糸の先に繋がれた人形のお話   作:ちゃるもん

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あ け お め (´ω`*)

いやー………去年までには終わらなかったね
もうちょっとだけ続きそうでゴンス


第51話 何年後の話になるのだろう

 ふと、目が覚める。森の中、どこか見覚えのあるその場所。いや、見覚えのあるなんて表現の仕方はきっと怒られてしまう。

 目を覚ました場所。そこは、この幻想郷の地に足を付けた時の最初の目的地。そして、俺の帰るべき場所。

 

 どこか、いつもより明るい気がするけど。見間違えるはずもない。

 体を見る。五体満足、俺の最後の記憶……こういうときって直前の記憶って忘れてるもんじゃないっすかね? 

 

 渾身の一撃は軽々と受け止められ、お返しとばかりに何度も何度も地面に叩きつけられた。最初の痛みは思い出しただけで全身を強張らせた。だが、それ以上に痛みが無くなっていく感覚にこそ恐怖を覚える。

 今まで味わってきたのは俗に言う一撃必殺だとか、精神攻撃に近い物が多かったからなぁ。死んでいくって感覚はああなんやろなぁ……知りたくなかった。

 

「はぁ……思い出しただけで気分が悪い……。まったく、なにが勝算アリだばっきゃろい。ズタボロもズタボロじゃねぇか」

 

 悪態を吐きながら、恐らくこの心象世界の中心へと向かう。

 もはや通り慣れた道を進むと当然の如く我が家が見えてくる。それ以上でもそれ以下でもない。八雲紫様お手製の結界に隙間風が愛おしいボロ小屋。俺一人じゃ限界があった修繕も、萃香が来てかなりまともになった。隙間風とはいっても風が強い日に感じる程度で、雨漏りも基本なし。最初の事の風が吹き抜けない場所や、雨漏りをしない場所を探さないといけない頃に比べると、まさしく雲泥の差と言えるだろう。

 

 さてと、扉を開けたらいったい誰がいるんじゃろな。まあ、無難に紫苑とか、なんだかんだの関係を持ってる萃香とか、両親とかか? 

 特に深く考えもせずすっと扉を開く。

 

「そこで私の名前が出てこないのは、従者としてどうなのかしら?」

 

 そしてすっと扉を閉めた。

 

 ……いや、まあ、出来ると思うし心の片隅には存在していたよ? 出会い方のアレでレミリアとかクソ烏とか巫女巫女ズとか紫様とかーみたいな? 

 で、これ一種の走馬灯的な感じだからさ、だと思っちゃってたからさ? あんな生々しく反応されるとは思わないじゃん? 

 それこそ、出会った時の状態がフラッシュバックとか、こっちの行動に関係ない言動されるとか、そういうのを想像してたわけよ。

 

「うじうじしてないで早く入って来なさい」

「あはいすいません」

 

 もはや条件反射である。俺は一生このお方には頭が上がらないんだろうなぁ。

 自分の家に失礼しますとなかなかに違和感ありまくりな事をしながら、家の中に上がる。いつも食卓として使用している質素なテーブルや、暖を取るための火鉢といったもの。食材を入れておく箱の中には雑多に野菜や干物が入れられており、その近くにはぬか漬けの壺。更にその隣には紫様から未だ定期的送られてくる保存食等が入った木箱が置かれている。洋服ダンスなんて洒落たものはなく、葛籠が数個。俺も紫苑も良く服が破れるので、替えの服と縫い合わせる為の布が入っている。

 改めて部屋を見回しても、かなり質素と呼べる生活空間ではないだろうか。

 今でこそ、里の手伝いや色んな所とのコネがあるからまともな生活が送れてはいるが、最初の頃はもう、まともに食べられるものもなかったのだから……いい生活になったなぁ。

 

 紫様に促されるまま、テーブルを挟んで対面に座る。椅子はないので正座だ。

 

「それで、紫様? なぜこのようなところに?」

「茉裏、あなたは死にました」

「そんなあっさり言うんですね。いや、まあ、なんとなく分かってましたけど」

「そ、分かっているのなら話は早いわ。貴方には今後、私の式として生活を続けて貰います」

「やっぱそうなりますよねぇ」

 

 予想通りというか、求めていた地位ではあるのだから不満はない。

 ただ、少し自分自身に釈然とはしていないのも事実だ。

 

「なにか不満でも?」

「心、読めるんですから、わざわざ言わせなくても分かりますよね?」

「あらやだ、こういったものは当人の口から聞くのが一番うれしいものじゃない」

 

 ね? と、かわいらしく微笑んで見せる。あと、あなたが微笑んでも可愛いというより妖艶なんで、今この場においては得物を見つけた蛇みたいっすよ。嫌いじゃないっすけど。

 

「はぁ……、まあ言ってもいいですけど、いや、うーん……なんだかなぁ。隠してるとかじゃないし、てか、何人にかは言ってるし今更だけど……、やっぱ恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよなぁ」

 

 チラッと紫様に視線を移しても、早く早くと急かすようにニコニコしているだけ。

 実際隠しているわけでもないので構わないのだが、こう、急かされるとなかなかにやりづらいものがある。

 

「まあ、あれっすよ。実力なり名声なりが伴って、伴ったうえで八雲藍や八雲紫という存在の隣に立ちたかった。ほんとうに、好意を寄せられて肉体の関係も持っちまった相手にこういうのは本当に申し訳ないんっすけど……俺の一番は紫苑です。それとは別に、紫様の事が一番ってのも事実です。肉体関係ってのも一つの理由ではありますけど、それでも、間違いなく俺の心には複数人考えるべき存在がいて、その中で常に心の中を揺蕩っているのがお二人なんですよねぇ。ほんっと、一夫多妻制が当たり前の世界に生れ落ちてたらどれだけ気が楽だったか。

