転生オリ主チートハーレムでGO(仮)~アイテムアビリティこれだけあれば大丈夫~   作:バンダースナッチ

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第18話

「天と地の精霊達の怒りの全てを……今そこに刻め! ――サンダジャ!」

 

 陽の光が陰り、平野に雷撃が走っていた。その先には十を超えるモンスターの群れ。雷は正確にその集団へと直撃し、嵐となって飲み込んでいった。

 僅かな時間の後に雷撃は収まり、巻き上げられた砂埃が収まる頃にはモンスターの集団の殆どが倒れていた。

 

 ここはマンダリア平原、ガリオンヌ領本拠点であるイグーロス城と魔法都市ガリランドを繋ぐ街道を通す土地である。

 平原には数十名の兵士と3人の子供、そして一人の魔道士がいた。兵士たちは生き残ったモンスターの集団に止めを差しに向かい、子供たちはそれを眺めている。

 そして魔道士はそんな子供……その一人、たった今サンダジャを放った子供の様子を伺っている。

 

 サンダジャ、一流と呼ばれる魔道士でなければ扱うことはできず、イヴァリース内にもそう多くは居ないのが現状である。イヴァリースが騎士であることを良しとする傾向もあるが、他国であってもそうは変わらないだろう。

 紫を基調とし、古代魔術言語の刺繍の入ったローブ。魔術師が好んで利用する魔術帽から白髪が後ろに流されている。蓄えはじめたヒゲをゆっくりと弄りながら魔道士……エリディブスは目の前で他の子供達と話している少年について考えていた。

 

 少年の名前はトリスタン・ブランシュ。南天騎士団に所属するブランシュ家の長男であるということは聞いていた。しかし、父親であるブランシュ子爵に魔法の才能があったとは聞いたことがない。母親のほうも同じである。無論、過去全てに遡って調べることが出来ないため、一概に遺伝ではないとは言えないが。

 しかし問題はその環境だ。一体どうやって育てたのだろうか……それが分かれば今のガリランドでの魔法学院はその成果は飛躍的に上がるだろう。そう思って本人に聞いてみたが、ある意味期待を裏切られ、ある意味納得した答えが帰ってきた。

 

「こう……頭の中に浮かんできませんか……?」

 

 自分の感覚をうまく表現出来ないのだろう、しかしその気持ちや感覚が良く分ってしまった辺り、エリディブス本人と似たような感じなのだろう。

 一言で表すなら天才と呼ばれるタイプ、魔道というものの根本にある何かを理解しているタイプ。実際、エリディブスにも覚えがあった。魔力が高まるに連れて、一度書物などで見ただけの魔法を扱えるようになる。知識が溢れてくる感覚、それに似ているのだろう。

 そんな理解を持ちながらも、そう結論づけるのを抑える。魔術とは理論と検証と実証だ、ならば時間はそれほど取れなくともゆっくりと見極めていけばいい。そう考えながらふとした質問の回答によって僅かな疑問を持ってしまった。

 

「ところで、君は他にどんな魔法を扱えるのかな? ああ、まずは黒魔法の範囲で教えてくれると助かる。」

 

 単純な質問であった、しかしそこから出た答えはエリディブスにとって……いやエリディブスにしか分からない疑問が浮かび上がることになる。

 

「そうですね……ファイア系にブリザド系に――――」

 

 顎に手を当てながら思い出すように魔法の種類を連ねていく。他の人間であればその多彩さに……その輝き具合に驚くのだろう、しかし問題はその中身だ。

 3属性魔法をジャ系まで、それにポイズン、トード、フレア、デス。あとは黒魔法に分類されるかはわからないがダークホーリーと名前を上げていった。

 ではこの種類の何が問題なのか? エリディブスは現在学院からの依頼で『体系魔法』という研究をしている。

 これは様々な種類のある魔法を各分野ごとにまとめる作業である。現在の魔道士は自分の得意な属性や、教えを請う師匠などによって偏りが非常に大きくなっている。しかし、魔法学院ではある程度の基準を設けなければ教えることが困難になってしまうのだ。あの教師はこの属性を重要視し、また別の教師はそれとは違う属性を教える。これでは教わる側も、課程を終了した後に配属される先でも困ったことになってしまう。

