糸の先に繋がれた人形のお話   作:ちゃるもん

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はろはろー
ようやくここまで来たわーって感じだわー


第46話 んじゃ、行ってくる

 時刻は午後を回り昼飯時。自宅にて、装備品もろもろを確認していた。

 とはいっても愛銃の点検程度なのだけれど。

 

 さて、銃の点検をしながら少しばかり情報を整理しよう。

 

 まず、二日前、博麗神社近辺に間欠泉が湧く。その噂は一気に広がった。あれだけド派手に出てたらそりゃそうかって感じだけど。ただ、二日経った今、それ以外の情報は出回っていない。

 季節は秋終わり、東方projectの世界で間欠泉と言えばとある一つの異変。旧地獄からのSOS、東方地霊殿が上げられる。

 しかし、相も変わらずと言うべきか、発生時期はズレている。ゲームの世界であれば、地霊殿編が始まるのは冬の真っただ中だったはずだ。しかし、今は冬とは言え雪も降っていない冬の初め立冬。

 それらを鑑みると、本当に博麗神社に温泉が湧いただけなのかもしれない。

 

 しかし、自体が動いたのは今日の午前。その間欠泉を通り異形の存在が確認された。その多くは無害な人魂であり、放っておいてもそのうち帰っていくため問題はない。が、その数が多すぎた。ただでさえ、地上では見ることのない奴等が出てきているのに、数百にも及ぶ人魂が間欠泉を出たり入ったり。たまーにふら~っと人里に降りてきては、里の外の連中に取り憑いては暴れだす始末。

 正真正銘地霊殿編が始まった瞬間だった。

 

 弾はFULLの15発とマガジンが1。あんまり貰えないのよこれ。

 

 博麗の巫女さんと普通の魔法使いさんは既に出発しているか、今出ているってところだろうか。サポートとして、八雲紫とアリス・マーガトロイドが地上で待機。ここからもしかしたら増えるかも知れない。ゲームだと、加えて射命丸文、河城にとり、パチュリー・ノーレッジ、伊吹萃香の四人がサポートとして付いている。

 まあ、こっちの世界だと紫様一人で本来なら事足りるはずなので大事にはならないだろう。

 え? なんでそんなに詳しいのかって? だって、萃香と仲いいから勝ってにべらべら喋ってるから……いいかなって。

 

 ただ、伊吹萃香といえど、いや、伊吹萃香だからこそ、その間欠泉の先には行きたくないらしい。旧地獄になにか思い入れでもって思ったけど、普通に考えて、そりが合わねぇって別れた相手に大手振りながら会いには行けないわな。

 こっちが気にしてなくても、向こうが気にしてるパターンだってある訳だし。

 だから、何時ものごとく紫苑の事を任せることにした。なお、現在進行形で部屋の隅っこで拗ねている。

 

「実際危ない目にあうかもわからないんだから、大目に見てくれてもいいんじゃないかなぁ」

「うっさいばかあっちいけ」

「それで死にかけたり、外の世界に飛ばされたりした奴が言うと説得力皆無だねェ」

 

 にまにまと酒を煽り、足蹴にされている俺を笑ってみているクソガキの言葉に何も言い返せない。事実だからしょうがないね。

 実際死にかけてるというか、死んだも同然の状況に追い込まれてもいる。外の世界に送り出されて、最悪帰ってこられなかった可能性も全然あった。

 今回の地霊殿、場所が場所なだけあって、危険度で言えばいままでで一番高い。

 なぜか? 単純に考えて核融合出来る奴が暴走してるんだからそりゃぁ危険でしょっ、ていうね。

 

 地霊殿の異変の全容。それは、守矢一派の旧地獄進行によるもの。その際にとある一羽の地獄鴉、霊烏路空に導きの神であり、太陽神の御使いとも言われる八咫烏の力が宿った。宿らせられたとも言えるが、むしろ宿らせたが正しいのだが。

