転生オリ主チートハーレムでGO(仮)~アイテムアビリティこれだけあれば大丈夫~ 作:バンダースナッチ
太陽と聖印に護られた双頭の獅子が治める国『イヴァリース』
今この国は戦乱の最中にある。
『五十年戦争』
後にそう呼ばれることになるこの戦争は隣国『オルダリーア』との間で約50年間に渡って繰り広げられた戦乱である。
事の始まりはオルダリーア(以降鴎国)国王ディワンヌ3世が世継ぎを残さずに亡くなった事により従弟にあたるヴァロワ6世が継ぐことを宣言したが、ディワンヌ3世の叔父にあたるイヴァリース(以降畏国)国王デナムンダ2世がそれを良しとせず宣戦を布告した。
この宣戦布告は口実に過ぎず、畏国の狙いは国境に面した鴎国領土である『ゼラモニア』であった。
ゼラモニアは元々独立国であったが鴎国との戦争に敗れ、併合したという過去を持つ。
この時畏国は鴎国弱体化を狙う為にゼラモニアに支援を行なっていたが、ゼラモニアが敗れたことにより失敗となった。
しかし、ゼラモニア国内の貴族や周辺都市らは鴎国の支配に不満を持っており、再び畏国への支援を求めた事が今回の畏国の行動の真相であった。
宣戦布告の後畏国は鴎国へと進軍、緒戦に勝利を重ね鴎国ブラへと進軍するが、その進軍の最中デナムンダ2世が病死するという事件が発生した。
わずかな混乱であったが、それによって出来た時間は鴎国軍の立て直しの時間を与えてしまった。
ヴァロワ6世はただちに反撃を開始、畏国をゼラモニア周辺まで押し返す事に成功した。
その後数年の間膠着状態が続いたが、その均衡は軍事大国『ロマンダ』軍の侵攻で破られる事になった。
ロマンダ国(以降呂国)は畏国の背後に位置する国家であり、ヴァロワ6世と血縁関係にあった、そしてそのヴァロワ6世からの依頼に応じ畏国へと進軍したのである。
だが、デナムンダ2世跡を継いだデナムンダ4世は自身も勇猛無比な戦士であり、自ら複数の騎士団を率いて呂国・鴎国連合軍と対峙し、健闘を果たした
また、呂国国内にて黒死病(ペスト)が大流行をし、僅か3年で呂国は撤退を余儀なくされた。これにより再び戦線は膠着状態に戻り、いつ終わるとも知れない戦乱が続くことになった。
その戦乱の最中、イヴァリースの東部に位置するゼルテニア領。
領内に流れるフィナス河の西に位置する都市・フィーナス、ここに一つの生命が誕生した。
名をトリスタン・ブランシュ
ゼルテニア領領主であるゴルターナ公に仕える貴族であるイルヴァーナ・ブランシュ子爵の第一子の男児である。そして本来の歴史では生まれるはずの無かった命。
…………
薄暗い世界から抜け出し、光りがまぶた越しに刺さってくる。
頭の中はぼやけており、目を開けても視界ははボヤけ、現状を認識することが出来ない。聞こえてくる言葉も聞いたことのないような言葉である。
今自分に何が起きているのか全く把握が出来ない状況ではあるが、不思議と恐怖心は湧いてこない。その理由は今誰かに自分が抱きしめられているからだろうとは推測できる。
しかし、同時に思うこともある。誰かに抱きしめられるという行為に思い当たる節はないし、なにより自分の体を包むように抱かれるなんていう経験は記憶がある中では存在しない……はず。
霞がかった頭で自分が一体どうなったかを考えてみる。
そう、確か自分は白い空間でアズラエルと名乗った男と会話していた。その時に自分が死亡した事を告げられ、またある世界に渡ってくれと言われた事を。
それが事実なら今の自分に一体なにが起きているのだろうか?
答えの出ない疑問を持ちながらも、今の自身の体は何もなすことが出来ないでいる。そうしている内に体と脳は疲れ、ゆっくりと意識が沈んでいった。
…………
……
あれから5年の時間が経った。
自分の意識がはっきりしてきのはつい最近のことであった。結局夢でもなんでもない現実であった。
しかし転生とは……確かに自分の推測でテンプレと揶揄したものではあったが、あの男……アズラエルは世界に渡ってと――
「いや、参入してくれと言っていただけだったか?
