魔弾の王と戦姫と天災   作:ムリエル・オルタ

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なろうの方でも活動を再開したのでこっちの投稿ペースが落ちます。




謁見と天災と再会と

誰かに叩き起こされた。かつてヘルシング魔導帝国の帝位に就いていた時、何度かこの方法で起こされた。具体的には腹パンを全力でやられる方法。様々な英雄の肉体と混ざっているため並の攻撃じゃ肉体は傷つかない。

 

それをいとも簡単に貫いてくる衝撃はアムドゥシアスだろう。

非常事態や、大切な行事の時以外はやらないように言っているのでなにか大切な行事化非常事態でも起きたのだろう。

 

私はノソノソと起き上がり、かれこれ200年程で鈍ってしまった魂を呼び覚ます。

 

そもそも、私という器に数百という英雄の魂が入っている。そして本来ならば1つの器には1つの英雄の魂しか入れることが出来ない。それを私は現在無理矢理2つやら3つやら入れるため、英雄の魂が反発しあい器を傷つける。その為、同時に二つ以上の能力を使うと吐血し意識を失う。

 

これは本来私には無かった。私が帝国を治めている時は民族闘争が激しく、帝国軍も常に出ずっぱりだった。その時は私は数多もの英雄の力を同時に使い、時に滅ぼし時に間引き帝国の地を平定させた。

 

あの頃の器をジョッキとするなら今はシャンパングラスだろう。余りにも脆い。

 

だからこそ、もう一度かつての器にしなくてはならない。アムドゥシアスを召喚できた事から鑑みて私は何者でも無くなってる。幻想種でもなく、英霊でも無い、ましてや悪魔でも無い。人間なんて以ての外だ。

 

判断基準は検証を経て考えるべきだろう。最悪、私はビーストの可能性も微レ存だろう。

結局の所、今は分らない。目先の目標は器を元に戻すことだ。だが、幸いにもコレはすぐにでもどうにかなる。

が、それより先にアムドゥシアスの話を聞くとしよう。

 

「なんだ、アムドゥシアス。私はまだ寝ていたいんだが」

「それは申し訳御座いません、我らが父よ。ですが、先に言っておきたいことが」

「なんだ」

 

アムドゥシアスの報告に耳を傾ける。

 

「戦姫エレオノーラが王都シレジアに向かうようなので、ご報告を」

「シレジア………………あぁ、ファブニールの作った国か。良いだろう、私も付いて行こう。他の龍具とやらも見てみたいしな」

 

そう呟きながら服を着ていく、と言っても霊基変換している服を変えるだけだが。

しかし、今回はその服装替えも遅い。原因としては私の中のリソースを器の再構築にまわしているのが原因だ。

普段よりだいぶ時間を取ったがそれでも他の人間より早いだろう。

 

「さて、着替えも終わった。エレオノーラと合流しよう」

「はい」

 

そう言って私達はエレオノーラの元に向かった。

 

私達が向かうとエレオノーラは遠出の準備をしていた。

 

「エレオノーラ、私も行くぞ」

「ん?何故お前も来るんだ?特に用事は無いと思うが」

 

そう言って首を傾げるエレオノーラに私は戯けながら答える。

 

「王国の小僧に少しばかり世間話をな。以前会ってから既に30は過ぎるだろう」

「そうか、世間話…………………今なんて言った?」

 

一瞬納得しそうになったエレオノーラだが、私の言葉のおかしな部分に気が付いたようだった。

 

「今、30と言ったか?」

「そうだ、正確には31年と4ヶ月だが」

 

誰もそんな詳しい期間を聞いていない…。と、呆れているエレオノーラ。

 

「そんな事よりもだ。王都への行き方はどうする?」

「どうと言われてもな…………。馬しか無いだろう」

 

そう言われ、まぁそうか。と納得する。昔ほど技術革新も無く、魔術は消えたのだから当然と言えば当然か。

 

「ならば、私の船で行こう。馬より早い」

「船?おかしな事を言うな。此所は陸地だぞ?」

「まぁ、見ていろ」

 

訝かしむエレオノーラに薄ら笑みを浮かべながら指を鳴らす。それと同時に開いた、宝物庫の中から空を飛ぶ船。ヴィマーナを出す。空を飛ぶ黄金の船。それがヴィマーナだ。

 

「おぉ!これは何だ?かなり悪趣味だが」

「悪趣味とは失礼だな、豪華絢爛と良いたまえ。世界最古の空飛ぶ船だ」

 

そう言いながら私は玉座に座る。まだリソースが割かれている所為か体が重い。動けないわけでは無いのでそのまま行こうと思う。

 

「行くのはどうせ馬なのだろう?ならば此方に乗ると良い。馬より早い」

「そうなのか!?よし!ならば早速乗らせて貰おう!」

 

ワクワクと擬音が出そうなほどに楽しそうなエレオノーラを見ながら私は溜息を付いた。未知の宝具の使い手がコレで良いのだろうかと。

その後、ヴィマーナに驚くリムアリーシャと英雄候補を見て面白がりながら私とエレオノーラは王都シレジアに向かった。

 

「ははは!凄いぞ!今私は空を飛んでいる!」

「面白いだろう?さぁ、少し飛ばすぞ」

 

~王都シレジア近郊~

 

「此処らで降りよう。見られたら不味いだろうしな」

「そうだろうな、こんなのが空を飛んでいたら騎士団が出て来そうだ」

 

