東方の新しいアプリが出ましたね。
とりあえず、石を全ブッパしてたら霊夢と華扇が来ました。
その後に妖夢がピックアップされましたかなしい。
ひいふうみいよ…………俺、洩矢諏訪子、八坂神奈子、土下座中の東風谷早苗。
全員が軽い自己紹介を済ませるなか、洩矢諏訪子と八坂神奈子の少し後ろで震えながら額を地面に擦り付けていた。
異変解決から翌日。疲れも取れきれないまま博麗の巫女に後処理の話し合いを押し付けられた。当の彼女は今頃お家でぐっすりしている事だろう。ふぁっきゅー。
萃香と紫苑は自宅待機。理由としては主に二つ。
一つは紫苑の能力が先の異変で不安定になっているため。萃香は万が一の為に待機してもらっている。対価として俺の肝臓が死ぬが、コラテラルダメージとして受け取っておこう。
ちなみに、萃香自身が紫苑の不幸の中で平然としていたのは紫苑自身が萃香を無意識的に対象から外していたということと、萃香の能力で不幸や存在感といったものを薄めていたかららしい。なんという便利機能なのか羨ましい。
そして、二つ目の理由が、この話し合いの後に紫様との会合がある為だ。
会合の内容は、守矢神社の処遇について。とんでも事件を巻き起こした原因であり、幻想郷の中核である博麗神社に喧嘩を売ったこと。見て見ぬふりは流石にできないわなそりゃあ。
まあ、そこら辺は紫様が上手いこと纏めてくれることだろう。
それよりも、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい──―」
このお通夜みたいな空気をどうにかしてくれないだろうか。
土下座中の東風谷早苗から聞こえてくる謝罪の声。洩矢諏訪子と八坂神奈子はそれに触れず、固く口を結んでいるだけ。
多分、一方的な被害者である俺が口を開くまで弁明することも許されていない的な感じなのだろう。が、俺としては両親に出会えたし何も悪いことづくめだった訳ではない。むしろ、感謝している部分の方が多いほど。
そりゃあ、大変な部分もありましたよええ。
いきなり? なんの前触れもなく? 気が付いたら実家の目の前で? 帰ってきたら来たらで紫苑が暴れてるし? 天狗達ですら近づけないそれを止めて来いとか言われるし? はぁーだわハァー…………帰ってお布団入って寝たい。
「あー、とりあえず後ろの嬢ちゃんは顔上げて、そう。で、お口チャックな」
しかし、そういうわけにもいかないのが当事者兼従者の悲しいところ。
とりあえず、東風谷早苗にうるせぇから黙ってろとおぶらーとに伝え、泣き止ませる。ガクブルしながら両手で口を塞いでいるのがちょっと可愛いからムカつく。
「まず、今回の件について俺からアンタらに言えることはない。紫様がどう判断するか次第だ。俺個人としては両親に再開もできたし感謝している部分もある。が、それとこれはまた別問題。後ろの子がもう少し落ち着いていればこんな一大事にはならなかったわけだからな」
「分かっている。私たちの監督不届きだった。すまない」
「……ごめんなさい」
八坂神奈子が謝ると、それに続いて洩矢諏訪子も謝罪を述べた。東風谷早苗は口を塞ぎながら頭を下げている。
そこまで忠実にお口チャックしなくても……。
「東風谷早苗も、幻想郷に来た時の反動かなにか知らないけど、喧嘩を売る相手は考えな。新しく信仰がーとかなんとか言っていたが、幻想郷には現状一つ、博麗神社しかない。んで、博麗神社は幻想郷そのものにも、人里にも、妖怪たちにとってさえ重要な場所だ。そんな場所を幻想郷の管理人である八雲紫から預かっているのが、あの紅白の巫女さん博麗霊夢。そこに新参者どころか蛮族まがいの奴が来たらそりゃあ顔も合わせたくないだろ。あとでしっかり謝りに行っときな」
「それは分かっている。分かってはいるが、門前払いされないだろうか?」
「そんなもん俺は知ったこっちゃない。神事とか堅苦しい決まりごとの中にいる神様にはちと分かりづらいかもしれないけど、こういうのは形が大事なんだよ。その後はどうとでもなる。信頼を得たいならそれ相応の行動を取ればいい。なあなあの関係でいいならそのまま付かず離れずを維持してればいい。人間なんてそんなものよ」
人里の中にだって多少なりともそういうものは存在する。外の世界に比べるとその濃度と言うべきものはかなり薄いものだが。
例えば酒の強さ、例えば足の速さ、腕っぷしの強さ等々……。腕っぷしが強ければ夜間の警備が多くなるし、弱ければ記録係みたいな事務仕事が任せられやすい。
なあなあの関係と言っていいのかいまいちぱっとはしないが、そういった友好関係の強弱は間違いなくあった。
「ま、つらつらと上から色々物申してるけどそんなに気負わなくていいと思うよ。殺されかけた相手と酒飲んでるような人だし。それも頻繁に」
紅魔館でパーティーを開くわどんちゃん騒ぎしてたり、遅れた桜を見ながら宴会開いたりしているような人間ばかり。