 しかし、地獄のとはいえ結局は一獣、神の力を御しきることは出来ずに暴走。親友である火焔猫燐が地上に助けを求めた。

 

 要するに、また守矢か案件。

 

 地霊殿の異変の全容が今述べたものと全く同じかは分からないし、流石に全部が全部完璧に覚えてるわけでもないので実際のものとしても記憶に齟齬は存在しているだろう。

 それに、守矢も幻想郷のルールだったり、八雲紫の存在を知らないわけがないので無暗に秩序を乱す行動をするとは思えない。

 なので、考えられるものとしては三つほど。

 一つ、八雲紫からそとの世界で発達している技術、つまりは電気の供給ラインを整えるよう言われた。決行するも、霊烏路空が暴走。

 二つ、電気の無い生活を嫌い、発電所を設立したかった。が、霊烏路空が暴走してしまい今に至る。つまり、想定外の出来事である可能性。

 三つ、どこぞの緑巫女の暴走第二弾。

 

 ………………流石に一か二のどちらかだろう。三つ目だと男女平等パンチでは済まない気がする。

 

 まあ、大雑把な全容としてはこんな感じになる。そして、度々出てきている名前、霊烏路空がこの異変の原因の一人。彼女は、先に上げた通り、守矢関係でその身に八咫烏の力を宿した地獄鴉。使う力は核融合。

 核分裂ほどの危険性はないとされているとかなんかではあるが、ないわけではない。専門家ではないから詳しくは知らないけど、多分そう。素人目からすると核分裂も核融合も大して変わらんのよ。

 で、そんなところに行くって話をしてないんですけど行くこと自体は早々にバレてたみたいでして…………あとは根掘り葉掘りごぜぇますはい。

 

「行かなきゃいいじゃないか。別に紫にとやかく言われてるわけではないんだろう?」

「そうだそうだー!! 少しはこ、こいびとうのことも考えろー!!」

「それはそうなんだけどぉ……。てか、今更恋人呼びぐらいでつまりなさんなよ」

 

 実際、異変の中心に向かっているのは全て俺の独断。行く必要があるのかと問われれば、まあ、まずないよね。

 ただ、今回はっていうかこれからって言うか…………ッちょっと行く理由が出来たんっすよ…………ねぇ。

 

 いや、そのぅ…………自己満足って言われてら否定できないんですけどぉ、まあ、一種の線引きと言いますかぁ。

 

「じれったい」

 

 うい。まあ、はっきり申し上げますと、紫様の式になるためっすね。

 

「なんだそれ。あんだけべったりなら頼んだら二つ返事だろうに」

 

 うん。俺もそう思う。けど、普通に考えて八雲紫の式が一般人って駄目じゃない? 

 俺が一般人がどうかって聞かれたら確かに微妙なライン打倒は思うよ? そうじゃなくて、下級妖怪に真っ向からあたって勝てない雑魚が八雲紫の式になれるだけの価値があるのかってこと。

 そりゃあ、人里の人間よりは強い自信はある。ちまちまとだけど修行だってしてきたし、それなりに修羅場も超えてきた。

 そんな中で俺が出来た事ってなに? 舌戦で相手を平伏させた? 知恵や力で屈服させた? ないない出来るはずがない。付け焼刃の弁舌力にすこーし戦える程度。結局戦力としてはいつでも切り捨てられる駒から脱していないのよ俺は。

 横のつながりはそれなりにあるから、一概にそうとは言えないかもしれんが。それを差し引いても精々糸に繋がれてない人形レベルよな。自分からも、人からも動かしてもらえない。

 

「だから、ここらで一発。安直だし、結局紫様がいるから一命は取り留めるだろうなんて甘い考えがあるのも否定はしない。でもま、やれることやれば糸に繋がれた人形程度にはなれるのかなって。そしたら、正式に紫様の式にしてもらって…………寿命とかその辺の厄介事からは解放されるのかなって。一人にはできんだろこの厄介娘」

