この素晴らしい嫁に祝福を!   作:王の話をしよう

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再投稿。





14話

 

 

 ※

 

 

 闘技場の中央にて出逢った俺とジャティス王子。

 この闘技場、かなり広い。

 一辺が300メートル四方の正方形とか一体何と何を闘わせるために造らせたのか。

 

 

 今、この闘技場には観客を含め4人しか人間がいない。

 そのうち2人はもちろん俺と王子。

 もう2人は観客席でこちらを見下ろす国王と、その隣にちょこんと座っている小さな女の子。

 国王の娘にして王子の妹、アイリス王女だ。

 

 この王女だが、めっちゃかわいい。

 エリスの次くらいにはかわいい。エリスがいなかったら犯罪に走りそうなくらいの美少女だ。

 

 …ちなみに王女は11歳だ。

 もしかしたら俺にはロリコンの素質があるのかもしれない。

 いや、だが綺麗なお姉さん枠のエリスがいる以上、決めつけるのは早い。

 …言っておくが、浮気ではないぞ?

 

 

 

「どうしたんだい、ゼロ。さっきから妙な顔をしているけど?」

 

 

 

 うるせぇな、黙ってろイケメン。

 てめえと比べたら大体の人間は変な顔してるよ。

 そもそも、呼び捨てにしていいなんてひとっっ言も言ってねえからな?

 

 相手がイケメンというだけで敵意を剥き出しにし、尚且つその妹に変な視線を向けていたクソ野郎がそこにいた。俺だよ、悪りぃか!

 

 こんな醜い感情をエリスに見抜かれたら、きっとゴミを見るような視線で蔑んでくれるだろう。ゾクゾクするね。

 めぐみんではダメだ。あれは妹枠でいい。妹にそんな目で見られたら腹パンする自信がある。

 

 …いっそ清々しい程のクソ思考だな。俺っていつの間にこんな嫌な奴になったんだ?

 

 自己嫌悪に陥っている俺に心配気な視線を向けてくる王子が、

 

 

「その、もしかして調子でも悪いのかい?良ければ次の機会に回してもいいんだよ?」

 

 

 と言ってくれる。

 

 

 …くそっ。

 こんないい奴に俺はなんでこんな感情を向けているんだ。どうも昨日のベルディア戦から調子がおかしい。

 まるで俺の中に誰か別のやつがいるかのようだ。

 こんな時は身体を動かして気を紛らわせるに限る。

 

 

 

「いえ、大丈夫です。さあ、始めましょうか。」

 

 

 

「!ああ、よろしく頼むよ!」

 

 

 

 心底嬉しそうに剣を構える王子。

 本当に闘うことが好きらしい。こういうところは確かに気が合うのかもしれない。

 

 

(さて、王子の実力はどんなもんかーー)

 

 

 直後、王子の姿がブレる(・・・)

 

 

 

「はぁ⁉︎」

 

 

 俺ですら辛うじてでしか認識できない猛スピードで突っ込んでくる。

 だが、見えるのなら反応できる。

 剣を上から振り下ろす王子と下から振り上げる俺が激突。王子が目を見開く。もしや、今ので決めるつもりだったのかもしれない。

 

 

 よくぞ反応してくれたと言わんばかりに嬉しそうな笑みを浮かべ、王子が頭突きをしてくる。

 

 今度は俺が驚く番だ。そりゃそうだろう。王子が頭突きとかしてくるか、普通?

 完全に虚を衝かれた。仰け反る俺の顔面に後ろ回し蹴り。どうやらこの王子、ラフプレーを好むらしい。どんな王子だ。

 

 

 

(いっ、てぇ…!)

 

 

 

 地面を転がり、即座に態勢を立て直す。当然のように追撃してくる王子の足を剣で薙ぎ払い、行動を制限する。

 跳躍して躱すしかないと判断した王子は間違ってはいない。

 

 

 

(これでも喰らえ‼︎)

 

 

 空中にいるのなら逃げられまい。着地する前に全身を捻って力を溜めた4連撃ーー

 

 

 それをなんのことは無いように空中を蹴って(・・・・・・)躱す。

 

 

 …俺は一体何度驚けばいいのか。

 空中を蹴る?バカ言えや。そんなこと俺でも出来んぞ。

 今のはアレか、某ジャンプ漫画でいう『月歩』とかいうやつか。ナマで初めて見たぞ。いや当たり前なんだが。できるやつなんている筈が無いのだ。いたけど。

 

 

 アホ面を晒していた俺に渾身のドヤ顔を決めてみせるジャティス王子。

 …案外子供っぽいところもあるのか。

 それはそうと許さん!

 

 

 今度は手数で勝負だ。

 ベルディアの時のように一撃離脱ならぬ連撃離脱を試みる。

 だが俺には確信があった。

 そう、()のようにこいつが追いついてくると!

 

 

 

 

 

 

 広いはずの闘技場で俺と王子が並走しながら観客席も利用して、まさに縦横無尽に剣戟を繰り広げる。端から端まで一瞬で到達する。当然だ。二人共とうの昔に音速など通り越している。

 

 更に驚くのは、観客席にいる国王と王女までもがしっかりと俺たちを目で追っていることだ。

 

 というか、どう考えてもおかしい。なぜ王族がこんなに強いのか。これならば護衛や衛兵など必要ないだろう。

 もうお前らが魔王倒したら?それは俺が阻止するけど。

 

 

 俺と王子のスピードは完全に互角だ。

 一番自信のあるスピードで互角なことにショックを受けるがそんな暇があるものか。

 

 一合打ち合う度に圧される。パワーでは勝負にならない。ベルディア並のパワーに俺と互角のスピードとかどんなチート野郎だ。

 

 

 そんな闘いに揺らぎが走る。王子のスピードと動きのキレが目に見えて落ちたのだ。

 

 

(こいつ、まさかーー)

 

 

 

 確証は無いが、これに賭けるしかない。

 

 

 俺は何の前触れも無く速度を落とす。

 すると王子もそれに追随するかのようにスピードを落とした。その直後、猛烈な加速で王子を置き去りに。

 王子が慌てて加速したところで急反転、全力で剣を叩きつける。王子も反応が遅れたが辛うじて剣を前に出す。元の力が別物なのだ。この条件でようやく互角。双方の剣が後ろへ弾かれる。その勢いをそのままに、俺はサマーソルトキックで王子の顎を掠める。バック転して剣を構え、腰が落ちた王子の喉元に切っ先を突きつけ、勝ち誇った。

 

 

 

「俺の勝ちです。ジャティス王子。」

 

 

 

「ッハァ、ハァ、っどうやら、ハァ、そのようだね…。」

 

 

 

 俺よりも強く、俺と同じくらい速く、ラフプレーにも強いチートイケメン王子の唯一の弱点はスタミナの無さだった。

 

 


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