 最初というか、ついさっきまでは……ほら、言いましたよね俺。この世界をゲーム、創作物として知っているって。だから、ふと思ったんですよ。見た目や恰好から、紫苑も紫様も萃香やレミリア、クソ烏に博麗霊夢、霧雨魔理沙、東風谷早苗、慧音先生とか小鈴店長……そういった側面を知っているがゆえに俺はそういう対象として見てしまっているんじゃないかなーって。ゲームの主要キャラたちだから。この想いは簡単なもので、だったら、ゲームで知っている、一番好きだったキャラクターに出会った時、俺は一目惚れでもするんじゃないかと。

 だって、それだったら、ある意味気が楽じゃないですか。この感情ってのは、作られたものだって言ってるようなもんなんですから。

 ま、結果は違いましたけど。古明地さとり……ゲームだと一番好きだったはず。推しキャラってやつですね。紫様が色々介入されていたみたいですけど、それを差し引いてもうんともすんとも心が動かなかった。

 ふぅ…………愛してますよ、紫様」

 

 ぼんっと、紫様の顔が爆発する。

 意外と初心っすねぇ。

 

「だから、最初に言った通り、実力なり名声なりってのものを身に付けたかった。叶わぬ夢でしたが。いやぁ…………さすがは博麗の巫女。強いっすわ」

「ンンッ、だとしても、彼女を瀕死にまで追い込んだのも事実。それだけでも、十分に誇るべき戦果であることに違いはありません。それに、あの子は転生状態。その状態を知らなかったわけではないのでしょう?」

「それはそうかもしれませんが…………どうせなら、勝ちたかったなぁって思うのが男心ってもんですし。なにより、俺の実力もまだまだだなぁって」

 

 そう、結局俺は最後の死力を持って自爆特攻まで仕掛けた状態で負けているのだ。瀕死と明確な死には埋められない間が空いている。埋めることのできない圧倒的実力と運が。

 

「戦いには運も関わってくるのは知ってるけど…………こうもはっきり付けられちゃいますとねぇ」

「運も実力のうち。貴方が私の下に来た時点で運は茉裏に味方しているように感じるけど……そうではないのでしょうね。でしたら、少し試してみましょうか」

 

 あらやだわ、話が転んで嫌な予感がびんびんしてきましたわ。話が飛び過ぎではなくて??? 

 

「幸い、茉裏を式にするまでにまだ時間はありますもの。貴方の言う実力、私の前で遺憾なく発揮してみてちょうだい」

 

 そう言って紫様はぱちりと扇を閉じた。それと同時に藍様が紫様の隣に立っていた。

 

「あの子の様子は?」

「治療も終え、容態も安定しております。問題ないかと」

 

 まって、ねえまって??? 

 

「そ、念のため橙を付けておきなさい。貴女にはしばらくやってもらわないといけない事があるから」

「かしこまりました」

 

 もしかしなくてもそういう流れになってます? 

 

「時間はたっぷりとあるもの」

「いや、だとしても実力差ってものもがあってですね?」

「星熊勇儀に挑もうとしていたのと対して変わらないでしょう? それにほら、藍に勝てたら貴方の方が式として優秀って言えるんじゃないかしら?」

 

 んなわけない。八雲紫の右腕が腕っぷしが強いだけで定まるわけがない。

 そもそも、星熊勇儀に挑むと言っても多少なりとも体力を消耗した後を狙っていたし、勝手に力技でしか挑んでこないと踏んだうえで、大妖怪としてならまだ勝ち目がなくもないと思って挑もうとしていたのだ。

 

「この空間はあくまで精神。死んでも死なないようにしてあげるから、主人を辱めた罰として、精々がんばりなさいな」

 

 そして、世界が変わる。場所は森、俺が初めてこの幻想郷に足を付けたその場所。

 紫様はお茶を啜りながら手を振っている。

 

「…………マジです?」

「どれ、久しぶりに手合わせといこうじゃないか、茉裏」

「…………マジです??」

「貴女の持っていた持ち物は一通り持たせておいたわ。運も実力のうち。そういうのであれば、そう悲観するものでもないでしょう?」

「……………………まじかぁ」

 

 そして、紫様が合図と言わんばかりに扇を閉じる。パチンッと小気味よい音が精神空間の森に響き渡り、俺の意識が作り出したのか鳥たちが一斉に飛び立った。

 いやはや、精神世界って嫌だね。だって、ある意味気絶したくてもできない。ましてや相手が相手だから紅魔異変や萃香の時みたいに降参もできない。

 

 やるしかない空間で、すっと離れていく己の体を見つめながら遠のかない意識の中、絶叫も出来ないまま、覚悟を決めるしかなかった。

 

 俺の頭は、八雲藍のたった一本の尻尾に跳ね飛ばされ、首から外れていた。

 噴き出る血が噴水の如く、彼女の尾を紅く湿らせる。

 

 時間はたっぷりとあるとは言っていた、死にもしないとも言っていた。

 ただ、もし仮に最強の九尾を跪かせることが出来るとして…………それは一体、何年後の話になるのだろう。

 




お読みいただきありがとうございました

怒涛の連戦………書ききれるのでしょうか
不安がこみ上げてきております。

新しい一年、風邪なりインフルなりと猛威をふるう時期でもありますので、皆さんお気を付けて。

それではまた次回~
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