「まつり…………嬉しいけど厄介娘ってのは否定させて」

「それはそう。だったら、っちゃっちゃといって帰って来な。その間は私がこの厄介娘の相手をしといてやる」

 

 えー!! っと大声を上げている紫苑。いやアンタ…………どうあがいても否定はできないでしょうに。

 

「まあ、そーいう訳だ。だからさ、留守の間は頼んだぜ? もしかしたら、しばらく帰ってこられなくなるかもしれんし」

「…………付いていっちゃダメ?」

「ダメとは言わんが、いざ前に出られたら俺のやることなくなるし。そもそもとして、十中八九ズタボロにされる俺を見てて手を出さないなんて出来るか?」

「できる!!」

「無理だろ。俺が無理なんだから。ま、諦めて家を守ってなさい。茉裏くんは意地でも一人で行きますからね」

 

 一人(紫様とかいう最強の保護者付き)と、少し締まらない感じではあるものの、要は腕試しみたいなもの。ゲームで言うなら……強化クエストとか限界突破、的な? 

 

 後ろでブーブー恨みつらみを投げかけてくる可愛い奴を放置して、簡単な荷物を纏め上げる。言っても、水とロープ、あと何時ぞやから余ってる謎のカロリーメイトのようなもの。愛銃二丁を腰に巻いたホルスターに。今回は戦いに行くので、服の下には隠さない。

 

「んじゃ、行ってくる」

「てらー」

「…………いってらっしゃい」

 

 気の抜けた声と未だ不服そうな声を聴き、家を出る。足周りに霊力を纏わせ木の上まで。本日は快晴なり、雪の代わりにふよふよ白っぽいモノが漂っていること以外はなんらいつも通り。

 足場にしている木を思いっ切り蹴とばして、目指すは博麗神社の少し先。一度の踏み込みで住居としてる森を抜ける。地面に着く瞬間、もう一度強化。今度は地面を踏み込み加速。人里や紅魔館に向かうときにはわざわざこんな事はしないが、ウォーミングアップも兼ねて出し惜しみはしない。

 霊力の総量は変わらないが、使い方ひとつで強度も燃費も変わるというのだから相変わらずの不思議パワーである。使ってる奴が何言ってんだって感じだけど。

 もこたんがブチギレた時にやった霊力ブレードとか、もっと細く練り上げれば目に見えない細さで簡単に木もぶった切れるヤベェ代物だし。なのに燃費はいいって言うね。熟練度って大事なんやなぁって。

 人里の上を飛び越し少しばかり方向転換。妖怪の山の方角へ。

 間欠泉の場所は博麗神社と妖怪の山の間あたり。あくまで博麗神社の方が近いってだけ。

 そして、何度かぴょんぴょんしてると見えてきた見えてきた。

 

 温泉の湯けむりと、湯を吐き出してる間欠泉。今は落ち着いて、出てくる量も少し。時折ぶわぁー!! っと出るみたいだけど。だが、本命はこっちじゃなく、そこからまた少し離れた大穴。間欠泉とは違い、温泉が湧いているわけでもない、底が見えない大穴。人魂や異形のモノが出てくるわけでもなく、ただの穴。実際上から見てみるとわりと大きい。家一軒程度だったら余裕で落ちるレベルの大きさ。

 少し軌道を調節しその手前に降り立つ。一応と思って持ってきたが、ロープでどうこうできる深さではないことを確認。色々認識が甘かったなぁ…………どうしよ。

 

 勿論ワタクシは飛べませんので、えーロッククライミングはじまるー? 

 

 なんて、準備運動をして深く考えず飛び降りる。

 時折壁際を掴みながら、速度を調整。こうして、俺の旧地獄探索はゆるーく始まったのだ。

 




お読みいただきありがとうございます。

んじゃま、ゆるーく続けていきましょうかね。

では、また来月に
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