出所した直後の一般人と海風の話。
一応クリスマスの短編だけど、スケールと執筆時間が合わなすぎて纏め方が雑になってしまった……

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纏め方が雑……
非力な私を許してくれ……


七年ぶりのクリスマス

──クリスマス。

一般的にはキリストの誕生日ということで、世間がお祝い色に染められる日。

そんな日に俺は、一人で街中を彷徨っていた。

 

「久々のシャバだ……」

 

というのも、俺は今日の昼頃まで刑務所にいた。

俺がしでかしたのは、殺人。元住んでいたアパートの隣人を殺害した罪で逮捕された。

 

「今日はクリスマスなのか……どおりで賑やかなわけだ」

 

──もっとも、完全に冤罪なのだが。

その殺された隣人というのは、俺の親友だった。

そいつが殺された日、俺は確かにそいつの部屋に上がっている。

だが、殺しなどしてないし、むしろ手助けをしていた。

更には、俺はアイツの死亡推定時刻にその場にいない。

なのに、下されたのは有罪判決。理不尽でしかなかった。

しかし、その呪縛から解き放たれた俺は、もう自由だ。

アイツがいないのは寂しいが、俺はまだ生きている。アイツの分まで生きなければ。

 

「……チキンくらいは買って帰るか」

 

早速、クリスマス気分を味わう為に歩き出したときだった。

 

「……あのー」

「…………」

「あのー……提督」

「……んん、俺?」

 

一人の少女に、聞いたことのない名前で呼び止められた。

──彼女の見間違えだろうか?

俺は少女を見据え、向き直った。

 

「やっと……やっと会えました」

 

膝元まで伸びた、青みがかった銀色の三つ編みを揺らし、彼女はそう告げた。

 

「えーと……お嬢さん? 誰かと間違えてない?」

「いいえ、間違えてません」

 

──そのあとに続いた彼女の言葉は、俺の気分を落とすのに充分な代物だった。

 

「海風のお兄様を殺した、新崎薫さんですよね」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

海風。それが彼女の名前らしい。

『白露型七番艦の海風です』とか言われてもピンとこなかったが、何を言ってもついてくるので諦めた。アイツの妹だし、何かあるのだろう。

 

「ここに帰ってくるのも久々だな……」

「何年ぶりなんですか?」

「……わかってて聞いてるのか?」

「え、いや、そんなつもりは……」

「……まあいいが」

 

俺はきっちりとチキンを買ってから、あのアパートに帰って来た。

大家さんの計らいで自分の部屋はそのままにしてくれていたらしく、刑務所の出口で鍵を持って待ち構えていた。大家さんには頭が上がらない。

自分の部屋は202号室。アイツは203号室だった。

203号室は新しく越してきた人がいるらしく、表札が変わっていた。変わったというより貼られていなかった。

そんなことはお構い無しに俺は自宅の玄関の鍵を開け、ドアを開いた。

 

「……綺麗にされてるな」

「ここが提督の部屋……」

 

埃こそ被ってはいるものの、当時そのままにして来たゴミ等は綺麗さっぱり無くなっていた。大家さん、本当にありがとう。

 

「まあ、取り敢えず入って」

「お邪魔します」

 

取り敢えず彼女を部屋に上げ、テーブルの前に座らせた。俺はテーブルに買ってきたチキンを置き、彼女の正面に座る。

 

「それで、お前の兄さんを殺した俺に何の用だ? 復讐にでもしに来たのか?」

「実は……」

 

その口から何が飛び出すのか戦々恐々としながら待ち構えていると、彼女はその口をゆっくり開いた。

 

「その……海風の提督になってほしいんです」

「……提督?」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

──話を聞くところによると。

三年ほど前から、『深海棲艦』というものが世界中の海で見られるようになったらしい。

その深海棲艦というのは人類の航路を断ち、空路を断ち、挙句の果てには人類を滅しにかかる生命体らしい。

物騒だなオイ。

そして、そいつらを倒せる唯一の存在というのが『艦娘』と呼ばれる、いわゆる海風のような方々なんだとか。

すげぇなお前の妹。

それで、そんな彼女らを統べるのが『提督』と呼ばれる存在なんだと。

もう訳わかんねぇな。

 

「それ俺じゃないとダメなのか?」

「そうです。実は、海風達の提督に必要な条件というのがいくつかあるんです」

「はぁ」

「一つ目は、妖精さんが見えることです」

「……見えないが?」

「まあ、この場にはいないので」

「そりゃそうか」

 

いなければ見えない。当たり前だ。

それよりも見える見えないがあるのか。

 

「そして二つ目ですが、その方を艦娘が認めることです」

「随分簡単になったな」

「まあ、まだありますので……」

「お、おう」

「じゃあ、最後の三つ目です」

 

一体何が飛んでくるのか。それは俺に適しているものなのか。色々不安があったが、彼女からの言葉を待った。

 

「その二つの条件を両方満たすことです」

「二つじゃねーか」

「三つです!」

「条件自体は二つだろ!」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「……それで、なんで俺にそんなことを提案してきたんだ? それ、俺じゃなくてもいいだろ」

「それが、お兄様からの最後のメッセージだったからです」

「アイツの……」

「『新崎をよろしく頼む』……それが、お兄様の最後のビデオメッセージだったんです」

 

最後のビデオメッセージ。

──アイツ、まるで自分が死ぬことが分かってたような言い方をしていたのか。

 

「……実は、海風は貴方がお兄様を殺したとは思ってません」

「……そうか」

「理由、聞かないんですね」

「そりゃ、そんな節操なしじゃないからな」

「……フフッ」

 

ふと、海風が微笑んだ。

何かおかしかっただろうか。

 

「何となく、お兄様が貴方を親友と呼んでいた理由が分かった気がします」

「……そうかい」

 

──俺は、彼女の微笑みを見て決めた。

 

「……なるよ」

「……え?」

「提督とやらになるよ」

「本当に……?」

「アイツのお願いじゃあ、断れないからな……」

「ありがとうございます……!」

 

ああ、しっかりと受け取ったよ。

──お前からの七年ぶりのクリスマスプレゼント。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「あ、この子達が妖精さんです」

「ちっさ……あっ」

「……見えるんですね」

「…………」




執筆時間:12時間に満たない(うち6時間は睡眠時間)

補足:殺人罪の刑期は、平均的に7年らしいです


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