糸の先に繋がれた人形のお話   作:ちゃるもん

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ガキーガキーンバァンバァン!!


第35話 ガキーガキーンバァンバァンで!!

 手の上で愛用のカメラを弄ぶクソ烏。

 適当に邪魔してそのカメラをぶっ壊してやろうかとも思ったが、止めておいた。

 可哀想だからとかそんな理由ではなく、その脅す材料があるが為の優位性を保つためだ。

 

「ど、どどどどうしましょうきりゅ」

「その名前は頭がパンクするから茉裏で呼んでくれ」

「わ、分かりました。えっと、それで、どうしましょう茉裏さん」

「なんも問題ないから、気にしなくていいぞ。こいつの名前はあー射命丸文ってな。新聞記者みたいなもんだな。そっちにもいただろ? 芸能人とかの熱愛報道を嬉々として流したり、遺族の事を何も考えずに虚偽を流すような奴ら。それと同族」

 

 なんとなく言わんとしていることが分かったのか、東風谷早苗は可哀想なものを見る目でクソ烏を眺めていた。

 

「なんて紹介をしてくれやがるんですかねこの人間は」

「でも事実だろ? 現に、積極的に勧誘してるお前より、地道に誠意を持って接してる姫海棠はたての新聞の継続購入がいいらしいじゃねえか。態度と質、この両方が勝っていないとこの結果にはならないと思いますがねぇ」

「私とはたての新聞の売り方はまったくの別。はたてが一人一人に定期購読を進めている一方で私は号外などで買い手を増やして行く。売り上げで言えば私の方が圧倒的ですが?」

「その時だけな」

 

 バチバチッとお互いの視線が交差する。初めて会ったあの日以来のこの関係、今更変えられるはずもなし。変えるつもりもなし。

 ただまあ、色々と初めてな奴が隣にいるので程々でやめておこう。

 

「からすてんぐのしゃめいまるあやさまのしんぶんはせかいいちー。ほら、これで満足しただろ? 忙しいんだから帰れ帰れ」

「いやですー。私だって仕事でここまで来てるんですから、そんな簡単に帰られる訳ないでしょう。私たちの領地に無断で侵入してきて、いきなり問題行動。見て見ぬ振りができますか?」

「さあ? そんなもの俺の知ったこっちゃない。が、椛たちが巻き込まれるんならやめとけとだけ言っとく。相手が悪すぎるんだから、素直に大人しくしときな」

「それができないから困ってるんでしょうが。脳みそ入ってます?」

「現場に辿り着くことも出来ない奴らがしゃしゃり出てくるんじゃねぇよって言ってるんだが……、理解できなかったのか鳥頭? ああ、すまん、鳥はまだ三歩覚えていられるんだったか」

「できないからって言われて、こちらも仕方なく赴いてることに察しが付かないんですかねぇ。来なくていいなら来たくなんてありませんよメンドクサイ。そもそも辿り着く云々もまだ作戦立案前の段階の話。どんな危険が待ち受けているのかを把握もせずに突っ込むだけしか能がない単細胞とは一緒にされたくはないデスネ」

 

 肩に巻いてあるホルスターに手を伸ばす。それに気づいたのだろう、クソ烏も腰にぶら下がった刀に手を伸ばしていた。

 まあ、ぶっちゃけ勝算はない。が、お互い殺してしまっては後が怖いので形だけのものだ。殺意は駄々洩れだけど。舐めた真似してッとぶっ殺すぞクソ烏(下等生物)を形だけして、先手を取った方の勝ち、みたいなもん。

 他から見たら、何やってんだアイツらってなってると思う。

 いやだって、片や末端も末端とはいえ一応が八雲一派。片や組織図的には上位に位置する烏天狗。どっちかが死んでみな? 戦争よ戦争。

 だから、お互いの鬱憤晴らしの為に勝負の真似事してるわけ。

 一瞬で終わるし、獲物が違うからお互いの性能差で埋めにくい。こちらは拳銃、相手は刀。近づかないといけないクソ烏に、捉えられないから相手の一挙手一投足で予測を付けないといけない俺。まあ、当てるつもりがないからこのくらいが丁度いい。

