糸の先に繋がれた人形のお話   作:ちゃるもん

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よっす、久しぶりに東方祭に行ってきたよ楽しかったよコスプレしたよ。
あと、家族がコロナになってたよ無事だったよ。
そして、相変わらず何を書けばいいのか分からなくなってたよかなしいね。


第40話 夜の帳は下りていた

 へいよーくーるにいこうぜおれ。

 この万力から逃れる術を考えるんだ。

 

 まずは状況の整理と行こう。

 紫様と諸々やったあとの臭いを引っ付けたまま鈴奈庵に来て店長と川辺で半裸の俺。

 

 ……いやもう無理では? 

 

 数え役満とかそんなレベルの話ではない希ガスル。麻雀分かんねぇけど、多分そんな感じ。

 だって、紫様とやってる時点で殺されても文句言えないのに、加えて店長と川辺でキャッキャウフフしてたら、ねぇ? 

 

 素直に謝る? っつってもどう謝るよ。下手に謝っても頭パァーンッ!! なりかねないのに。

 一周回って開き直るか? いや、それが一番駄目でしょバカなのかバカだったわ……。

 

 ふうぅむ万事休す。現在進行形で頭蓋骨から嫌な音が鳴り響き、耳元では心地よいはずの吐息が段々と機械音チックになり始めている。

 

 …………まつ毛長いなコイツ。

 

 動かない顔の中で唯一動く眼球を動かし、視線を横にやる。もう、目と鼻の先、いや耳の先には死んだ魚のような目をした紫苑。

 ふと思った、予想だにしていない行動をとれば取り敢えずの死地を脱却できるのではないのだろうか? と。

 

 霊力を首元に集中し、一気に捻る!! 

 移る視界、一瞬音が聞こえなくなり、紫苑の顔が視界に入ると同時に世界がスローモーションに移り変わる。

 驚いたように目を見開き呆気に取られている紫苑、やがてそれは彼女の万力がごとき手……青筋立ってるんですけど、手のひらに青筋立ってるんですけどぉ??? え、マジでヤバかったやーつ?

 次第に無茶をした反動なのか首全体とその上下が熱くなり、唇に柔らかい感触を感じた刹那嫌な音が直接脳に響き渡った。俺の首が可動域を超えかけた音だった。

 

 結果として首を痛め、頭を鷲掴みの状態から顔面を鷲掴み状態へとランクアップした。

 おかしい……俺は確かに死地を脱却するために行動を起こしたはず……事実、首の回転を止められなかったという事は、逃げ出せる余地もあったということ……。いったいなにがおこっているんだ……??? 

 

「ところで紫苑さん」

「ナンでシょうマツリさん」

「さっきよりも手に込められている力が強くなってきている気がするのは、僕の気のせいでしょうかミシミシ言ってるんですけれども」

「別に、ワタシもイヤじゃないけど、今じゃないよね。まずは説明シてほシいシ。やっぱり、初めてが外なのは恥ずかしいかなーって」

「一体ねんのことを言っているのか皆目見当もつかないが紫苑ちゃんに露出癖があったことにいままつりくんはとってもおどろいていてててててつぶれちゃうまつりくんのあたまがざくろみたにつぶれちゃうよぉおおおお!!!???!?!?」

 

 ミシミシッ!! と嫌な音が響き渡る。数秒なのか数十秒なのか分からないが、そう長くない時間をやけに長く感じながら万力の力がすこしだけ弱まった。

 

「し、しおんさまがそんなげひんなしゅみをおもちなわけがないですよねえあははははははぁくぁうぇddrftgyふじこlp」

 

 足から地面の感覚が無くなる。顔を掴んだ鉄の指がミヂミヂと顔にめり込んでくるのが分かる。

 

「ダレと ドコで ナニをしたの?」

「ゆかりさまにさそわれてもりやじんじゃでせっくすせいこういをしてましたぁあ!!!!」

 

 ピシッと嫌な音が耳を劈く。ある意味で、永遠亭ぶりの物理的死を体験している。

 

「しんじゃうしんじゃうから!!!! おれだってしおんがいるからってことわったけどむりだったんだもん!!!! あいしているひとがいるからってかんべんしてくださいって!!!!」

 

 後頭部に強い衝撃。

 叩きつけられたと分かったのは、馬乗りになり顔面を押さえ付けたままの紫苑が顔を赤らめていたのが、指の隙間から見えたから。

 

 遠くか、はたまた近くか分からない場所から言い争うような声が聞こえたのを最後に、俺の意識はブラックアウトした。

 

 

 恥ずかしがるタイミングも場所も意味が分からないけど、いきていられれば、いい、な、ぁ…………

 

 

 

 目が覚めた。見覚えのあるようなないようなそんな場所。和室。部屋の隅にこれでもかと本が積み上げられているのを見つけ、なんとなく今いる場所がどこだか思い至る。

 未だに痛む頭を押さえ……包帯巻いてあるのに血ぃでてらぁ。色々申し訳ないが、恩人に当たる相手の家を汚すわけにもいくまいて。

 徐々に湿り気が増している後頭部を抑えながら、いるであろう人物の名を呼んだ。

 

「てんちょー、てんちょー?」

 

