吸血鬼超強化です。
決して天狗が弱いわけではありません。
吸血鬼が強すぎるだけです。
では、どうぞ。
射命丸文とレミリア・スカーレットを引き入れて3日目の夜。遂に吸血鬼殲滅が始るようだ。紫様からの文で射命丸文は一部口止めの約束をした上で解放。それと同時にレミリア・スカーレットと共に戦場の中心へと来ることを命じられた。
そんなこんなで射命丸文は妖怪の山へと帰り、レミリア・スカーレットは俺の影に潜ったまま戦場へと進行中。寝床がないからと俺の影に入っていったが……影の中はどうなっているのだろうか? キスショットうんたらかんたら と言う最強の吸血鬼さんが住む、むららぎさんの影のようにソファやら完備されているのだろうか?
ん? この3日美少女二人に囲まれてさぞ楽しかったでしょうなって? そう言うのを感じられのはきちんとした衣食住が揃ってからなんやなって。
射命丸は鴉に化け枯れ葉の中で暖を取り、レミリアは気が付けば俺の影の中。二人とも何処に行ったのかと、逃げられたのかと焦ったさ。逃がしたら俺の首が飛ぶからな。
壊れた家の壁を剥がして引っ付けてマイクラ初心者のような豆腐小屋でガタブルしながら藍様が殺しにくるのかと……結局次の日の朝方に二人がいた時は本当に安心したさね。
まあ、そんな訳で僕は元気です。少しずつ建築資材や食料も確保している。サバイバル技術を教えてくれた藍様には感謝感謝です。何かある事に殺そうとしてくるのは勘弁だが。曰く、これが一番殺気を感じ取れるようになるらしい。だからといって本当に殺しにくるのはやめて欲しい。今でも体中に刺されたナイフやらなんやらの跡がありますとも。
「レミリア・スカーレットさんや、もうすぐ付きますぜ」
影の中にいるレミリアに声をかけるが反応はなし。まあ、聞いていないということはないだろう。
林の影、岩陰、木の影に身を隠しながら進む。
「わお……こりゃすげぇな」
黒クロくろ。真っっっッ黒。なんじゃこり。あれ全部吸血鬼? 文字通り空覆う大軍じゃねぇかこれ。そして、一斉にコウモリ特有の角張った翼を広げた。目指できる範囲だけでもその翼には個々に特徴があるのが分かる。色や形状。赤青白、骨組みみたいなのだけのやつもいれば、大きな宝石のようなのもある。
吸血鬼が翼を広げると半月だった月が紅く染まり、徐々にその形状を変えていく。あれは……新しく作り出していると言うのが近い気がする。
その異常に反応した天狗達が妖怪の山からゾロゾロと出てくる。よく見えないが、一番前に立つ……女性? ちと分かりづらいけど多分女性が天狗のトップ、天魔だろうか? 特徴を覚えておきたいが暗くてよく分からん。天魔って決まった訳でもないしそこまで気を付ける程でもないか。
正しく一食触発……。ここで小石でも投じてやれば殺し合いの始まりだろう。
「レミリア・スカーレットさんはどっちが勝つと思うよ? このままおっぱじまるかは分からんが」
「そうだな……」
あら意外。影の中から声が聞こえた。てか、その状態で声聞こえるのね。
「もし天狗があの射命丸文とか言う奴と同じくらいばかりならば……まず、天狗は勝てんだろうな。吸血鬼の本領、本来の戦い方はなんだと思う?」
吸血鬼の本領? 戦い方? 数多くのアンデットを使役したり、蝙蝠や狼になれる。身体能力は馬鹿みたいに高い。実際どの程度なのかは分からないが、速度は天狗、力は鬼にも及ぶ。その代わりの数多くの弱点が存在している。
有名どころでいえば、太陽、銀、ニンニクに弱い。紙芝居等では、十字架とニンニク、そして杭をその胸に打たれ、太陽の光で浄化されたりしている。
