糸の先に繋がれた人形のお話   作:ちゃるもん

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新年あけましておめでとうございます。
今年も細々と頑張っていきますので、何卒よろしくお願い申し上げます。


第27話 チルノ+背負われて寝ている=助けなきゃ!!

 退院、説教のコンボを食らい、またそれなりの月日が経った。

 季節外れの桜は散り、夏の緑葉がゆっくりと変色してくる。そんな夏と秋の真ん中あたり。暑すぎず、寒すぎない。そんなちょうどよい季節の変わり目。

 

 退院後は紫苑と一緒に紅魔館に挨拶しに行ったり、人里で服を物色したり、紫苑の仕事ぶりを見学していたり、萃香に引きずられて飲みに行ったりと、なかなかに充実した時間を過ごしていた。

 

 こんな時間が一生続けばいいのにキャッキャウフフと思っていたら、辺り一面花だらけ。野花に向日葵、百合、紫陽花、金木犀に散ったはずの桜や梅。

 それに呼応するように、妖精たちの元気が振り切れた。

 もーう、あっちでドッカン、こっちでドッカン。個の力は弱いとはいえ、人間とは違い自然を操る力に加え数も多い。

 

 かく言う俺も絶賛妖精さんたちに追われていたりラジバンダリ。

 背中から飛び交ってくる、土や石のような物理的なものを投げてくる、ゲームでよく見る弾もあれば、植物をウネウネと這わせてきている奴までいる。

 そして、当の本人たちは無邪気に笑い、ひとしきり遊んだあと捕まえた人間を離してバイバイと手を振る。かと思えばまた追いかけだすの堂々巡り。

 数が多いから逃げるのにも一苦労で、今俺は合計多分20近くの妖精と睨み合ってる。うそ、一方的に逃げてる。

 

「俺は人里に買い物に行きたいだけなんですううぅうう!!」

 

 週に数回は美鈴さんとの地獄の鬼ごっこの成果もあって、今のところ致命的なミスもなく逃げ続けることに成功している。

 押し寄せる津波がごとく、なんだかすっごいおもしろいにんげんがいるんだってわーいあそぼーの感覚で振り払うごとに目の前に増えていく妖精。

 

「邪魔じゃあぁあああああ!!!」

 

 それを無我夢中に蹴散らし里へと走っていく。

 蹴散らした後、後ろから聞こえる笑い声は間違いなくホラー映画のそれだった。

 

 やっとこさ人里に到着すると、ひんやりとした空気が火照った体を急激に冷ましていった。

 人里には前回の異変と同じ結界が張られている。が、万能ではない。あれだけの数、ざっと見た感じ百は超えてそうである。控えめにいって気持ち悪い。

 そう、そんな数が一度に結界に突撃すれば一時的に機能が低下してもおかしくはない。

 しかし、心配することはない。なぜなら、私たちには彼女がいるから。

 そう、幻想郷最強(自称)として名高い彼女が!!!! 

 

「あとは任せた!! (チルノ)!!」

 

 門をくぐったと同時に感じたひんやりとした空気。それは、一体の妖精から発せられた自然現象。

 息を整えるため立ち止まったと同時に、背後から聞こえるピシピシと軋む音。

 未だ鳴り止まない心臓を無視して振り返ると、両手を前に突き出している青い髪の小柄な少女。いや、幼女といった方がしっくりくるだろう。今まであった中でトップクラスで背が低い。しかし、その背中に浮かぶ三対の氷の結晶は、身長を優に超えている。三つ合わせれば俺の身長を超え、恐らく二メートルはいくだろう。

 何時もであれば身長に見合った結晶の大きさをしているのだが、そとの妖精よろしく多大に異変の影響を受けているのだろう。

 そして、その突き出された両手の先には俺を追ってきていた妖精たちが一人残らず氷漬けにされていた。

 

 チルノ

 最強を自称する妖精。事実、妖精の中であれば間違いなく上位の実力を持つ。最強と言っても過言ではないのだろう。

 では、いまならどうか……。博麗の巫女という守護者、レミリア等の挑むこと自体がおこがましい圧倒的強者、相手がだれであれ一方的に負けるなんてことはない。筈だ。

 

 故に、危険。

 

 俺もそれなりに幻想郷で生活をしてきた。その中でチルノはかなり人里に根付いている存在となっている。

 つまり、里の人間はチルノに危険性を抱くまでのラグが存在している。そんな状態でチルノが自身の力の大きさに気付き、里を攻撃し始めたとしたら? 