それになるほど、身につければいいと言う発言はそういう事か」
つまり初めから転生させるつもりだったのだ、考えてもみればこちらは既に死んでいた身である。輪廻転生という言葉を信じているわけではないが、死んだ状態を生き返らせる事が出来たり生きている状態でもいいなら初めからそうするかもしれない。
それとも死んだ後の魂と言える状態でなければダメなのか。
答えの出ない考えは一旦置いておき、頭の中でステータスと念じる。
トリスタン Lv.01 Exp.00
Brave 67 Faith 69
HP 40/40 MP 10/10 CT 000/100
見習い戦士
Move…4 Jump…3 Speed…06
あえて言うなら一般的な雑魚キャラと言えるだろう。ブレイブ(勇気)とフェイス(信仰)は平均よりは上……だと信じたい。
それはさておき、なぜこうしてステータスが見えるのだろうか。
確かに自分は転生をした、それも元の世界ではゲームの世界の中に。だからといってこちらの世界がゲームであると言われればそうではない。
今自分は確かに立っている、そして空気を感じ呼吸もしている。紛れもない現実であり、真実だ。
ではなぜか? 別に考えても仕方ないが他にする事もない。一つの仮定とするなら貰った能力が起因するのではないかと考える。といっても別に困るわけでもないしむしろ人の名前がすぐわかるので重宝できるだろう。
そうこうしてる内にノックの音がした、どうやら使用人の一人が迎えに来たようだ。
朝食の準備がもうすぐ整うのでそろそろ来てくれという内容だった。
良いのか悪いのかの判断は未だにつかないが、生まれは貴族の家柄だった。ブランシュ家、ゲーム本編でその名前が出たかは定かではないが有名どころでないのは確かだ。父であるイルヴァーナ・ブランシュは子爵の爵位を持っており、現在はゴルターナ公に仕えている。
一応、屋敷内での評判を聞くがあまりパッとした内容のものは無かった。どころか陰口ともとれる内容を偶然ではあったが耳にする機会もあった。
元々このFFTというゲームは貴族と庶民の壁も一つのテーマにあった。だからといって出てくる貴族全てが悪という訳でも無ければ正しいという訳でもない。
結局の所人である以上様々な側面は持っているものである。
鏡の前にたち、服を着替える。
鏡に映るのはここ最近毎日目にするものだ。7・3に分けられ、少し流し気味の淡い金髪、鼻筋は通っており、幼い顔立ちながらも将来に期待が出来そうな顔である。瞳の色は青くどうみても外人……いや、まぁ転生したのだからそうなのだが、どうにもどこかで見たことがあるような気がしなくもない。
これからどれだけ生きられるのかは分からないが、自分の顔となるのだ。とは言え、その内に違和感も無くなるか。
―――――
「あら、おはようトリス」
朝食の席へと座ると、既に食べ始めていた母から声をかけられた。
母の名はミルナ・ブランシュ いい意味でない方の貴族に当てはまる。
自身の容姿を気にし、服飾などに結構なお金をかけている……らしい。勿論貴族なのだから身だしなみは重要である、なのでそこにお金をかけること自体は悪くないとは思うし、実際にどれだけ金をかけているのかも知らない。
しかし、ブランシュ家は決して裕福であるとは言い難い。使用人の数も3人程だし、その内の一人は現在屋敷に滞在し、領内の管轄を取り仕切っている人に付いてきている人だ。
現在父イルヴァーナはゴルターナ公に従軍しており、屋敷を空けている。その為領地であるフィーナスの管理は公爵から派遣された人が取り仕切っている。まぁ父が居てもこの人に任せっきりではあるのだが……。
「おはよう、母さん」
「うーん、最近随分と元気が無いようだけどどうかした? 急に言葉遣いも改まってきて」
「成長期って奴じゃないかな」
「そういうのって自分で言うのかしらね。ああ、私は今日ベルベニアの方へ行くから。帰るのは4日程経つわ」
そう言いながら母は席を立ち、一人の使用人を連れて部屋を出て行った。
改めて思うと5歳児の口調ではない……とは思うが、流石にどう話していいものか悩むところもあるのが実際の所である。別に直すつもりもないけども。
―――――
朝食を終えて部屋に戻る途中で教師役の人に会った。