ならば、弱点を付かれないためにトリッキーな戦い方になるのだろうか? 相手がどれだけ準備を万端にしていても、翻弄され、焦りが積もれば準備してきたものは水の泡と化す。
「確かに。そう言った戦い方もできる。だが、それならばこんな大々的に集まり、正面衝突するよりも、奇襲すべく相手の陣営に潜り込む方が良いとは思わないか?」
「あー……。言われてみれば」
「お前の考えには大きな誤りがある。確かに我ら吸血鬼には弱点がある。ああ、それは認めよう。だが、それは決定打とはなり得ないのだよ。お前が語る紙芝居の話までやらなければ吸血鬼は殺せない。欠片ひとつ残さぬ覚悟でやらねば吸血鬼は殺せぬよ。この先にはそんな馬鹿げたことをしでかす輩が出てくるようだが」
やれやれと言った具合にレミリアが言う。まあ、そんな輩がいるから、今後も大人しくしておく事をオススメするよ。
「んで、さっきの話を纏めるとだ……再生能力、身体能力その他もろもろをフル活用した圧殺が得意と。てか、そう考えると吸血鬼ってエグくね?」
弱点は決して有効打にはなり得ず、その身体能力は幻想郷トップクラスの可能性。さらには、超常的な再生能力に相手を惑わす変身能力。ばっかじゃねぇの? 子供の考えた最強の化物かよ。
さらに言えば、全員ではないだろうが能力持ちだって居るはずだ。確か……影を操るやつとか居たはず。
「ああ、いるな。他には水を操つる者。光を消す者。通さぬ者……皆が皆、何かしらの能力を持っている。持って生まれてきてしまう。まあ、周りを考えずバカスカ突っ込んでいく自己中な阿呆ばかりだ。天狗が上手く連携すれば勝てるさ」
恐らく影の中で肩を竦めているのだろう。
さて、一食触発の雰囲気が漂う中。我らが藍様の姿は見えない。何故だろうか……? ふぅむ……今が吸血鬼を一網打尽にするチャンスの筈なのだが……。
「始まるぞ」
「え、あ、ああ」
そして、始まってしまった。吸血鬼はお互い邪魔をし合わないように距離を離して戦っている。天狗は吸血鬼一体に対し3~5人で対応しているな。やっぱり、吸血鬼って強いんやなって。
にしても、天狗の消耗は激しそうだ。ポトリポトリと落ちていく姿が見える。それに対して吸血鬼は落ちることはあれど、すぐさま復活。えげつない再生能力である。バラバラにされて生き返るって……某サイヤ人さんたちの住人じゃねえのかアイツら。
「予想通りの展開だな。天狗が我らの弱点でも知っていれば戦況は逆だったろうに」
「決定打にはならなくても、効果的すぎる妨害にはなるのか。そう言えば天狗達は河童を連れてきていないのか」
「かっぱ?」
「あー、こう、実際に会ったことは無いんだが、妖怪の山の1勢力でな。確か天狗達の部下だとか。そんで、河童達は水を操れるんだと。実際は知らんが」
「ヴォジャノーイみたいなものか?」
「むしろ俺はヴォジャノーイが分からん」
ふぅむ……ヴォジャノーイはどうでもいいとして、何故河童は居ないのだろうか? 空中戦になる事を予想して、自分たちより機動力に欠けるから置いてきた? それだけで、今後の命運を掛けた戦争に参加させない。そんな選択肢が取れるのだろうか?
「むっ? 天狗が後退している?」
レミリアの言葉に空を見上げる。ああ、確かに。天狗がじりじりと後退を始めているな。このまま戦っても分が悪いと踏んだか。
「あ、なるほど。戦場を自分たちの得意な場所に移動して戦おうとしるのか。密集してたら、直ぐに対応されるだろうけど、今は戦力が拡散してる。そこを各個撃破。戦いなれた山の中なら機動力に欠ける河童も自由に動きやすい」
これは、吸血鬼不味いかな?
「さて、それはどうだろうな」
ククク と愉快そうに笑い声を噛み締めるレミリア。何が可笑しいのだろうか?
