糸の先に繋がれた人形のお話   作:ちゃるもん

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やあ、私だ。
一か月だから、書いてる実感が薄いけど文字数的にみると増えてるんだよなと感じている私です。

ただ、こっちのほうが書きやすい感じはするのでもう一時はこのままでいこうかなと。

では、どうぞ。


第7話 凡人は凡人らしくお利口に

 皆さんおはようございます。出勤三回目、今日も今日とて鈴奈庵は閑散としております。なにせこの店主客のことなんて考えちゃいない。ザ自己中なのだ。よくこんなんでやっていけるなと店主こと本居小鈴に聞いてみたところ……。

 

「珍しい本が多いからってお店にしたのは両親だからね。もともとはただの書庫だよ。いざとなれば寺子屋の手伝いや稗田家の伝手もある。そこまでお金に興味はないさ。私の最大の財産はココにあるからね」

 

 そんな落ち着いた幼女がいてたまるか、そして片付けろと頭をはたく。彼女にとって最大の財産らしいがこの程度であれば問題あるまい。

 しぶしぶといった感じで小鈴は積み重なった本を本棚へと押し込み始めた。ぎゅうぎゅうに押し込まれていく本たちをしり目に、掃除を再開させる。

 先ほども言った通り鈴奈庵の店主は商売にとんと興味がない。更に両親はすでに死んでいる。

 確か原作では両親は生きていたはずだが、こちらでは二人とも死んでいる。里の外に行ったっきり帰ってきていないらしい。

 

「伝手って言っても切れたら終わりじゃないっすか。大丈夫なんですそれ?」

「茉裏くんは外から来たと言っていたが、外の世界は人と人の関係がそんなに薄いのかい?」

「薄いですね」

「即答か。何とも寂しい世界なのだな外の世界は」

 

 即答したものの、あくまで幻想郷と比べた場合と付け加える。元の世界であっても人と人の繋がりが全くないわけではない。

 幻想郷の人里、千の住人ほぼすべてが全員顔見知り以上というのは元の世界では考えにくい。

 

「そうなのか。まあ私はまだ十五にもなっていないからな。愛嬌を振り撒けば食糧の一つや二つは貰える」

「絶対そーゆうタイプじゃねえだろあんた」

「ヒドイな君は。まあ、多少盛りはしたがあながち嘘ではないぞ。気まぐれに農作業を手伝えばきちんと見返りは貰える。そして、たかが餓鬼一人なんだそこまで食料も必要ない」

「そんなもんなんっすねー」

 

 後輩キャラのようになりながら返事を返す。そうしながら大掃除のアルバムを引き抜くように一冊の本を開き始めた駄目店主の頭をはたく。片付けんか。

 

「少しくらいいいではないか」

 

 ぶーぶーと抗議する小鈴店主を無視しつつ今の会話に思考を巡らせる。

 もし、小鈴店長の言っていることが事実であるならば農作業を手伝えば見返りが貰える。これは食料不足状態のわが身にとってはかなりおいしい話である。

 しかし、欠点として見ず知らずの人間を受け入れてもらえるかどうかということ。

 幻想郷の住人はほぼ全員が顔見知り以上の関係にある。その中に顔見知りですらない自分が唐突に手伝いに行っても受け入れてもらえる可能性は低いだろう。

 だが、この小鈴店長がいればその問題も解決する。彼女は人里の中でかなりの有名人の模様。恐らく本居小鈴を知らない者は居ないレベルだと推測できる。

 その分顔も広い。

 で、あれば。本居小鈴が安全だと判断した人間であればすんなり受け入れてもらえるのではなかろうか。

 

「なにやら悪い顔をしているがいたいけな少女に手を出すつもりじゃ」

「寝言は寝て言いやがりませ店長」

「そうは言うがそんなに年も離れていないだろう?」

「寝言は寝て言いやがりませ店長」

「身長差は五十近くあるが、たいして問題もあるまい」

「それが一番の問題だということに気づきやがりませ店長」

 

 とてとて、そんな擬音が聞こえそうな足取りで近づいてきた小鈴。並び立って改めて分かるが本当に小さい。せいぜい百二十かそこらだろう。

 茉裏の身長が百七十半ばなことからその身長差は五十近くある。目線的には茉裏の腰回りを常に小鈴は見ているわけだ。

 

「むう、背が低いというのはやはり魅力が低いのか」

「魅力が低いというか、この身長差で僕が捕まらないかが一番の不安と言いますか。それ以前に現状誰かと恋仲になる余裕も気もないと言いますか」

「そんなものか」

「そんなもんっすよ。てか、出会ってそう時間がたっていない相手を誘うのはどうなんっすか」

「私は外の知識が多いから分かるが、幻想郷で私の年で結婚するものは少なくはないぞ。多くもないがね。そして君が私と恋仲、ゆくゆくは結婚とまでいけば人手が増える。貴方働く。万々歳!!」

