けどホラゲーは好き。
一人でプレイは出来ないけどね!!
稗田家を出た後、眩しい夕焼けに目を閉じると、空には綺麗な満月が浮かんでいた。目を閉じると言っても瞬きをした一瞬。周りには慌てふためく人里の皆さんが居た。
どうしたもんかと顎に手を当て考えていると、不意に耳元で可愛らしい声が聞こえた。それと、酒臭い息も。
「空にはまん丸のお月さま。これ以上ないほどの満月に照らされて、耳に聞こえるはガチャンガチャンのドッタンバッタン。戸締りをするあわてんぼうの人間たち。
どうして、そんなに慌てているのか。それもそのはず、今の時刻は午後六時を過ぎているか過ぎていないか。だというのに、さっきまでお空に居たはずの太陽さんは瞬き一つでお月様の後ろに隠れちまった。異変や異変。家の中に引きこもり、巻き込まれないようにいたしましょ」
「みんな困ってんだから、我関せず見たいな感じで歌うんじゃありませんこののんだっくれ野郎。で? これもお前の仕業か? 伊吹萃香」
「違うってわかってるくせに、わざわざ聞く必要があるのかい?」
様式美ってやつだよ。いつの間にか隣に現れ、酒の入った瓢箪を傾ける幼女。こんな幼女の酒飲みが鬼の四天王の一角だってんだから、世の中分からないものである。
「紫苑は?」
「分身が見てるし、なんだかんだで肝が据わってるからねぇ。一言声掛けたら、アンタを頼むだって」
「そりゃ嬉しいこって。里は慧音先生がどうにかするだろうけど、手伝うか、黒幕の所に先回りするか……。一応様子だけ見に行くか。大丈夫だと思うけど」
「それは、私もついていって大丈夫なやつかい?」
「萃香には、紫苑のお守り役として人里に通ってもらうことになるからな。慧音先生とは知り合いぐらいにはなってもらわねぇと」
「いつの間に紫苑のお守り役に……」
「アイツの不幸体質をまともに受け止めらる脳筋なんてそうそういないからな」
「曲がりなりにも乙女に対してなんてことを」
なーにが乙女か。乙女はそんなに酒臭くないんですぅ。
ぎゃあぎゃあと異変の雰囲気をぶち壊しつつ、寺子屋へと向かう。もしかしたら、異変への対応で寺子屋にいないかもしれないが、そのときは元凶の元へ直行するまで。
寺子屋についてみると、見慣れない人影が二つ。一つは上白沢慧音の白沢モード。髪色が緑に近くなり、頭には二本の角。
そしてもう一つが、迷いの竹林に住む不老不死、藤原妹紅。白とも銀とも言えない髪には、白地に赤い縁取りをした大きなリボンがよく目立つ。毛先には同じ小さなリボンが複数個。白のシャツに、赤のモンペ、というよりは袴に近い不可思議なズボンをサスペンダーで吊っていた。
二人ともがこっちの存在に気が付くと同時に戦闘態勢を取る。が、慧音先生は立っているのが俺だと分かったとたん警戒を解き、近づいてきた。
「茉裏、こっちに来ていたのか」
「ちょっと呼び出しを食らいまして。その帰りにこの有様ですよ」
「そうか。それは災難だったな。ところで、隣の彼女は……」
まあ、うん。無容易に呼びたくはないわな。鬼だもん。あっきゅんは萃香のことを知っていたみたいだけど、慧音先生のこの感じはまったく知らないみたいだし。やべー奴が来たって内心思われてそう。後ろの方とか今にも嚙みついてきそうな雰囲気だし。
「まあ、お気づきの通りと言いますか何といいますか……鬼ですねはい」
「伊吹萃香だよ。少しばかし茉裏と縁あってね。こうして同行させてもらってる」
「安全、ってことでいいのか? 茉裏を疑いたいわけではないが、現状が現状だ。私の心中も察してくれ」
ごもっともすぎる……。あと、後ろの妹紅さんや。合いの手でそうだそうだ~って言わないで。俺の中の貴方のイメージがものすごい勢いで壊れて行ってるから。