「情報収集は基本なのだろう? 精々ない頭で考えてみろ人間」
情報収集は基本? いや、確かにレミリア達と出会った時にそんな事は言ったけど……。
「んー?」
…………水を操る者? そうだ、さっきレミリアは水を操る者がいると言った。 つまり、その者がいれば、水に対する防衛策は程度はわからないが、取られている。つまりは、干渉力の問題になってくるのではないのか? そして、恐らく河童達の水攻めを期待しているのであれば……それが崩れれば天狗に勝機はない。
さらに言えば、吸血鬼と天狗にはもう1つ大きな差がある。能力の有無だ。さっきレミリアは吸血鬼は能力を持って生まれてきてしまう。そう言っていた。それが、嘘ではなければあの百を超えるの吸血鬼全てが特殊な力を持つことになる。
それに対し天狗が能力を持つことは所謂天賦の才。生まれながらの天才なのだ。つまり、天狗の中でも能力を有するものは極一部。天狗の中にどれだけ能力持ちが居るのかは定かではないが……、少なくとも百を超えるの吸血鬼よりかは少ないだろう。もしくは、どっこいか。
天狗の内情を調べている時に見つけた情報だった。正直ここまで大きな戦力差になるとは。そもそもの考えで能力持ちが多くないんだろうなって決め付けてたからか。種族によって能力持ちの生まれる確率は変わる。覚えておこう。
「因みにだが、あの中のひとりに緑の王と呼ばれる者がいる。そいつの力は植物を味方に付けることが出来る」
「うへぇ……天狗これ無理ゲーじゃね? そういやさ、そう言った呼び名って吸血鬼みんな持ってるものなのか?」
「大体はな。人間に付けられ定着していった。例えば水を操る奴なら水の悪魔。他にもムーン・デビルや取り込む者……と、それなりに特徴的な名前で呼ばれていた」
「へー。レミリア・スカーレットさんは?」
「私か? 私は運命を操る者……後は見透かす女だったか他にも色々と呼ばれていたな」
まんまだな。いや、必然的にそうなるのだろうが。意外と日本風なのが多いのね。
「何も私が知っている言語を話している奴ばかりでも無かったのでな。いまでこそ腰を落ち着かせられる場所を見付けられたが、それまでは同じところに留まることは殆ど無かったな。だが、腰を落ち着かせられたとしても……この有様なのだが」
「腰を落ち着けるとかそんなレベルじゃねーわな」
吸血鬼の後について行く形で追っていく。予想通り天狗は妖怪の山へと引きこもった。吸血鬼たちも空中で1度止まり様子を見ている。
動いたのは天狗側だった。拮抗なんてものは無い。吸血鬼が集まったところを一網打尽。津波のような濁流が吸血鬼達を飲み込んでいく。
濁流はゆっくりと収まり波となり、最終的に吸血鬼たちを覆う大きな水球となる。
あれま、吸血鬼が不味いのか? なんて思ったさ。これを見越して藍様、紫様は動かなかったのか? とも思ったさ。レミリアが見たのはこれだったのでは? とも思ったよ。
天狗つえー
って、安直に。
突如、雨が降ってきたんだ。針のように鋭い雨、いや、槍が。水球が妖怪の山に向かってひたすら水を送り出しているんだ。それが、自然落下で落ちてきているだけ。だが、一撃一撃が可笑しい。雨が地面に穴を開けるんだぜ? 石をも穿つじゃね、石をも貫くんだ。ははっ……頭おかしいあの集団。遠目から透明の雨に混じって赤い鮮血が降り止まないんだ。
つまり、天狗は、河童はたった1匹の吸血鬼に力負けしたんだ。
実際に動いた河童の数なんてわからない。だけど、天狗に勝機はない。ただ、それだけが確信できた。
圧倒的な光景に息を呑む。なんでか目の前がチカチカするし、妙に気持ち悪い。ああ、そうだ。紫様と始めて対峙した……頭上に太陽のような火球を突き付けられた時と同じ感覚。逆らってはいけない。すぐさま逃げるべきだと、脳が警鐘を鳴らしているんだ。
とてつもないほど、冷静に慌てている自分。足から力が抜けそうなのを必死に耐える。恐らく、出てくるとしたらここなのだから。
