これ設定的に私全部書ききれのかとても不安になってきた今日このごろ。
てか、メインヒロインが出てくるのはいつになるんですかねぇ……。
なんやかんやあって博麗霊夢、すなわちこの世界の主人公とお茶をすることになった。なんやかんやってなんだよって? なんやかんやはなんやかんやなんだよ。
いや、だってさ? 賽銭入れてお手て合わせてたら急に話しかけられてんだもの。しかも、その第一声が厄介なものに目をつけられたわね貴方。だよ?
断れますかこの後? 俺なら間違いなく断ったね。相手が博麗の巫女でさえなければ!!
いやまじでなんでこうなってんの? 何か癪に障る事でも致しましたかね私。あれか、慧音先生にお小遣いもといお賽銭を貰ったのがいけなかったか。自分のお金でしろと、そういうことなんですね霊夢さん!! いや、絶対違うわ。
「えっと、何か用っすかね……。いや、用があってきたのはコッチではあるんですけど、まさか博麗さん側から呼ばれるとは想像もしていなかったもので」
「私は別に何もないわよ? 貴方が何か用があると思ったから招いただけ」
えぇ……。これがリアル悟りデスカ。てか、原作でも似たようなことしていたっけか。博麗の勘とか言って。
つっても、同業者として顔見世に来ただけなんだけど、なんかそれだけでは引けない気がする。
「えっと、用というほどのようでもないのですが。同じ同業者になるのかな。博麗さんのバックアップとしての命を承っております。茉裏です。今日は顔見せということでよらせていただきました」
「そう。で、名前は?」
ん?
「茉裏です。草冠に末でまつ、りは裏って書きます。性は八雲になるのかな」
「そうじゃない。私は貴方の名前を聞いているわ」
「いえ、ですから……」
「三度目はないわよ」
どういうことだってばよ……。茉裏くんは茉裏くんであってそれ以上でも以下でもないのよ?
「結構深いのね。貴方、もう帰れないわよ。まあ、アイツに目をつけられている時点で無理でしょうけど。これに名前を書きなさい」
そういって一枚のお札を手渡される。言いようのないプレッシャーに汗がたらりと湯飲みの中に沈んでいった。
お札には性と名を書くために縦線が引かれており、博麗霊夢は硯に墨をすり始めていた。
だが、名前と言われても書く名は一つしかないわけで……。
「名前というのは、その個を確立させるためのものなの。道具しかり生命しかり。ただ、それがあやふやになる瞬間というものが存在する。それは契りを結ぶ時。その時だけは二つの存在に引かれあうからどちらにも値しない。
もう一度だけ聞いてあげる。貴方の名前は?」
「なまえ……?」
俺は八雲紫の駒で、八雲の名を貰った。故に八雲茉裏それ以上でも以下でもない外の世界から迷いこんだ異邦人で、博麗霊夢のバックアップとして幻想郷に存在している。
そう、八雲として……、八雲として? 八雲としてのはずで、八雲茉裏で……。ちがう、ちがう? なにがちがう。ちがう、違わないんだ。俺は八雲であって、八雲じゃない。そう、八雲としての前の名前があってそれが至極当然で当たり前だけど分からなくてなんで分からないわからないわからない?????????????
だめだ、おちつけおちつけ落ち着け。そう、一個ずつ思い出していけ。
まずは出身だ。俺は異世界から来た。そう、福岡に住んでいたが、こっちには福岡がなくて福義なんて訳の分からないものがあった。大丈夫まだ思い出せる。
年は二十か二十一。元大学生。
父、母、俺の三人家族。両親の名前は……なまえ、は?
「なんで……? だって、つい数日前まで普通に思い出せて」
本当にそうだろうか? いつから両親の顔を思い出せていない? いつから自分の名を語れなくなっていた? 思いをはせることは幾度もあった。だが、その中で両親の顔を思い出したことが一度でもあったか?
