糸の先に繋がれた人形のお話   作:ちゃるもん

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どうもどうも、部屋の電気が漏電か何かで死にかけだったちゃるもんダヨー。
なんかよく分からないうちに治ったから今のうちに投稿するよ。

やっぱあれだね、戦闘って書いてるのは楽しいんだけど上手いことシーンを表現するのって難しいよね。



第11話 うん。かえりたい。

 いつの間にか少女の姿に戻っていたレミリア嬢にエスコートされつつ、案内されたのは満月のステンドグラスが暗く光るエントランスホール。入口からみて二階へと上がるための階段。中腹から二手に左右へと分かれているのだが、その中腹にレミリアと立っていた。

 

 階下には、地に伏せ気を失っているであろう十六夜咲夜の姿。まあ、予想通りっちゃあ予想通りだわな。その両脇を通り過ぎる見覚えのある二人。博麗霊夢と霧雨魔理沙だ。二人とも随分

 

「アンタが親玉?」

「ああ、そうだとも」

「なら、単刀直入に言わせてもらうわ。この紅い霧をさっさと取っ払ってちょうだい。おちおち昼寝もできなくて困ってるの」

「霊夢、もう少しなんかあるだろ……」

「なあに、そう焦ることはない。こんなに月も紅いんだ。ゆっくり楽しもうじゃないか」

 

 そう言ってレミリアの翼が大きく広がる。元々その体を包めない程度だったものが巨大化し三倍ほどの大きさに。それと同時に雲が裂け、真っ赤に輝く紅の月が姿を現す。さながら、主の呼び掛けに応じるように。

 

 てか、元の姿っていうか大人の姿で戦わなくてもよいのだろうか。幼女の姿だと出力が落ちるって言ってたけど。

 

「その前に……連れていけ」

「うお!?」

 

 その言葉と同時に魔理沙の体が消えた。恐らくはパチュリー・ノーレッジが待つ大図書館へと連れていかれたのだろう。

 唐突に消えた魔理沙を気に留める様子もなく博麗霊夢……いや、博麗の巫女は眼前の吸血鬼を見据えていた。

 

「仲間が連れ去られたというのに随分と冷たいのだな」

「勝手に付いてきただけ。どこで死のうがそれは覚悟できてたはずよ。まったく……」

 

 そう言いながらも少しばかしの苛立ちを感じられる。

 

「入口の奴よりかは威圧感はない……。でも、今日は本当に永い夜になりそうね」

 

 それと同時に部屋全体を甲高い音が響き渡る。レミリアの長く伸びた爪と博麗の巫女の獲物であるお祓い棒がぶつかり合った音だと分かった時には二人はすでに距離を取り別の攻撃に転じていた。

 レミリアは影が固まったかのような複数の獣を生み出し突撃させ、自身は後方から安全にかつ、相手の逃げ道を潰すように針のような血の塊のようなものを配置。

 霊夢からすれば厄介極まりないその攻撃に一切怯む様子もなく飛び込んでいく。

 

 真っ先に飛び込んできたオオカミのような影の顎を蹴り上げ動けなくなったところをお祓い棒で顎下からかち割る。二匹目の猫を大きくしたような奴は尻尾を掴み体制を崩した後、喉奥にお祓い棒を突き立て血の塊にぶつけた。まさしく肉盾である。

 

 血の塊は猫の影がぶつかるや否や破裂。四方八方へとドス黒い棘を生やし霧散した。

 当たる、あるいは近づけば何かあるのは見れば分かる。が、対処の仕方に無駄がない。

 

 既に踏みつぶし肉盾にし、かち割り断ち割き殴殺し焼き殺し続けても獣の数は一向に減る様子はない。血の塊も数は減るが減ったそば再び姿を現す。

 

 あの戦争のときに見た吸血鬼の戦い方とはずいぶん違う。しかし、圧殺という言葉が似合いすぎるその力と数の暴力に圧巻していた。

 

 果敢に前に踏み出そうとするも足止めされまともに進むことは出来ない博麗の巫女。

 ただ、獣を前に押し出し、逃げ道を封じているだけのレミリア。

 

 どちらが優位なのかは火を見るより明らかだった。

 

「随分と苦しそうじゃないか博麗の巫女。この程度も突破できないのか?」

「あらやだ、蝙蝠さんはお話したいのかしら?」

 

 そう言いながら博麗の巫女が投げたお札が獣の影を火だるまにした。

 そして違和感に気づく。

 