 

 なーにが万々歳じゃとその小さな頭を掴む。

 確かに彼女と夫婦という形になれば何かと便利だろう。それで結婚を考えるのもどうかと思うが。だが、衣食住が一発で揃う理想的な状態にはなれる。

 あの小屋を放置するのは忍びないがそれも一つの手ではあるのだろう。

 しかし、それを補って余りある問題がある。

 

 一つは、あの場所が天狗及びレミリア・スカーレットととの交流の場になってしまっていること。別に鈴奈庵でもいいではないかと思われるが、あの場じゃないと私本当に無力なのよね。結界ないから。レミリアは兎も角、射命丸とかの天狗勢から里の外に出たら首チョンパされてもおかしくない立場だから。

 帰る時もガクブルですよ毎日。

 

 んで、さっきもちらっとでてきた結界の有無。あくまで能力を押さえ付け、他者を寄せ付けない人避けでしかない。まあ、それの効力があまりにも絶大故に天狗たちも無暗に攻めてきてはいない。やろうと思えばこないだの交渉(笑)のときに殺されていただろう。

 

 そして、下手に移住して八雲を押し付けたくはない。なら、バイトするのもアウトなのではというがそこはコラテラルダメージというものである。コラテラルコラテラル。

 

 と、このように私には移住できる理由がないのです。東方project二大主人公霧雨魔理沙がまだ魔女になっておらず霧雨魔法店を営んでいなかったらわんちゃんあるのだろうか。

 あとはレティ・ホワイトロック、ルーミア等の居住地が確立していないキャラクターなら問題ないとは思う。今泉影狼とかもいけるのかそれなら。

 

 そもそも彼女たちが僕に惚れるとは限りませんけどね!!!! 

 

 どうしようもない会話を交わしながら二人で本を片付ける。それ以外にやれる事がないともいう。

 三回しか出勤していないが、客として訪れたのは堂々の0人だ。客としてではなく様子を見に来たおっちゃんおばちゃんが三人。完全に手のかかる子扱いである。

 故に、今目指すべきものは最低限店として扱ってもらえるレベルにまで引き上げること。

 これに尽きる。

 

「小鈴、生きてるか?」

 

 とんでもない一声と共に暖簾がくぐられる。青味かかった白髪、紺色の控えめなドレスを身に纏う。恰好こそ幻想郷では珍しくもないものだが、素材があまりにも良いとなんと表現すればよいのかが見つからない。

 

 上白沢慧音。稗田阿求と共に人里を取りまとめる管理人のような存在。後天性の半妖。その片割れは白沢。満月の夜にはその性質を強く引き出され、二本の角と髪色が青から翠に変わる。通称キモけーね。

 二次創作では蓬莱人、不老不死の藤原妹紅を溺愛しているなど、まあ変態ちっくな設定が盛り込まれる不憫なお方だ。

 

「いらっしゃい、新しい参考書でも必要になったのかな? それとも歴史書かい?」

「いやなに、お前が男を侍らせていると耳に挟んだのでな。少し様子を見に来た。にしても、ふむ」

 

 慧音さんから熱い視線が送られる。にしても、本当にこの世界の顔面偏差値はどうなっているのだろうか。少し小太りの男でさえカッコイイとか俺の恋が実る日はくるのだろうか。そもそも恋ができるほどの状況じゃなかったわHAHAHAはぁ……

 

 よくよく考えると、推しキャラが想像通りのキャラとも限らないのよねぇ……。

 そも、推しキャラまだ居ないはずだし。会いに行けないが正解か。

 

「里の外から来ている割には」

「貧弱って言いたいんですかねコンチクショー」

 

 ムッキムキの肉体労働の男どもに勝てるわけがねぇ。

 

「まあ、外から通っていると聞いたからな。どんな化物かと身構えていたから、少し拍子抜けはした。ただ、まあ。見ての通り少し……。かなりだらしない奴なのでな」

「わざわざ言い直す必要があったかい慧音」

「嫌って程理解させられました」

「どういうことだ君。ここは私を少しでも持ち上げるところだろうに」

「寝言は寝て言うから寝言なんだぜ店長」

 

 断固抗議すると憤慨を続ける小鈴をあやしつつ、せっかくの機会なのだからと慧音の信用を少しでも得ておくべきかと談笑を始める。

 里の権力者と仲良くなってると何かと便利だろうからね。交友関係は大事よ。天狗とはほぼほぼ破局してるけど。

 

「上白沢さんは学校……、こっちだと寺子屋でしたっけ。をしているとそうですが。今日はその教材を探しに?」

「さっき言った通りだよ。友人を茶化しに来ただけさ。ああ、そうだ君は外から来たそうだが外の教育はどの程度進んでいるのだろうか? 私は必要最低限の読み書きと計算を教えている。幻想郷では最低限生きていけるだけの知識として。外の教育は鈴奈庵の本を読む限りそれ以外にも地理、歴史、といった生きるにあったて必ずしも必要のないものも教えているようだがそれには一体どのような意図があるのか。人間以外の体の仕組みを知って一体なんとするのか。それと私ももっと積極的に保健体育を教えるべきなのだろうか。教え子たちは六歳七歳なのだが」