 そのための基準を作成しようというのが、この『体系魔法』の確立だった。

 そして現在エリディブスがまとめ、編集しているのが今まさに上げられた魔法であった。まるで出来上がった『黒魔法に体系される魔法』、その完成形を見せられた状態である。

 さらに言うならば、この体系魔法の編集は進んではいるが、まだどこにも出していないのだ。つまりエリディブスを含めたほんのひと握りの魔道士しか知らないはず。

 

 しかし、疑問は疑問のままだ。どうやってその種類「だけ」の魔法を覚えただとか、そんなことを聞いてもおかしいのはエリディブスの方になってしまう。そう考えるとやはりもっと時間をかけるしかないのだろう。

 そんなこちらの状況を不思議そうな顔で3人がこちらを見ていた。

 

「あの……どうかしましたか?」

 

 若干冷や汗が出てるような感じでトリスタンが話しかけてきた。なんでもない、と一言返し、話題を無理やりに変えていった

 

「ふむ、興味は尽きないが……そうだ、他の魔法などはどうなのかな?」

 

「……どう? とは?」

 

 首をかしげながら、こちらを見てくる。その姿だけを見るなら年相応の子供にしか見えない。これが鴎国の軍勢を打ち破った『奇跡の魔道士』と、どう信じられるか。

 

「そうだのう……ふむ、ウォータの魔法なんてどうかな?」

 

「えーっと……さっき言った魔法以外は全然扱えないですね」

 

 ふむ、と一つ入れて鞄から一冊の魔道書を取り出す。魔道書と言っても本に厚みは殆どなく、内容も非常に簡単なものになっている。それこそ、魔法を初めて扱う者にとってのものだろう。当初はトリスタンのほうから、他に二人の友人を連れてきていいか……、と聞かれた時に、その二人が退屈しないで済むようにとの配慮のためだった。まぁそれが平民の子供であったのは多少驚いたが、元々才能でしか人を見ない類のエリディブスには、生まれの貴賎などどうでもよかった。

 ちなみに兵たちは、訓練も兼ねたモンスター討伐に行くところを街の出口で出くわし、そのまま流れで同行することになった。まぁ先ほどの光景を見るに訓練のほうの意味合いは大分下がってしまっただろうが……。

 

「ほれ、これだな……そっちの二人も見てみなさい」

 

「おー……さっぱりわかんねえや……」

「ローランドは魔法の勉強全然してないもんね」

「俺は剣を学びたいんだよ! それで、トリスはどうなんだ?」

 

 少年、トリスタンはひとしきり本を眺め、腕を組み、頭を傾けている。そして少しの間を開けて口を開いた。

 

「全然ピンと来ないかな……詠唱を見ても頭に浮かんでこないし」

 お手上げだと言わんばかりに両手を挙げている。

 エリディブスは僅かに拍子抜けした印象を受けていた。てっきり簡単な魔法であれば、その場で扱えるようになるものかと思ったのだ。勿論、普通に魔法を学んでいる人間であれば、初級の魔法であっても始めたてであれば数ヶ月はかかるし、2つ目以降であっても系統が違っていれば、またそれなりの時間がかかるものだ。そう考えれば納得は出来るのだが……。

 ここでもひとつの違和感を感じながらも、それを表に出すことなくエリディブスは続けていく。

 

「では、折角だからウォータ系の魔法でも教えようかの。今で十分ではあるが、水の魔法は扱えて損はない。……勿論、そこの二人にも一緒にな。」

 

 その言葉によって、エリディブスとトリスタンの関係はゆっくりと始まっていった。

 

 

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 ガリランド 士官候補アカデミー

 私がここに来てはやひと月と少々が経った頃、新しい出会いが生まれた。出会いと言っても別に可愛い女性と……などではなく、もう少し衝撃が大きい相手である。

 