 獣の数が減っているようにみえる。いや、厳密には減っていないのだろうが行動できる獣のは確実に減っていた。

 

「アンタがどこから来たかは知らない。けどね、実体がない化け物なんて私にとっては普通なの。日頃の妖怪退治の準備段階でしかない。まあ、これだけじゃないんだろうけど、流石になめ過ぎじゃないかしら蝙蝠さん?」

 

 そういった頃には軽く五十は超えていた獣はすべて残り火をちらつかせながらその場にもだえ苦しむだけとなった。

 残ったのはまだらに配置された血の塊のみ。レミリアはもだえ苦しむ獣を見て称賛を送るように手を叩いた。

 

「流石は博麗の巫女。といったところだろうか。だが、一つ思い違いをしているそれは獣でもなければ妖怪でもないということだ」

 

 拍手をしていた手を止め、大きく手を叩いた。拍手とは違った力強いそれは何の意図があったか。何も起こることはなく妙な静寂が続いた。

 どういうことだろうかと首をかしげていると、レミリアが実に愉快だと笑い始めた。

 

「ああ、認めよう博麗の巫女。私は貴様を過小評価していたようだ」

 

 え、なにどゆこと。

 唐突な博麗の巫女を認める発言に困惑する。

 

 予想を立てるなら、影、あるいは血の塊を使って何かをしようとしたけれど既に対策されていた。ってところか。

 

「私の体の一部でもあるのだがな。まさかピクリとも動かないとは。さてどうしたものか。よし、こういうのはどうだ?」

 

 レミリアが出していた血の塊が一つの塊となり一本の矢と変わる。

 

「さて、小手調べは終わった。次は耐久テストだ」

 

 レミリアの手元へと戻ってきた矢を、また同じ血の塊でできた弓に番えた。その瞬間全身が燃えるように熱くなる。レミリアから溢れ出る妖力が全身をじりじりと焼いているのだ。

 

 ヤバい、死ぬ。

 

 慌てて階段を駆け上り近場の柱へと身を隠した。しゃがんで頭を守る。意味があるのかは正直分からないが、しないよりはマシだろう。

 

 脳が警鐘をならす。気分が悪くなるほどの力の奔流。藍様や紫様の威圧感に似たそれはレミリアのなかでうねりを上げていた。はやくはやく撃ち出してくれと言わんばかりのつんざく悲鳴のような金切り音。

 霊夢は大丈夫なのだろうか、アレを堪え切れるのだろうか。いや無理だろう、無理だろうな。あれは人の身で受けていい代物じゃあない。化け物同士で潰しあうためのモノだから。

 

 そして、金切り音が途絶えた。あまりの威力に音さえもしなかった。きっと、この柱から顔を覗かせれば悲惨な結果が目に付くのだろう。

 

「は──―? はは、ははは……は?」

 

 あまりの光景に笑いしか出てこなかった。壁をぶち抜き、地面を抉り、鼻につく血の匂いすら感じ取れず砂ぼこりが立ち込める。地獄と呼称しても謙遜ないその景色──―

 

 ──―なんてものはなく、切り落されたレミリアの首がコロンと地面を転がっていた。

 

 まてまてまてまて、え? 何が起こって……は? 

 吸血鬼とは、幻想郷最速である天狗たちに匹敵する速さを有し、鬼の怪力にも引けを取らない。その強さはこの目で見ている。倍以上の天狗を前に、ただのごり押しだけで圧殺して見せたその姿は瞼に焼き付いて離れない。藍様が介入していなければ、まず間違いなく天狗は滅ぼされていただろう。

 

 棒きれ一本でどうすれば戦車に勝てようと言うのか。

 

 だが、棒きれと称してもそれは吸血鬼から天狗を見た場合の話。人間と天狗なら棒きれは人間側だし、吸血鬼と藍様なら砂粒一つと戦車のようなもの。

 

 つまり、勝てないのだ。圧倒的力を持って蹂躙されるしかないのだ。それだけの絶対的な差が存在している。少なくとも、博麗の巫女から漏れ出ている霊力はレミリアの弓矢よりも圧倒的に少なく、威圧感なども一切感じられない。そこだけ見れば、レミリアの慢心も頷けるものであるし、力負けするなんて夢にも思わないだろう。たとえそれが、本来の力を発揮できない少女の姿だとしてもだ。

 

 あっけにとられ、茫然とその光景を見つめる。エントランスホールの床に広がっていく血だまり。忽然と佇む紅い巫女。

 

