糸の先に繋がれた人形のお話   作:ちゃるもん

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朝と昼の気温差でバグりそう。

今回で永夜抄は終わりとなります。
なかなかに不完全燃焼ですがね。


第25話 縁があればそのうち会える

 ウェイ!! わたし茉裏!! 絶賛リハビリ中なの!!!! 

 べーわ、リハビリマジで舐めてた。まともな動作ひとつ行うたびにその個所から背中に向けてべらぼうに痛いでやんの。

 

「僕思うんですよ。普通こういうのって、痛みとかがほぼほぼ引いた状態で、鈍った体を元に戻すためにするものだって」

「その問いも何回目かしらね。一生まともに動けなくなってもいいって言うのなら今すぐにでもやめてあげるけど? 重症、重体、致命傷、どの言葉であろうと正しい表現に当てはまらない程に酷い状態から回復出来て、更には、ちょっと頑張るだけで元の日常に戻れる。それを、投げ捨てられるなんてとんでもなく素晴らしい感性の持ち主なのね。羨ましいわぁ」

「うぐぐ……!!」

 

 そう、この問いかけ、本日だけで実に12回目である。それだけの生き地獄を現在味わっているのだ俺は。

 何というべきか、そう、ごぽごぽにわいた熱湯をぶっかけられている感じ。熱いを通り越して痛いに変換されるあの感覚。もしくは、鉄くぎを体に沿って撃ち込まれているような……。

 兎に角、辛い。この一言に尽きた。

 

 背中半分が消し飛んだ状態だったのは事実で、それを無理やり治したのも事実なのだ。恐らく、ここでリハビリの手を止めれば本当に再起不能になる。言いようのない確信があった。

 

 にしても、リハビリ中のこの女医、とてつもなくイイ笑顔で笑う。それはもう、イイ笑顔で。サディスティック・スマイルである。こわい。

 だれだよ、罪悪感がーとか、やってみる価値はあるーとかのたまわってたやつ。めっちゃニッコニコだわ。女王様も真っ青だわ。

 リハビリの手を止めれば動けなくなるのは事実なのだろうが。ただ、半分は彼女の憂さ晴らしが混じっているようで気が気ではない。

 

 必至に両手両足へ力を籠め、壁を伝い歩いていく。倒れようものなら、前で待機している女医が受け止めてくれる。ご褒美タイムとかほざきそうな奴もいそうだが、背中の激痛で息をするのもやっと。

 歩くだけでも激痛が襲ってくるというのに、倒れこむという不測の事態に心構えなんて出来ているはずもなく痛みは倍ドン倍。

 ちなみに、意識を失おうものなら口の中に訳の分からない薬を突っ込まれて強制的に起こされる。一応、眠気覚ましの栄養剤みたいなものらしく、安全ではあるらしい。信じるか信じないかは俺次第である。

 

 さて、こんな地獄のような日々でも、たまには嬉しいこともあったりする。容易に想像できるとは思うが、お見舞いだ。

 レミリアだったり、小鈴店長だったり。週に二回ほど誰かしらが様子を見に来てくれている。

 その中でも一番驚いたのは、紫苑が来たこと。

 紫苑の不幸体質は尋常なものではなく、紫様の結界や、伊吹萃香の規格外の怪力、適応能力が無ければ一緒にいる事すら難しい。

 それを、少しでも改善すべく、博麗の巫女さんに紫様の結界と類似したお守りを作ってくれと依頼していた。

 

 つまり、完成していたのだ。その、お守りが。

 

 紫様の結界の結界とまで言わずとも、訪れる不幸が些細なもの。頻度も極めて低いらしく、我が家から人里を通り越し、永遠亭に辿り着くまでに起きた不幸な事態、実に三回。

 そのどれもが、石に躓いた、砂埃でくしゃみが出た、指に棘が刺さった。と、まあ、何と些細な不幸か。

 以前の状態であれば、石に躓き頭を踏まれされど気付いてもらえず近くを通った動物の起こした砂ぼこりに咳き込みながら前を向いていない子供に突き飛ばされ両の手を鋭利な木片が貫いていたことだろう。

 控えめに想像してもここまで予想できる。

 更に驚く事に、紫苑が永遠亭を訪れたのは一度だけではない。四度だ。その四度とも、多くて三回。少なくて一回で済んでいるのである。

 

 これが嬉しくないわけがない!! 

 

 まあ、本音を言うと少し寂しい気もする。それに、彼女が里を歩くところを最初に見れなかったのも少し悔しい。少しね、少し。

 

 何はともあれ、これで多少は彼女も退屈しなくて済むだろう。とりあえず、寺子屋に通わせてみようとは思うのだが、慧音先生が許してくれるかどうか。生徒でなくても、復任てきなポジションとして。むしろそっちの方がいいかもしれない。

 寺子屋がだめなら駄目で、鈴奈庵で一緒に雇ってもらえばいいし。給料はあってないようなものだから、多分許してくれるはず。それでも駄目なら、畑仕事の手伝いだ。読み書き計算は俺が教えて行けばいいしな。

 

 服ももう数種類買っておこうか。一番最初に出会った時の物よりはマトモなものを着させてあげられているが、結局は男が適当に貰った古着に過ぎない。紫苑自身が着たいと思えるものも複数枚買っておいて損はないだろう。

 

 萃香にも色々お礼を考えとかないといけないな。アイツは、服とかってよりも物珍しい酒とかの方が喜びそうだ。レミリア辺りからワインでも貰ってこようか。酒には詳しくないし、誰かに助言を求めたいものだが。

 

「さっきから考え事ばかりしているようだけど? 私の手伝いは不要ってことでいいのかしら?」

「すいまっせん!!」

 

 なかなか話を切り込むタイミングなんてものはない。

 リハビリが終われば、患者に調合と、お医者様は忙しく、この後の時間は眠くなるまで一人っきり。

 相談どころか、雑談する相手もそういないのが事実である。そのぶん、たまのお見舞いが嬉しいのだが。

 

 そういえば、原作ではレミリア達が月に行く話もあった。

 その時、紫様とまだ見ぬそのご友人、西行寺幽々子の二人は裏で月のお酒を盗んでいた。はず。あんがい永遠亭にも少しくらい残っていたりしないだろうか? 

