想しか出てこなかった。

 

「……っぐ!」

 

「隊長、まだ無理に起き上がっては……」

 

「だったら早く指揮をとらんか! ウェインは全体を、ロミルダは前線を支えろ!」

 

「はいっ!」「了解です!」

 

 聞くやいなや二人は駆け出した、各々のいるべき場所へ。そしてダレンさんは次に私の方にその顔を向けてきた。

 

「気をつけてください、相手には高位の召喚士が居ます……直に次が来るでしょう」

 

「そうだ……そうだったね。礼はきちんとしなきゃいけない」

 

 これは戦争であり、ここは戦場なのだ。相手の行動は正しい……そして私がそれを阻止する事も。

 怒りではない……と思う。しかし、自分の感情が高まっているのも事実だ。殺したり殺されたり……何とも因果な話だとは思うが、ここで割り切れる程私は成長出来ていない。

 

「レミアさんは治療をお願いします」

 

「……分かりました、お一人で大丈夫ですか?」

 

「それでしたらウェインの傍がいいでしょう。あれは全体を見る力に長けています」

 

 

 

 二人の言葉を受け、先ほどの騎士の元へと駆け出す。程なくしてその姿が見えてきた。現在は盾を構えながら自動弓で前線を援護しているようだ。

 

「ウェインさん!」

 

「先ほどの……トリスタン隊長ですね、どうしてここに?」

 

 すでに冷静さを取り戻し、指示を飛ばしながらこちらに返事を返してきている。

 少し先には先ほどの女性騎士が、その両手剣を振り回している。

 

「敵の召喚士は僕が抑えます……どこに来るかは分かりますか?」

 

「……来るとしたら再び中央ですね、それも恐らくここでしょう……相手の後方に動きがありましたし、もうあまり時間は無いと思います」

 

 やや間が空いたのが気になるが、そういう事ならば丁度いい。と、言うよりもわざわざ待ってやる必要もないのだ。再び集中を開始、詠唱を始めることを伝えておく。

 

「先手をうってこっちから行きます……少しの間護衛をお願いしていいですか?」

 

「しかし、敵の召喚が来るならば散開指示を……いえ、分かりました。詠唱中は私が護衛しましょう、矢の一本たりとも届かせません」

 

 こちらの無理を飲んでくれるのは有難い。やはり、ダレンさんの下に居た人なら多少は私の話も来ているのだろうか。そのあたりは追々確認すればいいだろう。

 ロッドを敵軍に向け、詠唱を始めていく。この時、私の気のせいかもしれないが、敵側からも同じ魔力の高まりを感じた。確証もなにもあったものでは無い、しかしどうにもそれが相手の召喚士のものだと思えたのだ。

 

 

 互に撃てる力を放てと。互に持てる力を使えと。ぶつけろと。

 

 そんな思いが巡った。

 

 

「炎の精霊よ、今一瞬の全ての炎を その手に委ねる……」

 

「夜闇の翼の竜よ、怒れしば我と共に 胸中に眠る星の火を……!」

 

 

 聞こえるはずの無い詠唱。しかし、確かに私の耳にはそれが届いた。そして同時に、それは完成した……。

 

 

『サラマンダー!』

 

『バハムート!』

 

 

 片方は大地から巨大な炎の龍が……。

 

 片方は大空から巨大な黒い翼龍が……。

 

 それは両軍のぶつかり合いを代弁するかのように、戦場の中央でぶつかりあった。

 

 炎を纏った龍はその勢いを高め突撃し、翼龍はそれを飲み込む程のブレスを放つ。

 

 結果はシンプルだった。バハムートの放ったメガフレアはサラマンダーを飲み込み、同時に敵軍を一直線になぎ払っていった。

 そしてその瞬間に合わせた様に、敵軍に横から一陣の騎兵隊が突き抜けていった。




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