 このアカデミーに来てから、最早いつもの光景となっている勉強漬け。とは言え、流石にひと月も繰り返していれば慣れてくるものである。私自身も、別段勉強というものが嫌いというわけでもなく、軍事関係とも言える内容はそれなりに興味も沸き、ある程度の意欲を維持できている。まぁ、死活問題でもあるのだが……。

 とは言え、勉強漬けとは言え休みの日というものはちゃんと存在する。大体10日に1回という感じだが……。元々家でやっていた訓練などは7日に一度は休んでいたため、なんとなく落ち着かないし疲れも貯まるのだが、まぁここでわがままを言っても仕方ないと諦めている。

 そんな休みの一日に、私はローランド、ステラ、それにダレンさんと街へ買い物に来ていた。

 

 今日の目的はローランドとステラが普段頑張っているということから、ダレンさんが二人に好きなものを買ってあげるというイベントだ。ダレンさんは先の戦いで左腕を失っており、その療養も兼ねての意味合いもあってこちらに同行したのだが、その暑苦しいとさえ感じられる顔らしく、既にじっとしていることが少ない。私の受け持った新米部隊を鍛えると言いながら、最近いろいろな都市で問題になっているモンスター討伐を行っているのだ。その訓練の合間に二人を見ているのだから、ある意味以前よりも精力的とも言える。「今は最前線で戦うことができない分、出来ることをしようとしている」というのが本人の言である。

 さて、それは置いておくとして、商店の居並ぶ街の中を4人で歩いている。時折屋台で買い食いなどをしながら、店を冷やかしている最中だ。この街にはアカデミーがあるために、ちらほらと貴族の子息と思われる人たちも目に付く。私も着替えるのが面倒という理由もあり、普段着ではなく魔道士の格好である。最近はアカデミーに度々エリディブス師匠(何故か師弟関係みたいになりだしてきたので、こう呼ぶようにしている)が顔を出すようになっている。その為、アカデミーに行く時は魔道士の格好で行くことが多くなっているのだ。

 

「そういえば、二人は今日は何を買うつもりなの?」

 

 隣を歩くローランドにそう声をかけてみる。大方の答えは予想出来ているのだが、それはいい方向に裏切られた。

 

「これから日記を書こうと思ってさ、今日はそれを買いたいなーって思ってんだよ」

 

「日記って……てっきりローランドのことだから剣でも買ってくれっていうのかと思ったのに。」

 

「ローランドも最初はそう言ってたんですけど……私たちってあまり字を書く機会ってないじゃないですか。だからちゃんと書けるように日課にしようって話し合ったんです」

 

 そう言って後ろを歩いていたステラが反対の隣へと進んできた。私もあまり考えていなかったし、今までの環境からピンとこなかったが、この時代で字を書く機会はなかなか少ないのかもしれない。特にこちらに来てからはエニル先生の授業が無くなっており、普段の勉強は読み物を聴かせるというものが主体になっているらしい。なんというか頭の下がる思いである。

 

「普段頑張ってることのご褒美って名目なのに……二人共偉いねぇ」

 

「あー、俺は別になーって感じなんだけど」

 

「もう、ローランドだってトリス様が勉強を頑張ってるからって、自分も頑張らないとって言ってたじゃない」

 

 そう言われたローランドは、僅かに照れたように顔をそっぽむいてしまった。

 しかし、なるほど。確かに今の環境や過去の経験から、私からすると字を書く機会は度々どこから漬物になる位にはある。今与えられているものが当然と思うよりも、他の人よりも多くを与えられているのだと考えれば、私は感謝の念を抱くべきなのだろう。こうしたときに二人に気づかされるあたり、私にはこの二人の友人はかけがえのないものだと改めて思ってしまった。

 

「ちなみに、トリスは何かあるのか?」

 

「僕? ……そうだね、何かもらえるなら……休みが欲しいな……まとまった日数で」

 

 そう呟いたら二人に凄い勢いで視線を逸らされてしまった。ついでに一番後ろを歩いているダレンさんの方も向いてみたが、こっちは視線を伏せられてしまった。ああ、お金でもなんでも出すのでぐっすり休ませて下さい。できればひと月は何もしたくないです……。