 別けて貰えるかは分からないが、少し聞くぐらいであれば問題もなかろうて。

 

「うん、今日はこんなところかしら。後のことはウドンゲに任せてあるから、何かあったら呼びなさい」

「うっす」

 

 しかし、聞く暇もなく赤青のお姉さまは去っていくのであった……。

 そこから、鈴仙さんと八意先生が入れ替わり、あれよあれよと会話もなく浴室へ連れられまたもやベットの上。完全に避けられていると肌で実感し、俺の一日は終わる。

 一応、コンタクトは取ってみた。が、どうにも異変の一件以降負い目を感じられているみたいで目も合わせて貰えない。おっちゃんかなしい……。

 薬とかは伝手で買おうと思えば買えるし問題はないのだが、こう、露骨に避けられるとわりと心に来る。

 

 さて、ベットの上。こうなってしまうと、本当にやることがない。体調管理も徹底的にされているため、口にできるものは用意された水だけ。

 誰か来てくれないかなー、と思いつつ、竹筒に入った水を飲む。

 

 たまーに、お見舞いでもなんでもなく、暇、もしくはいたずら後の避難場所として因幡てゐも訪ねてきたりもする。

 あの子、一緒に兎も入ってきて一気に部屋が賑やかになるし、話してて苦にならないから楽しいんだよな。男友達みたいな。それと、兎可愛いし。

 本人曰く、鈴仙はこの部屋に入ろうとしなから、隠れるにはもってこいでさ。とのこと。

 事実だから別に目くじら立てたりしないけどさ、せめてもう少しオブラートに包んでほし方なぁって。

 

 そして、永遠亭に住む主。いや、姫といった方が正しいか。姫こと、蓬莱山輝夜。

 八意永琳と藤原妹紅と同じ薬を飲み、不老不死となった存在。そして、その薬、蓬莱の薬を飲んだことで罪人となり月から地球へと追放された令嬢。

 

 親しみやすい名前で呼ぶとするのなら、竹から生まれたかぐや姫。

 五人の貴族に見初められ、無理難題を吹っ掛けた。帝すらも魅了させたその姿はまさしく絶世の美女と呼ぶにふさわしいのだろう。

 本来であれば、とっくの昔に月へと帰っている筈だが、こっちでは八意永琳の協力のもと、月からの使者を皆殺し。そして、逃亡。

 今は、幻想郷の竹林でひっそりと暮らしている。

 ついこの間、ド派手に色々とやらかしていたのは割愛する。

 

 そんな姫様だが、未だ顔を合わせた事はない。永琳先生の口からも聞いたことがない。

 もしかしたら、この世界には蓬莱山輝夜という存在がなく、別の誰かに置き換わっている? なんて事も考えたが、てゐ曰く、姫様は居て、自分の部屋でぐーたらしているらしい。

 性格は完全に気分屋の愉快犯。藤原妹紅とは犬猿の仲で、目が合えば殺し合い。容姿は美しいを体現したようなもの。その一方で、着ている服は自身の持った能力をフル活用し着替えをめんどくさがる程のめんどくさがり屋。

 

 能力の詳しい所までは分からないが、原作でもふわっとした能力は多かったので出来ているってことは出来ているのだろう。そう言い張っている可能性も否定はできないが。

 

 一部の人に刺さりそうなむわッと人物。そんな人物像が、てゐからの情報だけを参考に出来上がっていた。

 

 そして、いつものようにご都合主義よろしくそのお方が俺の病室に、

 

「来てくれるはずもなく、こっちからは会いにも行けない。一回くらいコンタクトとっておきたいんだけど」

 

 ちょっと前に、体の半分が無くなっている。少しだけでも保険は多くかけておきたいというのが心情。あまり、大ぴっらに動きたくないのも事実だけど。

 

「会いに行くにしても、行かないにしても、体を動かせないんだから考える必要もないか。縁があればそのうち会えるだろうし」

 

 そう結論付け、毛布を被りなおす。まだ、たいして眠いわけでもないがやることもなし。

 ゆっくりと瞼を閉じる。

 どうしても、何かしらのことが頭をよぎるが、どうにかこうにか落ち着かせ、自分の息遣いしか聞こえなくなったころには意識はプツリッと途切れていた。

 

 

 

 ずっとわかっていたことなのに、

 いつかは、くる、ことなのに、

 あのときわたしはたえられなくて、

 そっと、そのからだにはりつけた。

 

 これで、もう、はなれられない。

 ああ、ああ、うんめいのひと。

 

 いつか、いつかわたしを、だきしめて。

 




お読みいただきありがとうございます。

姫様出てこないんかいって思われるかもしれませんが、はい、その通りです。
まあ、今後、多少は出てくるんじゃないかなーって。

さて、次は花映塚ですが、茉裏くんは生きて帰れるのか……。

それでは、また来月お会いできることを……。

ばいちゃー
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