糸の先に繋がれた人形のお話   作:ちゃるもん

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ちゃっちゃっちゃっす

投稿するのだけ忘れかけていたちゃるもんだよ
友人に進められたゲームで完全に忘れてたよごめんね


第13話 人間なんでも慣れるってことだ

 青い空の下、俺は全力で美鈴さんと追いかけっこをしていた。

 

「ヒイヒイッ!! 捕まってたまるかぁあああ!!!!」

 

 霊力で肉体を強化、紅魔館の庭を走り回る。時には壁をよじ登り、草むらを突き抜け全力で逃げ回る。

 ま、抵抗むなしくすぐに捕まるんですけどね。

 

 全力で走っている。にもかかわらず、まるで立ち止まっている相手に声をかけるかのようにちょんちょんと肩をつつかれる。気付かなかったことにしたい現実に何とか耐えながら、軽く深呼吸をしてゆっくりと振り返る。

 

「13秒ですか、前回より2秒伸びましたね。えらいえらい。では、捕まったので罰ゲームです。タイムは伸びていますし、デコピンくらいで済ましましょうか」

 

 逃げたいし、反撃もしたい。が、俺の身体はすでに美鈴の気によって拘束されていた。いや、抵抗はしてるんだよ? けど、指一本動かせないんだなーこれが。

 ゆっくりと近づいてくる美鈴の指。それがピッタリと俺の額に引っ付いた。

 

 いやまって、よく考えよ美鈴さん。ね? ほら、俺から頼んだとはいえやっぱ、違うじゃん? 罰ゲームなんてさ? ね? いやマジで待ってください貴女の罰ゲームマジでシャレにならないくらい痛いんですよだからかんがえなおしましょね? ね? まってまってまっておねがいやめてやめてやめろってまじでいたいんだってまじでまじでやめ──―

 

「──―ィッだあぁあああああああああ!!!!!!!!」

 

 突如、額から全身を駆け巡る稲妻。あまりの痛みに地面を転がりまわる。痛みから逃げ出すこともできず、ただ、声を上げ続ける。

 数分ほど転がれ続ければ、痛みも多少はマシになり、歪む視界の端に日傘を差す悪魔の姿をとらえた。

 

「これはまた、こっぴどくやられたな」

 

 くっくっくと愉快だと笑うその悪魔と、忽然と一歩後ろに佇む紅美鈴の姿。

 いまだ視界はぐるぐると回ってはいるものの、何とか立ち上がる。

 

「あいてて……なにかごようですかレミリアさん」

「いやなに、いつかの自分の姿を見てみたいと思ってな」

「それはよき趣味をお持ちのようで。それで、人里からは受け入れられましたか?」

「どうだろうな。少なくとも、出会って早々石を投げられるなんてことはなかった」

「そりゃあ上々ってところか」

 

 紅魔異変。結論から言えば無事解決した。と言えるのだろう。

 博麗霊夢が瀕死の重体。霧雨魔理沙が魔力枯渇による意識不明の重体。レミリア・スカーレットが重傷。人里の住人数名が、パニックに陥り軽症者数名。死亡者なし。

 博麗霊夢、霧雨魔理沙ともに命に別状はなく、既に本来の生活を全うしている。

 

 と、文字に起こせば、まあ、うん、無事っちゃ無事に終わった。うん。そういうことにしておこう。

 

 あの後、博麗霊夢と霧雨魔理沙の治療を施しているパチュリー・ノーレッジさんと軽く自己紹介をし、事の経緯を聞くに及んだ。

 

 たとえば、あの光の奔流が霧雨魔理沙が無理やり溜め込んだ魔力をただ吐き出したものであるということ。東方projectで一二を争う有名度『恋符 マスタースパーク』なのかは不明。

 たとえば、あの赤い霧が紅魔館を転移させたときに発生した余波を上空に逃がした結果発生したものだということ。害はないだろうということ。

 たとえば、余波を逃がさなかった場合大地震等、別の天変地異が起き、人里どころか幻想郷の環境そのものが危うくなっていた可能性が高いといこと等々……。

 

 けっこう大変な事になってたのね。なーんて呑気に口に出してしまい、そこからながーい愚痴に付き合わされたりもしたけど。その分収穫は大きかった。

 

 さて、今回の異変により紅魔館が幻想郷内でどういった立ち位置になったかについてだが。まあ、そこまで悪くはないんじゃねーかなと。なんか危なそうなことしてるけど、基本的には無害な連中。はたから見れば、そんな接し方をされていた。