「ああ、そもそも思い出そうとしている時点で俺は終わってたんだな」
ふと、思考より先に言葉が漏れる。その言葉を脳が理解したと同時にぼとぼとと涙がこぼれ始めた。悲しみというよりは虚無感の方が強く、流れる涙は直視したくない現実から目をそらすために流れているようにも感じる。
ただ、せめて自分の名だけでもと、博麗霊夢が準備してくれていた筆を執る。
額からにじみ出る脂汗が目に入り何度も目をこする。やがて顔全体を覆い始めた汗の滝は頬を伝わり机の上、札の上にも落ち始めた。
この姿だけ見れば、外を全力疾走でもしてきた若造が汗を滝のように流しながら博麗の巫女と対面している。などと、おかしな光景に見えることだろう。
そんなことを考えてしまって、ふとほほが緩むのが分かった。
それで緊張がほぐれたのか、脳か心かが動いたのかよく分からないが自然と腕が動いてくれた。
震えながらも、確かに黒い線を続けていく。
がったがたで、枠なんて気にしていないその文字はおそらく自分にしか読めないほどにきったなくて、まるで始めた文字を書いたかのよう。
最後の文字を書き終えたと同時にほっと息が漏れる。改めて札の上を見てみるが辛うじてそれが文字だということが分かるレベル。
「書いたわね。かしなさい」
そういって博麗が名前の書かれたお札をお守りの中に入れた。
「保険程度のものよ。もっていなさい」
そういってお札の入ったお守りを渡された。
満身創痍になりながらお礼を言ってお守りを受け取る。これが幻想郷。
なるほど、幻想郷はすべてを受け入れるとはよく言ったものだ。外にいたことさえ忘れさせる。もっとそれっぽく言うのであれば取り込まれる。それが幻想郷という場所なのだろう。
と、なれば人里のなかにもそういったものがいるのかも知らない。
まあ、だからどうしたって話なんだけどね。どうあがいたって一人で生きていくのに精一杯の人間に同行できるはずもなし。てか、どうしようもないよねこれ。普通に生活しているうちに気が付けば忘れてる。
俺はたまたま運が良かっただけ。忘れさるまえに博麗の巫女さんに直してもらった。貰えたが正しいか。
と、言っている間にもう名前を忘れかけている自分がいるんだよなぁ。
「保険って言ったでしょ。厄除けみたいなものよ。過信してはいけないけれどね」
「なるほど? ところで、どうしてこんなことをしてくれるのですか? 言っちゃあれですが、初対面の相手を部屋に上げる時点でもかなり不用心では?」
「そうね……。見ていて気分が悪いから、かしら」
少し違うきもするけど、大体はそんなところ。と、付け加えられ哀れんでいるかのような何とも言えない表情で微笑んで見せた。
まあ、名前はしょうがないとしてもこのお守りがあるということは覚えておいた方が良さそうではある。
「さ、もういいでしょう」
そういってパンッと柏手を一つ。それと同時に部屋全体に甲高い音が響き渡った。いったい何をしたのだろうかと頭にはてなマークを浮かべていると、障子を開けて部屋に入ってきた。
腰まで届こうとしている金色の長髪はふんわりとパーマをかけたかのようにカーブしており、左側だけおさげにしている。
そして、その髪色を遺憾なく主張しているその服装は幻想郷でもかなり目立つものだとか訓を持てるほどで、黒いワンピースに似た服の上に真っ白のエプロン。さらにそのエプロンの上に黒い上着を着ている。
頭には黒に白のフリルをあしらったとんがり帽子。重くないのだろうかと思うほどにアンバランスなその大きさに少しばかし心配してしまう。が、それがかちりと嵌っているようにも見える。
手に持つのは使い古された箒。
そう、博麗の巫女に並ぶ東方projectの二大主人公。弾幕はパワーだぜと豪語する普通の魔法使いこと
霧雨魔理沙である。
「珍しいな、部屋に人祓い張ってるなんて。紫でも来てたのか?」
「私としてはあんた等が何の遠慮もなしに入ってくるから常に張っていたいまであるのだけどね」
「ま、そんなこと言うなよ。私と霊夢の仲だろ? で、男がいるってことは私はお邪魔だったかんじかだぜ?」
からかうような声で隣にドスンと座る霧雨魔理沙なのだが、ふわっと土臭さが鼻を突いた。嫌いじゃないわ!!
「茉裏って言います。人里の鈴奈庵で働いてるしがない店員です」
「霧雨魔理沙だ。気軽に魔理沙って呼んでくれだぜ」
軽く握手を交わし、魔理沙が本題だがと話を切り出した。
「外を見たらわかると思うが、霧の湖から紅い雲が広がってきてるんだ。端的に言うと異変だ」
「そ、このお茶を飲んだら行こうかしらね。魔理沙は帰ってなさい」
「残念だが断る。霊夢を一人で危険なところにやれるか」
「本音は?」
「こんな楽しそうなことに首を突っ込まずにはいられないのぜ」
「ま、アンタはそういうやつよね。好きにしなさい」
霊夢はこちらを一瞥し、外へと飛び立った。
「ここにいてもし、里に帰るなら帰るでもいい。好きにしろってさ。あんな奴だが悪い奴じゃない。仲良く知ってやってくれな」
魔理沙もそう言い残し、霊夢を追いかける形で飛び立っていった。
「あれが、阿吽の呼吸っていうやつなのかね。ま、安全第一で部屋にこもっていたけど……。間違いなく知り合いの仕業だろうし行くしかないよなぁ」
残っていた自分のお茶をすべて流し込みちゃぶ台の中央へ。流石に家の中を勝手にうろつくのもね。
重たい腰を持ち上げ外に出る。霧の湖方面を見ると確かに紅い雲が幻想郷を侵食していた。ちなみにめっちゃ目に悪そうなどぎつい赤である。すでに少し目が痛いのだ。
そして、二人が空を飛んで移動するということは地を走るしかない自分はかなり急いで走らないといけないのだ。しかも、森の中を突っ切らないと多分追いつけない。
この世界に弾幕ごっこというものの概念があるのかは分からないが、妨害は入るだろう。頑張れば追いつけるはず……。
「さ、ってと行きますか」
軽く体をほぐし、両足に付けているハンドガンのホルスターを取りやすい位置にずらす。すっとクラウチングスタートの態勢を取り、心の中でドン。
前のめりのまま森の中を駆け抜けていく。森の中を全速力で走るのはかなり疲れるので日ごろはしないのだが、藍しゃまの特訓でできないことはない。
手の平と足に薄く結界という名の肉体強化を掛け、跳躍力を強化。手は着地時とか木の枝を退けるときにケガしないようにね。
あとは自前の動体視力と反射神経で死ぬ気で安全な道を選別し続ける。地を蹴り、木を蹴り、空を跳ぶ。その光景はさながら忍者といったところであろうか。アイエエエ!