そう言って笑うエレオノーラを見ながら私はヴィマーナを仕舞い、無貌の王を起動させる。それによって私の存在が希薄になり、その場から消える。

 

「エレオノーラ。私は姿を消してシレジアに入る。そちらとは後で合流する」

「いきなりだな?まぁ、良いが。王都を楽しんでくれ」

 

そう言ってエレオノーラはシレジアに向かって歩いて行った。

 

「さて、私も少し探索して国王(小僧)に会いに行くか」

 

無貌の王を起動させた状態でポツリと呟いた。

 

 

~王宮~

 

「恐れながら、陛下に申し上げます」「相も変わらず頭の固いことだな、小僧」

「何者!?」

 

緩やかに波打つ金髪を持つ美女が進言しようとした瞬間、私が言葉を重ねる。すると、国王の近くに居た兵士が槍を構え周囲を警戒しだした。

 

「そう、警戒することは無い。国王(小僧)、即位式以来か?見ない内に随分と老けたものだな」

 

そう言いながら扉を思いっ切り開ける。

 

そこから出てくるのは豪華絢爛な兵士。全身鎧には刺繍が施され、全部でどれ程の値が付くか想像できない。武器も匠が打った武器、歪み一つ無く、刃こぼれも無い。総数はたった6人だが、動きからかなりの練度を誇るのが分る。

そしてその戦闘に立つ白銀の鎧を身につけ聖槍を片手に持つ私。

 

会場が一瞬にして静寂に包まれた。

痛いほどの静寂、そんな中一番早く動き出したのは国王だった。

国王は王座から立ち上がると私の元まで歩いて行き、そのまま跪いた。それに続いて既に歳のいった貴族が膝を突いた。

 

「陛下!?」

「何をしているのですか、陛下!それに伯爵まで!」

「どういう事だ!?」

「静まれ」

 

国王がそう言うと先程まで口々にものを言っていた者達が表面上は黙った。が、内心かなり荒れていることだろう。

そんな事を考えていると国王が喋り始めた。

 

「陛下、ご機嫌麗しゅう存じます。此度は如何様で?」

「まずは表を挙げよ。それにたいしたことは無い。ただ、英雄の時代がまた始まった事を知らせに来たまでだ。これから戦乱が起こる。故に私から注意事項を言いに来たまでだ」

「戦乱、英雄の時代ですか。まさか、私の代で」

 

立ち上がった国王にそう説明する。他の国は人間だがこの国の王族は既に薄くなっているが一応龍の血、ファブニールの血がマクロン単位で入っている。故に普通の人間より長寿であり、国王になるものは代々私が即位式で会っている。

 

「一応親類にもなる。かつて帝国を率いていたときとは訳が違うからな、少しは肩入れしてやろうか?」

「しかし……………陛下」

 

そう言って渋る国王。そんな時、外野に動きがあった。

 

「あの痴れ者を捕まえよ!」

 

外野の一人が私に向かって衛兵を差し向けてきた。それに対して私が行った事は。

 

「全ハサン行動開始、騎士隊防御……………ファブニール!」

「GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!」

 

私のかけ声と同時に何処からとも無く黒龍(邪龍ファブニール)が出て来た。

ファブニールのあげた咆哮は地面すら揺るがすほど、その迫力に押され一部の貴族は床にへたり込み失禁していた。

 

「済まないが私は年老いていてね、聞き間違えかも知れないが私に敵対したいのかな?…………………………丁度良い、ファブニールもお腹が減っていてね。折角だからこの国全てを焦土にしたって良いんだ。私と72の貴族、そしてファブニールさえ居れば大陸だって消せる」

「GU!?……………GUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU」

 

白銀の鎧を反転した漆黒の鎧に替え、周りを威圧する。ついでに上空にはゴーストを待機させる。

 

「抵抗するなんて莫迦な真似は止してくれよ?私は手加減が苦手だ。うっかり消し飛ばすかもしれんからな」

「陛下、お戯れがすぎます。して、これまで静観を決め込んでいた陛下が我々に肩入れを?」

「なぁに、ただの暇つぶしよ。要らないのか?」

「いえ、そう言うわけでは」

「なら良かろう。それに、かつての残党も居るのだ。静観できるわけも無い」

「かしこまりました。では、その様に」

 

優雅に一礼した国王に私は頷き、その場からファブニールとハサン、ゴーストを引き上げた。

 

「この場では人も多いだろう。後で20年ぶりに飲み交わそうでは無いか」

「陛下の仰せのままに」

 

私は騎士隊を連れ立ってその場から出て行った。さて、これで本来エレオノーラに行くはずだったヘイトは私の方に向かった。これで良いだろう。

いくら平行世界だからと言ってもそれが此方で起こらない確証は無い。故に先に芽を潰す。英雄の道は辛く険しいがバッとエンドは頂けないのだよ。

騎士隊を連れながらそのまま廊下を歩いていたが途中で鎧を粒子変換させ、普段着に替える。戦闘時は良いが常時着るには適さないのが鎧というものだ。

 

騎士隊も元の場所に戻し、一人になった時視界の端に水色が見えた。

 

「あなた、あの時の……………………!」

 

水色を目で追うとそこには英雄候補に会う前に出会った二人目の少女が居た。

 




オリジナル設定:ジスタート王国は黒龍が作った国らしいのでそこにファブニールを当ててみました。また、オリ主の兵士はFGOお馴染みの敵mobの騎士だったり人形だったり、海魔だったりします。

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