 ふつう、あんなことをしでかした連中が相手なら石を投げても可笑しくはない気しかしないが。そこは、流石幻想郷の住人といったところか。

 

 紅魔異変が解決した後、レミリア率いる紅魔勢は人里を訪れた。人里を侵攻しにきたなんてことでは勿論なく、状況を説明するためだ。

 幻想郷に屋敷に移動させたのはよかったが、その余波があまりにも大きく霧にして外に逃がしていた。そして、博麗の巫女たちの助力もあり無事に霧を払うことができた。幻想郷に住まうもの達には迷惑をかけたと。

 

 もっと長々と話をしていたが、内容的にはそんなところ。あとは、ちょっとした技術の流用の代わりに、定期的に少量の血液を採取させてほしいというお願いをというか、取り決めのようなものをつくったり。いやー人里の適応能力高すぎか? 

 

 まあ、あれだな。思っていたよりも後始末はスムーズに進んだなって印象。

 

 さて、紅魔異変の事後処理話もそこそこに、なぜ俺が美鈴さんに追われていたのかの話をしようじゃないか。

 とは言っても、修行の一言で話が終わるのだが。

 では、なぜ修行をしているのか。実は霧雨魔理沙が関与していたりする。直接的にはではないが。

 

 あの後、小悪魔さんと大図書館に向かったわけだが、そこには服を着た干乾びた木の枝のようなものに膝枕をするフランドール・スカーレットがいた。

 最初は素直に何やってんだこいつって思ったけど、よくよく見ればそれが霧雨魔理沙だった。完全にミイラだった。そして、パチュリーによくよく話を聞いていけば俺もその状態になりかけているとのこと。

 そりゃあ、そんなこといわれたら……ねぇ? 修行の一つや二つはするってもんですよ。色々あったけど、俺は生きていたいから生きているわけで、出来る限りアブナイことはしたくはないのですよ。

 

 まあ、その修行で死にかけているわけですけれども。

 

「さて、今日はこのくらいにしておきましょう。また後日、時間が空いた時に」

「うっす。ありがとうございました」

 

 とてもイイ笑顔で微笑む美鈴さんにお辞儀をする。その後、レミリアに一言二言挨拶をした後、代わりに番をしていた妖精二人と門番を交代していた。

 

「……あの人、憂さ晴らし的なのも交じってるよな」

「まあ、否定はしない。役職柄致し方ないと言ってはいるが、ほぼほぼ年中無休だ。天候も関係なしにな。向こうでは私たちは命を狙われ続けていた身。門番を外すわけにはいかなかった。襲われたとて問題はないが、万が一もある。十六夜咲夜のようにな。もし、アイツが能力を完全に掌握出来ていたとしたら、初見ではまず無傷では済まなかっただろうさ」

 

 そんなもんっすか。そんなものさ。とお互いに肩をすくめる。そこにこれといった感情が込められているわけではないが、親しい友人との些細なコミュニケーションはこう、心が少し軽くなる。

 

「なら、こっちに来たから少しは休みが増えるかもしれないってことか」

「そうなってくれたのなら嬉しい限りだ。それまでに妖精たちをもう少し使えるように育成しなければならない」

「当主直々に育成とは、嬉しい限りじゃねえか」

「そうだといいが。折角だ、このままティータイムにでもしようじゃないか」

 

 そう言って手を叩こうとしたレミリアに待ったをかける。

 

「誘いはありがたいけど、今日の所は辞退させてもらいます。このあとちょっと用事があってな」

「それは私の誘いよりも大切なことなのか? さては女か」

「ある意味間違っちゃいないけど……、八雲関係だよ」

「ふむ、それなら致し方あるまい。またの機会を楽しみにしているよ」

 

 悪いなと、返事をして足早に紅魔館を後にする。紅魔館に続く橋の半ばごろで突如として訪れる浮遊感。まだ滝をする間もなく、気が付けば幾本もの木に囲まれた森の中。少しばかりの気持ち悪さを抑え込み、改めて辺りを見回す。

 

 森、というよりは林に近い。耳をすませば鳥の鳴き声や、獣の唸り声のようなものも聞こえてくる。

 さて、獣の唸り声なんて表現をしたのはいいが、本当の獣であれば人間が近くを通った、なんなら近づく前に逃げるか襲ってくるかしてくるのが普通。

 

「お仕事の時間と行きますか」

 

 霊力を込め、拳銃を構えながら唸り声のする方へ。近づくにつれ唸り声とは別に掠れた呼吸音のようなものも聞こえてきた。

 

 見つけた。

 