もう本当にね、これ冗談抜きで死にかけるからあんまりしたくないのよね。
霊力は生命エネルギーなわけだが、平均を100だとすると俺は70程度しかない。極端に低いわけではないが、低いことには低く結界を張ることは勿論、肉体強化もかなり切り詰めて使用している。
霊力が少ないということはその分消費が早いわけだが、ゲームのように常に一定のスタミナを使い続けることなんてできるはずもない。
つまり、バテるのが早くなっている分、Maxからの霊力の消費も人一倍早いわけだ。そして、霊力が切れればもちろん妖怪からの格好の的。それ以前に霊力の過剰消費で干乾びてもおかしくない。そのリスクが常に隣り合わせにいる。
行きたいから生きているような奴が好んでする方法じゃないっしょ?
そして、もう一つ。単純に動体視力で車とかバイク並みの速さ。具体的な数字は分からんけど高速道路のバイクみたいな状態で常に走ってるから脳の処理がぱんっぱんなのよね。
だから目の前に急に妖怪とか出てこられると死にかけるわけで。
「あっっっっぶなあああ!!!!!」
目の前にフラフラと出てきた餓鬼の頭に両手を添え、跳び箱を跳び越えるかのように足を広げる。掴まれたらそのまま嬲り殺されるので開いた足を垂直に上に持っていく。そのまま三角飛びのように跳び上空の木の枝を掴み再加速。
端的に言えば死ぬかと思いましたまる
そんなことに何度も遭遇し、寿命を縮めているとはるか上空から大きな爆発音が響き始める。
原作で言うのであれば弾幕ごっこに位置するそれは、確かな殺意と共に始まっていた。
「ここまで伝わってくる殺気ってどうなんすかね。こっわ」
空を飛ぶ飛行機を眺めるかのように、美しい殺し合いに身を震わせながら脚を止めることはしない。というよりそろそろ限界が近いのでいい加減森を抜けたいのですが。
なーんて考えると抜けれるもので、開けた視界の先には深い霧が覆う湖。その中央の島に佇む巨大な真っ赤洋館の姿。今回の異変の元凶が住まう根城『紅魔館』だ。
「大体三ヶ月ぶりになるのかねぇ。にしても想像以上に赤くてデカいこと。入口は……あっちか。霊力すっからかんだからすんなり通してもらえればいいけど」
少し遠くに見えるレンガの橋。恐らくそこに紅魔館の門番、紅美鈴がいる。よく寝ているとされている彼女だが弾幕ごっこは得意じゃないだけで近接格闘では幻想郷でもトップクラスの実力なんて説もある。
要するにやべー奴である。
ただ、性格は温厚なことが多いのでそうであることを祈るばかりだ。
「どうもー、こんばんわ」
「おや、里の方ですか? すいません、この雲もそのうち収まるので。ご迷惑をおかけしています」
やだ、すっごい丁寧。九十度のきれいなお辞儀と大人びた、妖艶とでも言うべきなのか魔理沙とは真逆の微笑み。
「実は、レミリア・スカーレットさんにようがヒュイ」
音もなく顔の目の前に拳が突き出された。遅れて全身を薙ぐ風圧が襲ってく。
「なるほど、貴方が」
「な、何がなるほどナンスかね」
「お嬢様から話は伺っております」
「それなら話が早く済んで助かるんですけれどなんで」
「はい。私の名を知っている男が来たら足でも折って引きずって来いと仰せつかっておりますので」
「ええ……どういうことでせうか」
では、と中国さんが構えを取る。抵抗するならしてもよいという事なのだろう。もちろん足をへし折られるなど嫌なのでこちらも獲物を抜く。
ま、勝てるとは思わないけどやれるだけやってみまひょ。
なーんて悠長に考えている間に、俺の体は宙を舞っていた。
お読みいただきありがとうございます。
漸く二大主人公登場&初異変ですよ。
妖怪大戦争も異変と言えば異変ですが、あれは完全オリジナルのものなので別枠ということで。
さあ、茉裏くんの運命やいかに!!