気負うだけ損なのだ。
「それはそれでどうなんだ? いや、私にも似たような経験はあるが」
八坂神奈子の目が洩矢諏訪子を映す。
確か、洩矢諏訪子の納めてた土地を八坂神奈子が襲ったんだっけ。んで、なんやかんやで表向きの神が八坂神奈子で、裏側、裏? 隠された? よく分からないけど洩矢諏訪子がひっそりともう一柱の神として存在している。みたいな。
なんだかめんどくさくなってきた。元々俺はこの三人と話すことが主目的ではない。
あくまで、紫様からの褒美を受け取るために来たんだ。場所の指定が守矢神社でなければ俺はここには居ない。
「ゆるーく行けばいいんだよゆるーく。俺なんて生きたいから生きてるような人間だぞ? そんな奴が言ってるんだからゆるーく。この間はごめーんねって手でハートマークでも作ってりゃいいんだよ。お返事どうぞ」
「あ、ああ。分かった」
無理やり会話を切り上げたと同時に、誰も居なかったはずの後ろから声が掛けられた。
その声に聞き覚えがあるのかと問われれば、そりゃああるに決まっている。散々俺の体をズタボロにしてくれたではなく鍛えぬいてくださったお方のものなのだから。
「久しいな茉裏。どうだ? 後で稽古の一つでもつけてやろうか?」
「お久しぶりです藍様。有り難いお誘いではありますが、今回は辞退させていただこうかと。今日この場はそういった場所ではない筈ですので」
「そうか、それは残念だ」
少し残念そうな笑い声が後頭部辺りから聞こえてくる。どれだけ痛めつけたいのだろうか。八雲藍の招待については色々吟味されていた筈で、その中の一つに傾国の美女妲己や玉藻の前だという説がある。もしかしたら、国を傾かせたのは美しさに加えこのサディスティック故にかもしれない。
「あら、私は別に構わないわよ?」
やめてください死んでしまいますせっかく助かりそうだったんですから。
「そうだったのね残念。久しぶりに貴方たちがじゃれあっているのを見られると思ったのに」
少し、いやかなり億劫ながらもその場で姿勢を正し後ろを向く。
そこには口元を扇で隠し表情が読めない紫様と、それに付き従えるように一歩隣で頭を下げる藍様の姿があった。
紫様の姿を確認すると同時に、深々とその場で頭を下げる。
「褒美の件はそこの二柱との話し合いが終わってからでもいいわね?」
「勿論です。私も立ち会った方がよろしいですか?」
「いえ、必要ありません。どうしても居たいというのであれば止はしませんが、何時ぞやの光景を思い出したくもないでしょう?」
「ひとつだけ、いえ失礼間違えました。ひちょちゅだけ、でしたか。 なかなか愉快でしたねあの時は」
お暇させていただきます…………。
紫様の下がりなさいの声と、藍様のクスクス声に見送られながら襖を開ける。
わざわざ数年前の記憶を掘り出さなくてもええだろうに…………。
プークスクスと言わんばかりに袖口で表情を隠している藍様に、それでは失礼いたちまちゅと声を掛けてみたらものの見事に吹き出された。
普通に気にいっとただけかいアンタ。あと汚い。
気恥ずかしさを隠しながら、部屋の中へ一礼し後にした。
時刻はまだまだ早く。爛々と輝く太陽は真上に昇ってすらいない。
さてどうしたものかと考えていると、ちょいちょいと服を引っ張られた。何事ぞやと引っ張られた方を見てみると、恐らく俺と同様に外に放り出された東風谷早苗の姿があった。
「どしたん?」
「あ、えっと……」
純粋な疑問を言葉に出すと、彼女はばつの悪そうな顔で固まった。言い出そうにも言い出せない、そんな雰囲気が感じられる。
「改めて謝罪したいとかなら、ほら、どうぞ。別に逃げたりも責めたりもしないから満足いく形で終わらせてくれ」
大方そのあたりだろうと決めつけ、軽く手を広げる。
うじうじされても鬱陶しいだけなのだから、さっさと終わらせてくれたまえよの精神だ。有り難く思いたまえよわっぱ。
「あ、あの、でも、それじゃあ申し訳が……たたない、というか……」
「ガキが余計な心配してんじゃないよ。大人の度量を舐めんな。いいから、こういうのはありがたーく受け取っておだてときゃいいんだよ。はい、お辞儀して。ごめんなさいは?」
「ご、ごめんなさい……」
「はい、よくできました」
腰を折り、か細い声で謝罪の声が聞こえる。その頭をわしゃわしゃと乱雑に撫でてやるとキャッと可愛らしい悲鳴が聞こえた。
けしてめんどくさいからスキンシップで誤魔化しているわけではない。
……外の世界だったら通報されてるんカシャだろうなこれ──―
──―カシャ?
「いやー、白昼堂々逢引きとは、流石の私も照れてしまいますねー。貧乏神様辺りにでも見せたら少しは涼しくなるのでしょうか?」
そこには、カメラをこちらに向け無遠慮にシャッターを切り続けるクソ烏の姿があった。
お読みいただきありがとうございます。
ちょい短めだけど、一旦切ります。
長くなりそうだったのでね。
ではまた来月に