空が掌に収まるほど小さくなったの見て、この命綱なしのロッククライミングを終えたことを実感する。
深さは………結構ある、多分500mぐらい? 知らんけど。
んで、やっぱ熱い。想像よりは涼しいけど、動いてなくてもじんわりと汗をかく程度には。
そして、道は一本大きなのと、小さなのがチラホラと。大きなのが旧地獄に続く道で、小さいのが妖怪たちの住処だったりするのだろうか。
そして、その大きな道からはドンパチやってる音がもう、響いてきてるわけですねぇ。血気盛んかぁ??
その争いから逃げてきた妖怪たちは、人間である俺に気付いても我関せずと小さい穴へと入っていく。なるほど、避難所としても機能しているのか。
ま、その辺りにはまったく興味がないので、さくさく進んでいくとしよう。
大きな道を進んでいくと、そこは旧地獄街道そして旧都が、まさしく悲惨と言うべき姿で佇んでいた。
繫華街と思わしき場所でド派手に輝くごんぶとびーむが変な曲がり方をしていたり、建物が丸ごと投げ飛ばされていたりすることさえ除けば綺麗な場所である。うん。
しかして、その中央に繫華街には似つかわしくない洋風の建物。地霊殿。そこら一帯だけ被害が一切見受けられないのは、そこの主の能力なのか別の何かなのか。
何はともあれ行ってみない事には始まらない。
ささっとお邪魔しますよー。
「…………いや、そんな軽いノリでお邪魔されても困るのですが」
現在地霊殿入口。俺の前にはロリっ子が立っている。言わずと知れた幻想郷ロリっ子代表、古明地さとりその人。小五ロリですよ皆さん!!
「よく分かりませんが、とにかく貶されている事だけは分かりました」
あ、あんまり心読まない方がいいと思いますよ?
「え? なにいっやあ、ぁあああア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!」
「言わんこっちゃない……ってか、好きで覗いてる訳でもないんだっけか。紫様も、いい加減にしないと一緒に寝てあげませんからね」
目の前で頭を押え蹲る小五……じゃなくて、古明地さとりの背中を擦る。
日頃から紫様とかいう、勝手に心を読んでくるような人を相手にしているのだから、今更心読まれても何も思わない。
むしろ、古明地さとりの場合は妖怪としての性質なのだからマシである。
ただ、まあ、独占欲マシマシの紫様からしてみれば何処ぞの馬の骨とも分からんやつがいきなり割って入ってきていい気持ちでは無いのだろう。
そもそも人の心を常に見て欲しくは無いのだが。
さて、すこし良くなってきたのか古明地さとりの呼吸も安定してきた。
いやぁ……今の一瞬で一体なにをされたのだろう。知りたくもありませんね。
「そろそろ大丈夫かい? 古明地さとりさんや」
「………え、ええ。お見苦しい所をお見せしました」
「いやいや、しょうがないって。相手が悪いし、初対面でそれを見抜けってのも無理あるし………ま、今回は天変地異にあったとでも思って水に流してくれ」
不可抗力なんだろうけど自業自得なのは違いねぇし。ぼくちんわるくない。
「そうはっきりとされると私としては微妙に納得しづらいですが、事実ですからね。私が大人になりましょう」
ロリっ子が何か言ってらぁ。俺の脇腹ぐらいの身長の小娘が意地を張っても怖くとも何ともないんだよなぁ。
でも、そう考えるとロリっ子共の中では比較的大きめなのか? どっちにしろ小さい事には変わりないか。
「さっきからちいさいやら小娘やら………曲がりなりにも妖怪相手によくそんな事が」
「いやだって、アンタよりヤベェ奴を散々相手してきてるし。悟り妖怪の、相手の心を読む力を完封できる立ち位置にいるってなると………ねえ?」
うぎぎとでも聞こえてきそうな表情と歯ぎしりに、優越の顔を浮かべる。
「さて、気を取り直して、茉裏だ。八雲紫の下にて色々やってる。その感じだと思考は読めるみたいだけど、あまり深層まで見ようとするのはオススメしないぜ」
「ええ、そのようですのでやめておきましょう。古明地さとり、この地霊殿の管理をしています。お帰りは回れ右ですよ?」
古明地さとり。さとり妖怪、あるいは覚。対象物の胸の内を見ることが出来る妖怪。実際の妖怪も、猿に近い、人間のような見た目をしている。特徴的なのは第三の目を持っていること。よくあるのは額にもう一つ目があるものだが、いま目の前にいる彼女は触手のようなものに丸い眼球を持っている。サードアイって呼ばれる奴だ。
薄紫の髪に桃色と青を基調とした少しフリル付きの服装。髪はぼさついているのか、この蒸し暑さのせいで髪が痛んでいるのか。
「あっはっはっは!! そんなに邪険にしなくても、直ぐに出ていくから安心してくれ。俺の目的はここにはない。ただ、その目的が取り込み中のようなんでな、それならって挨拶に来ただけだよ」
「確かに、派手にやってるわね」
そうだ、この辺りだけ攻撃が届いてないようだけどなんでなん?