 考えたくもないが、犠牲者が10人程度で収まれば良い方だろう。それだけ今のチルノの力というモノは強大になっている。

 

 今回の異変に大きく首を突っ込むようなことはしないが、里にいる間は常に警戒しておいた方が身のためだな。

 

「ふっふーん!! アタイったら最強ね!!」

『チルノちゃん、ありがとうね。これ、飴ちゃん。また危なそうなときは呼ぶから、遊んでおいで』

「はーい!!」

 

 槍を持った門番のお兄さんに飴ちゃんを貰いご満悦なチルノ氏。ふうむ、警戒するだけ損な気がしてきたぞぉ。

 

 貰った飴ちゃんを口の中で転がしながら、満面の笑みを浮かべている。

 口癖のアタイったら最強ねを舐めながら発しているものだから、可愛さが倍ドン倍。

 なんだこれは、なんだこの可愛い生き物は……ッ!! 

 

 まあ、それはそれ。可愛いのは認めるが、うちの紫苑ちゃんの方が百億万倍可愛いので俺には至って関係はない。

 

「助かった。さんきゅーなチルノ」

「ふふん!! アタイは最強なんだから当然よ!!」

「ああ、さすがは最強だ。えらいぞぉ。ところで、他の入り口には誰が付いてる?」

「えーと……炎のねぇちゃんと、慧音先生と、ルーミアとリグルと」

「なるほど、それだけ聞ければ十分だ。ありがとな」

 

 へへんと鼻を鳴らす仕草。どこまで行っても可愛いなコイツ。

 取り敢えず、チルノの情報からすると里の守りに自体に問題はなさそうだ。

 博麗の巫女さんや魔理沙の名前がなかったという事は、二人は既に異変解決に向けて動いていると捉えていいだろう。

 妖精たちが活性化し始めたのが四日前。花が咲き乱れたのがつい昨日の話。流石に様子見ではいられなくなった、ってところだろうか。

 

 今回の異変、原作では花映塚。外の世界、60年前に起きた何かで多くの人間が死に、その霊が幻想郷の結界のゆるみ云々で湧き出てきてしまった。みたいなのが通説になっていたはず。

 この異変自体は過去にもあったとかなかったとか。この辺りは原作で触れられることはなかったが、稗田阿求の蔵書を探すか、本人に聞けば分かる事なので置いておく。

 ただ、結局これは俺の知識にしか過ぎない。実体験でもなければ未来視的なあれでもない。つまり、今後起きることに一切の確証を持てない。

 

 そもそも、俺の知識と完全に合致しているモノが幾つあったというのか。

 

 弾幕ごっこはなく、程度の能力なんて回りくどい言いまわしもない。

 この二つの時点で俺の知識はぼほぼ否定されているようなものだ。

 

 死んだとしても、何ら不思議ではない。

 むしろ、いまこうして生きているのがおかしいのだ。

 

 結局俺は、普通の人より霊力の使い方を理解し、多少の応用ができる。その程度なのだ。

 異変に首を突っ込むなんて片腹痛い。誰かに頼まれたわけでもなく、ただの好奇心。繋がりを~なんて言ってはいるが、突き詰めて行けば、好奇心以上の何物でもない。

 そして、その好奇心のせいで大切なものを失いかけた。多少は学んだつもりなのよ? これでも。

 

 ただ、まあ、今回の異変に限って言えば参加したかった。と言うのが本音である。

 好奇心と言えば好奇心なのだが、四季映姫・ヤマザナドゥ、閻魔様である彼女に会って聞きたいことがあったから。

 聞きたいことは至極単純。俺が死んだ場合、俺はどうなるのか。

 紫様の駒であって式神でも何でもない俺は、寿命で死ぬ。病気でも死ぬ。胸にナイフを突き立てられても勿論死ぬ。体の半分が消し飛んで生きている今が可笑しかっただけで、普通に死ねるのだ。

 で、あればだ。この世界の住人ではない俺は、別の世界の死後の世界に連れて行ってもらえるのか。死にたいとはまったくこれっぽちも思ってはいない。が、実際どうなるのかぐらいは知っておきたい。

