この素晴らしい嫁に祝福を!   作:王の話をしよう

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再投稿。






22話

 

 

 ※

 

 

 

「お前、女神なんだろ?ギルドがどこにあるのかわかんないのか?」

 

 

「そんな事聞かれても知らないわよ。基本的な知識はあるけど、たくさんある異世界の中の小さな街の施設なんていちいち知る訳ないでしょ?」

 

 

 

 コイツ、一発ぐらいぶん殴っても許されるんじゃないだろうか。

 

 せっかく異世界に転生したというのに、特典として連れてきたこの女神は使えないし(自業自得なのは置いておく)、早くもダメダメな気配がするが、俺は生まれ変わるのだ。

 

 この世界で魔王を討伐して元の世界に帰るという目標があるのだから!

 

 

 そのためにはまずはギルドの場所だな。そう考えながら道行く人に声をかけようとした時、男の声が聞こえてきた。

 

 

 

「すみません、何かお困りでしょうか?」

 

 

 

 見ると、腰に剣を下げ、黒と赤のリバーシブルのマントを身に付けたイケメンがそこに居た。

 

 髪は燃えるような赤、地毛なのだろうか。さすが異世界。目付きは多少悪いが、紛う事なきイケメンだ。

 

 

 

(ちっ!イケメンかよ。こういうのは美少女ってのがお約束だろうが!)

 

 

 

 ただイケメンというだけで拒否反応が起きそうになるが、せっかく声を掛けてくれたのだ。好意に甘えてギルドへの道を教えて貰おう。転生したばかりでわざわざ波風を立てることも無いしな。

 

 

 

「あ、はい。この街には来たばかりで何も分からなくて。とりあえず冒険者になりたいのでギルドへの道を教えてください。」

 

 

 

 ※

 

 

 

 なんか声掛けた途端すげえ顔で睨まれたんだが。初対面で失礼なクソガキだなおい。

 

 とはいえ、困っていたのは確かなようだし、ギルドへは俺も行きたかったところだ。

 ウィズの店に置いてきた荷物は…まあそれを済ませてからでいいか。

 

 

 

「いいですよ。ちょうど俺も冒険者登録をしに行く途中だったので一緒に行きましょうか。俺はゼロです。よろしく。」

 

 

「えっ。あ、はい、佐藤和真です。よろしく…。」

 

 

 

 なぜかまた顔を顰める芋虫少年もといサトウカズマ。ぶっ飛ばすぞ。

 

 険悪になりかけた俺に今まで空気と化していた少女が急に声をかけてきた。

 

 

 

「ねえ、その剣って『不壊剣』デュランダルでしょ?もしかしてあなたも転生者なの?なんか見覚えないんですけど。」

 

 

「「は?」」

 

 

 

 俺とサトウカズマの声がハモる。

 

 …待て、なんでこいつがそんな事を知ってんだ。まさかこいつ、いや、こいつらも転生者なのか…?

 

 …ダメだな。さすがに怪しすぎる。嘘はつかずに様子見してみるか。

 

 

 

「いえ、この剣は俺の親父が持っていたものでしてね。親父が死ぬ時に所有権を譲ってもらったんです。確かにそのような銘が付いてますが…転生者、とは?」

 

 

「……んん?」

 

 

「バッカ、お前…!」

 

 

「痛ったーい⁉︎何すんのよヒキニート!あんた女神に向かって暴力とかバチ当たりも大概にしなさいよ!」

 

 

「ヒキニート言うな!いきなりそんな意味不明な事言ったら怪しまれるだろうが!少しは考えろこのクソアマ!」

 

 

 

 青い少女は俺の話を聞いて首を捻って何かを思い出そうとしたみたいだが、サトウカズマの脳天チョップにより思考が中断されたようだ。そのまま掴み合いの喧嘩を始める。仲がよろしいようで何よりだ。

 

 

 怪しまれるというが、お前らは少し自身を省みるがいい。もはや俺の中のお前らは怪しさMAXなど通り越して、ギルドだと嘘をいって衛兵所に案内するまである。

 

 

 というか今この女、女神とか言わなかったか?

 

 

 

「…往来で騒ぐのもいいけど、君たちの事はなんて呼べばいい?俺はただのゼロで構わないけど。」

 

 

「あ、俺はカズマでいいです。」

 

 

「私のことはアクアって呼んで。」

 

 

 

 ※

 

 

 危うく剣を抜きかけた。自制した俺は褒められてもいいんじゃないかね。

 

 

 アクアぁ?それは忌まわしくも俺の転生に失敗しやがったクソ女神の名ではなかったか。それだけでは飽き足らず、謝罪や仕事をエリスに押し付けてアニメを視聴するとかいう魔王軍よりも優先されるべき駆除対象だ。害虫に他ならない。

 

 

 さすがに本人ではないだろうが、同名で自称女神……?