「また急に、思考だけで会話を始めましたね。別に構いませんが」
心を読まれるって分かってる前提で、本当に大事なところは紫様が隠してくれてるっぽいし。こっちの方が楽っちゃあ楽なだけ。特に他意はない。
あと、もう少し加えるなら、口の中が乾燥するのが嫌だ。あっついねんここ。
建物の中なら熱波もないだろうけど、見ず知らずの人間を屋敷に招き入れるほど警戒心がないわけでもないだろうし、なら喋らなくてもいいかなって。それに、そちらさんは緊急時で正直切羽詰まってるんっしょ? なら、無駄な心配増やすのもなーって。
「親切なのか不躾なのかわかりませんね。緊急時だと分かっていて、手を貸しに来たわけでもなく、ただ無駄話をする為だけに家主に会いに来る時点でどうかと思うわ」
「それはすまん。ただ、その心配事はもう少しすれば解決されるだろうし、間接的に手助けする形になるから許してニャン」
「きもッ」
シンプルな罵倒は傷つくからやめてください。
で、結局なんでなん?
「攻撃が地霊殿に来ない理由、でしたか。………覚妖怪の力の本質、とでもいっておきましょう。心を読む、つまりは意識を辿る力。この第三の目を閉じた時、私たちは相手の心を読む力を失う代わりに、辺り一帯に無意識を振り撒く力を得られる。
その光景を目の当たりにした時、私はこの力の本質を理解したわ。心を読む力はその一端。私たちの本質は、無意識と意識の狭間とも言うべき本能を読み取る力。あるいは、それを強制させる力。
ここは危険だから避けよう、なんとなく違う道を進もう、そういったものを強制させる」
つまり、ここらを攻撃するのはやめておこうって思わせることで、攻撃が届いてない。って感じ?
「概ねその通りです。まあ、完全ではないですから。こうして、敵意もなしにやって来る存在を遠ざけたり、内側からの攻撃には弱かったりするわ」
なるほどなぁ。
じゃあ、今から町がもっと悲惨になる可能性があっても特に気にする必要はないってことか。
「いや、それは気にしてほしいのだけれど」
「それが一番ネックだったからさぁ、それが分かればこっちのもんよ。じゃあ、急に邪魔して悪かったな。もうちょっとしたらアンタの心配事も解決するだろうから、頑張れよ」
「はぁ………程々に。復興の指揮を執るのは私なんですから」
あいあい。
さて、ドンパチしてた音は鳴りを潜め休戦中か勝敗が付いたのか。
ここからが、この異変においての大一番。気張っていこうか、茉裏くん。
お読みいただきありがとうございます。
仕事を辞める兼ね合いで、引っ越しやらでドタバタしております。
なので、来月、再来月と、少し投稿が遅れる可能性だったり、量が減ったりすると思います。
ですので、ゆっくり待っていてもらえればと思いますん(´・ω・`)
では、また来月お会いできるのを楽しみにしております。
ばいちゃ~