この素晴らしい嫁に祝福を!   作:王の話をしよう

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再投稿。





25話

 

 

 ※

 

 

 ローリングボアの大群に追われて森を爆走する俺とゆんゆん。正直俺は普通に逃げ切れるが、ゆんゆんが問題である。

 

 そもそもこのゴローンどもの速度が人間よりもずっと速いのだ。今ゆんゆんが逃げる体裁を保てているのは後ろから追いついてくるローリングボアを俺が並走しながら斬り捨てたり蹴飛ばしたりしているからだ。おう、サッカーしようぜ!お前ボールな!(直球)

 

 …そろそろ足の甲が痛いです。

 

 

 それにいかんせん数が多い。

 一体に対応すれば違う方向からゆんゆんに突進してしまうのでさっきからわりと本気で動く必要がある。広い場所ならそれほど苦労しないだろうが、木が多すぎる。直行しようと思っても急激なストップ&ゴーを繰り返さざるを得ない。

 これはこれでいい鍛錬になるから俺はしばらくやってもいいが、さすがにゆんゆんがバテてしまうだろう。このままではジリ貧だ。

 

 また追いついてきた猪を両断する。こいつら、硬いことは硬いのだが元は肉から変質したものだからか、一度刃が通ると結構すんなり斬れるな。

 

 飛び散る血やら岩の破片やらを避けていると、視界にひらけた平地が映った。森で障害物に邪魔されながら走るより広いところで殲滅した方がいいかもしれない。

 

 

 

「ゆんゆん!左!あそこでやるぞ!」

 

 

「は、はひいいいっ…。」

 

 

 

 大分疲弊しているが…無理もない。こんな岩の塊が自分にあからさまな敵意を持って押し潰そうとしてくるのは常人には相当のプレッシャーだろうしな。

 

 

 

「なるべく中央に行け!足止めは何とかしてやるからとにかく魔法で片っ端から吹っ飛ばせ!」

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ…っよ、よし、『ライト・オブ・セイバー』!」

 

 

 

 平地の真ん中に陣取ると同時に振り向き、魔法を放つ。光る刃がローリングボアを三体まとめて真っ二つにした。

 

 すごいな。さすがにジャティスの『エクステリオン』よりはかなり弱いが、俺が飛ばす斬撃とは段違いだ。俺のは所詮かまいたちでしかない。硬いものには弾かれてしまうのだ。

 

 

 

「やるじゃねぇか!お前はそっから動くなよ!なるべく遠くにいるやつに魔法をばら撒け!近づくやつは俺がやる!」

 

 

「は、はい!『ライト・オブ・セイバー』!『ライト・オブ・セイバー』!」

 

 

 

 

 ゆんゆんがなるべく近寄る前に広範囲を斬り飛ばし、すり抜けてきたやつを俺が斬る。

 おお、なんかチームプレーって感じがするな。

 

 既にクエストの10頭討伐は完了しているのでゆんゆんを担いでさっさとアクセルに逃げ帰ってもいいのだが、こいつらが人に危害を加えないとも限らない。なるべくここで全滅が望ましいだろう。

 

 

 

 ※

 

 

 

「お疲れさん。すごかったぞ。」

 

 

 

 別に競ってはいないが、ローリングボアの討伐数なら5−2でゆんゆんの勝ちだろう。俺は取りこぼしを倒してただけだしな。

 ゆんゆんと俺のカードを合計すると、ローリングボアは73体もいたようだ。オーバーキルにも程がある。あまり多く倒すと生態系が壊れるとかでギルドから怒られるんだよなぁ…。

 

 あ、オークはギルドからすら優先駆除対象になっていますです。ざまあ。

 

 

 

「い、いえ…、ゼロさんがこっちに来ないようにしてくれたから…。やっぱり近接職の人がいると違いますね…。」

 

 

「俺も本物の魔法使いの戦いが見られて良かったよ。そんじゃ、後はギルドに報告してーーー」

 

 

 

 ズン。ズン。

 

 

 

 

「…?どうしたんです?ゼロさん。」

 