「大丈夫だと思うようん。やるとしても、里の人全員が酔っ払うくらいじゃないかなぁ」
「…………つまり、この間のアレは」
「そういうことっす」
「いやぁ、霊夢にこそ怒られたが、なかなか楽しかったからまたやりたいもんだね」
「こんぐらい緩い奴ですし、危険じゃないのは俺が保障しますんで」
そういうのであれば、と引き下がってくれた慧音先生。いやぁ、感謝しかないっす。
「それで、本題なんですけど、どうしますかねこれ」
空を指さし、引き攣った顔を浮かべる。慧音先生がケモ化していることから分かるように、頭上に現れた月は、本来のものと近い性質を持っている。つまり、妖怪の持つ凶暴性といったものを強制的に引き出している訳で、そうなると、タガが外れたり、暴れ始める奴もいる。それらの対策を取らないわけにもいかないだろう。
「里に備えてある結界である程度は防げるだろう。だが、外に出ている者はどうしようもない。私たちも里に万が一が有り得るから無暗に動けない。無事に帰ってくることを祈るしかないな」
「そうっすか。まあ、そうなりますよね。俺も、外を回ってみます。見つけたら里まで誘導してきますので」
「それは、有り難い申し出だが……」
「一応、萃香がいますから。ちょっとのことであれば大丈夫です。俺自身、多少なりとも腕には自信があるので」
「アンタは私の仲間だからね、任しときな!!」
「……ありがとう。よろしくたのむ」
「後ろの方も、ドタバタとすいませんね。こんど、時間がある時にでも」
まだ微妙に警戒されているのか、慧音先生の後ろで軽く手を上げられるだけに終わった。何というか、よその家の猫をあいてにしている気分である。
そんな二人と別れ、里の外へ。微かな抵抗感、嫌悪感に近いそれを感じ取り、結界がキチンと作動していることを確認した。後ろを振り返ると、人里を目視できているはずなのに、認識できない。そんな錯覚を覚える。
「こりゃ、随分と手の込んだ結界ですこと」
「紫の組んだ結界が綺麗すぎるだけさ。霊夢も出来ないことはないだろうが、かなり骨を折るだろうね。この人里の結界も、人間が再現しようとしたらどれだけの才能と時間がいるか分かったもんじゃない。それこそ、八雲紫に認められた博麗の巫女でもない限りは無理だろうさ」
鬼の四天王にここまで言われる我が家の結界。やっぱ紫様はすごい方なんやなって。特に何がすごいって、それを張ったの自体は俺ってところが……。
博麗の巫女、先代の存在はこの世界ではどういった扱いになっているのだろうか。記憶ごとなかったことにされているのか、はたまた結界の才能がない脳筋か、結界に特化していたのか。せっかくあっきゅんと知り合ったのだし今度にでも聞いてみようか。
さて、そんなこんなで里をぐっると一周してみたものの、これと言って物珍しいものはなかった。博麗の巫女さんは既に動いているのかいないのか、入れ違いになっていてもおかしくはない気がする。
「面白いほどなにもなかった。このまま元凶にまで突っ走るのもありだけど、どうしますかね萃香さんや」
「茉裏の好きにしたらいい。私は酒の肴になるような出来事があればそれで満足だからね」
「じゃあ、することもないですし行きますか。博麗の巫女さんとかにもそのうち会うでしょ。多分」
向かう先は迷いの竹林。そして、その竹林の中に佇む館、永遠亭。それが今回の異変の首謀者がいる場所である。
永遠亭じたいは病院のようなもので、人里の人からも信頼が厚い場所だ。しかし、直接永遠亭に向かう者は月に数人いるかどうかである。なぜか、里から永遠亭までそれなりの距離がある。更には、迷いの竹林と呼ばれるほど、複雑怪奇なな場所に建っているためおいそれと行くことができない。病院に行くのに、妖怪に食われてちゃ本末転倒だからね。