「外の奴がとんでもない化け物だったから警戒していたけど、たいしたことなかったわね」

 

 辛うじて聞こえたその言葉。それと同時にレミリアの四肢がずり落ちた。初めから付いていなかったとでも言いたげに。

 理解が追い付かない現象に、思わず吐き気を及ぼす。胃酸が食道を上りその不快感に思わず飲み込んだ。

 

 いったいどうやって。

 

 見たくもないが、再度バラバラになったレミリアの身体を見る。頭、右足左足、右腕左腕と綺麗に切断されている。だが、博麗の巫女の武器はお札とお祓い棒。使ってはいなかったが針など。つまり、切断できる武器は持っていない。

 にもかかわらず、レミリアの肉体は切断された。さらに言えば、博麗の巫女は動いていない。

 

「──―ああ、そういうことか……」

 

 よく考えれば簡単なことだった。アニメや漫画でよく見かける方法。転移系の能力者の最強とすら呼べるであろう力業。

 

 相手の肉体に別の物体を転移させる。

 

 恐らく博麗の巫女はこれを結界で再現したのだろう。それならば、その場から動いていないのも納得ができるし、レミリアの肉体が鈍器以外の獲物を持っていないのにもかかわらず切断されている事にも納得がいく。

 オタク特有の察しの良さを発揮しつつ、目を凝らしてレミリアの切断面を観察する。

 予想通りとてつもなく薄い透明な板、恐らく結界がレミリアの肉体の表面に張り付いていた。先ほどはあまりのショックに気付かなかったが、血の流れ方も断面からあふれ出るというよりは隙間から漏れ出ているように見える。

 

「黒幕も殺したことだし、霧はいつ晴れる──―!! 

 

 お祓い棒を肩に担ぎ、レミリアの遺体に近づいていく。あと数歩でレミリアの肉体に手が届く、瞬間、後ろに飛び下がった。

 

 まあ、うん、何となーくだけど予想はしてた。博麗の巫女の実力を知っておくためにこうして先回りをたわけだけど、あんまりにもあっけなさすぎる。

 少女の姿とは言え、瞬殺されたことにあっけにとられたが、忘れてはいけない。彼女は吸血鬼だということを。

 

 吸血鬼の最大の三つの特徴。一つは多くの弱点が存在しているということ。一つは人間の血を主食としていること。そして、不死身かと思えるほどの圧倒的再生能力。

 

「驚いた、まだ動けるのね」

 

 うごうごとレミリアの切断された右腕が、ひとりでに動き出し再生を邪魔しているのであろう結界を無理やり握りつぶす。それと同時に新たな四肢が首がその場から内側から黒い靄と共に生え出てきた。

 

「この状態で勝てると思っていた私が間違いだった。私は小食でね、エネルギーに変換できるものを大量に摂取できない体質なんだ。故に、この姿を取っている。燃費がよくてね。ああ、だが、間違いだった。非礼を詫びよう博麗の巫女。貴様は強い。まごうことなき強者だ。試す必要もなかった。だから、上には上がいることを教えてやろう。死ぬなよ」

 

 レミリアの肉体を蝙蝠が包み、晴れる。エントランスに案内される前、少しだけ見せたあの美しい女性の姿がそこにはあった。

 手には初めて出会った時と同じ長槍。彼女の代名詞と呼べるスペルカードに登場するそれの名は『神槍 スピア・ザ・グングニル』

 百八十近いレミリアの身長に並ぶ長さを誇る長槍。しっかりとした形を持たず、時折生きているのかと錯覚させるように脈動している。先ほどの弓矢と同じくレミリアの肉体がベースとなっているのだろう。

 

 レミリアがグングニルを前のめりに構える。

 じりじりと焼き付くような威圧感がなくなり、凍て刺すような、その場にいるだけで命そのものを刈り取られるような恐怖感が突き刺さる。

 

 レミリアの身体がぶれる。

 

 近くの花瓶が水をまき散らしながら割れ、ステンドグラスが粉々に砕け散った。本来は聞こえていないのかもしれないその音に、耳を塞ぐ。物陰であったためどうにかなったのだろうが、場所が違っていたら……、あと一秒でも耳を塞ぐのが遅れていたら……。

 膜が破れるなんて生半可なものではなく、ザクロの実が脳裏をよぎった。

 