 木を背に座り込む形容しがたい白い人型のナニカ、くねくねと呼ばれる怪異に似ている。それの前に立ち佇む皮膚が爛れこびり付いたかのような見た目をした人型。

 白い方は衰弱しているのか、はたまた見えないところに怪我を負っているのか、うなだれたまま動く気配はない。

 爛れている方は、白い方の仲間だったのか白い方を襲う動きは見られなかった。むしろ、どうしたらいいのか分からず動けないでいる。そんな風に見える。

 

「ま、やることは変わらない、か」

 

 物陰から軽く身を乗り出す。その時に体に草が当たり小さくない音を立てる。それに反応した爛れがこっちを見るや否やなりふり構わず突進してきた。両手を前に突き出しそのまま覆いかぶさろうとでもいうのだろうか。

 だが、如何せんその動きは遅い。見た目通りの鈍足だ。

 

「的が来てくれる分には、助かるっちゃ助かるけど」

 

 容赦なくその身体を撃つ。霊力に縛られ爛れは膝から崩れ落ちた。その間に実銃を取りだし頭に三発。念のために両足の膝関節当たりと、両腕の肘関節あたりを撃ち抜く。

 動かなくなった爛れを軽く足で突き、こと切れたことを確認し白い方に向き直る。

 

「見た目に反して脆かったな。逃げても無駄だよ」

 

 四つん這いになり、必死に逃げようとしていた白い方の胸元を一撃。白い見た目とは裏腹に、真っ赤な血が噴き出した。それでもなお逃げようとするソレに、一、二、三。

 無造作に放たれた弾は右肩、首、顔の中央を穿ち、ソレはゆっくりと地に伏せた。

 

「お仕事終了。南無!」

 

 こと切れた妖怪に手を合わせ、その場を後にする。後始末は向こうがやってくれるらしい。というより手を出すなと言われた。俺の知らない妖怪の中である作法的なものがあるのだろう。

 

 異変の際に影響を受けた妖怪たちが、その反動からか里を襲う時がある。とは慧音先生から聞いたことだ。今回の件もそれと似たようなものだろう。現に、異変解決後の話で外に出た数名が行方が分からずになっているらしい。一度里の外で行方が分からなくなったら人里の住民の力ではどうしようもない。故に、子供を含めたその数名の葬式はもう終わり帰らぬ人扱いを受けている。

 

「稀に帰ってくる人もいるそうだけど、稀も稀、って言ってたからな。生きてりゃいいが」

 

 こうやって、妖怪を退治することで少しは里への恩返しもできていればいいが。

 

 今日の晩飯は何にしようかな、なーんて考えながらその場を後にする。なんともさっくりしていると自分でも思うが、異変後はそれなりにこの手の仕事、八雲としての仕事が回ってくるようになった。

 その大体が手負いだったりするからたいしてきつくもないんだが、人型をやるのは最初こそはなかなかにくるものがあった。

 

 人間なんでも慣れるって話なわけだ。うん。

 

 森を抜け、秋晴れのきれいな空に大きく欠伸を一つ。

 

「ひと月以上過ぎて、季節が変わっても異変の影響は残るもんなんだな。と、しみじみ思う茉裏ちゃんなのでした」

 

 少し冷たくなり、小刻みに震える手を擦り合わせ二度目の欠伸をかみ殺す。目尻の端に溜まった涙を袖で拭う。

 

「……もうすぐ、雪が降る季節になるか。もつのかな、いや、もう」

 

 ぽつりと呟いた小さな声に共感も、非難も飛んでこない。それが有り難くもあり、少し寂しくもあった。

 

 幻想郷に来て、幾度となく感じるこの違和感と実感。

 あとどれくらい、この世界で生きていけばこの違和感は俺の中から消えてくれるのだろう。

 

 もしかしたら消えないのかもしれない。あの世界での常識というものは余りにも大きく俺の中に居ついている。

 

 

 震える手が落ち着くそぶりはなく、目尻に溜まった涙は拭えど拭えどゆっくりと溢れ出てくる。まるで、逃げることを責めているかのように。認められない現実を、脳が拒絶しきれないものを外に吐き出すように。

 

 

 

 

 

 ずっとずっと、まっている

 どうすれば、あなたはわたしだけをみてくれるのだろうか

 かえってこないあのひとをおもい、わたしはそっとめをとじた

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。

これにて紅魔異変完結となります。
いやー、これでいいのか?とは、思いますがそこは寛大な心で許していただければと。

それでは、次は雪が振る頃にお会い致しましょう……

さらば!
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