転生オリ主チートハーレムでGO(仮)~アイテムアビリティこれだけあれば大丈夫~   作:バンダースナッチ

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自重なにそれおいしいの?


第21話

 ゼラモニア大平原、過去3度に渡る両軍の衝突の場となったこの地に、今再び両軍が対峙している。

 イヴァリース南天騎士団・総数7万、対するオルダリーア西部方面軍・総数8万。両軍を合わせれば10万を超える兵数である。そして、今両者は平原へと出撃し決戦の時を待っていた。

 この大会戦に挑むまでの小競り合いで、畏国はその優位性を確保する事に成功していた。平原北部の砦はほぼ全てが畏国側が占拠しており、南部・中央も畏国が優勢となっている。

 今回南天騎士団の布陣は

後方本陣に2万 指揮官ゴルターナ公

中央歩兵隊2万 オルランドゥ伯

右翼歩兵・弓兵隊1万5千 ライナルフ伯

左翼歩兵隊1万 ブランシュ子爵・グリムス男爵

遊撃騎兵隊5千 リシューナ子爵

 

 ちなみにトリスタン隊は別働隊として遊軍扱い、中央歩兵隊に詰めている。数は5百である。

 対するオルダリーアは本陣をナルビナ要塞に置き、中央に3万、両翼に各2万を配置している。指揮官はラナード到着前よりその任についていた騎士、バルログ伯である。

 両軍の旗が平原の風に靡き、その士気が高まっていった。そして、最初に動き出したのは鴎国側の中央部隊であった。

 

「敵中央、前進を開始しました!」

 

「分かった。オルランドゥ伯に伝令を、その場で敵を迎撃せよと。両翼に前進の指示を、トリスタン隊にも伝令を、初撃は任せる……と」

 

「ふん、我慢ができん奴等よの。それとも御しきれんかったか」

 

「ですが、これで出鼻を挫けましょう」

 

 南天本陣は徐々にその動きが活発化していく。この野戦に勝ったとしても要塞攻めである。ここで痛手を被るわけにはいかないと、ゴルターナ、そして傍らに佇む司教はその知略と武勇を振るおうとしていた。

 そしてここに、両軍が激突した……。

 

――――

 

 中央に配属された私は、あの雷神シドの隣に立っている。いや、いつもの通りレミアさんが手綱をもったチョコボにだが……。

 今までに見たことのない数の敵兵が、それこそ津波のようにこちらへと駆けてきている。砂塵が舞い上がり、雄叫びが届く。その光景に圧倒され、私の体を熱くさせていくのが感じられる。

 

「さて、トリスタンよ……いけるか?」

 

「え? ……あ、はい。大丈夫です……」

 

 元より、私が使えなくともこの中央部隊の動きは変わらない。この初撃で見極めをしたいというのだろう。

 深呼吸を3度。手に持つウィザードロッドを持ち直す。そのほかの装備は金の髪飾り、黒のローブ、魔力の小手である。魔法AT特化タイプにし、敵を打ち砕く事を目的とした組み合わせである。

 畏国と鴎国。兵数差は大きく、油断も余裕も有りはしない。この時に限って言えば、あらゆる自重を外さなければならないだろう。父やリシューナ子爵からも今回はあらゆる魔法の使用を許可されている。言ってしまえば、私が私の意思で全力を出す久しぶりの機会である。

 そうして、瞑目しているうちに後ろから声がかかってきた。

 

「大丈夫ですか?」

 

 頭にあたる柔らかい感触も、集中することで感じられなくなってくる。どうやら、私は戦闘という状況になるとどんどん入り込むタイプらしい。

 そんな考えすら、頭に浮かばなくなってくれば完成だ。

 

「はい――初撃、行きます」

 

 僅かに前進し、集団の先頭まで進んでいく。ロッドを一回しし、その先端をこちらに殺意を向けてくる集団に構える。

 ――後に語られる『魔神』

 

「――時は来た」

 

――其の旗は魔法であると

 

「――許されざる者達の頭上に……星砕け降り注げ!」

 

――其の名乗りは敵兵の叫びであると

 

「――『メテオ』!!!」

 

 

 魔力によって導かれた巨大な隕石達は、吶喊してくる敵軍の頭上に降り注いていく。

 先頭を走っていた騎兵が潰され、後続も物理的、爆風、衝撃によって吹き飛ばされていく。僅かに張られた魔法による障壁……シェルを複数人で張ったものも、その効果を発揮するまでもなく押しつぶされていった。

