黒猫ほんわか攻略日記 作:菜音
どうもです♪
この小説は今年初です!秋の話をまとめてたら何か収拾がつかなくなったので秋の話はひとまずおいて置くことにしました。なるべく早く書き上げます!
水の魔力を感じる‥‥
と言ってもただの人である彼には微塵も感じられない。けれど何か澄んだような空気を感じている。
ここは彼の所有する水精霊達の部屋がある空間である。
これまで精霊達の空間に来たことがあるにはあるが水精霊達の、それもこんなに奥までは来たことはない。
「何か‥‥思ったより静か‥‥水の音しかしないな。」
「はい、基本的に各部屋内部から音が漏れることもなく、この最深部の住人は私以外出入りは少ないので。」
彼の前を歩く栗色に白が合わさったような色の髪の少女、サーシャが説明してくれる。
出入りは少ない‥‥
それはつまり出番が少ない、また彼の部屋に遊びに来ることもないということだ。
「静かなのは気になりますか?」
「いやむしろ、何だか落ち着くな。」
様々な水の音‥‥
川のせせらぎ、水滴が地に落ちる音、何か池にぽつんと立てる音‥‥
聞いているだけで心が休まりそうな気がする。
「精霊達の空間の奥がこうなってたなんて。」
「ふふ、さぁこちらですよ。」
サーシャに案内されて向かっているのはこの空間の最深部の更に奥、一番隅の部屋だ。
サーシャさんの部屋‥‥の隣の部屋だ。
「ここです。」
「ここが彼女の部屋か‥‥」
わざわざこんな辺境とも言える場所にやってきたのはこの部屋の主に会いに来たのに他ならない。
「では‥‥」
サーシャが部屋をノックする。
返事はすぐに帰って来た。
『ハーイ!』
「サーシャです。今お時間は大丈夫ですか?」
『いいですよ。開いてますので入って下さい。』
サーシャが彼を向く。その目は覚悟はいいのか、しっかりねと言っている様に感じた。
彼は頷いてみせる。
それを合図にサーシャは部屋の扉を開ける。
二人は中へ入っていく。
これまで精霊の部屋の内部にはウシュガの所にしか入った事はないが、思った以上に中は広い空間になっていた。
「いらっしゃいサーシャさん‥えっ!?ま、マスター!?」
サーシャを出迎えようと出てきた彼女だったがサーシャの他に連れがいて、しかも彼だったことに驚きを隠せないようだ。
「よう!突然押し掛けてすまない。迷惑だったか?」
「めめめ迷惑だなんてとんでもない!わざわざ来なくも呼び出しくくれれば良かったのに‥‥」
「悪い‥‥少し驚かせようと思ってな。まあ特も各にも元気そうでよかったよ、リィル。」
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奥に上がらせてもらいお茶を出して貰った。
慣れない手つきでお茶を出してくれる彼女はリィル・ライル。一見はサーシャの最終進化と間違えそうな見た目で二つの水鉄砲がトレードマークの水精霊である。
そして、空間の最奥の部屋にいるということは彼女こそが彼の今現在のデータにおける最古のL精霊である。
「久しぶりだな。」
「ホント、久しぶりです。最後に御会いしたのはいつでしたっけ?」
「そうだな‥‥サーシャさん達と戦って頃だから‥‥覇眼3辺りまでじゃあなかったか?」
リィルはこのデータで初めて引いたガチャで陣営に迎えた精霊である。
多くの魔法使いはリマセラを行い確実に優秀な精霊を手にしようとするが、出会いを重視する彼はそれをせず彼女を迎え入れることにした。
その後どうにか集めた進化素材をどうするかを話し会った結果、サーシャさんより先に彼女を進化させることにした。
まぁ結局、サーシャさんは元々素材をあまり食わない人だったのですぐに進化したし、その時やってた聖夜イベントで手にいれた隠密メイドを含めたこの三人が最初の部隊だった。
「懐かしいですね。あの頃は臨時部隊縛り以上に戦力が限られた厳しい戦況が続いてましたからね。」
「そうですね。上手く季節イベントに乗って良いスタートを切ったと言う点では流石は長年やってだけのことはありましたね。」
「まぁ‥‥今にして思えばあの頃は情報縛りもやってたみたいなものだからな。あの頃に少しでも攻略サイトを活用してればもっと上手に振る舞えたって今でも思うよ。」
そこから少し三人で昔話に興じる。
この三人が三人だけで揃うのはかなり懐かしいことだ。
ところが、リィルは本題へと切り出した。
「それで‥‥マスターは何の用で私の所までに?わざわざ昔話をしに来ただけとはおもえません。」