 呼ぶ声に気が付いたのか、隣の部屋から足音が二つ。扉が開き見知った顔が二つ、足を止めて佇んでいた。

 

「あ、すんません。包帯の変えとかってあります?」

「あるにはあるが、なぜ君は包帯を外そうとしているんだい??」

「傷口が開いたのか血が滲んできてまして、頭なのもあって結構どばどば出てきちゃいまして。布面積を増やすために致し方なくデスネ」

「わ、わたしのせいでまつりが」

「紫苑はトリップする前にこっちを手伝いなさいな。この程度で死んでたら俺は一体何回死んでんだって話ですよ」

「本当に、なんであの出血量で死んでいないのかが私にはさっぱりだよ」

「慣れ……ですかねぇ……」

「馬鹿なことを言うだけの口が残っているのはいいことだ。替えの包帯を持ってくることにしよう」

 

 まあ、本気で答えるなら八雲としてそれなりに動いているからですかねぇ。とは言えるはずもなく、小鈴店長は部屋の奥へと戻っていった。

 にしても止まらんな、包帯で抑え込んでいるから吹き出したりはしてないけど。包帯が意味をなしてないぞ。

 

「紫苑、ちょっと服脱ぐから手伝ってって、いつまで俯いてんのよアンタ……」

「…………」

「あのねぇ……悪いのは俺なの。お前は適当にふんぞり返って自業自得なんだからプンプンッとか言ってればいいんだよ」

「言えるわけ!! ないでしょ……そんなこと……」

 

 俯いたまま顔を振る紫苑。どうしたもんかと唸る俺。さりげなく包帯を置いて我先にと退散する店長。

 あの人、目線を合わせる事すらしなかったぞ……少しくらい可愛い店員の為に気を利かせてくれてもいいんじゃないんですかねぇ。

 どうしたもんか、取り敢えず包帯を替えるか。流石にこのままじゃマズいし。

 遠くにあった包帯を手繰り寄せ、俯き布団を握る紫苑をよそにいそいそと変えていく。片手だとやりにくいです誰か手伝ってくれないかなー……チラチラ。

 なんて一人もんもんとしていると、俯いた紫苑がポツリポツリと語りだした。手伝っては貰えないようで茉裏くんは悲しいです。

 

「……私は、茉裏の力になりたかった。ずっと、ずっと独りだった私を、救ってくれたから。無視されなかった、話し相手になってほしいって言われて嬉しかった。

 茉裏が、勝手に命を懸けて死にかけた時、とっても怖かった。また独りになるんじゃないのかって。この人がいなくなったら、私は何の為に生きて行けばいいんだろうって。

 だから、強くなった。自分の力を抑えられるように、少しでも貴方の力になれるために。

 茉裏の隣に自信をもって立てる様にって。一緒に歩いて進める様にって。

 迷惑なんてかけるつもりなかった!! 茉裏が連れていかれた時も、さっきの時も、迷惑なんてかけるつもりはなかったんだよ……? 

 でも、裏が他の誰かと仲良くしているだけで、モヤモヤってなる……。

 抑えが利かなくなって、他の誰かに取られるくらいなら壊しちゃえばいいって…………抑えきれなくなって…………。

 こんなことなら、あの日、死んでたらよかった……」

「それだけは言っちゃダメだろなあおい」

 

 紫苑の話を聞きながら、どうにかこうにか包帯を巻き終える。しかして、手持ち無沙汰になった手に再び仕事が回ってきた。

 俯いた紫苑の頬を右手で掴み、左手の親指で眉間をぐりぐりする。

 

「死んでたらよかったは、流石に馬鹿にしすぎだろ俺のこと。え、あれか? 俺の行動は全部無断でしたお疲れ様ーWWWって言いたいのか? ふざけんじゃねえよ。ただでさえ食うもん一つにすら困ってた頃にお前を拾って、ここまで一緒に頑張ってきて、俺が無茶したら紫苑がキレて、紫苑が暴走したら俺が止めに入って…………そうやって、なんだかんだ一緒にやってきたのに、馬鹿にすんのも大概にしろやマジで。

 俺はお前を拾って、一緒に暮らして後悔したことなんて一度もない。あるとしても俺自身の無鉄砲さに嫌気が差してたぐらいさ。いつかお前に愛想付かされるんじゃないかって。

 あーもう、くそっ、なんて言えばいいんだ学がないのが嫌になってくるなマジで。

 こちとらタダでさえ両親と死別じゃねぇえけど、別れてんだ。これ以上、俺を独りにしないでくれ、簡単に、死んでたらよかったなんて、言わないでくれよ…………たのむから」

 

 お互いに何を言えばいいのか、何を伝えればいいのか分からない。

 けれど、確かに伝わるのは、相手を想う気持ち。

 お互いに肩を寄せ、特に何かを話すわけでもなく時間が過ぎていく。お互いに声が震えていたのはきっと勘違いなんかじゃなかった。

 

 

 それから、しばらくして、鈴の音と共におれは鈴奈庵を後にする。

 大丈夫だから、安心して待っていてくれと。今度は落ち着いて、説教聞くからさ。

 

 夜の帳は下りていた。

 




お読みいただきありがとうございました。

ま、仕事は空気とか関係なしに来るものですから(´・ω・`)

では、また次回~
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