れっみりあちゃーんきゅうけつきにしておっくれ~~~
「顔を合わせて早々に考えることがそれでいいのか?」
「なんで僕の周りには人の心を読み取れる存在がぽんぽん現れるんですかね? 紫様以外からも心の平穏を奪われたらもう、人間不信どころの騒ぎじゃなくなっちまうぜ?」
「私含めて二人なのだろう? それだけで済んでいるのだからいいじゃないか」
「心を読める奴が二人もいる時点でそれだけで済んでるとは形容しねぇんだよアホンダラ」
それに、その力がメインの奴だっているんだからなやめてやれ?
「それで? 吸血鬼になりたいと?」
「あー、まあ、手っ取り早いのはそれだから、どんな感じなのか聞きに来た感じっすかね」
「どんな感じ……どんな感じなのだろうな? 人間ではない私には皆目検討もつかん」
レミリアの手で弄ばれていたティーカップが音を立て砕け散る。
中に入っていた真紅の紅茶が、レミリアの部屋に敷かれた真っ赤な絨毯に黒い染みを作った。
「人間は脆い。その脆い人間が私と同程度の固さになる。私からすれば、ただそれだけの事だ。基準が違う、故に、私には想像も出来ん。貴様とて、何故人間として生きているのか問われても、回答に困るだろう?」
「まあ、確かに。人間だからとしか言いようがないわな」
「だろう? 客観的に見れば嬉しそうにしている奴が多い気もするが、真でどう感じているのかなんて私には理解できん。人間から吸血鬼に変わった奴の気持ちなんてもってのほかだ。それとも……いまここでその体験を目にすれば、貴様のその渇望も潤うのかな?」
「と、いうと?」
「いるだろう? いまここに一人」
そういって指差したのは入口に控えていた一人のメイド。
何故か俺が名付け親になってしまっている十六夜咲夜だ。殆ど会話をしたことがない。
「それも人間に変わりはない。もう少し成熟してからと思っていたが、たいして変わるものでもあるまいし、いまここでやってしまおうか」
「正直見たい気持ちの方が圧倒的に強いんだけど見たらなんか色んな意味で引き戻れなさそうだし遠慮するわ」
目をキラキラさせ待っていましたとでも言いたげな顔で口元が緩んでいた十六夜咲夜さんの顔がスンッと無表情になる。目にハイライトが入っていないですよコワい。
「そうか、それは実に残念だ」
「心にも思っていないことを平然と言える度量があるのはよぉーくッ分かったわ」
「そういうなマツリ。そもそもとして私は貴様を眷属にする気はもうない」
「だから、眷属になった奴らの心情を知ったところでどうにもならないと」
誤解が残っていそうだが、概ねその通りだとレミリアはいつの間にか元通りになっていたティーカップに口を付けた。
にしても誤解とな?
「誤解、と言うべきか……。あるいは、畏怖というべきか……」
「畏怖って、なにが?」
「貴様……八雲のどちらかと寝ただろう? 流石の私とて、あの二人から唾を付けられている男を手駒にしようとは思えん」
…………え?
「いやいやいやまてまてまて何で知ってるん????? え? 噂でも広がってるの?? てか噂にしないといけないレベルの事でござったか!?!?」
「うるさいぞ人間。それだけ臭いを放っておきながら自分でも気が付いていなかったのか」
「え、俺臭い? マ?? もう二日三日は過ぎてんだけどえ臭いマジ??」
「ああ、臭い。あの女の臭いがずっと鼻に纏わりついてきてるわ。ただ、貴様が思っている臭いではない。分かりやすく言うのであれば力の残滓みたいなものだ。別に体臭などの話ではない。妖精や人里の大衆程度では判別はできないものだ」
「あ、そうなのね。それならよかt……いや良くなくない??? それ結構な、えっ」
「貴様がここに来るまでに誰に遭遇したかは知らないが、少なくとも屋敷の住人達には既にバレているだろうな。メイド妖精の中でも、勘の良い奴は気付いている事だろう。かなり強烈なマーキングのようだからな。屋敷の結界を維持しているパチェと門先で合っている筈の美鈴は気が付いていないという事はまずない」
サラッと言ってのけた事実に頭を抱える。え、じゃあなにか? 俺はいままで紫様と床を一緒にしたことを公言しながら歩いていたという事になるのか? 地獄かな?
「ち、ちなみに、なんですけどぉ……それを消せたりとか、はぁ~」
「できない、したくないからこそ貴様を眷属にしたくないと言ったのだろう?」
でっすよねぇ!! 俺覚えてるもん!! むかしコイツ俺のこと眷属にしてやろうかとか言ってたもん!! 俺が断っただけで言ってたもん!!