 

 そんな感じで一刻ほど4人で歩いたあと、今は各自での行動になっている。私は一人で雑貨屋を眺めているところだ。ダレンさんは二人が選んだ日記セットと、その他諸々の会計をしており、ローランドとステラは二人でこっちへ来てから必要になったものや、古着などを見て回っている。

 二人が日記を書き始めるということなので、この際だから私も始めたらどうか……と誘われたため、私もこの店で適当に見繕っているのだが、どちらかと言うとそのほかのものに目を奪われてしまっている。怪しい置物やよくわからない魔道書など、雑貨屋の隅っこは奥が深い……。

 

 いくつかの商品を選び、会計を済ませて店員に屋敷まで運んでもらうように頼んだあとに、ステラが店に走り込んできた。呼吸が荒く、肩で息をしている。

 

「ト……トリス様! ローランドがあっちで貴族と喧嘩に!」

 

「喧嘩って……こっちからふっかけたんじゃないよね……、僕が行くからステラはダレンさんを探してきて」

 

 僅かに蘇るのは私とローランドの初対面の時。あの時は貴族という理由で喧嘩をふっかけて来たのだが、今回はどういった経緯だろうか。当時と違って気持ちが荒れる理由もないし、今は分別もついている。ならその貴族たちに問題があるのか……。

 そんな事を考えながらステラの指差した方向へ、それは探すまでもなくそれなりの人数の人垣ができていたためにわかりやすかった。万が一へ備えて魔力を高めていく、詠唱だけを頭のなかで完成させ、すぐにでも撃てるように。

 

 人のあいだをぬって中心へと抜けると、今まさに金髪の少年が剣をローランドへと振り下ろそうとしているところだ……!

 

「――『ファイア』!」

 

 振り下ろされる剣へと目掛け、ファイアの魔法を放つ。剣をもっていた少年はその瞬間にこちらに気づき、もっていた剣をファイアに目掛け投げつけてきた。

 投げられた剣はファイアへとぶつかり、剣をはじき、同時に少年も後ろへと飛び退いていった。その反応に驚きながらもローランドと相手へのあいだに入り込んでいく。

 

「大丈夫かい、ローランド」

 

「あ……ああ、助かったぜ。トリス」

 

 油断せず、相手のほうを観察してみる。

 先頭に立っているのは先程の動きを見せた少年。短く揃えた金髪に、ブラウンの瞳。その顔は驚きの表情を浮かべている。服飾は高価なものを使っているのだろう、鮮やかな色だ。そしてその腰についている装飾には獅子の紋章……銀の装飾のため、色はわかりづらいが、獅子が左側を向いていることから白獅子、つまりラーグ公に関係する貴族なのだろう。身長は私より僅かに高く、年齢は同じくらいだろうといった感じだ。

 その後ろにはパッとしない二人組、先頭の少年よりも一回り大きく、年齢も上に見える。顔には殴られた後なのか、痣ができているし、服も汚れている。左側の男は私を指差して、卑怯だの、危ないだの、お前その平民の仲間なのかだの、好きなことを言っている。が、特にこれといって何も感じないのでスルーしておく。

 

 場の空気を主導しているのはやはり先頭の少年。まだ僅かに驚きの色があるが、素の表情なのだろう、顔からは自信が溢れているように感じられる。

 

「いきなりご挨拶だな」

 

 僅かに苦笑いをしながらこちらへと声をかけてきた。そこには嫌味や敵対の感情は感じられない。いきなり魔法を撃っておいてなんだが、私としても面倒な揉め事にならないならそれに越したことはない。

 

「あー、そうだね。こっちの友人を切りつけるところ見たからね……つい」

 

「つい……で魔法を打ち込まれるのは勘弁して欲しいな」

 

 あまりにもっともな意見を言われてしまった。まぁそれを言うならお互いだろうと思い、今度はローランドに声をかける。勿論視線は相手から外さない。

 