汗が目に入りそうになり、瞬きをする。その一瞬にして、槍は止み、鮮血は地面に流れ出た。
「……ははっ」
乾いた笑いが耳に届く。レミリアのものか? いや、俺のだ。俺はまだまだ、自分のご主人様達を侮っていたらしい。
「凄まじいな。これが、八雲……か」
槍を防ぐのは青紫色をした炎の壁。その中を悠々と歩くのは八雲藍。八雲紫の唯一の側近。金色に輝くその尻尾はその強さを現すが如く広がりその大きさは妖怪の山をも凌駕する。
尾が揺れる。尾から零れ出た炎が吸血鬼へと飛び火し消し飛ばした。消えた吸血鬼に復活の予兆はない。
吸血鬼が逃げる。そう。天狗の軍勢にも、河童の津波も力で、そう、ただの力技だけで薙ぎ払ってきた吸血鬼が逃げ惑う。
しかし、その判断は遅すぎたのだ。壁が生まれ、阻まれ捕まった。一人一人が四角い棺桶に捕まった。青紫色の棺桶に。熱いあついアツいあつい熱いアツい。吸血鬼達の悲痛な叫びが重なり合う。生地獄……地獄とどちらがマシなのだろうか。他人事のように考える。そうでもしないと、意識が飛びそうだ。
体が空気を求めるが、脳の警鐘はそれどころではないと拒絶する。体を動かし逃げ出せと脳は警鐘を掻き鳴らすが、体は動けるほどの体力も空気も何もかもが足りていないと信号を拒絶した。
「やはり人間は脆弱だな」
衝撃が腹に伝わる。胃のそこから食べた物が這い上がって来て、吐瀉物がぶちまけられた。それと同時に酸素が、空気が体に入ってくる。脳の警鐘に体が漸く引き受けた。
もう一度空を見る。さっきまでの巨大な尾は消え、1匹の妖怪が俺達の方へと向かってきた。
「茉裏」
「はっ!」
名を呼ばれ、条件反射的に跪く。下が吐瀉物だろうと関係ない。そうしないと殺されるからだ。
「紫様から伝言だ。見ていて愉快だったから許す。との事だ。精進しろよ。レミリア・スカーレット。今度我が主が直々にお前と話をつけに行く。自身の根城にて待つがいい。下手な粗相をすれば……こうなる事を覚悟しておけ」
藍様が右手を握る。空の棺桶が潰れた。悲鳴も何も無い。グチャりなんて音もしない。潰れるのと同時に蒸発したのだろう。肉の焦げた臭いが微かに鼻につく。
「ああ、肝に銘じておこう」
レミリアが答えると、藍様は隙間の中へと消えていった。
2人して大きなため息を1つ。
「疲れた」
「ああ」
「これからどうすんの?」
「それを決めるのは向こうだろうさ。かと言って吸血鬼の生き残りは私達ぐらいになったからな。はぐれは何匹か居るだろうが、恐らくこちらに来る事になるだろう」
そっか。想像通りの答えに短く返した。ふざけたりとかできる雰囲気ではありません。帰って寝たい。暖かい布団もなにもないけれど、隙間風の凄い壁だけのお家ではあるけれど、家と言う場所で寝たい。
「それじゃ、俺達のお仲間ごっこもこれにて終わり。俺は一足先に帰らせてもらうよ。天狗は……どうにか自分で頑張るでしょ。またな」
「ふむ……では、私もこう言わせてもらおうか。また、会おう。次に会う時はもう少し度胸を付けておけよ。脆弱な人間」
「一言も二言も余計だっつぅの」
後ろ手にひらひら、呑気に手を振る。レミリアはどうやって帰るのだろうとか、また会えるのかなぁなんて事を考えたりして帰路に付く。後ろを振り返れば血の海。前を向けばただの野道。まるで、見飽きた日常と求めた非日常の境界線。でも、この世界に来て思うのです。
平和って素晴らしいんやなって(。´-д-)
お読みいただきありがとうございます。
らんさまちょうつよい
まあ、そういうわけです。八雲家には逆らうな。逆らったら文字通り消されます。
それと、恐らくメインヒロインは貧乏神の子になります。出生とかには特に触れられていないようなので、元々幻想郷に居たけど、顔を出して無かった。そんな体で行きます。
あくまで予定ですし、まだまだ先の話になるんですがね。
では、また次回〜