はぁ……もういい、いやよくないけど、もういい。んで、これってどれくらいで消える……分からない、っと…………無期限、の可能性も、ある…………スゥ──―
「もうお嫁にいけないッ!!」
「せめて庭で遊ばせている貧乏神は連れて行ってくれよ?」
「ひどいわッ!! わたしはこれから隣に女を連れて、行く人々に【あ、コイツ別の女とヤってるな】って思われながら生きて行かないと行けないのよ!! もう少し優しくしてくれてもいいじゃない!!」
「曲がりなりにも、貴様を蒸発させられる相手に傲岸不遜な態度を取れる時点で優しくもなにもないだろうに」
「それはそう」
レミリアの本気のデコピンで消し飛ばされると思うんもん俺。
まあ、今後はそれを込みで気を付けて誰かれ接していくしかないかぁ。素直にいやだなぁ。
「さて、話を進めようか」
「もうちょい感傷に浸らせてもらえませんかね? あ、だめ? うっす」
レミリアの指先にいっそ神々しさすら感じられる赤黒い針が浮かぶ。一瞬にして背中がじっとりと滲みだした。
ふざけすぎた。なんだかんだと乗ってくれるが、指先の動き一つで俺くらいなら消し飛ばせる相手だ。警戒して損はない。いや、間違いなく俺が悪いんだけどねうん。
んで、話を進めるって、他に何かあったっけ?
「あるだろう? どうして急に吸血鬼に興味を持った」
「あー……言ってなかったっけ?」
「私が聞き逃していなければ、ないな」
あー、開口一番に心を読まれたから言い忘れてたか。
いや、でも、理由ってもあれよ? くっそくだらんよ? いや、死活問題といえばそうなんだけど、内容自体はくだらないというか……。
「あれっすな、単刀直入にいうなら手っ取り早く強くなれるから。だな」
「本当にくだらないな」
「だから言ったのに……。八つ当たり気味にその赤いのひゅんひゅん俺の周り飛ばすの辞めてもろて。もう少し詳しく言うなら、寿命を延ばしたいんだよ。あと、再生能力的なのも出来れば。んで、そうなったときに、真っ先に思いついたのがオタクの十六夜咲夜だったわけ」
親指で後ろを指さす。流石に俺から指名を受けるとは思っていなかったのか、きょとんと自分自身を指さし首をかしげていた。
「ほら、強大な力にはそれ相応のうんぬんかんぬん言ってたじゃん? じゃー取り敢えず、って感じ。んで、少なくとも吸血鬼の眷属ないし、吸血鬼になれれば寿命なり伸びるんじゃねって」
「なるほどな。確かに十六夜咲夜の寿命は伸ばしてはいる。だが、それは十六夜咲夜の力もあってこそだ。私が十六夜咲夜の運命を視て、十六夜咲夜の力でその運命を切除する」
「ん? 運命を切除?」
「時間停止だと本人は思っていたようだが、本質は違う。自身の望む形に運命を切り取り、変質させる。前に話しただろう? 運命とは川のようなものが幾つにも交わっていると。十六夜咲夜は、それを思い通りに操作できる。自身限定とはいえ、その認識を拡大させれば屋敷内であったり、対峙している誰かの運命も相対的に十六夜咲夜の運命に引きずり込まれている。時間が止まった中で行動しているように感じるのは、本人が最も認識しやすい形に動いているからだろう。そして、代わりに支払われているものが、寿命」
「切除された先の運命、未来って事か」
「そういうことになる。自身を中心に集まってくる川の流れ、それを自ら断ち切っているようなもの」
「供給源がなくなるのか」
「ああ。そこで、私が極力必要のない運命へと導いている。数こそ増やすことは出来ないがな。能力的な強さで言えば、私よりも圧倒的に強力なものだ」
だから、最終的には眷属にする。私よりも早死にはするだろうが、そこらの人間よりは数百年は長く生きるだろうよ。そう締め、彼女は口を閉じた。
色々驚き桃の木なことだらけだが、必要な情報としては、眷属になったところで今とたいして変わらないということ。
あと、後ろで少し誇らしげに胸を張っている十六夜咲夜さんの力がやべーって事。
暇つぶしになにか付き合えと、テーブルの上にカードが広げられる。
なにすんの? ポーカー? いいけど、ルールぐらいしか知らないからな俺。
「そもそも、貴様が欲しているものも、アイツに頼れば一発だろう」
「そうかもしれないけどさー、素直に頼るのもなんか違うっていうか……」
「人間とはめんどくさいものだな」
「本当に、めんどくさいよ人間は。俺も素直に頼れるだけ素直ならねぇ」
何度か手札を交換し、出来たペアを公開する。
レミリアの手はスペードのストレートフラッシュ。
俺の手はワンペア。
「なんにもかんにも、足りてねぇもんだなぁ」
せめて、目の前の奴の鼻を明かしてやるぐらいの実力はねぇえとお話になんない、か。
めんどくさい人間なりに意地汚く頑張ってみるしかないのかねぇ。
「ッし!! 、もういっちょ!!」
お読みいただきありがとうございます。
久しぶりのレミリアたん十六夜咲夜を添えて。
次も久しぶりの方が出る予定ですわよ!!
では、また(´・ω・`)
ばいちゃ~(∩´∀`)∩