「で、どうしてこうなったの? ローランド」

 

「そっちの後ろの奴がステラにぶつかって、そんで買った服まで踏みつけやがったんだよ!」

 

 チラッとそっちへと視線を投げかけてみる。

 

「お前たちが僕たちに道を譲るのは当然だろう!」

 

 僅かにバツの悪そうな顔、それでも反省の色は全くないように見える。

ちなみに貴族と書いて僕たち、平民と書いてお前たち、と読んでるように感じる。

 

「それに、お前! 一体どこの家の人間だ! ここじゃ見ない顔だな」

 

「別にそれは関係ないでしょうに……というか、百歩譲って道を譲らせるのはいいとして、いや良くないけど、そのあとにこっちの買ったものを踏みつけるっていうのは頂けないよね。それに、その顔を見るにこっちの子に負けたみたいだし」

 

 だっさーい と最後に付け加えてやる。ちなみにローランドは同年代では大分強いと思うのだ。普段から比べられているのが私で、かつそれを見て訓練やらを施すのがダレンさんだ。そこいらの子供では相手にならないはず。

 

「そいつをやっつけたと思ったら。そこの奴が出てきたんだよ……気をつけろよトリス、あいつかなり強いぞ!」

 

「そいつだの、あいつだの……この人を誰だか知っているのか!」

 

 まぁ確かに今の言いようはローランドに問題がある。行動も褒められたものではない。が、気持ちはわかる。相手の言葉を聞いて私も若干イラついてしまうが、ここで私が怒ってしまっても話がこじれてしまう、ので我慢だ。

 そこで、それまで黙って話を聞いていた先頭の少年が口を開いた。途中から腕を組んで首をかしげている。

 

「なぁ、私はお前たちが後ろから不意に殴られた……と聞いてきたんだが」

 

 うっ という声は後ろの二人の口からだ。というかダサいな、この二人。

 

「それは……そいつの嘘に決まっています! あんな下賎なものの言葉を信じないで下さい!」

 

「周囲の人たちに聞いてみようか?」

 

 そんな当然の提案をしたら思いっきり睨まれてしまった。

 

「ふぅ、どうやらこちらに非があるみたいだ。すまないな」

 

「そう言われるとこっちにも、かな? ローランドもこれでいいかな」

 

 ローランドの方は渋々……といった感じだが、取りあえずはこの場を収めるという目的だけは通じたようだ。あちらも後ろの二人は何か言いたそうだが、先頭の少年がこの空気にしたのだ、そうそう滅多なことは言わないだろう。

 

 これで収まる……と思っていた矢先に、それとは別に……と言いながら先頭の少年が燃料を投下してきた。

 

「どうかな、私は君と戦ってみたいんだが……お互い年齢も近そうだし。こっちも、そっちの平民の子もまだ詰まらなそうだ。私も、今の魔法で燃えた手袋の礼くらいはしたい」

 

「あ、弁償しますよ。どこで買いましょうか、それなりのものでも用意出来ますよ」

 

 折角まとまりかけていたのだ、そんな好奇心満々な目で見られても困る。焦げ付いた手袋も高そうだが、それを気にした様子は微塵も感じられないあたり、つまらない という理由のほうが多いのだろう。これでもそこそこ家にお金を収めているのだ、場合によっては公爵につけてしまえ。私を勉強漬けにしたせめてもの仕返しだ。

 

「いやいや、これは母が作ってくれたものでね。まぁ嘘だが、ここからそう遠くない所に開けた場所がある。そこへ移動しようか」

 

「嘘って言ってるよね、というかこっちの言い分も聞いてくれると嬉しいんだけど」

 

 そんな抗議に耳すらかさずに移動を始めている。はぁ と一息ついて、仕方なく移動を始める。装備が魔道士の状態なのが気になるが、まぁ大丈夫……だと思う。少し焦がしたらケアルすればいいし。何よりあの少年が気になってしまった。

 そんなことを思いながら、私とローランドは彼らのあとについて、街から少し外れた場所へと移動していった。

 


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