糸の先に繋がれた人形のお話   作:ちゃるもん

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ちゃっちゃちゃす

カラオケに行きたいのにコロナで行けないふぁっきゅー

あ、特にここにかくことはないっすはい。
書くことないとこまるよねここ。


第17話 行ってきまーす

 死にかけ少女こと依神紫苑とまともな会話ができた。何気ない会話の中に結構な爆弾発言が多く冷や汗をかき続けていたが、概ね彼女の存在がどういったものなのかを理解できた。

 

 まず、彼女は予想通り貧乏神であるということ。その性質は自分自身にも及ぶもので、その不幸体質がゆえにまともな生活は一切できなかった。また、この性質は他者により一層影響を及ぼすもので、迂闊に誰かを頼れば、最悪不幸が重なり死ぬことすらあり得る。

 あれ? 俺かなり危険な橋を渡ってないか? なんて思いもしたが、現状何も被害にあっていないことから無視することとする。何も聞いていない、イイネ? 

 

 次に神としての特性。死という概念が無いに等しい。それが、貧乏神だけに当てはまるのか、依神紫苑という神に当てはまるのか、神全体に当てはまるのかは不明。少なくとも貧乏神である依神紫苑は死んだ場合、自身の存在に関する知識や、生きるために必要な知識だけを持ち、大人に近い形で生まれる。少なくとも彼女は、死ぬ前のことは覚えていないと断言した。気が付いたら生まれており、ずっと独りで彷徨っていた、と。

 

 もしかした、俺もこれと似た状況になっていたかもしれないと思うと、正直ほっとする。辛い思いをしてきてなお生きようとしている彼女には悪いが。

 

 他にも細々とした事を聞いたり聞かれたりしたわけだが、一つ気掛かりな情報が出てきた。

 

 曰く、妹が存在しているということ。

 

 いやもう、びっくりしたよね。いや、ほんっとうに失礼なんだけど。こんななりで、かつ、あんな場所で死にかけているような奴に妹がいるとは思わないじゃん? 

 しかも、しかもだ。どこにいるのか、どんな姿かたちなのかすら分からず、名前まで分からないときた。

 

 

 …………それはいないって言うんだよ? 

 

 

 だが、依神紫苑頑として認めず。いるの一点張り。いるって事だけわかる妹ってどんな存在だよ。妄想と現実をごっちゃにしてしまっているのかとも思ったが、それにしては鬼気迫る勢いで語ること語ること。挙句の果てには涙目に……。

 

 知り合いに聞いて回ることを約束し、その時は事なきを得た。

 

 と、依神紫苑から得られた情報はこんなもの。そんな彼女との雑談から早三日。特に不自由なく二人で生活を続けている。

 

「みてみてマツリ!! 釣れた!!」

「おー、でっかい鯉だこと。今日の晩飯はこいつだな。どうやって食うのかしらねぇけど。鱗と内蔵とっぱずして煮込めば喰えるだろ」

「えらい?」

「えらいえらい。よくやった」

 

 鯉を両手に抱え、キラキラとした視線を向けてくる紫苑の頭を乱雑に撫でる。最初拾った時はガリガリ過ぎて分からなかったが、背は決して低いわけではない。大人と呼んでも差し支えない見た目をしている。発育、というよりは体全体の肉が少ないことさえ除けば、うん、幸薄そうな美人と呼んで良いだろう。

 風呂に入れてやった時に見たが、体には大きくないものの、少なくない傷跡が見受けられた。修行の過程で出来た俺の痣とは違う、生きていく上で出来た傷。石で削ったのだろうか、枝が突き刺さったのだろうか、何かに嚙みつかれたり、引っ掛かれたようなものもあった。幸いなのは露出しやすい箇所には傷跡が少ないことぐらいか。

 

「外の世界なら誘拐、虐待で逮捕されてもおかしくないなこれ。服も何故か差し押さえの札は何枚か必ず引っ付いてるし。この結界から一歩出れば既に不幸になってるし」

 

 呑気なことを考えながら、今後の対応について考える。

 

 紫苑の不幸体質はかなり強いもののようで、結界の外に一歩踏み出せば目の前に不幸が突撃してくる。いつもであれば近づこうとさえしない大百足の妖怪が木々の隙間を器用に避けながら目の前を通過。その際に服の一部が尻尾の部分に引っ掛かり一瞬にして目の前から消えた。その後、なんとか救出に成功し、これは外には出せないと判断した。

 結界の範囲を把握してもらうべく案内した時も、足先指先を少しだけ外に出してみると、毛虫が指に落ちてくる、動物が蹴飛ばした小石が足の指に刺さるなど、ものの見事に不幸が舞い降りてきた。

 