 今のところ二勝三敗で負け越しているので、ここで負けたら間違いなくメンドクサイことになるので是が非でも勝っておきたいところ。

 

 ホルスターから銃を抜き、無造作に一発。

 

「きゃぁあ!!」

 

 弾は甲高い音を立てて射命丸文の頬を掠めた。抜き放たれた刀で軌道を逸らされたのだろう。

 瞬間、射命丸文の体がブレる。チラリと視界を照りつく眩い光に体を逸らす。視界に移ったのはいやらしい笑みと光を反射する逆刃。峰内を狙った横一線。

 後ろに退いた力を利用して、足首を重心に横蹴り一線。

 重く、鈍い音が辺りに響く。

 足は射命丸文の片腕で受け止められていた。

 

「妖怪ってなんでそんなに怪力なんだろうねぇ!!」

「貴方がひ弱なだけでは? プークスクス」

 

 プークスクスと聞こえてきそうな……、いや、言ってるわ。俺にだけ聞こえるように言ってたわコイツ。

 

 受け止められた脚に霊力を回し、瞬間的に力を上げ振りかぶる。

 射命丸文はそれを軽く受け流し、大きく宙を舞って着地。着地地点に三発、乾いた音が鳴り、同様に三度甲高い音が響いた。

 

 けしてなんかのはずみでやっちゃったぜとかならないかなーとかおもってはいないうん。

 

 多少なりとも意識が外れているうちに畳みかける。射命丸文のときほどではないが、東風谷から見れば十二分に視線が追い付かない速度で間合いを詰める。

 射命丸文は余裕綽々といった感じで佇んでいる。辿り着く前に二度発砲。一度目の甲高い音が鳴り、二度目は切断された。

 

 だから、言ってやった。

 

「ばぁあかぁあ!!」

 

 苦虫を嚙み潰したような顔で固まっている射命丸文の腹にヤンキーキック。射命丸文の口から息が吐き出され、大きく吹き飛ぶ。

 一度、二度、三度ほどバウンドし受け身、体勢を立て直していたころには銃口がこんにちは。

 

「これで三勝三敗、だな? カメラのデータは消しとけよ負け鳥」

「チッ……。えーえーそうですともそうですともまいりましたーけしておきますぅー」

「うっわめんどくさ」

 

 倒れている射命丸文に手を貸すわけでもなく、自身の服に付いた埃を払う。起こさないのか? 起こすわけないじゃないですかヤダー。

 

「そこの廊下を曲がってすぐの部屋、そこに家の主人と神様たちが話し合ってる。下手なことせずにさっさと用を済ませて帰れクソ烏」

「わーってますよ下等生物」

 

 口の中の血を吐き出し、射命丸文は振り返ることなく言われた部屋へと入っていく。

 

「やーっとどっか行ったか。んで、緑巫女はどこいった?」

「ここにいますよ!!」

 

 神社の回廊の下から、頭だけをひょっこりと出している緑巫女の姿。

 やけに目がキラキラしてるけど、アナタ元気ね。真隣でドンパチ始まったら外の人間はまともに会話も出来ないと思うのだけれども。

 

「いやー、凄かったですね!! ガキーガキーンバァンバァンで!!」

「語彙力が死んでる。曲がりなりにも目の前で殺し合いが起きてたんだから、もうちょっとこう、あるでしょうよアナタ。いや、まあ、お互い殺すつもりはなかったけども」

「カッコイイです!! あんなの映画やゲームの世界でしか見たことないですよ!!」

「まあ、うん……、そうだろうね」

 

 東風谷は目をキラキラさせたまま、手で銃の形を作り発砲音を真似したり、刀を握ってる感じを出しながら振り回していたりと忙しなく動いている。

 さっきまでのどんよりムードよりは百倍マシだが、これはこれでメンドクサイ。

 

「つってもまあ、アイツは実力の半分以下でやってるんだろうが」

「え」

「えって、まあ分からないのもしょうがないか来たばっかだし。一応あの射命丸文って天狗は幻想郷最速を名乗ってる。元々種族として速さに特化した天狗に加えて、アイツは風を操る。他の天狗も天狗の団扇である程度操れるんだろうが、アイツのソレは訳が違うからな」

