再投稿。
※
…驚いたな。
まさか今のを無傷で防がれるとは思わなかった。完全に死角から突っ込んだはずなんだがね。
内心の動揺を隠すためにジャパニーズニンジャ式の挨拶したらすげー睨まれたし。
「まあいい。それで、ゼロニンジャとやら。貴様の職業とレベルは…。」
あ、隙だらけなんで攻撃させてもらいますね。
平眼に剣を構え、ベルディアの心臓に向かって突きを入れる。
「うおお⁉︎き、貴様!人が話しかけているだろうが!」
文句を言いながらも突きを大剣の腹で受け流し、続く俺の蹴りを肘で打ち落として逆に大剣の柄で殴ってくるベルディア。身を捻って回避する。
こいつすげえな。不意をついたとおもったんだが。
喋りながらここまで対応するのは俺では無理だ。
「戦場で主義主張など、何の意味もありませんよ?」
「むう…。」
「あ、俺はゼロ=ニンジャじゃなくてただのゼロで良いですよ。あと、まだ冒険者じゃないので、
「答えるのかよ‼︎…何?冒険者ではないとはどういう…」
学習しろや。
靴のつま先で地面を抉り、それをベルディアの頭に向けて蹴り込んだ。
その直後に思い切り横に跳び、真横から奇襲する。
対し、頭をひょいっと上に投げて砂かけを回避したベルディアはそのまま両手で俺に斬りかかる。
ぶつかり合う剣と大剣。
普通に押し負けた。
(うおっ⁉︎)
体勢を崩したところで脚を刈られた。宙を舞う俺に容赦無く大剣を振り下ろす。
力を抜き、大剣を受け流しつつその勢いで風車の如く回転、着地と同時に下から剣をカチ上げる。
ベルディアは一歩退いて避けながら地面を得物で抉りこちらの広範囲に向かって散弾のようにばら撒いてきた。
回避するために大きく後退せざるをえない。
ちょうどよくベルディアの頭も落ちてきたし、仕切り直しというところか。
しかし、俺のスピードに対応するとは…
正確に言えば対応しきれてはいない。おそらくこいつは俺の動きがはっきり見えているわけではないのだろう。
だが、上手いのだ。
自分だけの修練では決して身につかない、戦場での戦い方を知っている。
「…貴様、歳は。」
また奇をてらってやろうかとも思ったが…
「16、いえ、もうすぐ17になります。」
「どうやってそこまで強くなった。ある程度の戦場は知っているようだが世に出て長くはあるまい。」
まあ経験が浅いのは仕方ないだろう。
そしてその質問には自信を持って応えよう。
「ただ、ひたすらの鍛錬の成果ですよ。」
それが俺のアイデンティティでもあるのだから。
一刀修羅ぁっ‼︎
ごめんなさい勘弁してください。
「フハハハハハハ!鍛錬!鍛錬ときたか!それはいい!近頃はそれを怠って死に急ぐ者ばかりだからな!」
「こちらも一つ良いですか?なぜ魔王は人間と敵対しているのか教えてください。」
こちらは答えたのだ。そちらも一つぐらい教えてくれても良いだろう。
「そんな大層な理由などない。いつの世も戦が起きる理由は食糧の問題と、思想の違い…まあそんなもんだろう。」
ありきたりだな。
もっとこう、人類に怨みとかあったりしないのか。
「…どうだ?ゼロ。魔王軍に来ないか?貴様なら即幹部になれる。」
バカこくでねえわ。
俺の目的の真逆じゃねぇか。途中で寝首を掻くのならアリかもしれない。
「そうか?貴様は、戦えればそれでいい。そうではないのか?俺の同族かと思ったのだが。」
「・・・・・・」
まあ
強くなろうとして鍛え始めたのも魔王軍なんてあまり関係無いしな。親父の仇とか正直どうでもいい。顔も見た事無い男の為に命は張らない。
だがそれは前提が崩れている。
もう俺にはエリスとの約束という明確な目的がある。
今はそれを果たすために剣を振ると決めた。
誰が何と言おうと、だ。
「女との約束か!ハハハハハ!本当に面白い奴だ!俺はおまえが気に入ったぞ!」
俺も…ベルディアには妙な親近感を感じていた。
思えば、純粋な剣技で俺と渡り合うやつは今まで1人もいなかったのだ。
(もし…生まれが同じだったなら、友人として語り合うこともーーー)
「それで、もちろんその女はでかいのだろう?サイズはいくつだ。」
ーーー気のせいだった。
あ?なぜでかいことが前提なのだ。俺はでかかろうと小さかろうと関係無い。
エリスがエリスだから好きなのだ。
だが、そういう趣味を否定することもしない。この国では憲法で思想の自由は保証されて……ここ日本じゃなかったわ。
「いえ、残念ながら…」
「はあ?貧乳など娶って何が嬉しいのだ。」
ぶっ殺す。
こいつは言ってはいけないことを口にした。万死に値する。
俺の雰囲気を感じ取ったのか、ベルディアも戦闘態勢に移行する。
「…まさか貴様がそちら側だったとはな。目を覚まさせてやろう。」
そちら側もクソも無い。おっぱいはおっぱいなのだ。
巨乳もおっぱい。貧乳もおっぱい。おっぱいは等しく尊いもの。それでいいではないか。おっぱい万歳。
「それは尚悪いわ!ただの優柔不断ではないか!見損なったぞ!」
何を言うのか。
外見を見る人もいれば内面を見る人もいる。
俺は後者だっただけだ。
「まあどちらでもいいがな。どうせ貧乳には人権などないのだ!バーカバーカ!」
こいつ言い過ぎだろう。
俺は巨乳派でも貧乳派でもないが、今だけは貧乳派であるべきだ。
「「ぶっ殺してやる‼︎」」
激突する
これが後に語られる太古から続く大戦。
きのこたけのこ戦争よりも根深いとされる第ウン次巨乳貧乳戦争の勃発だった。(貧乳派は代理)
いつの世も戦の幕開けには思想の違いがあったのだ。