春、桜吹雪が舞い、誰もが足を止めて魅入ってしまうこの季節。先程まで多くの学生や大人が桜の写真を撮ったり談笑していたが今は散った花びらだけが残されている。現在の時刻は8時30分、大半の生徒は学校に着いており、これからHRといったところだろう。しかし・・・
「「ち・こ・く・だぁ〜!!!」」
桜には到底似合わない言葉を叫び、桜に目もくれず疾走する2人の生徒がいた
「もー!お姉さまなんで起こしてくれなかったの?!」
「アラームが壊れてたの!後こっちでその呼び方はダメだよフラン」
「あっ、ゴメン明久」
「学校では特に気を付けてね。それより急がないと...」
そう、私こと吉井明久とフランドール・スカーレットである。私は吉井明久と名乗り男子生徒を演じている。何故かというと、単に私がそうしたかったからだ。
「校門が見えた!急げー!」
「遅刻だぞキサマら!!!」
「うわっ!鉄じ・・・西村先生、おはようございます」
「あぁ、おはよう。ところで吉井、今鉄人と言わなかったか?」
「あはは、気のせいですよ(汗)」
私たちが通っている高校『文月学園』の教師で、私が女子であることを知ってる数少ない人物の1人が西村先生だ。特定の教科にはついておらず、補習担当の西村先生は趣味がトライアスロンであることとそれゆえの並外れた身体能力から『鉄人』『伝説の傭兵』などの渾名がつけられている。そして、1年のときに『いろんな面で』お世話になった人だ
「いいじゃん、鉄人ってあだ名カッコよくない?」
「フラン・・・」
「はぁ、お前達は・・・まぁいい、振り分け試験の結果だ。受け取れ」
そう言って渡されたのは割と大きめの茶封筒
「ありがとうございます。にしてもこれを1人1人にって大変じゃないですか?」
「それはそうなんだが、ウチは世界から注目されている試験校だからな、これもその一環ってわけだ」
「へー、そんなもんですかね」
「それよりお前達、早くクラスを確認しろ」
「あ、はーい」ペリペリ
「明久〜私Aだったよ〜」
「おめでとフラン。なら僕もAクラスがいいなっと」
この学校は振り分け試験の結果でAからFのクラスに分けられる。余程のヘマを踏んでなければAクラスにはなれてるとおもうんだけど・・・
2年 吉井明久 Aクラス 首席
・・・へ?
「あの、鉄人、学年首席って誰ですか?」
「鉄人と呼ぶな。それと自分の目で確認しただろ。お前だ吉井」
「えぇぇぇぇぇぇ!!?」
Aクラス前廊下
「まさか僕が学年首席になるとは・・・」
「よかったじゃん明久、1番だよ?」
「嬉しいけどね、まだ実感ないんだよ」
現在8時45分、HRはとっくに始まってるし今頃自己紹介の時間かな?
「初日から首席が遅刻か〜」ボソッ
「フラン!聞こえてるよ」
「アハハ♪明久が怒った」
「まったく、入るよフラン」
「はーい」ガラガラ
「失礼しまーす。遅くなりましたー」
「ましたー!」
「遅刻ですよ。私はAクラス担任の高橋洋子です。今自己紹介が全員終わったところなのであなた方もお願いします」
「フランドール・スカーレットです!好きなことは体を動かすこと、よろしく!」
「吉井明久です。趣味は料理です。よろしく」
(吉井って観察処分者のか?)(なんでAクラスにいるの?)(カンニングでもしたのか?)ザワザワ
うーん、やっぱりそういう反応になるか。『観察処分者』、学内外で問題を起こした生徒に与えられる不名誉なレッテル。教師の雑用を手伝わされたり、クラス間で行われる戦い『試験召喚戦争』でのペナルティが課される。ちなみに観察処分者が認定されたのは僕が初らしいく、稀代の問題児として一部の生徒や職員からは冷たい目で見られることもある
「静粛に、試験監督は私と西村先生で行っていましたから、その中でカンニングなど不可能です。吉井くんの実力は本物ですよ。それに、観察処分者に関しても・・・いえ、あれは吉井くんの自業自得でしたね」
「ちょ、高橋先生!最後だけ全然フォローになってないですよ?!」
そこはフォローしようよ!?
「では何か言い訳でも?」
「善行を積んだだけです」キッパリ
「善行のために悪行を働いては元も子もありませんよ」
「おっしゃる通りです・・・」
人助けのためとは言え、処分予定の古本と間違えて西村先生の私物を売り払ったのは事実だもんね。けどあれは仕方ない、仕方なかったんだ
『あの〜高橋先生、今更なんですけどAクラスの首席って誰なんですか?』
『首席どころか次席も分からないんですけど』
「そうでしたね。では首席と次席の方には名乗り出てもらいましょうか、どうぞ」
え、この状況で?物凄く言い出しにくいんだけど。でもこのままだと話が進まないし・・・仕方ない、後が大変そうだけどね
「えっと、改めまして学年首席の吉井明久です・・・」
「次席のフランドール・スカーレットで〜す♪」
『『『なにぃぃぃぃぃ!?』』』
『吉井が学年首席だと!?』
『代表って霧島さんじゃなかったんだ』
ワイワイガヤガヤ
あぁーほら、騒がしくなった。でもそれより気になるのが...