 

「ゆんゆん、残業発生。向こう見てみ。」

 

 

「えっ…?え⁉︎な、なななにあれ…⁉︎あれもローリングボア…⁉︎」

 

 

 

 俺の中のどこかが残業とかいうパワーワードに猛烈な拒否反応を起こしているが、それどころではない。

 

 なんかキラキラしたのが出てきた。

 

 見た目、というか形はさっきまでの岩塊と同じだ。注目するのはその色彩。様々な色のクリスタルやあれは…マナタイトにフレアタイトもあるのか。ついでにKBTITも含んでそうだ。含んでたまるか。

 

 とにかく、七色に光り輝く色違いの登場だ。見ただけで分かった。これ、多分剣通らんわ。

 

 雰囲気がモンハンでよく道を塞いでいる黒い大岩に似ている。初心者はあれを壊そうとして武器の切れ味を奪われるまでがワンセット。

 

 しかもあの量のクリスタルーーーーー

 

 

 

「ちょっと魔法撃ってみて。あの斬るやつ以外で。」

 

 

「はい!『ライトニング』!」

 

 

 

 打てば響く返事と共にゆんゆんが白い雷光を放つ。察するに、俺が以前受けた『カースド・ライトニング』の下位互換だろう魔法は文字通り雷速でローリングボア亜種に命中しーーー綺麗にゆんゆんに跳ね返ってきた。

 

 剣をゆんゆんの前に出して雷を受け止めてやる。剣の柄をマントで包まないと感電していたかもしれない。

 

 

 

「そ…、そんな…!ふ、『ファイアボール』!『フリーズガスト』!『ライト・オブ・セイバー』!」

 

 

 

 次々とゆんゆんが魔法を放つが全て反射される。ショックなのはわかるけど対応するのは俺なのでもうちょい手加減して…。

 

 ゆんゆんに跳ね返る魔法をデュランダルで防御してそのまま斬りかかる。が、命中すると同時にやはり跳ね返される。いや、俺の場合弾かれた。魔法も物理も効かないとは厄介な。

 

 心なしかローリングボアの目が自慢気に「ッエーイ☆」って言ってる気がした。気がしただけだ。ただ間違いなくこいつはロリコンだろう。ムカついたのでその眼を潰すことにした。

 

 

 

「魔法も剣も効かない…、ど、どうしましょう⁉︎」

 

 

「落ち着け。落ち着いて素数でも数えてろ。」

 

 

 

「…すみません、素数ってなんです…?」

 

 

 

 

 無視して走り出す。対策は今思い付いた。動きが遅い今ならやれる!

 

 俺の心を読んだわけでもあるまいにその瞬間に高速回転して地面を削りながら向かってくる仮名:クリスタルボア。

 

デスヨネー。お前も転がるんだよねー。

 

 

 

(『スイッチ』‼︎)

 

 

 

 スローモーションの世界で確かにそれ(・・)を捉える…が、動きが遅くなった俺では狙って剣を突き出しても高速で移動する点には間に合わない。

 

 

 

「ヘイ!なんか相手の動きを止めたり遅くしたりする魔法ない⁉︎」

 

 

「やってみます!『ボトムレス・スワンプ』!」

 

 

 

 いい返事だ。

 魔法が発動した直後にクリスタルボアの進行方向の一定範囲がグズグズの泥沼と化した。そこにハマり、目に見えてスピードが落ちる。これならいけそうだ。

 

 

 

「そこっ!」

 

 

 

 思いっきり突き出した剣がクリスタルボアの眼球に命中、奥まで到達する。硬っ。なんで眼まで硬いんだ。感触が普通のローリングボアと同程度だったぞ。

 

 思いの外硬かったせいでトドメには至らなかった。その水晶の体を振り回して俺を追い払うクリスタルボア。剣をそのままにして離脱、受け身を取りながら大声を出す。

 

 

 

「ゆんゆん、『雷』ぃ!」

 

 

 

 俺の意図が伝わったとは思えない。さっき魔法を自分に反射されたことを忘れたわけでもないだろう。それでもゆんゆんは即座に応じてくれた。

 