「ちょ、ちょっとまって。まず俺は教育者ではないから断言はできことは理解してほしい」

 

 途端に熱くなる慧音をなだめつつ、あ、こいつ同類だなと確信を得た。

 

「確かに外だと。計算や読み書きのほかに地理、歴史、生物、外国語、経済、あと道徳なんてのもあったなその年齢のころだと。保健体育は別にどっちでも良いかと。その年齢でセックス、性交なんて知識を持ってても持て余すだけだろうし。そして、それ等を知ってどうするのって話についてだけどぶっちゃけ分からん。多分どの分野に進むか分からないからどの方向にも行けるように全体的に教えてるんじゃないかなと」

 

 いま思いついたけどそれっぽいことを捲し立ててみる。我ながらそれっぽいことを言えているのではないかと。

 にしても、まともに会話できる数少ない相手が二人ともやべぇえやつだったとは……。

 加えてレミリア含め口調が似たかよったか過ぎてわけわかんなくなる。やだ、私の交友関係バグりすぎ……? 

 

「なるほど、子供たちの進む道を増やす」

「あー、マジで教育者とかじゃないんで真に受けられるとちょっと困る」

「そう卑下するものじゃない。君の出した答えが間違えだという証明もできないのであれば私はこの説を信じよう。いや、信じたい。だめだろうか?」

 

 豊満な胸もとい、ピュアな心を抱きしめるように握られた彼女の手。それは未来への希望なのか、子供たちの未来を思ってか……。それは分からないが確実に今言えることがある。

 

「やはり男は胸か」

「それは誤解じゃないっすかねぇ。あれは不可抗力ってもんっすよ」

「では、私が同じ仕草をしても同じことを言ってくれるのかな? ん?」

「わあ、店長の猛烈アピールが痛いぞぉ」

 

 かわいい女の子から言い寄られるのは嬉しいのだが、種馬どころか労働力としてしか見られていないのがなんだかなぁ。それに、完全に事案だし。

 ただまあ、身長百七十近くの巨乳美人とつるペタ美少女が並べられたら先に目線が行くのは間違いなく巨乳だよね……。

 

「そういえば自己紹介がまだだったな。小鈴から聞いてはいると思うが上白沢慧音だ。寺子屋で子供たちに読み書きと計算を教えている」

「ご丁寧にどうも。茉裏です。草かんむりに末で茉、りは裏で茉裏っす。見ての通り鈴奈庵の店長にセクハラを受けているしがない店員です」

「ああ、よろしく頼む茉裏。今度寺子屋に顔を出してくれ。歓迎するぞ」

「よろこんで」

 

 それじゃあと鈴奈庵を後にする慧音にひらひらと手を振る。思いもよらない収穫ではあるがこれで行動範囲はかなり広くなった。

 小鈴と慧音からのお墨付きも貰えれば小鈴の言っていたお手伝いも快く引き受けてもらえるだろう。こっちが手伝う側だが。外で言うところの身分証がある状態とでもいえばいいだろうか。

 少なくともこれで飢え死ぬことは回避できそうで本当に良かった。

 

「随分と嬉しそうじゃないか。そんなに慧音が気に入ったのかい?」

「変態チックに言うのはやめてもらえませんかね人聞きの悪い」

「事実だろうに」

「そもそもなんでそんなに不機嫌なんです」

「当り前じゃないか。貴重な夫候補もとい労働力が奪われようとしているんだ。不機嫌になるのも当たり前だろう? 加えて件の男は鼻が伸びっぱなしときたもんだ。私はとても悲しいよ」

「労働力であることを否定はしないけど、店員だし。勝手に夫候補に入れないでもらっていいっすかね。好意ゼロってわかった瞬間の俺の悲しみを理解してほしいですなあ」

 

 ただ、これだけの美人達と知り合いな時点でかなり恵まれているのだからこれ以上は求め過ぎだというモノだろう。

 

 凡人は凡人らしくおとなしくしておくのが一番利口なんですよ。

 立場が立場だからそれがうまくいくかは別としてね……。




お読みいただきありがとうございます。

いやほんと、今出てる原作キャラの半数がほぼほぼ同じ口調にしちゃってたよね。馬鹿かな?
おかげでだれがだれだか状態だよ。

さて、次回は八話となるわけですが、その前に一話を上げなおすかもです。
そん時は生暖かい目で見守ってくださいませませませ。

また、タイトルが何度もコロコロと変わっておりますがとりあえずこのままでいこうかと考えております。少なくとも一番しっくりは来ています。
別にティンときたら変えるかもです。
そんときはゆるしてください。

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