糸の先に繋がれた人形のお話   作:ちゃるもん

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はいどうも。
ちゃるもんです。
1話目ですが2度目の投稿となります。まあ、前の話よりかはよくなったんじゃないかと自負しております。うん、多分……。

ただ、少し文字数が少ないのは許してね。
技量的にこれ以上は無理でした(´・ω・`)


第1話 人形が繋がれた日

「うん、うん大丈夫。うん、大丈夫だって。うん、ありがと。うん。ばいばい」

 

 耳に当てていたスマートフォンを離し赤い通話終了のボタンを押す。画面には先ほどまで通話していた相手である母の文字。

 大学生活が一か月を過ぎ初めての仕送りを受け取ることになる。その連絡と生存報告といった感じで連絡してみたが笑われながら心配されてしまった。

 

「初めての一人暮らしなんだし、心配されても仕方ないか」

 

 未だ荷物を開き切れていない微妙に殺風景な部屋。必要最低限な家具に電化製品。ところどころ隙間の空いている本棚。一か月たった今でもあまり実感できない暮らしに不自由さはあまり感じていなかった。

 寂しくないって言ったら嘘になるけどね。

 

「バイト、探さなきゃな」

 

 この一か月は大学生活と、私生活の両立に悪戦苦闘していたからバイト探しもできていない。不自由さは感じなくても大変なものは大変なのだ。

 地元を離れて全く知らない土地に一人。ちょっとした冒険気分で迷子になりかけたりもした。そのおかげか家周辺の地理を覚えるのに時間はかからなかった。

 スマートフォンを手に取り、近くのバイト募集を検索する。何ともいい時代になったものだ。

 しかし、そう簡単に決められるものでもないし……。けして、バイト希望者ですと連絡するのが怖いわけではない。わけではないのだ。

 

 ベットに寝転がり明日の講義に思考を巡らせる。あれとあれがー。まだ、一か月。同級生たちとの壁もほぼなくなり、ここからグループが結成されるといったところ。

 特別コミュ障というわけでもないので全体的に仲良くはある。だが、あくまでその程度。

 

「ここからバラ色になるか灰色なるのかがきまるか。こえー」

 

 愚痴をこぼしながら明日の講義に向け準備を進める。とは言ったもののやることと言えばせいぜい教材をくたびれた鞄の中に押し込んでいくぐらい。五分とかからずに準備は終わってしまう。

 持ち込んだゲーム機を起動する気にもなれず、スマートフォンで動画サイトへと移動。現代の若者御用達の動画サイトで適当に実況動画を垂れ流す。内容はオレツエー異世界転生系アニメの実況だ。ぼろくそに叩かれている。

 

 普通の学生らしく、暇な時間を怠惰に過ごす。これほどの贅沢がどこにあるのか。

 いや、まあ、アニメみたいな非日常が羨ましくないかと言われれば否なのだが……。

 

「けど、異世界に行きたいかって言われるとそうでもないんだよな」

 

 アニメやゲーム、漫画の続きが分からなくなる。家族に会えない。そういうのを考えると最近はやりの異世界転生とは割かに悲しいものなのかもしれない。

 動画も終盤。無理やりなこじつけとハーレムを形成しみんな大団円のハッピーエンド。

 ハッピーエンドなら別にいいのかなー。このアニメ見るの初めてだけど。

 

 さて、気が付けば時計の針が十二を指している。良い子はおねんねしましょうねー。

 仰向けになり目を閉じる。

 チクタクと時計の音を子守唄替わりに夢の世界へと飛び込んでいく。

 

 …………。

 

 あーたーらしい朝が来た

 きぼーおのあーさー

 

 皆さんおはようございます茉裏です。学校に行ってきます。飯? カロリーメイトで十分なのだよ若いから。

 

 親しい友人達に挨拶をし、堕落的に講義を受ける。

 昼飯は食堂で複数人で囲むこともあれば、パンやおにぎりを一人もそもそと講義室で食べることもあるが今日は後者だ。というのも仕送りが届くまでもう数日かかる。節約なうなのだ。

 

 微妙に物足りない腹具合を我慢しながら午後の講義に思いをはせる。

 居眠りはしないと思うが、今日一日は腹が鳴りやむことはなさそうだ。

 

 

 …………。

 

 

 一日の講義も終わり帰宅途中。帰り道のついでにアルバイトの募集物色していく。ネットで募集を探してもいいのだが、足で探すのも大切なのだ。たぶん。

 

 コンビニ、ファミレス、派遣etcetc……。

 

 ぱっとするものは見つけられず無事帰宅。と、同時に母親からメッセージで振り込んでおいたとの報告が。たったいまコンビニの前を通ってきたというのに。

 

「しゃーない。晩飯買うついでに確認してくるか」

 

 扉に刺した鍵を引き戻し、歩いてきた道を戻っていく。コンビニの機械で預金残高をチェック。無事振り込まれているようで安心した。

 ついでに大盛パスタを一つ購入。あ、温めは大丈夫です。

 

 家に再び戻ってきパスタを台所の上へ。そしてオフトゥンにダイブ。この瞬間が至高という人も多いだろう。

 

「たまには風呂溜めるか」

 

 既に布団から出たくないと言っている身体に鞭を打ち、風呂場までもっていく。

 ざっと風呂桶を洗いお湯を溜める。

 

 テレビの電源を入れ面白もないバラエティを流しながら飯の準備も進めておく。レンチンだけだけどね。

 十分もして風呂も沸いてるだろうと確認し、いざお風呂へ。

 

 ババンババンバンバ♪ 

 アビバビバ♪ 

 ババンババンバンバン♪ 

 アビバノンノン♪ 

 

 なーんて有名なあの曲を口ずさみ体を洗う。そして、いざ湯船へ。

 全身をお湯がやさしく包み込んでくれるかのような感覚にほっと息が漏れた。

 浴槽からお湯が零れ排水溝へと流れていく。

 

 やはり日本人ならお風呂だろう。日本万歳。

 

 ジョリジョリと微妙に伸びてきた髭に触れ、剃っておくかと風呂から上がる。

 椅子に座っ……て? 