 耳を塞ぎながら目を細め戦況を見る。初撃は防ぎ切ったのだろうか? 突きを放ったレミリア槍は空高く掲げられ、次の瞬間レミリアを中心に黒い雷が落ちた。とんでもない衝撃波に扉という扉は粉みじんに、近くの柱は部分的に粉塵となって風に吹かれて消えていった。

 

 博麗の巫女は壁に打ち付けられたのだろう。大きな亀裂が入ったその下に血の海を作りながら沈んでいた。

 だが、流石は主人公というべきか、まだ息があるようでお祓い棒を杖代わりに立ち上がる。しかし、全身から溢れ出す血は確実に足元を赤く染めていき、足は生まれたての小鹿のように震えている。

 彼女の周りには赤、青、黄と色とりどりの球がふよふよ浮かんでいる。それが『夢想封印』だということは一目でわかった。あの球を使用し、何らかの方法で威力を相殺しようとしたのだろう。

 

 立ち上がったもののその目に光は宿っておらず、勝敗は決していた。しかし、これは殺し合いである。俺の知る原作とは違い、弾幕ごっこなんてものは存在しない。弾幕というのはあくまで相手を攻撃する手段に過ぎない。

 故に、レミリアはその長槍を振り上げる。せめて、全身全霊の一撃で葬ってやろう。そういうことなのだろうか。両手で最大限振りかぶった槍に、先ほどよりもどす黒く、眩い光を放つ黒色の雷が纏わりつく。

 まだ振り下ろしていないのにもかかわらず、その衝撃波は俺の隠れ居ている場所まで届き、バチンッと迸った雷は頬を掠め、鋭い痛みに顔をゆがめる。

 

 そして、その槍を振り下ろす。刻一刻と近づいていく死に俺も、勿論、博麗霊夢も動けないでいた。時がゆっくりに見える。所詮主人公というのは物語の中の話であり、ここは現実。ゆっくりと動いた博麗霊夢の顔。その瞳にはいったい何が写っているのか。

 

「やめろ、やめろよなあ」

 

 無意識にだろうか、そんなことを口走っていた。次に来る衝撃に体を守ろうともせずただ動けないでいた。だが、その衝撃が来ることはなく、振り下ろされた神槍は第三者の介入によりいとも容易く受け止められた。

 

「そこまでですよお嬢様」

 

 紅い髪をたなびかせ、緑色のチャイナ服を身に纏ったその人影。右手だけでグングニルを受け止めて見せたその人影は、ここに案内される前にいたずらに俺の両足をへし折ろうとしたその人影は、この館の門番。今、目の前で圧倒的実力を見せつけていたレミリアでさえ勝てないと断言した紅魔館の守護神こと紅美鈴だった。

 

「まったく、何のために生かしてお通ししたと思っているのですか。人間と友好的な関係を築く橋にするためでしょう?」

「退け美鈴。これは、情けだ」

「なーにが情けですか恥ずかしい。ただの癇癪でしょうに」

 

 その一言にレミリアは掴まれた槍を軸に体を持ち上げ、紅美鈴の後頭部へ叩き込んだ。だが、それを涼しい顔で空いていた左腕で受け止めて見せた。そのままレミリアの足を取り地面へと叩き付ける。そして追い打ちのかかと落とし。

 

 あまりの衝撃にレミリアの身体が地面にのめりこんだ。人型の穴ってアニメだけの話じゃなかったのね。

 

「さて、治療しないとですね。パチュリー様に怒られるなぁ、これ」

 

 当の本人はレミリアを引きずり出し、博麗霊夢と一緒に抱え迷うことなくエントランスホールを後にした。慌てて俺の彼女の後ろを追うことにしたが。

 

 いやはや、上には上がいる者ですねレミリアさん。

 

 

 

 

 はー……自分出来たとはいえあれだな……。

 

 

 うん。かえりたい。

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。

まあ、そういうことっすよ(なにが?)
博麗霊夢の実力は射命丸文や幼女レミリアには状況によっては圧倒、少なくとも負けることはありません。ですが、大人レミリアや紅美鈴には勝てないです。もちろんや八雲にも。

八雲紫・藍>超えられない壁>紅美鈴>大人レミリア>博麗霊夢>幼女レミリア>射命丸文

現在出ている戦えるキャラの実力差はこんな感じ。茉裏くんはランク外です。

まあ、ぶっちゃけそんな深くは考えてはいないです。ただ、私がこういうのが好きなだけ。

あと、レミリアのグングニルはダークソウル3をイメージしてるけど、伝わってたらうれしいな。

それでは、また来月おあいできたら……
ばいばいー
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