じゃあ、なぜそんな不便な場所が人里から厚い信頼を買っているのか。一つは、その腕の高さ。月の技術は地上に比べかなり発展している。故に、医療技術も高い。本来であれば治すことのできない怪我も治すことができる。これだけなら、かえって恐れられそうなものだが、他に医者らしい医者もいないためか疑問に思う者は少ない。霊力とか妖力とかがある世界だから余計に。
そして、もう一つ。永遠亭自体に行かなくても、交流自体が少ないわけではないからだ。週に数度、永遠亭の使いとして薬を売りに来る少女がいる。名を鈴仙優曇華院因幡。何時ぞや見た変装が下手な薬屋だ。彼女は月の兎。経緯は忘れたけど、なんやかんやで地上に来て永遠亭のお手伝いをしている。
彼女の売っている薬は痛み止めだったり解熱剤だったりで現代であればありきたりなものだが、幻想郷となれば貴重品も貴重品。さらには、その薬もお手ごろな値段ときた。それを売っているのは変装できていると思い込んでいる微笑ましい美少女。里の心を掴むのも時間の問題だった。
そんなこんなで、永遠亭は信頼を勝ち取った。このまま何事もなく、幻想郷での生活を過ごしていく。永遠亭の未来は確約されていた。
「詳しいもんだ。八雲の所の奴らはみんなそんなに忙しいものなのかい?」
道すがら永遠亭の事を少しばかし説明し、そこに異変の首謀者がいることも打ち明けた。違ったら違ったで別を当たればいいだけだしね。
「これに関しては、俺の方がちぃと特殊なだけ。原因も大体はわかってるけど、それが合っているのかどうかまではまだ分からんから、その辺りはご本人様方に確認取りましょ。さ、迷いの竹林に到着だ」
説明がある程度終わると同時に足を止め、頬に伝う汗を乱雑に拭った。深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ。インターネット上で有名なこのセリフ。今まさに我が身を持って味わっていた。竹林と声に出して言えば可愛いものだが、今、目の前の広がるのはそんな可愛らしいものではない。月の明かりは勿論届くはずもなく、中に放り投げられた声は不気味に反響し飲み込まれていった。
ゴクリッ、無意識に唾を飲み込む。一歩を踏み出す勇気がこんなにも、隣にいる最強がこんなにも心不足感じることになろうなんて思いもしていなかった。
拭っても拭っても止まらない汗、無意識に流れ始める涙、行きたくないと震える心。
そんな時、背中に強い衝撃が走った。唐突のことに声を上げることができず、別の意味で流れる涙をこさえ、衝撃を放った相方を睨みつける。
「随分と手の込んだ人祓いだ。入口はココじゃないってことらしい。どうだい? 少しは気が楽になっただろう?」
「……おかげさまでお目目ぱっちりだわ。気分悪い」
「多少なりとも結界ってやつに抵抗がありそうなアンタですらそうなるってことは、相手側も本気って事なんだろう。私には効かないが」
「なにそれ羨ましい」
「本来であれば避けられる側の存在に効くと思うのかい? 曲がりなりにも鬼の四天王を名乗っちゃいないよ」
ごもっともすぎてぐうの音もでない。
「それじゃ、本当の入り口を探し出して、みっちりこのお月様についてお教え願うと致しましょうかね」
「けっこう根に持つんだね」
あたぼうよ。こちとらちびりかけてんだぞ。
さあ、竹林探索と行こうじゃないか。
おい、萃香なんだそのやれやれって感じの仕草は。こちとらマジで怖かったんだからなだからおいていこうとしないでくださいお願いしますいやだぁ!! ひとりはいやじゃあ!!
お読みいただきありがとうございます。
こう、ぱっとせんのうぅ
いっそのことゴリゴリの戦闘でも書いたらどうにかなるんじゃろうか?
では、また次回まで~