地霊殿を後に、旧地獄の繫華街を歩いている。
街は悲惨なもので、左を見渡せば焼け野原が広がり、右を向けば土台ごと建物が抉られたのかぽっかりと大穴が。
紅魔館の時もかなり悲惨な光景にはなっていたが、二日も経てば元通りになっていた。魔法使いさまさまで、パチュリー・ノーレッジが文句を言いながら直したらしい。
それに対して、この地底。少なくとも東方projectの世界においてそのような便利キャラがいた記憶がない。
しかし、代わりと言うべきか、鬼たちの仕事が総じて建築関係だったりする。らしい。土蜘蛛の方だったかもしれない。ともかく、建築家が多いイメージが個人的にあったりなかったり。
「まあ、でも俺には関係なし。結局他人が汗水流してるのを傍目から頑張ってんなぁって思う事しかしないのよ」
だから、この現状にも対して思うことはない。
「バックアップがあるとはいえ、相手はあの星熊勇儀。伊吹萃香と肩を並べる化物。人間には荷が重いのは分かり切ったこと。だから、これはちょーっと想定外」
トリップ状態と言うべきか、その半透明の横顔には何も映っていない。笑顔も、哀愁も、怒気も激発も。なにも、映っていない。
そして、近くには顔見知り以上友人以下とでも言うべき相手、霧雨魔理沙が困惑した表情で腰を抜かしていた。
勝てる見込みなんてないだろう。
何度も言うが、相手は星熊勇儀。鬼の四天王が一角。単純な力技だけなら、伊吹萃香すらも凌駕するとさえ言われている化物。勝てる方が可笑しいのだ。人として。
確かに、今回の俺の目的は実力を示すことで、手っ取り早く分かりやすく鬼の四天王である星熊勇儀に勝ち星を上げられればとは思っていた。少なくとも、自身を細分化できる萃香や多種多様な攻撃をしてくるレミリアよりは勝率は高いだろう。
力でごり押してくるのであれば、知恵知略でどうにかする。それすらも聞かない理性を持った化物よりはよっぽどやりやすい。
だが、それでも勝てる見込みなどないと断言できる。地霊殿に寄り道をして、わざわざ戦闘が終わったであろうタイミングを見計らって、多少なりとも消耗しているであろう所を、なんて浅はかな考えもあった。
「でも、辿り着いたさきで目的の相手が負けてるとか思わんじゃーん。蟻が像に勝てるとか思わんのよマジで。相手星熊勇儀だぞ? 鬼の四天王なのわかってる?」
像、星熊勇儀を片腕で壁にめり込ませている蟻、博麗霊夢の姿。軽いパニックを起こしながらも状況を整理するために思考を巡らせる。
星熊勇儀は……多分死んではない。と、思う。少なくとも、博麗霊夢はレミリア・スカーレットや紅美鈴に敗北している。星熊勇儀が彼女たち以上の存在であると断言はできないが、同格かそれ以上の存在。そして、それはたった数年の時間で埋められる差ではない。ましてや、星熊勇儀の土俵、怪力と言う点において博麗霊夢が星熊勇儀を壁にめり込ませるというのは不可能なのだ。
だが、現実としてそれが起きている。一体、どんなカラクリが………、いや、そうか、あったわ一つ。正真正銘のチート能力が。
まず、東方projectの世界において、各キャラクターたちは程度の能力というものを持っている。
程度の能力というのは、一つの能力に不特定多数の力が内蔵されているという暗示だと言われている。
例えば、レミリア・スカーレット。彼女の能力は【運命を操る程度の能力】
体術の師、紅美鈴なら【気を操る程度の能力】
我が主、八雲紫は【境界を操る程度の能力】
鬼の伊吹萃香なら【密と疎を操る程度の能力】
そして、今現在壁に押し付けられている星熊勇儀が【怪力乱神を持つ程度の能力】
この世界と東方projectの世界では大なり小なり違う部分はあるだろう。だが、大筋からは変わってはいない。
恐らく星熊勇儀の【怪力乱神を持つ程度の能力】も基本的な部分は似ているのだろう。怪力乱神、生物としての限界を凌駕した力を得られる能力。だとすれば、やはり博麗霊夢が星熊勇儀に怪力で勝つのは不可能だ。
博麗霊夢がその力を使っていないのであれば。
博麗霊夢の力、程度の能力は【空を飛ぶ程度の能力】
随分と弱っちそうな、シンプル過ぎる能力。だが、その根底は別にある。
空を飛ぶ、つまりは無重力。彼女にとって、圧力も、脅しも、地球の重力、つまりは法則さえも存在し得ないものとなる。
そして、それらを凝縮した博麗霊夢の技が『無想転生』
ありとあらゆるものから宙に浮き無敵となる技。正真正銘のチート能力。
はっきりと断言しよう。
今この場に彼女を止めることができる存在はいない。
そして、それは八雲紫も同様で負けはしないが勝てもしない。事実確認? 出来るわけない。ただの勘だよ。
八雲紫の能力は対象がいなければ意味をなさない。分かりやすく言えば、マイナスやプラスに対して絶大な力を持つのが八雲紫。対して博麗霊夢の力は0。常に0だから、何者にも干渉されない。
拙い説明で恐縮だが、打つ手なし……ってわけだ。
お読みいただきありがとうございます。
引越しでごたついているのだ、許せ(´・ω・`)
それじゃぁのー