「まずは、あの不幸体質をどうにかしないとだよな……。紫様に頼めれば楽なんだろうが、連絡手段も持ち合わせてなければ、頼めるほどの度胸も提供材料もない。ってなると、博麗か、レミリア、パッチェ辺りか」

 

 一番友好的なのは紅魔勢なのだが、パチュリーにこの結界の解析をさせてほしいなんて言われたら困る。なぜか、この結界の作成者は紫様。確かに、結界自体を張ったのは俺だが、技術としては紫様のもの。下手に情報漏洩でもしてみなさいよアンタ、私の首がチョンパされますわよ。

 つまり、紅魔勢、ってよりパチュリーは出来ればお願いしたくない。話せば分かってもらえるだろうが、逆に燃え上がられても困るからね。なにそれきになるじゃないむきゅーとかいわれたくないのである。

 レミリアも、パチュリーが付いてくる可能性がないわけではないのでパス。

 

「行くべきは博麗神社か。紫苑もずっと狭い空間に閉じ込めておくのも可哀想だし、解決できるのなら本格的な人手が一つ増える訳だしな。早めに行動すっか」

 

 鯉を水の張った桶に入れ、戯れている紫苑を見ながら、たいして重たくもない腰を上げる。

 

「紫苑。少しでかけてくる。日が沈む前には戻るから、留守番頼んだぞ」

「分かった。いってらしゃい」

 

 にへらと少し寂しそうに笑顔を作る紫苑に、行ってくると微笑み返し家を出る。今から向かえば、遅くても夕方には帰れるか。ゆっくり歩いていくほどの時間はないだろうが。

 

 紅魔異変のときと同様に、脚力を強化する。とは言っても、当時のように全力疾走はしない。帰ってこられるか分からないからね、フルでやっちゃうと。まあ、それでも結構な速度は出るもの。ホップスッテプジャンプで、いつもなら半刻かけて進む距離をその半分以下の時間で移動していく。

 

「到着! ふむ……大体三十分ぐらいか。俺のコントロール技術もなかなか様になってきたんじゃないだろうか」

 

 博麗神社手前の階段に着地。中国先生との修行の成果もあってか霊力のオンオフの切り替えが以前よりも格段に上手くなっているのがわかる。飛ぶ瞬間、着地の瞬間、今強化しているのはこの二か所でだが、もっと細かい動作一つ一つに強化を重ねられるようになれば、さらに燃費よく移動することができる。と、思う。よくわがんね。

 

「さて……っと、上るか」

 

 さすがに、境内に直接降りる勇気はなかったので、何時ぞやと同じく階段を一つ一つ登っていく。軽く肩で息をしつつ、階段を上り切る。以前来た時と変わらず、参拝客は一人も見当たらない。ただ、そこに一人、竹棒で落ち葉を集めている少女、博麗霊夢がいるだけだ。

 博麗はこちらに気が付いたようで、めんどくさそうに近づいてきた。いや、そこまでいやそうな顔せんでもよくねぇです? 

 

「あら、ひさしぶり。やっかいごとを持ってきたって顔をしているけど、どういったご用件かしら」

「ひさしぶりです。そりゃあもう、とびっきりのやっかいな案件をお持ちしたまでですよ」

 

 お互い丁寧に喧嘩を売っている感じになっているが、まあ、そこまで仲が悪いということはない。少なくとも俺はそう思っている。

 俺が、面と向かって買い言葉を放つと、隠すそぶりもなくため息を吐かれた。

 

「はぁ……なんか、嫌な予感がしたのよ。居留守でも使ってやろうかとも思ったけど、アンタにはそれなりに世話になっているわけだし、取り敢えずあがりなさい。外でするような話ならこの場所でもいいけど」

「それじゃあ、お言葉に甘えて上がらせてもらいます」

 

 博麗の後に続き、神社の移住スペースへと足を運ぶ。短めの廊下を進み、居間と通された。

 

「で? そのやっかいごとってのは一体何?」

「端的に言うと、自分の友人の体質、あるいは能力と呼べるそれを封じ込めるお守り等を作っていただきたい」

「ふーん。それをわざわざお願いしに来るって事は普通の人間とかじゃないんでしょ」

 

 目の前の少女はバリバリと煎餅を齧り、もったいぶらずさっさと言いなさいとでも言いたげにこちらに視線を寄越した。

 

「名前は依神紫苑。種族は神。貧乏神です」

「ほんとうの厄介事を持ってきたわねアンタ……。よりにもよって貧乏神って」

「いやぁ、すんません。拾ったのにまた捨てるわけにもいかないし、自宅に張ってる結界の外に出たらもう、そりゃあ酷いことになりまして。だけど、外に出してやれないのは可哀想ですし……。色々と事情をかんがみて、頼めるのがここしかないかなぁ、って。ええ、はい」