「‥‥ふ、流石は元参謀役。俺の事をよくわかってる。」
彼もそろそろ今日来た理由を話すことにした。
「まぁ‥‥昔話をしたかったのもあるけど、君を尋ねたのは他でもない。君とまた戦いたいと思ったからだ。」
「‥‥何を、いまさら。ムリだよ‥‥」
リィルは少し体を背ける。
怒らせたか?仕方がない。
俺は彼女に恨まれても怒られても仕方ない。
彼女は精霊が揃わない悪戦期を他の仲間達と共に何とか戦い抜き、そして最も揃うのが遅かった水部隊を支え、最も長く苦労を共にした戦友の1人である。
ただ‥‥その後はむしろ水戦力が圧倒的に充実してきたことにより、彼女の出番はなくなり、主力や素材狩りなどの出撃をルカやルリアゲハ、イスルギに譲り、参謀の座をサーシャやアネモネに委ねると自分は身を引きいてしまった。
いや、違うな。彼女の性能ではこれ以上は無理だと判断したのは俺であり、彼女の面子を潰したことで彼女を俺の側にいづらくしたのもまた俺だ。
上がっていくクエストの難易度で旧式化を否めない彼女に彼自身も彼女に活躍の場を与えることもできず、ただ最古参の1人であることだけを覚えていて放置してしまっていた。
「これまで君に活躍の場を用意できなかったのは俺の失態だ。それは謝らる。‥‥すまなかった。」
彼は誠心誠意、頭を下げて謝る。
下げたまま続けた。
「そして、今さらながら頼みたい。俺は君とまた戦いたい!」
「違うよマスター、そうじゃないよ。」
彼は恐る恐る顔を上げる。
彼女は泣いていた。
「私はマスターを恨んでなんてない!だって勝つための部隊編成をするのは当然のことだもん。そして、私の力じゃもう役に立てないことも‥‥」
「り、リィル‥‥」
「それどころかマスターは私の事を忘れずにいてくれた!こうして来てくれた!あの時‥‥一刻も早く戦力が欲しいはずなのに、私なんかを歓迎してくれた‥‥」
彼女の涙がぽろぽろと落ちる。
「必要としてくれて嬉しかったし、だから役に立ちたいと頑張った。そして、戦力が揃うまだの繋ぎとしての役目は十分に果たした‥‥」
「リィルさん‥‥そんな事を思って‥‥」
「だから‥‥後は頼りになる後輩達に任せて邪魔にならないように‥きゃん!?」
リィルは突然マスターからチョップを受けた。
「マスター!?何を!」
突然のことにサーシャは驚いた。
されたとうのリィルは何がなんだかわからず混乱している。
「役目が終わったらハイさよならだと?お前は傭兵か!」
「えっ!?私、設定は傭兵です!」
「そうじゃない!お前の話だとまるでお前が臨時で雇ってたみたいじゃないか!お前は繋ぎのための傭兵じゃない!歴とした俺の正規精霊だ!」
「‥‥!」
「それに何が邪魔にならないようにだ。そんな事思ってもないし、参謀みたくそんな客観的な分析とかは聞いてない!俺がお前を使いたいと言ってそしてお前は戦ってくれるかと聞いた!お前の思いを聞いたんだ!」
「で、でも‥‥私はもう旧式‥‥」
「リィルさん、この人前まで縛りとかやらされて大分無理が好きになってます。そんなことは気にしませんよ。」
「サーシャさん!?人をドMみたいに言わないで!」
マスターは無理やり咳払いする。
「それに、お前はもう旧式じゃないぞ。」
「えっ?それってどうゆう‥‥」
「お前の正式イベント参加、限定、ボイス化が決まった!これでお前はまた戦える!」
「ええっ!?ホントに!」
「ああ!本当にだ!ただ‥‥カフェだがな‥‥」
「私傭兵なのに!?」
「それでも初イベントに最新カードだぞ。俺はこの日をずっと待ってたんだ!」
「マスター‥‥それってガチャだよね?手にはいる自信あるの?」
「‥‥‥‥」
「‥‥サーシャさん?」
「十連分なら石が貯まってます。けれどそれだけでアナタを当てられるかどうかは‥‥」
「お、俺はやるぞ!絶対当ててやる!」
リィルは笑い出した。
「あはは、ごめんね。もう‥‥そうならそうと言って欲しかったな‥‥」
「はは、これもサプライズさ。まぁ当たらんでもお前は使うぞ。」
「そっか‥‥また、出番ね。」
「一年ぶり以上だが‥‥鈍ってないだろうな?」
マスターは右手を差し出す。
「むしろ体力が有り余りよ。私の心配よりもマスターはしっかり、私を引いてよね?」
リィルも手を差し出しマスターの手をぎゅっと握る。
リィルさんのイベント参加、ボイス化おめでとうです♪
本当に嬉しいです!彼女は一番大変だった時に使っていた精霊でかなり思い入れがあったものですから‥‥
ガチャ‥‥絶対に引き当てます!!