 

 

 

「カズマに、アクア…。ちなみになんですが、アクシズ教の御神体、女神アクアと何か関係があるんですか?」

 

 

「本人よ‼︎」

 

 

「って言ってますけどただ頭が弱いだけなんでお気になさらずー!」

 

 

「なんですって!カズマあんた、仮にも女神に頭が弱いってどういうことよ‼︎」

 

 

「お前自分で仮にもとか言ってんじゃねーか!」

 

 

 

 ほう…?

 

 

 …まあそういうことにしておいてやろう。カズマの苦しい言い訳にも一応の説得力はある。

 

 それにまだ(・・)騒ぎを起こすのは早い。ここでキレても良い事など俺の気が晴れるってことしかない。

 

 

 あと見逃す理由は…………ああ、こいつが失敗しなけりゃエリスとも出会えなかったのか。

 おお、コレはでかいな。なんとか折り合いはつけられそうだ。

 

 

 まあそもそも前の『俺』なんて俺は知らんけどね。俺が一番怒ってんのは果たすべき責任もエリスに押し付けてエリスに先輩面して偉ぶってることに関してだ。

 

 転生失敗は今の俺には正直どうでもいい。

 

 

 んむ、そう考えたらスッキリしてきたな。

 以前…王都に逗留する前の俺なら多分殺ってたと思う。

 

 

 人の気持ちなどちょっとしたきっかけで変わるもんだ。荒れてた奴がたった一つのアニメによって丸くなることもあるのだ。CLANNADは人生。

 

 

 

「ほら、あれがギルドの建物だ。騒ぐのもいいけど、衛兵に捕まっても俺は知らんぞ。」

 

 

 

 敬語を使うのもめんどくさくなった俺が遂に殴り合いをし出した二人を諌めつつギルドを指差す。

 こいつらはアレだな、喧嘩するほど仲が良いを体現してんな。

 

 未だにいがみあう二人を尻目に、扉を開けて中に入った。

 

 

 ※

 

 

 

「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどういったご用件ですか?」

 

 

「冒険者登録をしたいんです。えっと、この三人。」

 

 

「はい、承りました。登録料は一人千エリスです。」

 

 

 

 千エリスね。登録の手続きをしてもらうために俺が財布を取り出すと、後ろから何やら不穏な会話が聞こえてくる。

 

 

 

「おいアクア、お前金って持ってる?」

 

 

「あんな状況で連れてこられて持ってるわけないでしょ?」

 

 

 

 こいつらマジかよ。何しに来たんだ。きょうび運転免許だって発行するのにウン十万かかるだろうに一文無しでどうやって登録するつもりだったのか。

 

 というか今更だがなぜ女神がこんなところにいるのか。あんな状況ってどんな状況だよ。

 

 俺が尽きぬ疑問と格闘しているとアクアがなにを思ったか俺にしなだれかかってきた。

 

 気持ちわりいから離れてくんねーかな。手が滑るかもしれん。

 

 

 

「ねえ、ゼロさん?初めて会った時から思ってたんだけど、あなたってすっごくその、かっこいいわよね!」

 

 

 

 こいつまさか俺にたかるつもりか。

 なんてこった、生まれて初めてカツアゲに遭遇してしまった。新鮮な体験をさせてもらったお礼をしなくては。

 

 

 

「おいカズマ、これ、千エリス。貸してやるからさっさと登録してきな。」

 

 

「お、マジで?いいのか?」

 

 

 

 俺がカズマ(飼い主)に千エリスをやると、アクア(ペット)がこちらに両手を揃えてなにか欲しそうに向けてきた。

 

 …何だ?ペットの分際でお捻りが欲しいってか。しょうがねぇなあ。

 

 

 心優しい俺はその手に一エリス硬貨を乗せてやる。いやあ、親切って気持ちいいね!

 

 

 

「なんでよ‼︎」

 

 

 

 このペットは何が不満なのか。せっかくお小遣いをやったのだ。さっさと外に消えて道端の草でも食ってろ。

 

 

 

「あ、あの、ゼロさん?なんでそんなに怒ってるの?私なにかした…?」

 

 

「いやあ?別に?ただオレ、オマエ、キライ。」

 

 

 

 なにかしたかと聞かれりゃそりゃされたよ。二、三発殴っても俺は許される(断言)

 

 いや、実際こいつが余計なことしなければ普通に貸してやったかもしれん。アクアのしたことが癇に障ったからこうしているだけで。

 

 

 

「…う…うわああああああ‼︎ガ、ガズマ!ゼロが、ゼロがあああああ‼︎」

 

 

 

 メンタルよっわ。

 

 俺のキライ宣言が響いたのかアクアが泣き始めた。うるさいことこの上ないが…その、なんだ。こう泣かれるとちっと悪いことした気分になるな。

 

 

 子どものように泣き喚くアクアをカズマに任せてため息をつきながら迷惑そうにする受付嬢に三千エリスを渡した。

 

 

 

「あの、すみません。これ、あの二人の分もお願いします。」

 

 

 

このままだと登録手続きも一向に進まないしな。

 

 

 心の中で言い訳をする。

 俺はなんだかんだ一度知り合った人間にはあまりキツく当たれないのかもしれない。

 

 

 

 


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