 っていうそんな不安な男心なのよ。

 

 けど、さっきも言ったように参加したかっただけで、参加するつもりはない。

 紫様とかに命令されたりでもしない限りは、一足先に里に来ている筈の紫苑と里の警備に当たる予定。

 

「取り敢えず、寺子屋に向かってみるか。チルノもくるか?」

「いくー」

 

 異変のせいか、さっきまでの元気は鳴りを潜め、眠たそうに瞼をこすっている。

 チルノは妖精の中ではかなり上位の存在、他の下位妖精よりも感情の起伏が激しいのかもしれない。

 

「ほら、おぶっていってやるから」

「……うん」

 

 それに、何時もの数倍の力で能力を行使してしまっているのも急激な疲れに繋がっているだろう。

 子供だから、というのもあるだろうが。年齢は俺の数倍、数十倍だとしても、心も体もまだまだ幼い。

 背中に乗った冷たい重さと規則正しい息遣い。少なくとも、体調の悪化等ではなさそうなことに安堵し、寺子屋に向けて歩き出した。

 

 異変の真っ只中とはいえ、結界に守られた里の中。忙しなさは三割増しといったところで、慌てているというよりは、統率の取れた陣形と言った方が確かな気がする。

 どこの誰誰の備蓄が少ない、古い衣類はこっちに、避難所への道筋は頭に叩き込んだか。場慣れしている、と評価すべきなのだろう。あまりの活気の良さにこっちが異変が起きていることを忘れてしまいそうだ。

 

 そして、チルノの人気の高さと、俺の知名度というものも身に染みた。

 チルノは持ち前の無邪気さから、俺はわけのわからない無茶とふらりと手伝いに来る風来坊のような立ち振る舞いから。

 日頃から、それなりに声を掛けられてはいたが、チルノを運んでいるのもあってか今日は一段と歩みが遅くなってしまった。

 一歩歩けばジジババが、二歩歩けばがきんちょが、三歩歩けば若者たちが、どうしたどうしたもってけもってけと、チルノを心配し、日ごろから世話になっているからと兎に角なにかしらの物を持たせようとしてくる。

 俺一人ならここまでならない。しかし、チルノ+背負われて寝ている=助けなきゃ!! になってしまった里の連中を止める方法はあいにくと持ち合わせていなかった。

 

「持たせるのはいいけど、少しは量を考えてくれマジで」

 

 悪態をつきながら、持たせられた着替えやら食糧やらを落とさないよう移動を続ける。

 ひぃひぃ言いながらやっとこさ寺子屋に到着。一度荷物を下ろし、ノックしてもしもし。

 しばらくして、中から忙しない足音と紫苑の声が聞こえた。

 

「はーい、って茉裏!!」

「よっ。色々持たされたから手伝ってくれ」

「また随分と、いや、でも着替えとか布類は助かったかも」

「そりゃよかった。チルノも異変の影響かただただ疲れただけなのか寝ちまってな。どっかで横にさせられないか?」

「大丈夫。ただ、うん。見て貰った方が早いかも」

 

 チルノを紫苑に預け、下ろしていた荷物を抱える。両手で持っても重たいのに、よく持ってこれたな俺……。

 なんだか焦っている様子の紫苑を怪訝に思いながらその背を追う。

 

 付いた先は教室。そして、その中に横に寝かされている四つの影。

 

 光を屈折させるちからを持つ、サニーミルク

 音を消す力を持つ、ルナチャイルド

 気配を探ることができる、スターサファイア

 そして、今は休眠している筈の春告げ妖精、リリーホワイト

 

 この四人が、息苦しそうに息を荒げながら眠っていた。

 




お読みいただきありがとうございます。

一年がたつのも早いもの。この作品もはやくて三年目を迎えることとなりました。
まあ、実際一年ちょっとの間は息抜きでほぼほぼ更新していなかったわけですが。
それでも、一つの作品を三年も書き続けていると思うとなんだか感慨深いモノがあります。

さて、今作も一応終わりに近づいてきたのかなってぐらいには進んだと思っております。
今年いっぱいで終わるか、終わらないかどっちかなーってぐらい。
それまで、少しでも皆様の少しの時間を楽しませることができるよう頑張っていきますので、今後ともごひいきにしていただければ。

では、良い一年となりますよう、皆様の健康を願っております。
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