「どっちも風を操ってるのにですか?」

「あー、そうだな……。天狗の団扇はその場の風を操る。だから、密閉された空間や、風が弱い日とかだと効力が薄い。のに対して、射命丸文は風を生み出し任意に操作が出来る。突風もそよ風も、天狗の団扇も合わせて使えば嵐でさえ生み出す事が出来る。規模がどの程度まで広げられるかは知らないがな」

 

 実際、妖怪の山中であれだけ自由を許されているのもその力が関係している。理由は単純明快、捕まらないから。

 諜報活動として里に降り、持ち前の速度を持って情報を取得。加えて趣味が新聞作成。

 上も天狗の社会性に下手に縛らず、ある程度自由に動かしていた方が都合がいいのだろう。捕まらない諜報員。間違いないく接待レベルの存在だ。

 

「んで、さっきの模擬試合でアイツはその能力を使わなかった。これだけでもハンデありまくりなのに、空も飛んでない。天狗の団扇もな。使ったのは刀だけだし、身体能力もかなりこっちに合わせてくれてるだろうな。ま、血を吐かせれたってことは、それなりに効いてはいるんだろうけど」

「あ、あれで実力の半分以下……。え、じゃあもし本気を出されてたら」

「そりゃあもう気付かないうちに首チョンパよ」

 

 あ、あははと乾いた声が隣から聞こえる。

 顔からは血の気が引き、口元は引くついていた。

 

「ま、お互い殺すつもりはなかったから問題ないさ。あわよくばとは思ってはいるが……。それに、射命丸文自体は幻想郷最速であって幻想郷最強とかって訳じゃない。むしろ、アイツより戦闘能力が高い奴なんかごまんといる。覚えてるか分からないが、この間の角の生えた幼女とか。それこそ、今日来ている二人、八雲紫に仕える九尾、八雲藍様。この人は幻想郷最強って呼んで差し支えないだろう。最近、猫又の妖怪を勝手に式にして紫様に怒られたらしいけど」

「八雲藍様、ってあの後ろについてきていた方ですよね?」

「そうそう」

「最強って事は、八雲紫様の方はあまり強くないって事ですか? 幻想郷を維持してるとは聞いてますけど。その護衛とか?」

「護衛なのは間違いない。けど、紫様と藍様が勝負しても勝ち目はないかな。藍様に。紫様は最強とかそんなレベルの存在じゃない。絶対なんだ。幻想郷のルールそのもの。勝つ負ける最強最弱とかの話じゃない。どうあがいても、どうがんばっても、八雲紫という存在は存在している時点で全てに勝っている。そういう存在なんだ」

 

 口で説明するのも困るレベルでね。そう、最後に付けたし、射命丸文が神社を後にするのを見送る。やっぱ空を飛べるのって便利だよなぁ。

 

「え、いつの間に」

「大方、天狗側との会合の日時決めでもしに来てたんだでしょ。天狗は一方的に被害者だし、日程を決める権利ぐらいは譲っとかないと。どうせここに定住するのは紫様が許すだろうし。守矢一派が少しでも負い目を感じないための計らいってところか、いつもの図太さか。さ、もう少ししたら向こうも終わるだろうし、どうせなら神社の中を適当に案内してくれると助かる」

 

 ひらひらと手を振り、東風谷に案内を促す。

 グワシッと勢いよく掴まれた手を見れば、目を爛々と輝かせた東風谷と視線が交わった。

 

 あ、これは長くなる奴

 

 そう、思いやっぱやめておこうかなーと断りを入れる暇もなく、東風谷のマシンガントークと共に俺は神社の案内を受け入れるしか選択肢が無くなっていた。

 




お読みいただきありがとうございます。

ガキーガキーンバァンバァンです
ガキーガキーンバァンバァンなんです

ぶっちゃけ、目の前であんなんされたらワクワクすると思う。
あくまで自分に被害が出ないって分かってたらだけど。

では、また次の機会に。
ばいちゃ~
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