再投稿。
※
「何やってるんですか⁉︎」
「・・・・・・」
「酔っ払って王城を壊すなんて前代未聞ですよ⁉︎」
「・・・・・・」
「…ゼロさん?」
「・・・・・・」
「ちょっと!ゼロさん聞いてますか⁉︎」
「…ごめん、なんで怒ってんの?」
「はああ⁉︎」
さて、俺の前には顔を真っ赤にしたエリス。
ここはいつもの場所である。
真っ赤なエリスはよく見るが、今回はいつもの羞恥が原因ではなく、どうやら怒りの側面が強いらしい。
しかし、俺には理由がさっぱりわからない。王城を壊したとか言ってるが、さっきまでジャティスと酒を飲んでいただけなのだ。なぜそんな国家転覆罪の容疑が俺にかけられているのだろう。
これが冤罪というやつか。
「なんて理不尽な世界なんだ…。」
「世界だってゼロさんには言われたくないと思いますよ…。」
おっと、辛辣ですね。
まあ何はともあれ…
「久しぶりエリス。5年ぶりくらいか?」
「まだ一ヶ月くらいですけど⁉︎」
そうだったっけ?
もう随分会ってないと思ったが…。
「もう一度聞きますけど、本当に何やってるんですか…。王城に逗留まではいいにしても、その日のうちに城に大穴を開けるなんて魔王軍のスパイって疑われても仕方ないですよ?」
そこんとこがよくわからない。
城に大穴ってなんだよ。俺には覚えがないね。
断固身の潔白を主張する所存であります!
「潔白どころか完全に真っ黒ですよ。証明するまでもありません。」
酷い言い草だな。心なしいつもより遠慮がない。
まあ遠慮なんてしてほしくないけど。むしろもっとガンガン前に出るといい。
「で、結局何があったのさ。本当に俺がやったとかじゃ無いんだろ?」
「…まさか本当に覚えてないんですか?」
覚えていないとも。どうしても俺を犯人にしたいなら何があったか一から教えてもらいたいものだ。
「あ!私知ってますよ!こういう時に開き直るのは大抵犯人なんですよね!」
「いやそれは偏見入ってるよ!」
犯人じゃなかったらどうするつもりだ。
おう、税金で給料もらってる警察がその税金支払ってる国民を冤罪で捕まえるとかいい加減にしとけよ。警察上層部はもっと反省して、どうぞ。(唐突)
「…何の話でしたっけ…。」
「王城に大穴。」
「ああ、そうでしたね。ゼロさんがお酒に強くもないのに一気飲みして酔っ払った挙句に「魔王を今から倒しに行く」と訳のわからないことを言い始めたのでジャティス王子が決死の覚悟で止めた話でしたっけね。」
「ちょっと待って!俺そんなことしたの⁉︎」
何やってんの俺⁉︎
その話が実話ならばジャティスに土下座するのも吝かではない。
本当にっ、すまないと思っているっ…!
「え、じゃあデュランダルで王城に穴あけたの?俺基本斬ることしか出来ないんだけど、丸く切り抜いたってこと?」
「いいえ?ゼロさんが王子に襲いかかったので止むを得ず王子が王族に伝わる技を使ってゼロさんをお城の上まで吹き飛ばした結果ですよ。」
「あいつも何やってんの⁉︎じゃあ俺今回も死にかけて…うん?」
あれっ。
今の話だと穴あけたの俺じゃなくない?完全にジャティスがやってるよね?
「原因は間違いなくゼロさんにあるんですから、責任の所在もゼロさんにあると思いますけど?」
「・・・・・・」
いやぁ…言わんとすることは分かるよ?でもそれで納得出来るかと言えば…うーん。
例えるなら友人に車を貸して、その友人がスピード違反したけど車の持ち主は俺だから罰金も俺が払ってね、みたいな理不尽さを感じる。
わかるかなぁ…わっかんねぇだろうなぁ…。
「だいたい俺だってほら、こうやって死にかけてるわけじゃん?それで何とか勘弁してもらえませんかね、エリス様?」
「…もう、しょうがないですね。」
お、今の呆れたような表情カワイイ。
可愛くない時ないけどな!
「まあこの件に関しては裁くのも咎めるのも本来私じゃありませんしね?」
む、それはそうか。後で国王にも謝っておこう。
「それにしてもそろそろ普通に夢で会えるように出来ないのか?俺、瀕死になんなきゃエリスに会えないとか今後会いたくなったら首括らなきゃいけないじゃん。」
「…別に…私に会いに来なくてもめぐみんさんとか、アイリス王女とそっちで仲良くやればいいじゃないですか。」
「‼︎」
こ、これはまさか…YAKIMOTI⁉︎
ついにエリスにもデレ期が来たのか⁉︎これは早く結婚式の準備をしなくては!式場はどこがいい?いつにする?子供の名前は⁉︎
「安心しろ!俺の一番はいつだってお前だけだぜ☆」
「違っ、違います!何でそんなに話が飛ぶんですか!私そんなんじゃないですから!ほ、ほら!もう朝ですよ〜、早く起きて下さ〜い!」
今度は羞恥で顔を紅くしながらグイグイと俺を押してくる。
ちくしょう!まだか!まだ好感度が足りないというのか!
「そりゃあ私だって偶にはお友達と会いたいですけど、天界って割とそこらへんに厳しくて…。今だって結構アウトとセーフの境目ギリギリなんですよね。ゼロさん別に死んでるわけじゃありませんし…。」
「そこらへんはいいや。どうせ俺すぐ死にかけるし、また来るよ。」
「あの、あまり無理はしないでくださいね。私たちは本来関わることは無いんですから、自分を大切にして…なんなら本当にそちらで私のことは忘れて…」
「エリス。」
それ以上いけない。
俺はエリスに説教したくないし、エリス以外とそういう関係になるつもりも無い。
「要するに魔王討伐まで保留にしといてくれればそれでいいんだよ。エリスが待てないならそれも良し、俺は諦めよう。」
その時は俺が世界を滅ぼすかもしれないけど。
すご〜い!君は世界を滅ぼせるフレンズなんだね!わーい、たーのしー!
「最後に不穏なこと言わないでください‼︎」
※
あの後ジャティスに謝りに行ったら筋肉痛で寝込んでいた。俺との試合の後に普段使わない技を使ったからとはいえ情け無いことこの上ない。
俺が顔を出すと、「君何でピンピンしてるんだ⁉︎」だの、「一ヶ月は安静じゃなきゃおかしいだろう⁉︎」とか、「君、魔王の息子とかじゃないよね…?」など、意味不明の供述をして来たのでデュランダルの鞘でブチのめしておいた。
失礼な事をいうからである。インガオホー‼︎ショギョームッジョ‼︎
(さて、今日は暇になってしまったかな?)
アレではジャティスは休まざるを得ないだろう。何をして過ごそうか…。…やはり鍛錬か?
「あの、ゼロ様?少しよろしいですか?」
「おや、アイリス様。何か御用ですか?」
「今日はお兄様がお休みですよね?もしよろしければ私に付き合ってほしいのですが…。」
「今なんと?」
「いえ、ですから私に付き合ってほしいのです。」
…弱ったな。
つい先ほどエリスと誓ったというのに、俺にはモテ期が来てしまったか。いやぁでも一国の王女の告白を無下には出来ないしなぁ、困った困った。
「いいですよ、ちょうど何をするか困っていたんです。」
「よかった!では闘技場でお待ちしていますね!」
知ってた。