確かに母はあんな感じだが、それでも貴族である事も有り最低限の勉強は義務化されている。勿論こちらとしては願ったり叶ったりである。
この国の言語体系はほぼ英語のそれである。ただアルファベットが置き換わっている程度の違い、意識が覚醒していなかったとは言え5年間は生きてきたのだから喋ることもできるし、少し位の読み書きもできる。
「ああ、おはようトリス君。もう朝食は済ませたようだね、それじゃあ早速始めようか」
「はい、エニル先生」
この教師の名前はエニル、見た目はほぼザビエルのソレって感じだ。神父であり、敬虔なグレバドス信者である。主に貴族向けの家庭教師役を引き受けており、なかなかに実直な人物である。
残念なのは授業の内容が非常につまらない事だろうか……。
児童向けの本を参考にしながら読み書きを勉強していく。話の内容は元の世界の童謡と殆ど変わらないものばかりだ。もう少ししたら聖書を使った勉強に移ってもいいかなと呟きが聞こえるが……あまり宗教色の強いものを子供向けの学習教材にしないでもらいたいと思ってしまうのは過去の習慣が抜けていないからだろうか。
という訳で、勉強をしつつステータス画面を呼び出してみる。表示されるものは朝に確認した通り。
今の所はここまでしか表示した事がないのだが、実際にゲームのステータス画面ならそこから多岐に渡って詳細な画面が見れるはずだ、カーソルが無い為に手探りな状態だが、時間はあるのだ、ゆっくりと見つけていこう。
(まずはステータス画面を出してから……JOB)
頭の中で次の単語呟く、まずは最後に叫んだ願い事の確認だ。
JP 9999
見習い戦士 Lv.1 Total /0000 Next.0200
アイテム士 Lv.1 Total /0000 Next.0200
予想した通りに次の画面に切り替わった。FFTではジョブチェンジシステムを採用しており、職業レベルを上げる事によりその他の職業の開放条件になる。
しかし、この表示を見ると変更されている場所があった。それは職業ごとにあったJPがひとつにまとめられている。
というか、最後の願いでアイテムアビリティって叫んだのに……いや、JPが9999の表示になっているから妥協点としてなのか?
しかし、それでも最初から9999というのは何も無いより随分と恵まれているのであろう。そう納得する、するったらする。
それから思いつく内容をあげてみた。JOBからアビリティ、ステータスからアイテム、装備、ジョブチェンジ。
アビリティは残念ながら何一つ習得していない状態であった。
しかし、しかしだ……アイテムからリストを選んだ時に思わず声を上げてしまった。エニル先生に怪訝な顔をされてしまったがこれは仕方ない。なぜなら……
短剣から始まり、忍者刀、剣、騎士剣、刀~~~~
そう、装備・アイテムが全て揃っているのだ。これで声を上げないなんて有り得ないとさえ思ってしまう。
アビリティがダメだった事からアイテムのほうもダメだろうと思っていた矢先の事だっただけに嬉しさも強いものである。
しかし、どういった方法でアイテムを取り出すのか……それをここで試すことはエニル先生が居るこの状況では出来ない話である。ワクワクした気持ちを抑えながら本日の授業を受ける事になるようだ。
――――――
随分と長く感じた授業時間が終わった、改めて自室へと戻りアイテムリストを開く。
あるわあるわ最弱装備から最強装備まで、剣で言うならブロードソードからルーンブレイドまで。それも50個づつもだ。
正しくアイテムアビリティこれだけあれば大丈夫の内容通りである。試しにその状態からルーンブレイドと声に出してみる。
自分の手をかざした所にスっと片手剣が現れた。刀身は薄赤く光っており、その中に古代文字が刻まれている。
この剣は騎士剣の下の片手剣では最高ランクの武器であり、攻撃力14 回避率15という性能であり、魔法+2の追加効果だ。
まぁ、他のFFシリーズからするとなんとも分かりづらい数値ではあるが……。
「しかし、これは重宝できるな……こと個人の戦力で言えば装備の力はかなり比率高かったし」
装備が強ければかなりの低レベルでもゲームをクリアできてしまう程のバランスだったりするFFT。初めてプレイした時にレベル12でベリアスで詰んだのはいい思い出だ。
後はアビリティのJPの振り分けや、身に付け方など色々と試して行けばいいだろう。