 

 風呂場の椅子と言えば独特の冷たさがあるもの。しかし、いま俺の尻の下にある触感は人肌程度の温もりを持ち、もっちりつやつやとしたとても気持ちの良いもの。少なくともこんなものをわが家の風呂場に置いてはいない。

 よくよく見れば周りの景色も違うではないか。

 無機質な白一色の壁から温かみのある木材の壁。これが木の香りですか、とても落ち着きます……。

 

「落ち着くのはいいのだけれど、いい加減退いてくれないかしら? 重いのだけれど」

「あ、さーせん。すぐにどきます……マス!!?」

 

 突如として聞こえてきた声にとっさに返事を返す。

 しかし、返事は途中でとぎれてしまう。返事を返すためにはもちろん振り向かなければならないわけで、もちろんわたくし茉裏も後ろを振り返りながら返事をしたわけなのだが……。

 

 肌色

 

 そう。目の前に広がるのは肌色。まごうことなき人間の肉体。さらに言えば女体であった。すなわち状況だけを見れば覗き魔とその被害者。

 

 あ、俺の人生オワタ……。

 

 脳裏によぎる獄中生活。手に縄が付き、面会所で涙する母……。呆れて声を出せなくなる父。学校に戻る事もかなわず永遠に後ろ指を指されていくことになるのか……。

 あはは笑えねぇ……。

 

「あ、どきますね……。もうしわけないっすはい……」

「お互い聞きたいことはあるでしょうし、着替えてきてくださらない?」

「はい……」

 

 視界がぼやける。足元がおぼつかない。人間って生きる希望が無くなるとほんとうにたいちょうにでるんだなあ……。

 おそらく脱衣所であろう場所に繋がる扉に手をかけ奥へと進む。やはりそこも自宅の脱衣所の姿は一切なく、高級旅館のような煌びやかなものが広がっていた。あの至って普通な脱衣所よ帰ってきて。

 ああ、少なくともこんな形での非日常は味わいたくなかった。

 

 切り替えられるかはともかく、謝り倒してみるしかないか。ワンチャンあればいいけど。

 

 悲観し続けても仕方ないってね。現実逃避ともいうけど。

 

「にしても、ここは何処なんだマジで」

 

 何度思い出そうとしても出てくるのは髭を剃ろうと椅子に座ろうとした事実だけ。それ以上でも以下でもない。多数の異世界転生のように死んだりしたわけでもないだろうし……。いや、もしかして死んでしまってるのか俺……? 

 だけど、死ぬ要因になりそうなものなんてあったかぁ? 剃刀もまだ持っていなかったし、わっかんねぇな。

 

 用意された洋服に腕を通していく。白のシャツに黒のチノパン。ダボつくこともなく体にフィットする洋服。材質もかなり良いものだと素人目からしても分かる。

 身長が平均的なもので助かったと言えるだろう。これ、背が小さいならまだしも大き過ぎたらぱっつんぱっつんのまま対話に臨む……それなんて地獄? 

 

 少なくともそのような悲しい出来事が起きなかったことに感謝しよう。ビバ平均身長。実際平均がどのくらいなのか知らんけど。

 

「ん? もう一着ある? なんだこれ」

 

 どうしようかな、この手の類の服って着たことがないんだけど建物にマッチしているのは確実にこっちだよな。

 

「試しに着てみようかな。初めてでもなんとかなるだろ」

 

 無駄なチャレンジ精神を発揮し、服に袖を通していく。

 

 

 

 この時の俺は間違いなく浮かれていた。じゃなきゃ悠長に服を選んでいる余裕なんてないだろ? 

 現実から目をそらし、楽観視を続けていく。

 日常から非日常への入り口に立った、いまじぶんはその境界線にいるのだと。選ばれた勇者のような感覚と言えばわかりやすいだろうか。

 

 もし、今この場で逃げ出すなり、せめてもう少し緊張感の一つでも持てれていれば……。

 

 いや、終わったことをぐちぐち言い続けるのは醜すぎるか。

 

 まあ、そういうこったな。

 どこにでもある日常を暮らしていた一人の男は、幸か不幸か非日常への扉を開いてしまった。

 これは、誰もが一度は望んだこともあるかもしれないモノを手に入れてしまった一人の滑稽な男のお話。

 

 その日、一人の人形が糸に繋がれて、

 糸の先に繋がれている人形をみんなで指さして笑うだけの、

 そーゆうおはなし。

 




お読みいただきありがとうございます。

まあ、あれだな、
出だしは頑張って日常感を出したかっただけなんだな……。
大分ごり押してるけどそこは許してね。

さあ、人形劇の始まり、始まり。
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