 正面の敵がその陣形を崩せば、後ろからは剣が抜き放たれる独特の音が響いてくる。

 

「敵の前衛は崩れた!! これよりは我ら南天騎士団第一軍がその役割を果たす時ぞ! 黒獅子の何たるかを奴らに教えてやれ、正面より噛み砕くぞ!……全隊突撃!!!」

 

 黒獅子の旗が先陣をきり、雷神が出撃していく。その勢いは強く、自らが先頭を駆けていた。

 そして、崩れていた敵前衛にたどり着けば、その周囲に雷光をもって薙払い、凄まじいまでに敵を斬り殺していく。

 ていうか、正直有り得ない勢いである。メテオ使った私が言うのもなんだが、あれもどうかと思う。一定のテンポで血しぶきが舞い上がり、その足を止めようと近づいた敵の指揮官らしい騎士も、僅か2合で切り伏せられている。

 

「なぜオルランドゥ伯が雷神と呼ばれているか知っていますか?」

 

「いや……聞いたことないですね」

 

「敵集団に突撃し、全てを切り伏せながら進むその姿を高台から見たとき、それが雷のように敵陣を裂いた様子から付けられたものです」

 

 最早シド無双である。近づいた兵は逃げ出そうとし、最早打ち合おうとすらしていない。いや、気持ちは分かる。分かるが、逃げ出そうとした矢先に聖光爆裂破で周囲もろとも吹き飛ばされている。

 

「……非常識な」

 

「鏡を見せましょうか?」

 

「お前ら楽しそうだな……伝令が来たぞ、中央で崩れていない場所に一発打ち込んだら左翼へ移動しろとよ!」

 

 心外な事を言われた気がするが、ともかくここは戦場だ。再び集中していき、次の場所へと移動していく。今回は盛大に行くのだ。

 

――――

 

 今回部隊行動は若干変則的になっている。私たちの部隊は補充と拡充により5百名になっている。大体が新兵であるが、それでもそこそこの規模である。そしてこの数をそれぞれ一軍になっている中央や両翼に配置するには、動きの制限が大きくなってしまう。その為、私とレミアさんを単独で前線へ、敵兵が近づいてきた場合は後方に待機している部隊まで移動する手はずである。

 この場合、前線にいる時に狙われた場合は私を守る兵が居ないと思われるが、それが各前線部隊になっている。司教からは、私が危機に瀕したときは周囲の兵を盾とし、後方へ下がる事を優先しろという有難いお言葉を頂いている。また、旧派閥の方々には言われていないが、父や中央を担っている指揮官には私の生存を優先させるようにとのお達しまで出ている。

 そして、私がどうしようと考えていても、手綱を握るレミアさんはその判断を下せるのだろう。聞いてみたら当然です と普通に返されてしまった。

 

 左翼へと到達し、揺れるチョコボにしがみつきながら周囲を見渡す。あちらこちらで剣と剣がぶつかり合い、槍に刺されて血を流すもの、矢にあたり地に伏せるもの。

 私も同じことをしているのだ。だが、最早麻痺してきた私の頭ではこの景色に異常さを感じる事が出来なくなっている。

 そんな私の感傷等戦場において意味はなく、遠くから何かの飛来音が聞こえた瞬間、後ろのレミアさんが私の頭を力づくに押さえつけて来た。

 

「いけない、伏せて!」

 

「何を――!!!」

 

 私の言葉は発しきる前に、すぐ横に魔法が着弾していった。爆発に乗っていたチョコボが体勢を崩しそうになるが、軍用に鍛えられたそれは強引に踏みとどまろうと大地を踏み抜きながら走り抜けている。

 飛ばされそうになる体を押さえつけられ、さらに進めば聞き覚えのある声が私の耳に届いてきた。

 

「お待ちしていました! トリスタン隊長……今は魔爵でしたね!」

 

「はい! あ……ダレンさんの時に部隊指揮をしていた……」

 

 近くには銀のフルプレートで身を包んだ騎士が立っていた。以前、ダレンさんが負傷した時に指揮を引き継いだ若い騎士の一人であったはずだ。名前は確か……

 

「はい、ウェイン・リーバー……現在は歩兵隊の部隊長をやっています」

 

「それで、状況はどうなっていますか?」

 

「はい、後方に居た弓隊が右翼の援護に回っています。その為こちらは援護射撃が少なく――――! このように相手の魔道士を自由にさせてしまっています……」

 