「はぁ…………実際にあってみない事には何とも言えないわ。できないことはないと思うけど」

「引き受けてくれるんですか!?」

「……なにかと世話になってるし。無下にもできないでしょ」

 

 妙にあっさり協力を取り付けられてぼくちゃん困惑なう。世話になってるしってんもはあれだろ? 妖怪の残党狩りのことだろ? それは分かる。だけども、無下にできないなんて言われるほど働いた記憶がない。両の指で数えられる、までは言わないが。そう、冗談言える程度の回数に過ぎない。

 それだけ、激務だったということなのだろうか……。にしては、何か引っかかる気が……

 

「取り敢えず、その貧乏神の様子を見に行きましょ。ちょっと、聞いてる?」

「あ、ああ、すいません」

「後ろを付いていくから、私のことは気にせずにさっき使っていた方法で行きなさい」

「分かりました」

 

 短く返事をし、頭を切り替える。どうせ考えても分かんないだろうし、気楽にいくのです。足早に外へと戻り、それじゃあ遠慮なく。来た時と同じように、脚力を強化。あんまり多用すると筋肉痛もその分酷くなってくるのよね。明日が怖い。

 

 来た時よりも少しだけもう少し早く。どうあがいたって帰った段階で俺のスタミナは切れております故。出し惜しみなんてしないんだぜ☆

 まあ、出し惜しみしないなんて言っておきながら余裕で追いつかれてるんですけどね。真上にいるんだよ。なんだよ、空飛べるって反則だろコンチクショウメ。なお、見えなかった。角度的な問題で。

 

 そして、そんな社会への理不尽を感じなら無事帰宅。一瞬、博麗さんが怪訝そうな顔をしていたが、恐らくこの結界の制作者に思うところがあるのだろう。

 

「で、件の貧乏神は」

「近くの水場で釣りをしているか、家の中で鯉と戯れてるかですね」

「なんで鯉と戯れてるのよ……」

「ほぼほぼ子供みたいなものなので。あ、家の中にはいないですね。それじゃあ、また釣りに行ったか。案内します」

 

 家の中は桶の中にぽつりと一匹鯉がいるだけで、紫苑の姿はなかった。

 だとすれば、また釣りでもしに行ったのだろうと先導し移動を始める。木々を掻き分け着いたのは透明な水で満ちた池。広さもそこそこに大きい。妖怪の山方面から伸びた小さな川がここで溜まっているのだと思う。直接飲む気にはなれないので、飲むときは煮沸消毒をしよう。

 

 そんな水辺で糸を垂らす貧乏神の姿。

 

「えーっと、あ、いましたね。紫苑、ちょっといいか?」

「お゛っ!!」

 

 急に声が掛けられて驚いたのか、ビクンと飛び跳ねた。仮にも女なのにそんな叫び声でいいのかおまえ、って思ったけど、割と身近にもう一人似たかよったかの人いたわ。女捨ててる本屋の主人が。

 

「びっくりした……。あれ? マツリ、と、だれ?」

「博麗の巫女さんだ。すこし頼みごとをしててな。で、実際のところいけますかね?」

「そうね……、この強度の結界でどうにかなってるようだし、時間は掛かるでしょうけどいけると思う。ただ、そうね……一つ頼みたいことがあるのだけど」

「自分にできる範囲のことであれば、なんだって協力しますよ」

 

 にしても、想像以上に事がうまく運んでくれたな。安心安心。善は急げ、思い立ったが吉日とはよく言ったものである。

 

「妖怪の山に厄神様、簡単に言えば不幸を溜め込む神様ね。その神様の体の一部を貰ってきて頂戴。髪の毛でも何でもいいわ。直接封印するのは簡単だけど、そういうことじゃないんでしょ?」

「直接封印ってのは……」

「言葉の通り、封印するのよ。もう二度と外に出てこられないようにする。つまり、神として死ぬって事ね。ちなみに、それを受け入れるのであれば、人として生きようとしても一年と行かずに死ぬ。当り前よね。種族が違うのに、無理やりその枠に収めるわけだもの。さ、どうするの?」

 

 決めるのは貴方よと、その双眸は俺を捉えて離さない。

 HAHAHA酷なことを言いなさるお人だ。妖怪の山には射命丸文を始め、犬走椛に姫海棠はたてなど、天狗の巣窟。天狗と俺はほぼほぼ敵対関係。りありぃ? おわかりですかー? だーれがそんなところに好き好んでいかなきゃならんのですかいまったく…………。

 

「はーい。行ってきまーす」

 

 殺されなければいいなぁ…………。既に胃が痛いよたしゅけて…………。

 

 




お読みいただきありがとうございます。

次回! 妖怪の山突撃!! 茉裏死す! デュエルスタンバイ!!

ついでに萃夢想もやちゃおうかなって思ってます。

それじゃあ、また来月お会い出来たらお会い致しましょう。
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