 

 

「『ライトニング』‼︎」

 

 

 

 この世界で通常の物理法則が仕事するかはわからない。もし反射されてもいざとなれば俺の体を盾にして庇うつもりだったが、問題なかったようだ。

 

 ゆんゆんの放つ雷光はクリスタルに当たるーーー直前に軌道を変え、デュランダルに吸い込まれる。クリスタルボアの全身がビクリと震え…ゆっくりと倒れる。

 

 魔法を弾く体を持ってるなら体内に直接撃ち込めばいいのだ。

 

 

 しかし今日のMVPは間違いなくゆんゆんだな。俺と別れた後も他の奴とパーティーを組んでもらえるようにギルドに推薦しておこう。

 

 

 

 ※

 

 

 

「今日はありがとうございました。」

 

 

「ああ。こちらこそ。」

 

 

 

 クエスト達成の手続きはゆんゆんがやってくれるそうだ。今日はこのまま一緒に食事をして解散しようということになった。

 

 それにしても俺は明日からもお願いしますとか言われると思っていたからすんなり解散するのは意外だったな。

 

 

 

「えっと…いえ、組んで欲しいのはその通りなんですけど…、私ゼロさんの足を引っ張ってたじゃないですか。」

 

 

 

 何を言うかと思えば。

 そんなことはない。良い感じに連携もとれていたじゃないか。

 

 

 

「でもすごく動きにくそうでしたよ?私にずっと合わせて手加減…というか私に多く倒させて経験値をくれようとしてませんでしたか?」

 

 

 

「……バレてたのか。」

 

 

 

 

 驚いたな、あの状況でそんなところに気が回ったのか。

 

 まあその通りだ。実際ゆんゆんを気にかけなければあいつらが出てきた時に瞬殺している。パーティーを組んだからには仲間にも経験値を積ませてやらんといかんからなるべくゆんゆんに倒して欲しかったのだ。

 それに俺一人なら躱せる攻撃も他の奴が反応できるかわからない。あのままだとゆんゆんが危ないから最初は逃げ一択だったんだしな。

 

 そもそも俺の戦闘スタイルがパーティーに向いていない。ジャティスやアイリスクラスなら形にはなるだろうが、音速で動く俺に合わせられる人間など限られるからだ。

 

 ずっと一人でやってきた弊害ってやつだな。それでも誘われれば断るつもりは無いし、合わせるのも吝かじゃない。

 

 

「バレバレでしたよ。ありがとうございます。でもずっと守られるわけにもいきませんし…。

 私も…が、頑張って強くなります。それで…、ゼロさんに合わせられるようになったら…また組んでくれますか…?」

 

 

「ああ、もちろんだよ。」

 

 

 

 そんなことしなくてもたまになら組んでもいいさ。魔法が便利だってのも再確認したし。

 

 

 

 

 ※

 

 

 

「私はクエストの報酬を貰ってきますね!」とゆんゆんは受付に行ってしまった。

 

 そろそろ夕食時だ。他の冒険者も帰ってくるだろうし早めに席を取っておきたい。

 

 

 ギルドの酒場を見回していると、見たことのある少女が机に突っ伏しているのを発見した。

 

 先ほどギルドのカウンターに向かった少女と同じ黒と赤のローブ。大きな帽子をかぶっているせいで顔は見えないが、間違えようもない。こちらには気付いていないようだ。

 

 口元が綻ぶのを自覚しながら音を立てないように背後に立ちーーー首根っこを掴んで持ち上げた。

 

 

 

 

「うわっ⁉︎何するんですか!やめろお!いたいけな少女に乱暴するとはどういうーーーーーゼロ?」

 

 

「よう、久しぶりだなクソガキ。」

 

 

「クソガ…!じょ、女性に対してなんて口をきくんですかあなたは‼︎」

 

 

 

 

 後にアクセルで『頭のおかしい紅魔の娘』『爆裂狂』などなどの悪名を轟かせることになる野生動物その一との再会だった。

 

 

 

 


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