 この会話の最中にも、離れた位置に敵の魔法が着弾している。左翼の隊にも弓兵は居る。だが、一個の軍として形成されたそれに比べればその機能は十分とは言えない。

 さらに前線の方から大きな魔力が感じられる。視線を向ければ炎の巨人……イフリートが召喚され、周囲を焼き払っている。

 

「……すぐに行きます。護衛をお願いします」

 

「判りました、護衛は私が引き受けます。そちらの副官の方は補助魔法を」

 

 ウェインさんの後に続き、さらに前線へと近づいていく。兵士たちの怒号が大きくなり、鉄の打ち合う音が耳に刺さってくる。

 

「これより魔法の援護がある! 敵を近づけさせるなよ!」

 

 周囲の陣形が代わり、後ろに居る兵が密集隊形を作っていく。

 さて、どうしたものかと一考する。魔法はその性質上割と味方を巻き込んでしまう。旧派閥の一人に言われた言葉も決して間違って居ないのも確かなのだ。

 その為、使う時は敵が接近しきる前や最前線より奥を狙うようにしているのだが、それでも爆風に巻き込まれる事があるらしい……。ならば、なるべく巻き込まず、かつ高威力で相手を威圧できるもの……。

 

「発動したら少し離れてくださいね」

 

「……了解です」

 

「……漆黒の光閃き、大気の震えとなれ 斬鉄剣!」

 

 私の杖の指し示す空間が歪み、巨大な騎士が出てくる。灰色の馬に跨り、そのマントは炎を纏っていた。ドクロのようなその面からは、二本の黒い角。そしてそれはゆっくりと前へと進んでいく。

 オーディン……FFシリーズで最早お馴染みと言っていい召喚獣であり、敵に対して即死攻撃を使う。ただ、効果の無い相手がいたりするので、いまいち使わなかったりするのが切ないが、そのムービーから必ず一度は召喚するはずだ。

 威風堂々……自然、周囲の兵たちは道を開けていく。敵軍と私の間にある障害はオーディンだけになるが、最早敵兵ですらその威容に畏れを抱いている。

 手に持つ青い刀身の剣……斬鉄剣を振り上げ、その騎士は戦うべき戦場へと駆け出していく。

 

「蹂躙しろ! ――『オーディン』!!」 『破壊の閃光』

 

 敵陣へと突撃したオーディンは3度の閃光をもって敵を薙ぎ払っていく。ひと振りで数百の兵の命を刈り取り、イフリートすらも巻き込んでいく。

 

「相変わらずですね……これより前線を立て直す! 隊列を維持しろ! これ以上押し込ませるなよ……ブランシュ子爵に伝令を、中央は子息の援護があるため弓は両端に回すようにと」

 

 敵の隊列が乱れ、動揺が走ればこちらも動きやすくなる。あとは相手の魔道士を私が押さえれば徐々にだが押し込めるだろう。

 そして、左翼はその兵力差以上に善戦することができ、優位を得ることが出来た。

 

 

 これまでの南天騎士団の戦い方は、オルランドゥ伯率いる歩兵隊が敵を足止めし、リシューナ子爵が陣形を崩し、徐々に押し込むという形をとっていた。

 実際、かつての兵の質を維持できているのは歩兵隊第一軍、そして風神率いる騎兵隊位である。兵の調練が追いつかず、傭兵を雇い入れたり他の騎士団を合流させたりしているが、全隊の質はやはり低下している。

 しかし、今回大魔法という手札が加わったことにより、南天騎士団はその能力を十全に発揮することができた。

 いかに質の高い第一軍であっても、崩れていない相手と対峙しても時間はかかり、騎兵隊も同様に無理に突撃をすれば被害が大きくなる。だが、ここで魔法によって陣を崩した状態ならどうか? そして、それまで大きな戦果を出すことが出来なかった他の隊に、決定力がつけばどうなるか? 魔道士隊を編成すれば低いながらも同様の効果もあったが、その育成の時間、そして軍同士の戦いでは小回りが効かなくなってくる。

 今、歩騎遠(魔と弓)3つが揃ったことにより、大きな戦果につながっていった。

 

 そして、本陣もその状況に大いに湧き上がっている。

 

「これは、予想以上……いえ、報告通りでしたな」

 

「うむ、奴らを見てみろ。慌てふためいた様子が目に浮かぶわ」

 

 敵陣の旗があちこちに動いている。動揺激しい兵を抑える事に四苦八苦しているのだろう。

 そして、それから暫くして鴎国側が兵を引き始めていった。日も傾きだし、今日の戦闘の幕が閉じようとしている。結果、初日における両軍の被害は、畏国が2千に対し鴎国は実に1万以上の被害を被った。