「フランが次席!?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「Aクラスとしか聞いてないよ・・・」
私にとってはフランが学年次席だったことの方が衝撃だ。というか真面目にテスト受けてたのか
「明久と同じクラスがよかったから頑張ったらこうなった」
心の声を読まないで下さい。っとそうだ
「高橋先生、僕達の席ってどこですか?」
「窓側の空いている席が吉井くん達の席です」
「ありがとうございます。フラン、行くよ」
「うん!」
クラスメイトの確認とかは落ち着いてから確認すればいいか。みんなはどこのクラスに言ったのかなー?
Fクラス
遅い。いくらあのバカでも初日から欠席なんてしないはずだ。どこほっつき歩いてやがる
ガラガラガラ
ちっ、やっと来たか
「遅せぇぞうじm「みなさん席に着いてください」っと先生でしたか」
「えー、私がFクラスの担任になりました・・・福原慎です」
担任は黒板に名前を書こうとしてやめた。チョークすら用意されていないのかここは!?ホントに教室か?
「それでは自己紹介をしてもらいます。廊下側の人からどうぞ」
「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる、よろしく頼むぞい」
秀吉か。あいつは俺の遊び仲間もとい親友の1人で演劇部のポープと呼ばれている。そして・・・
「後、わしは男じゃ」
『バカな!?秀吉が男だと!?』
『神は我らを見捨てたのか!?』
『いや待て、男だとは言ったが女子ではないとは言っていない。つまり第3の性別"秀吉"なんだ!』
『『お前天才か!』』
「わしは男じゃ!!!」
中性的(と言うより女寄り)な顔立ちのせいで男だとは認識されない可哀想なやつだ。おっ、秀吉が諦めの表情で席に着いたな。次のやつは...
「・・・土屋康太」スッ
終わりか!?短ぇよ!康太も相変わらずだな。土屋康太は普段は寡黙で明るいタイプではないが女子が関わると人が変わる。康太は並外れたスケベ心を持ちながらもそれを否定していることから『
「ーです。趣味は・・・」
ん?女子か、珍しいなこんな底辺クラスにいるなんて。でも待てよ?この声聞き覚えが・・・
「吉井明久を殴ることです☆」
こんな危険な趣味を持ってるやつは1人しかいねぇ!見るとやはり明久の天敵、島田美波だった。島田は帰国子女で1年の頃明久に助けて貰ったらしいんだが、どういうわけか最近では明久に暴力を振るうようになった。本人曰く「お仕置き」らしいがにしてはやり過ぎだし、なにより理由が無茶苦茶だ。正直明久に近づいて欲しくない、要注意人物だ
「(何よ、吉井のやついないの?後でお仕置きね...!)」
また何か企んでやがんな。悪いがそんなことはさせねぇよ
「すいません、遅くなりました!」
『え?』
クラスの中からそんな腑抜けた声が聞こえたが無理もない
「ちょうど自己紹介をしていたところです。貴方もお願いします」
「あ、はい。姫路瑞希です、よろしくお願いします!」
『あの、どうしてここに居るんですか?』
聞き方は少し悪いがこれも仕方ないだろう。姫路瑞希は入学以来学年トップクラスの実力を持つ才女で、本来Fクラスなるようなやつじゃない。何か事情があるのか?
「実は、試験中に熱が出てしまって」
なるほど、ウチの試験は厳しい。体調不良だろうがなんだろうがテストを受けていなければ問答無用で0点扱いされる。しかしとんでもないカードが舞い込んだもんだな。これは嬉しい誤算だ
『なるほど、俺も熱(の問題)が出たから』
『化学だろ?むずかったな』
『俺は弟が事故にあったと聞いて・・・』
『黙れ一人っ子』
『前の晩彼女が寝かせてくれなくて』
『『『今年一番の大嘘をありがとう』』』
想像を超えたバカばっかりだ
「え〜、では最後に代表の坂本君お願いします」
やっと俺の番か
「代表の坂本雄二だ。代表でも坂本でも好きに呼んでくれ」
「お前ら、自分の設備を見てみろ。ちゃぶ台に座布団。このクラスには机すら与えられていない、それに比べてAクラスはどうだ。システムデスクにリクライニングシート、個人のエアコンや冷蔵庫まである」
俺は一呼吸入れて問う
「不満はないか?」
『『『おおありじゃあ!!!』』』
「そうだろう不満だろう!そこでだ・・・」
想像以上に強いクラスの意思を確認したところで俺は本題を持ち出す
「試召戦争をやらないか?」
雄二の戦力解説と残りの幻想郷メンバーの登場は次回に。またお会いしましょう