 

 そして、続く二日目は鴎国側は両翼と中央の距離を広く開け、大魔法に対する被害軽減を選んだ。しかし、北部・南部とも畏国側は周囲の砦を拠点とし、戦線の維持を務めた。中央に風神・雷神の二枚看板を配置し、さらに弓隊の援護により中央の被害が拡大。北部側は砦からの大魔法による被害により、この日も鴎国側の被害は大きかった。

 僅か二日で1万の兵力差を覆された事になり、鴎国の士気は低下、対して畏国側はその士気が大いに高まっていた……。

 

 その二日目の夜、私は野営の天幕の一つを与えられていた。周囲には重装歩兵が詰めており、割と厳重な警備体制になっている。近寄れるのも指揮官クラスか、私の隊でもレミアさん位しか入れないようになっている。

 そして、私の目の前では父が大いに盛り上がっている。

 

「ははは! いやぁ、お前はブランシュ家の誇りだよ、トリス」

 

「うん、まぁ……父さんも無事で良かったよ」

 

 実際、ブランシュ家としてみれば現在までの戦果は非常に大きい。鴎国の被害の5分の1を私の魔法によってのものである。逆を返すとそれだけの人間を私が殺したことになるのだが……。

 これは戦争である。一人を殺せば犯罪者だが、戦争で100万人を殺せば英雄という言葉があるが、今ならそれが少しわかる気がする。

 戦時でもないのに100万人殺せばそれは英雄でもなんでもなく、ただの大量殺戮者だ。戦争という状況だからこそ英雄と呼ばれる。だが、それを為した人間からすれば全く逆だ。人々が英雄と呼ぶように、敵を倒せと求める。その求める行為に応じたと、ただ言い訳したいだけだ。

 頭の芯が鈍い痛みを発している。

 

「……蹂躙しろ……か」

 

「どうしたトリス? ああ、疲れているのだな。ゆっくり休め。今日はもう誰も通さないように伝えておく。ではな」

 

 思い出すのはオーディンを召喚した時に自分の口から出た言葉。

 どこか……心のどこかで私は戦いを楽しむという心理でもあるのだろうか?

 答えの出ない考えは頭の中をぐるぐると巡っていく。

 

「やめだ、やめ……疲れてる時に変な事を考えるもんじゃないな」

 

 頭を二度三度振り、霞がかったものを振り払うように立ち上がる。手近に置いてある水を頭から被り、火照った体を冷やしていく。

 ふと、思い出した事があった。今の自分のステータスはどうなっているのだろうか? 二日に渡る戦いは今までのどの戦いよりも長く、そして大きかった。魔法を使う機会も多く。エーテル飲み過ぎるのも嫌なので、思わずエーテルを浸して焼き上げたパンを食べた位だ。ちなみに味はメロンパンをより甘くしたような感じである。レミアさんは胸焼けしそうですとか言っていたが、味の変化は重要だ。

 

トリスタン Lv.30 Exp.90 JP.2300

Brave 70  Faith 72

HP 172/95(+77)  MP 152/102(+50)

Job:黒魔道士

Move…5 Jump…5 Speed…7

物理 AT…5 魔法 AT…16

 

 黒魔道士が気になる? だってソーサラーよりも魔法AT高くなるし……。

 それはともかくとして、いつの間にか立派な能力値になっている……いや、戦闘中に時折頭の中でテーテテッテーみたいな効果音が……流れていないな、気のせいだろう。しかし、思い返してみればアカデミーに行っても自主トレーニングは続けていたのだ。ただ、環境の変化や忙しさであまり自分の強化を行っていなかったのも事実である。

 思い返すなら、初陣で錯乱した後に強化をしてから放置……なんて状況になっている。いや、今の状態で十二分に目立ってしまっているからアレなのだが。しかし、レベルに対してJpが貯まっていないのは最早お約束なのだろうか。そしてレベル先行させて後悔するまでがワンセット……現実となった今ではあまり起こりえない事だが。

 一先ず、自分の能力を確認出来たところで体中に倦怠感が襲ってくる。まだ戦いは続くのだ、未だ慣れない寝所に入り私は眠りに落ちていった。

 

 そして翌日、敵要塞に新たな部隊が入ったとの報告があった。数は1千程だが、その旗はここよりさらに南部、東バグロス海に近い位置で戦っていたはずの隊であった……。

 




作中魔神は誤字じゃないはず。常習犯だけど信じてくだしあ・・
尚、主人公の成長率は少し上げてあります

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